last updated: 29 June 2005
● 一番面白いのはCDトレイ下のグループ写真かもしれない…。
Quiet Joy / Maria Kannegaard Trio (2005; Jazzland; 6024987045-9)
Maria Kannegaard (p), Ole Morten Vågan (double-b), Thomas Strønen (ds)
コペンハーゲン出身で10歳の時にノルウェーに移住したというピアニスト Maria Kannegaard (b. 1970) の、"Breaking The Surface" (2000; ACT) 以来となるセカンドアルバム。前作からのメンバーであるドラマー Thomas Strønen が、いかにも彼らしい、前にも後ろにも揺れない、音を落とすようなドラミングを見せる一方、ベーシストが Mats Eilertsen から Motif などで知られる Ole Morten Vågan に替わったことで、ざっくりしたラフな手触りの躍動感が加わり、前作よりダイナミックな音になっている。それらの3人のプレイヤーは互いにかなり密に入り組み1つのユニットとしての音楽を形づくっている。Maria Kannegaard は自身のピアノの和音、そしてベースやドラムとの和音の響かせ方の微妙な色合いに個性があり、うっすらと透明感を湛えているが、それが暖色系という点でステレオタイプな北欧系と異なる。Radiohead のカバーをやるジャズミュージシャンは多いが、彼女たちが選んだのはアメリカのヒップホップ系アーティスト Outcast のヒットソング "Hey Ya" というのがユニーク。 (2005/06/28)
● オフィシャルサイト >> www.perzanussi.com
Zanussi Five / Zanussi Five (2005; Moserobie; MMPCD028)
Per Zanussi (double-b), Kjetil Møster (sax), Rolf-Erik Nystrøm (sax), Eirik Hegdal (sax), Per Oddvar Johansen (ds, per)
Per Zanussi (b. 1977) はこの Zanussi Five をはじめとするアコースティックなプロジェクトに専念することを理由に 2004年秋に Wibutee を脱退。で、その第一声となる冒頭、Wibutee のファーストアルバム "Newborn Thing" (1999; Jazzland) に収録されていた自作曲のフリーキーなカバーでまずは挨拶代わり。古めかしい感すらするフリージャズで、しっかり書かれたパートのストイックな雰囲気の楽曲を骨組みに、かなり自由度の高いパートが挟まれる。フロントがサックスばかり3管というのもユニークだが、その3人がジャズロックの Hegdal、現代音楽からフリーインプロの Nystrøm、そしてパワフルなテナー吹き Møster とバラバラなバックグラウンドを持っているのも面白い。中高音が若干強めの録音のせいもあり管の音が賑やかだが、複雑なリズムを小気味よく叩き出すリズムセクションの、よい意味での安定感すら感じさせる演奏のほうがポイントだ。硬派なアコースティックジャズというこれまでの活動からすると意外な方向性を持っている Per Zanussi の、バンドリーダーとしての力量を示す作品。(2005/06/27)
● 個人的には前作よりこちらを。
The Ground / Tord Gustavsen Trio (2004/2005; ECM; 1892)
Tord Gustavsen (p), Harald Johnsen (double-b), Jarle Vespestad (ds)
自己名義のトリオとしてのデビュー作にあたる前作 "Changing Places" (2003; ECM) が記録的なヒット作となり一躍注目を集めるようになってのセカンドアルバム。前作で大変驚かされたその歌謡曲メロディーは若干抑え目ながら基本的に前作の路線を踏襲。レインボースタジオでの録音やある種のECM作品に特徴的なリヴァーブを最大限に響かせる音数の少ないミニマルな演奏が特徴だが、実は Tord Gustavsen のタッチそのものはあまり北欧的でないと言えるほどに粘着質で、音楽の底には(彼が他のユニットではもっとはっきり表現しているように)ゴスペルやニューオーリンズジャズなど意外にもアメリカの音楽がある、というのは 2005年4月の東京公演での彼の演奏を見て初めて認識した。トリオの演奏はより親密なアンサンブルとなっている。多くの人の心を捉える音楽であることには間違いないが、それにしてもノルウェーのヒットチャート(VG Chart) で1位を記録するというのは大事件だ。(2005/06/22)
● ジャケットに大きく "Soir, Dit-Elle" と書かれているのは実は前作 "Worlds Of The Angels"、小さく書かれているのが本作。
Soir, Dit-Elle / Trio Mediaeval (2004; ECM; 1869)
Anna Maria Friman (vo), Linn Andrea Fuglseth (vo), Torunn Østrem Ossum (vo)
2001年の "Words Of The Angel" に続くセカンドアルバム。14〜15世紀のイギリスの作曲家 Leonel Power の曲が4曲とグレゴリオ聖歌が1曲含まれる他は現代の作曲家によるもので、いずれも Trio Mediaeval のために書かれた曲。前作から引き続き Ivan Moody 、その他にイギリスからは Gavin Bryars と Andrew Smith、そしてウクライナの Oleh Harkavyy。現代の曲も古楽をベースに書かれているため、幾分新しい形式を持ちつつも現代音楽ではなく「現代に書かれた古楽」とでもいうべきものだ。ライナーノートに John Potter (このアルバムの段階では「元」Hilliard Ensemble)が寄せている "A Timeless Present" という言葉がよく当てはまる。3人の声は美しいハーモニーを奏でると同時にそれぞれが独自の個性を持っており、ソロによる曲がその個性を知るヒントとなる。全体的には前作より静かで繊細ながら、形式からの緩やかな開放からかより自由な印象を受ける。 (2005/06/19)
Words Of The Angel / Trio Mediaeval (2001; ECM; 1753)
Anna Maria Friman (vo), Linn Andrea Fuglseth (vo), Torunn Østrem Ossum (vo)
1997年にオスロで結成された若い女性3人による、その名の通り中世コーラスグループで、Anna Maria Friman のみスウェーデン出身、他の2人はノルウェー人。同じ ECM にレコーディングがある男声コーラス Hilliard Ensemble の弟子であり、その Hillieard Ensemble の John Potter がプロデュースを手がけている。14世紀前後の作者不詳のラテン語詞の楽曲が19曲、最後から2番目のタイトルトラックのみIvan Moody (1964-) によるもので英詞。これらの楽曲はそもそも男声用に作曲されており、女声で再現するのは仮想に基づく試みであったとのこと。3人が異なるメロディーを歌うポリフォニーは「動」で、古楽というより現代的な躍動感すら感じられる。一方、単一のメロディーからなるモノフォニーが4曲挟まれており、3人それぞれのソロ、そして3人によるものが1曲で、こちらは「静」で全体の中でアクセントとなっている。タイトルトラックは現代の作曲家のものとあってひときわドラマチック。20曲65分という内容ながら非常にテンポがよい。 (2005/06/17)
● レーベルサイト >> http://fabra.afontibus.no/ (タイトルトラックの試聴サンプルあり)
Twitter Machine / Lars-Erik ter Jung + Thomas Kjekstad (2004; Fabura; FBRCD-01)
Lars-Erik ter Jung (vln), Thomas Kjekstad (g)
1995年から活動を共にしている若いヴァイオリニストとギタリストのデュオによる作品で、アルバムタイトルおよび冒頭のタイトルトラックは Paul Klee の絵画 "Twittering Machine" から取られている。収録されているのはノルウェーの若い世代の現代音楽家がこのデュオのために書き下ろした曲ばかり。一応現代音楽に分類されるようなのだけれど、そのスリリングな演奏は、譜面に書かれているという事実のほうに逆に驚かされるような伸びやかな躍動感を持つ。鋭角的なヴァイオリンと少し丸みを帯びたギターの音がとても美しい。2人とも現代音楽と共に即興演奏もこなすプレイヤーで、SOFA レーベルのオーナーでもあるギタリスト Ivar Grydeland とは時折トリオで演奏している。レーベル Fabura / Afontibus の活動も注目したい。 (2005/06/12)
● Alf Prøysen 記念館のサイト(ノルウェー語) >> www.proysenhuset.no
Prøysen / HERO (2004/2005; JazzAvdelingen; JACD103)
Helge Lien (p), Rolf-Erik Nystrøm (sax)
ノルウェーでは非常に著名な作家でありシンガーでもあり、さらには画家でもある Alf Prøysen (1914-1970) に関する、ノルウェーの国営放送 NRK が製作したドキュメンタリー/テレビシリーズのための音楽。厳密にはそのサウンドトラックを基にしたノルウェー・ハーマルの美術館での演奏で、即興演奏の要素もかなり含まれる。共に 1975年4月23日生まれというこのデュオは1999年から断続的に活動しており、これが初めてのレコーディング。Helge Lien が澄んだ音でピアノを鳴らし、Rolf-Erik Nystrømがそっとメロディーを添えるその音楽はジャズでも現代音楽でもない。58分で20曲、大半は数分までの短いもので、小さなイメージをシンプルに形にしたような構成はやはりサウンドトラック、ただし非常に控えめな音楽だ。 (2005/06/11)
● 試聴 >> @ www.albedo.musiconline.no
A P)reference To Other Things / Håkon Thelin (2004; Albedo; 023)
Håkon Thelin (double-b), Ingar Zach (per on #1, 4, 5), Rolf-Erik Nystrøm (sax, on #3), Ida Kristine Hansen (vln, voice.on #1), Gunnhild Leenheer Nordahl (vla, voice, on #1), Karen Flesvig (cel, voice, on #1)
ECM New Series からソロ作をリリースする Frode Haltli (accor) の現代音楽トリオ POING のメンバーとして来日したこともあるコントラバス奏者 Håkon Thelin (b. 1976) のソロ作。冒頭の、クラシックのパロディーのような人を食った自作メヌエットで意表を突くユーモアを見せ、その後はそれぞれが強い印象を残す変化に富んだ興味深いパフォーマンスが続く。チェロからヴィオラ、ヴァイオリンまでもコントラバス1本でカバーしそうな弦楽器としての演奏に、さらにパーカッシブな音を同時に絡める、コントラバスという楽器からあらゆる音を引き出すその高度なテクニックと表現に驚かされる。POING の盟友 Rolf-Erik Nystrøm も鮮烈なトーンで空間を横切るが、Ingar Zach の「ドンガラガッシャン」という鋭い出足のパーカッションがインパクト大。共演者との共作となっているトラックでは即興演奏に接近し、一方で Bent Sørensen や Iannis Xenakis など現代音楽の作曲家の作品の解釈も面白い。 (2005/06/10)
● 試聴 >> @ www.albedo.musiconline.no
Cellotronics / Tanja Orning (2005; Albedo; 024)
Tanja Orning (cel), Christian Wallumrød (synth on #1, 3, 5, 7, 9)
Tanja Orning は元々はクラシック畑出身、最近では現代音楽寄りの活動が多く、またロックや即興演奏なども守備範囲とするチェリスト。このアルバムでは現代音楽から即興演奏、電子音楽、そして曲によっては民族音楽的エッセンスまで含めた1つの音楽観を表現している。前衛的なパフォーマンスながら決して難しくはないのは全体を通してチェロの豊かな響きそのものによるところが大きい。Christian Wallumrød が控えめなサポートをする奇数トラックは比較的即興的なミニマルな演奏、偶数トラックはそれぞれ異なる作曲家による現代音楽的な、よりはっきりした輪郭を持つ楽曲。 ギタリストでもある作曲家 Øyvind Torvund の、民族音楽的和音とエレクトロニクスによるノイズを絡めた曲などはユニークで、CDにはデジタルな感覚のビデオトラックも収録されている。 (2005/06/09)
● オフィシャルサイト >> www.dampweb.com
Hoatzin / Damp (2005; AIM; AIMCD 110)
Asbjørn Lerheim (g), Jørgen Munkeby (sax, cl, vo, handclaps), Roger Arntzen (b), Torstein Lofthus (ds, handclaps)
"Mostly Harmless (Songs)" (2003) に続くセカンドアルバム。Paul Motian の "Mumbo Jumbo" を演っている他は前作同様全てギタリスト Asbjørn Lerheim のオリジナルで、基本的にはギタリストらしい発想のオーソドックスなアコースティックジャズ。ライブもしくはジャムセッションのようなややラフな感じを残した録音のため前作よりアグレッシブな側面も見られる。曲そのものも前作より様々な方向を向いていて、いくつかの曲のアイディアはなかなか面白い。ギターとベースが比較的控えめな演奏に終始する一方、やたらにドラマーが叩きまくっており、ライブ映像(本作はエンハンスト仕様になっている)でもドラムが多く捉えれられているが、長髪・革ジャンというパンクみたいないでたちで余裕を持って滑らかに吹きまわす Jørgen Munkeby のほうが印象に残る。 (2005/06/05)
● 元/現/新 Jaga Jazzist のメンバー3人を含む注目の顔ぶれによる非常に興味深い作品。
Q. S. / Jan Martin Smørdal Acoustic Accident (2004; AIM; AIMCD 109)
Ketil Vestrum Einarsen (fl), Klaus Ellerhusen Holm (as), Morten Barrikmo Engebretsen (cl), Gjertrud Pedersen (cl), Anders Lønne Grønseth (ts, bcl), Christian Magnusson (ts, cl), Erik Johannessen (tb), Eivind Nordset Lønning (tp), Martin Taxt (tu), Yngvild Furnes Bjellaanes (cel), Inga Grytås Byrkjeland (cel), Jan Martin Smørdal (g), Morten Qvenild (p), Aslak Hartberg (b), Pål Hausken (ds)
アルバムタイトルは "quantum satis" の略、ラテン語で「十分な量」。15人の若いミュージシャンによる即興演奏だが、ある程度書かれている部分もあるようで、きちんと進行するフリーな演奏だ。ミステリアスなメロディーを持つ音楽はゆったりと進み、その響きは静かなインプロというよりむしろ現代音楽に近い。演奏は不思議なほどリラックスしており、楽器同士のやりとりも緩めで、普通この手の音楽を支配するピリピリした緊張感が感じられないのがかえって面白い。今後注目されるであろうミュージシャンをずらり揃えた顔ぶれで、それぞれの演奏を聴くのもよい。ノルウェー・ハルデンにあるスタジオ Athletic Sound (インプロ系では Supersilent や Scorch Trio のレコーディング等で知られる)でのアナログレコーディング、マスタリングに Helge Sten を起用と、音そのものへのこだわりも伺える。 (2005/06/04)
● オフィシャルサイト >> www.jupitertrio.net
Ignition / Jupiter (2004; AIM; AIMCD 107)
Håvard Stubø (g), Steinar Nickelsen (org), Magnus Forsberg (ds)
1970年代半ば生まればかりのメンバーは皆トロンハイム音楽院出身で、ドラマーの Magnus Forsberg のみスウェーデン人、他の2人はノルウェー人。全8曲は全てオリジナル、ギタリストの Håvard Stubø が6曲、残り2曲をオルガニスト Steinar Nickelsen が手がけている。ごくオーソドックスなタイプのオルガントリオだが、演奏がとてもシャープでキレがよい。この編成に似合ったファンキーな曲もあるが、それよりも少々風変わりなコード進行の曲のほうが個性を感じる。このグループ、恐らくライブではアルバムよりもっとインパクトがある演奏をするのではないだろうか。「キーボード奏者」ではなく「オルガニスト」として多くのグループに参加する Steinar Nickelsen には今後注目。 (2005/06/03)
● オフィシャルサイト >> www.subtonic.org
In This House / Subtonic (2004; AIM; AIMCD 106)
Julie Dahle Aagård (vo), Asbjørn Lerheim (g), Ole Jørn Myklebust (tp), Roger Arntzen (double-b), David Trübenbach (ds)
オスロ音大の学生仲間により結成された若いグループでこれがデビューアルバムだが、活動は既にかなり長い。ただしこのデビュー作録音前にオリジナルメンバーの Hilde Marie Kjersem (vo) が脱退したという経緯がある。前任のシンガーが低くパンチのある声なのに対し、新任のシンガー(舞台などで活動している人だそうだ)は対照的で、この声をキュート/コケティッシュとするか、または甘ったるすぎるとするかで好き嫌いが分かれそうだ。演奏はアコースティック・ジャズで、全体の仕上がりはポップス。楽曲はすべてシンガー以外のメンバーのオリジナルで、前任のシンガーのために書かれた曲の中にはちょっと無理があるものもあるのは致し方ないか。女性シンガーを擁するアコースティックグループは多いが、和声楽器にピアノではなくギターを配したその編成による柔らかな音は好感触。 (2005/06/01)