discs - May 2004

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last updated: 27 May 2004


● Eldbjørg Raknes の最新プロジェクトはスウェーデンの名手 Anders Jormin (b) とのデュオ。


So Much Depends Upon A Red Wheel Barrow / Eldbjørg Raknes (2002; Platearbeiderne; PLACD 2002)
Eldbjørg Raknes (voice), Nils-Olav Johansen (guitar b, voice), Christian Wallumrød (keyboards, voice), Per Oddvar Johansen (ds, per, voice)
Eldbjørg Raknes の詩と音楽のユニット TINGeLING としては前作 "TINGeLING" (1997) 以来の2作目、リーダー作としては間に子供向け音楽の名作 "Det Bor En Gammel Baker..." (1999) を挟んで3作目となる。レコーディングを Nils Petter Molvær 作品や Close Erase の "Dance This" などエレクトリックなジャズを得意とする Reidar Skår が手がけており、彼らしい透明感があるさりげなく細やかな音に仕上がっている。本作ではタイトルトラックを始めとしてアメリカの詩人 William Carlos Williams (1883-1963) の作品をメインに取り上げている。その詩と Eldbjørg Raknes による楽曲は、それらが別に作られたとは思えないほど密接に結びつけられ、1つのものとして再現されている。メロディーはわかりやすくて美しく、とても印象に残る。途中でただ1曲だけ、突如として全員が前衛パフォーマンスに突っ走る曲があり、その有様に呆然としていたらケロリと次の曲のスイートなメロディーが流れ込んできて、聴き手はあっという間に置き去りにされる、その瞬間が非常に面白い効果を生んでいる。新しく加わった Christian Wallumrød は、もともとEldbjørg Raknes がプロとして活動を始めた1991年にデュオを組んでいたといういきさつもあり、息もぴったりだ。バックの3人は、そのポイントを抑えた演奏もさることながら、タイトルトラックなどでのコーラスも素晴らしい。名作。 (2004/05/27)

● このユニットはダブル Johansen はそのままに少しずつメンバーを変えつつ現在も活動中。


TINGeLING / TINGeLING (1997; NOR-CD 9726)
Eldbjørg Raknes (voice), Nils-Olav Johansen (6 stting bass g), Maria Kannegaard (el-p), Per Oddvar Johansen (ds)
Curing Legs レーベルからアルバムをリリースする女性ボーカルグループ KvitrettenJazzland レーベルにレコーディングがある女性ボイスパフォーマンストリオ ESE などの活動でも知られるノルウェーの女性シンガー Eldbjørg Raknes ( b. 1970) の実質的な初リーダー作。このユニット TINGeLING は様々な詩に Eldbjørg Raknes が曲をつけるというコンセプトで、このアルバムでは James Joyce、Dorothy Parker、Pablo Neruda らの詩を扱っている。音楽のほうも詩のようにミニマル、拡散するイメージで、メロディーもやや抽象度が高い。このユニットはそもそも 1996年に Eldbjørg Raknes とギタリスト Nils-Olav Johansen により始まったそうで、その Nils-Olav Johansen の弾く6弦ベースがギターとベースの両方の役目を果たし、そのミニマルなサポートがこの非常にデリケートな音楽のバランスを保っている。Eldbjørg Raknes のボーカルは特に変わった声質でもなく聴きやすい声で、さりげないけれど声のニュアンスに微妙な変化がつけられる繊細さを持ち合わせている。 (2004/05/21)

● ノルウェーの女性シンガーに多い実験的が面がないところがかえって珍しい…。


Aire & Angels II / Air & Angels (2002; Bergland Productions; BE 008-2)
Siri Gjære (vo), Tord Gustavsen (p)
1999年の "Aire & Angels" (C+C Records / EMI; 現在は入手困難)に続くこのデュオの2作目。前作では17世紀の詩人の詩を扱っていたそうだが、本作ではイギリスの詩人 Rupert Brooke (1887-1915) の詩を使ったものが5曲、John Donne (1572-1631; ユニット名 "Aire & Angels" はこの詩人の作品から取られている) のものが1曲、残りは Siri Gjære によるもので、曲は Tord Gustavsen が5曲、残りは2人の共作となっている。澄んだ空気を感じさせる Tord Gustavsen の端正なピアノが静けさとその中での小さな変化を繊細に表現し、Siri Gjære のリラックスした等身大の声が、歌詞を丁寧に歌う。このアルバムの後にリリースされた Tord Gustavsen のトリオ作 "Changing Places" (2003; ECM) で見られたベタなメロディーはここでも聴かれるが、Siri Gjære がさりげなく歌いこなしていて、丁度よい具合にメロディーが耳に残る。Siri Gjære がロック歌手であることからジャズ的なボーカル+ピアノのデュオとは一味違う雰囲気を持っている。 (2004/05/17)

● この後リリースされる Tord Gustavsen とのデュオ作とは全く別の雰囲気。


Love Seriously Damages Health / Siri Gjære (2001; Bergland Productions; BE 001-2)
Siri Gjære (vo, ac-g), Gunnar Andreas Berg (el-g, ac-g, el-b, key, ds, per), Lars Olav Berg (key, org, bs), Erlend Skomsvoll (key), Live Maria Roggen (background-vo), Kirsti Huke (background-vo), Benedicte Swendgaard (background-vo), Frank Hellum (background-vo), Magnar Engen (vla), Øyvind Engen (cel), Stenar Raknes (handclaps), Trond Kopperud (ds, per), Tor Bjarne Bjelland (ds, per), Carl Haakon Waadeland (ds, per), Thomas Strønen (ds, per), Steinar Krokstad (ds, per)
ノルウェーの女性シンガー Siri Gjære の、前年2000年にリリースされた3曲入りクリスマスEP "Someone's Working Late Tonight" (Bergland; BES 002-2) に続くフルアルバムで、これがソロとしてのデビュー作であり、シングルとこのCDは Bergland Productions の初のリリースでもある。そのレーベルオーナーでありギタリストの Gunnar Andreas Berg が Siri Gjære と共に全ての曲を書き、演奏面でもギターを中心にほとんどの楽器を演奏している。Siri Gjære は基本的にロックシンガーで、コケティッシュな面と少し気だるい雰囲気を持ち合わせている。曲は Gunnar Andreas Berg の音楽性もかなり反映されているが、シンプルなメロディーのギターポップ(レーベルによると Beatles サウンドがベースにあるとのことだが)、全く北欧的ではない。ただし、トロンハイムのジャズミュージシャンをずらりと揃えたゲストの顔ぶれからもうかがい知れるように、プロダクションは結構手が込んでいる。 (2004/05/16)

● いい意味で聴きやすいアルバムだけれど…。


Red Shoes Diary / Hilde Marie Kjersem & TUB Quartet (2004; Curling Legs; CD81)
Hilde Marie Kjersem (vo), Andreas Hessen Schei (p), Magne Vestrum (b), Pål Hausken (ds)
1981年生まれの女性シンガー Hilde Marie Kjersem の、彼女のグループ TUB Quartet でのデビュー作。メンバーも同じ年代で、全員オスロ音大の学生/卒業生、レコーディングも学内、バンドとともに共同プロデューサーとして名前を連ねるのも同年代のミュージシャン(プロデューサーの1人とバンドのピアニストは Jaga Jazzist のメンバー)。Hilde Marie Kjersem はそのジャケット写真にあるようなキュートなルックスとレコーディング時22歳という年齢からすると少しギャップのある低い声の持ち主。歌はジャズというよりポップスで、アップテンポの曲などハマったときはとてもパワフル。作詞作曲を全て Hilde Marie Kjersem が手がけているが、曲のほうもシンプルなメロディーとアレンジのポップスで、全てアコースティックな作りなのが今のシーンではかえってフレッシュな印象だ。14曲も入っているのにトータル46分、3分前後の曲ではバックの3人は何のヒネリもない伴奏のみといった感じでさすがに物足りない感がし、そのためかアルバムトータルとしては逆にやや長く感じる。幾つかの曲のアイディアや、シンガー Hilde Marie Kjersem やこの少しジャズテイストなポップスも面白いと思うだけに残念。 (2004/05/14)

● とにかくヴィブラフォンはこの音にあまりにぴったり。


Moment / Elin Rosseland (2004: NOR-CD 0450)
Elin Rosseland (vo), Rob Waring (vib), Johannes Eick (b); w/ Knut Aalefjær (per on #4)
"Fair Play" (1989; Odin), "Fra Himmelen" (1997; NOR-CD) の後、Sidsel EndresenEldbjørg Raknes と組んだ実験的なボイスパフォーマンスユニット ESE での "Gack!" (1999; Jazzland) を挟んでの実質的にはリーダー作3作目。アメリカ出身で現在はオスロ在住の名手 Rob Waring のヴィブラフォンがしんとした空間ににじむようにゆっくり広がり、Elin Rosseland の活動になくてはならないベーシスト Johannes Eick の落ち着いた深い音色のベースがゆるやかなラインを作り、その上を Elin Rosseland の声が浮遊する。抽象度はこれまでで最も高いが前衛的ではなく、Elin Rosseland の声はあくまでストレートで柔らかい。10曲中、2曲のみトリオでの共作で、後は全て Elin Rosseland のオリジナル。ミニマルで謎めいた雰囲気を湛えたユニークな作品。ひょっとしたらかなりの名作かもしれない。 (2004/05/12)

● 時折入るキーボードによるヴィブラフォンのような音が次作を予告するようでもある。


Fra Himmelen // Elin Rosseland / Christian Wallumrød / Johannes Eick (1997; NOR-CD 9723)
Elin Rosseland (vo, voiceprocessor), Christian Wallumrød (p, el-p), Johannes Eick (ac-b, el-b)
Elin Rosseland は1989年に自身のバンドで初リーダー作 "Fair Play" をリリースした後、様々なユニットやレコーディングに参加しながら、その前作にも参加していたベーシスト Johannes Eick とのデュオで活動し、その発展形となるのがこのトリオ。アルバムはトリオ名義ながら実質的には Elin Rosseland のセカンドアルバムとなる。音数を減らしシンプルになり、その中で3つの個性/音が緩やかに絡む。ドラマチックなメロディーを持つもの、ミステリアスな雰囲気を湛えたもの、そしてエレクトリックな音使いの抑え目ながら少しジャズロックをにおわせる曲もあるが、トータルとしては静かな深みのある作品になっている。Elin Rosseland ボーカルは穏やかで温かみがありクセがなく、「あ〜あ〜」という歌詞のない、声を楽器のように使った曲もある一方で、Sidsel Endresen の詩(すべてノルウェー語)に自ら曲をつけたものもある。Johannes Eick の沈み込むような6弦ベースは時にチェロのような響きもみせ、Christian Wallumrød はピアノとエレピでらしい演奏ながら控えめにサポートしている。アルバムタイトルは "from the sky" もしくは "from the heaven" の意。 (2004/05/10)

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