ホーコン・コーンスタ & ホーヴァル・ヴィーク『ザ・バッド・アンド・ザ・ビューティフル』国内仕様盤ライナーノート
liner notes for Japanese version of import CD

Håkon Kornstad (ts)
Håvard Wiik (p)

1. King Korn (Carla Bley)
2. Circles (Annette Peacock)
3. Embraceable You (George Gershwin)
4. John S (Sonny Rollins)
5. Bad And The Beautiful (David Raksin)
6. Roussilion (Keith Jarrett)
7. Four In One (Thelonious Monk)
8. Lady Of The Island (Graham Nash)
9. Geometry (Kornstad & Wiik)
10. Law Years (Ornette Coleman)
11. Warzawa (Bowie & Eno)

1977年生まれ、今年30歳になったサックス奏者ホーコン・コーンスタと2つ年上のピアニスト、ホーヴァル・ヴィーク。ノルウェーの新世代ジャズ・ミュージシャンを代表するこの2人は、ベーシストのインゲブリクト・フラーテン、ドラマーのポール・ニルセン・ラヴと共に1999年に1つのバンドを結成した。ホーコン・コーンスタが名づけたそのグループこそ、ノルウェーのジャズの新しい1ページを切り開くことになるアトミックだ。その後ホーコン・コーンスタが、自身のトリオとエレクトリックなポップ/ジャズグループ、ウィブティーの活動に専念するため脱退するまでの間に、最初期のアトミックは録音を残さなかったため、この共演は今では幻である。

それから現在までの間、2人はいずれもトリオとソロで自身の音楽表現を探求してきた。ホーコン・コーンスタはトリオで『スペース・アヴェイラブル』(2002年、Jazzland)とライヴ盤『Live From Kongsberg』(2004年、Jazzland、ドイツ人トランペッター、アクセル・デーナーをゲストに迎えたカルテットでの演奏)、ソロで『シングル・エンジン』(2007年、Jazzland)を、一方のホーヴァル・ヴィークはトリオで『ポスチャーズ』(2003年、Jazzland)と『アーケイズ・プロジェクト』(2007年、Jazzzland)、ソロで『Palinode』(2007年、Moserobie)、とそれぞれが着実な歩みを残している。

そんな2人が初めてデュオで演奏したのはこれら全てよりずっと前の1997年、彼らがまだ音楽院の学生だった頃のことだ。コンサートで演奏するようになったのは2000年。満を持して録音された2005年の『Eight Tunes We Like』(Moserobie)、そしてノルウェー・グラミーにノミネートされたこの『ザ・バッド・アンド・ザ・ビューティフル』の2作品に収録された曲は1曲を除き全てカバー。ジャズからロック、さらにクラシックまでも守備範囲とし、それらをごくオーソドックスな解釈で披露する。2人の間に流れる間合いを何と表現したらよいだろう。アルバムでも、そしてライヴでも、どちらかがもう一方に合わせるでもなく、火花を散らすでもない。2人がそこにいて、自然に会話をするよう、というのが最も近いだろうか。美しく、静かで、それでいてスリリング、そしてチャーミングな表情すら見せるこのデュオは、聴き手にアルバムの実際の長さ以上の豊かな時間を与えてくれる。

デュオ結成10周年となる2007年末、この2人が揃って来日する。これから一体どんな進化を遂げるか計り知れない若い才能の、現在の姿を記憶できることは幸運であり、数十年後にはその意味はもっと大きなものになっているかもしれない。

2007-11-30 / ディスクユニオン / DUJ-017 / 原盤 Moserobie Music Production, MNP CD048, 2006