lives 2002
2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000
Nils Petter Molvær
Nils Petter Molvær (tp)
Eivind Aarset (g)
Audun Erlien (b)
Rune Arnesen (ds)
Raymond C. Pellicer (prog, samp)
Pål "Strangefruit" Nyhus (turntable, vinyl)
set list:
1. Marrow [NP3]
2. Frozen [NP3]
3. Kakonita [Solid Ether]
4. Simply So [NP3]
5. Tløn [Khmer]※参考 set list on 2002-08-25 at Tokyo Jazz 2002:
1. Song Of Sand [Khmer]
2. Frozen [NP3]
3. Kakonita [Solid Ether]
4. Simply So [NP3]
5. Nebulizer [NP3]
FUTURISM とタイトルされた8月27日・28日の2日間の大阪での公演は、前の週末8月24日・25日に東京・調布で行われた東京JAZZのダイジェスト版みたいなイベントだ。27日は
"acoustic" として Herbie Hancock
& Wayne Shorter のデュオ、この日は "electic"
で Nils Petter Molvær のグループと
Herbie Hancock Future 2 Future の2つのコンサートが組まれていた。
開演予定の7時を大分まわってから照明が落ち、ステージ上にするっと
Raymond C. Pellicer が現れてサウンドスケープを作り始める。そこへ他のメンバーが登場し、1曲目の
"Marrow" が始まる。照明は落ちたままで、ステージ後ろの大きなスクリーンには次々に変化する、ちょっと万華鏡を思わせるような映像が映し出される。ステージの一番左にはギターの
Eivind Aarset 、エフェクター等(多分)の機材を載せた小さな台前に、高めの椅子に座って演奏。その右斜め後方がドラムの
Rune Arnesen。右手のすぐ右、顔くらいの高さにシンバルがぶらんと下がっている。ドラムの右、少し前にエレクトリックベースの
Audun Erlien。台の上にセットされたエフェクターなども結構使っている。右端に2人、パワーブックとつまみ類をいじる
Raymond C. Pellicer と、レコードとターンテーブルと、それにヘッドホンの片耳だけを使いにくそうに使う
DJ Strangefruit。ステージの一番前にはマイクが3本(そのうち1本は少し離れたところにある)、Nils
Petter Molvær には最初に手に持って出てきたオープンのトランペットが1本だけ。
ミディアムテンポの "Marrow" はアルバム通り途中からベースが入るのだけれど、その音が入ってメンバー全員の音が出揃ったところでこの日の音のセッティングがあまりに完璧で驚いた。会場はまだ出来て1年も経たない新しいところだから音はよさそうだとは思っていたけれど、体の底まで響くビートは危ないくらい心地よい。ステージの照明は相変わらず落ちたままでほとんど真っ暗、ときおりライトが当たるトランペットはともかく、ギターなんてあんなに手暗がりで大丈夫かと思うくらいだ。後ろの映像にシルエットのように浮かび上がるメンバーはあちこち向いていて、それぞれにリズムを取りながらも、かなり長い間ライブを重ねていたバンドらしいまとまりでさすがの演奏を聴かせる。照明とサウンドの担当のメンバーも連れてきていて、その曲に会わせたライティングと後ろの映像のアレンジの仕方は見事なものだ。
2曲目はややアップテンポでグルーヴ感のある
"Frozen" 。この曲、それに他の曲でも、曲が展開するところでドラムがダイナミックに切りこむ部分が幾つかあり、その時の
Rune Arnesen のドラムの音が凄い。エフェクターがかかっているのはもちろんだけれど、その観客の肺に響くような音は間違いなくこのバンドのライブでの評価の高さの要因になっていると思う。この曲の中ほどで、能のサンプルが使われ、「よおおぉぉ〜っ、ぽん!」というあの音が登場。すぐ後にも最後の「ぽん」の後にエフェクターをかけたものが飛び出した。この手の「日本バージョン」はちょっとでもハズすと日本人には失笑物だったりするけれど、今回のこれはあまりにも上手くハマってしまって笑うどころではなかった。
この日は1曲目から最後まで Nils Petter Molvær
の演奏が気合が入っていて、音数が多くなったり派手になったりはしないものの、なんとも言えずテンションが高い。3本のマイクのうち、2本の全く違うエフェクターをかけたマイクの間を、そして演奏していない場合は他のメンバーの方を向いて、音同様気の赴くまま漂うようなイメージ。3曲目に
ほとんどトランペットとギターのデュオのような
"Kakonita" を挟む。Eivind Aarset
の流線型のギターの音は、アルバムのバージョンよりやや温かみを感じる。丁寧に演奏された静かなこの曲の後はミディアムテンポの
"Simply So"。全体的にこのペースの速くも遅くもない、静かなグルーブ感のある曲が、アルバムで聴くと(特に音量が小さい条件では)大人しめに聞こえてしまうけれど、ライブでは体の底まで響くヘビーなビートとともに体がぐらぐら揺れる。これはスタンディングの会場で聴く種類の音楽なのだと思う。
その "Simply So" が終わってからぱっとステージ前方が明るくなり、Nils
Petter Molvær がマイクに向かって話し出す。メモを見ながら「ありがとう…こんばんは」と言った後、日本語は美しいけど難しいね、と笑顔を見せた。最後の曲の前にメンバーを紹介、とステージ左から順番に紹介していったのだけれど、ちょっとした異変があったのがベースの
Audun Erlien まで回った時。拍手が止むのを待ち、すうっと一呼吸置いてから、「今日がこのバンドでの最後のステージになる
Audun Erlien …」と予想もしなかったコメントを付けた。続けて「彼は子供と一緒にいたいって言うんだ。…よくわかるよ」。そう紹介されてちょっと照れたような笑顔をみせた
Audun Erlien に比べて、Nils Petter Molvær
の表情がずっと真面目なままだったのがとても気になった。今の
Nils Petter Molvær のサウンドを支える滑らかでグルーヴ感のあるベースを弾く彼が去るというのはこのバンドにとって大きな事件だ。けれど、後に続けたコメントのほうがとても重要な意味を持つことのように私には思えた。
最後の曲は "Tløn" 。1997年の
Nils Petter Molvær の初リーダー作に収録されたこの曲は、この5年での彼の変化を象徴するかのようなバージョン。メインのパートが始まる前の
DJ Strangefruit の音の遊び具合というかキレ方がかなりのもので、これには驚かされた。ここまでの4曲で多少押さえていた何かをぶつけるようなダイナミックで早く、しかも重いビート、アルバム同様トーク・ボックスを使う
Eivind Aarset、激しく展開する曲に合わせてライティングもめまぐるしく変わる。長いアレンジはスリリングで、一体この曲はどこへ行ってしまうかと思うほど。東京での40分の短い、しかも昼間のサッカースタジアムでの公演、その日の夜の少なくともこの6人にとっては完璧ではなかったはずのオールスターセッションを経て、この日本公演の最後を圧倒的なパフォーマンスで締めくくる、そんな1曲になった。
(2002/09/01)
2002-06-01 神戸 BIG APPLE
2002-06-03 磔磔 (京都)
Theo Bleckmann (voice) & Ben Monder (g)
私が前回このデュオのライブを見たのが2001年2月だから、1年4ヶ月ぶりになる。来日公演の間隔としてははやいくらいだ。その前回は4曲のみでもっと聴きたいと思ったのだけれど、今回の神戸公演は単独公演とのことで休憩を挟んでたっぷり2人の音楽を楽しむことができた。
2人の連名によるアルバム "No Boat"
(1997; Songlines) の冒頭に収録されている
Ben Monder による曲 "Late Green"
で始まる。最初のギターの音、アルバムとほぼ同じはずなのに、ライブで聴くその音はケタ違いの迫力で体の底まで響いてきた。アルバムや、前回の来日の時も最初の1曲として聴いたこの曲、ギターは強く、鋭く、ボーカルはより多彩になっていた。
今回のライブでは Theo Bleckmann が随分いろんな小道具を持ってきていた。プラスチックの小さなおもちゃメガホン、小さな手回しオルゴール、テープレコーダー、カリカリという音が鳴る名前のわからない楽器、ゴム製のろうとみたいな物体(もっとわかりやすく言えばトイレ掃除の吸引器の先みたいな物、穴はあいていない)、風鈴…。ありとあらゆる声を駆使する
Theo Bleckmann 、声が主なのはもちろんだけれど、これらの小道具を効果的に挟んでますます多彩。不規則に反射する謎の万華鏡のようだ。一方の
Ben Monder、持ってきたのはたった1本のギター、エフェクターこそ足元に並んでいたけれど、他は彼にとって必需品の足を載せる台とボリュームをコントロールするフットペダル。
MC は全部 Theo Bleckmann が取っていて、時折日本語も交えつつ曲の紹介をしている。ギターを調節しながらそのMCに横からぼそぼそと突っ込みを入れる
Ben Monder 、2人のコンビネーションは抜群。繊細さと大胆さを持ち合わせている、という点では共通している2人だけれど、全体的な印象は対照的だ。
曲は2人が共演している何枚かのアルバムで耳になじんでいる曲、それに新曲もあった。アルバムで聴いている曲の中では、Theo
Bleckmann のリーダー作 "Origami"
(2001; Songlines) に収録されている "I
Remember You" がライブで聴けたことが個人的には嬉しかった。アメリカでこれを演奏したときの様子をちょっと小耳に挟んでいたので、一体どんな風にこれをやるのだろう、と興味シンシンだった。この曲はスローなスタンダードなのだけれど、途中で意表を突かれる「レコードが針飛びをおこしたような」音があちこちで挟まれる。仕組みとしてはこの針飛び音が入るところは決まっていて、ギターはエフェクターで、ボーカルは自前で針飛びを起こす。Theo
Bleckmann が手で合図を送った瞬間何事もなかったかのように曲はまた先へ進む。
新曲も印象的な曲でなかなか気に入ったのだけれど、この日最後の曲での2人のパフォーマンスは圧巻だった。小道具の中に入っていたろうとのような物で口を塞いでしまって声というのかなんというのかわからない音を発する
Theo Bleckmann には驚いた。
全部の曲が終わってしまっても、それからずっと時間が経っても一番耳に残っているのは、やっぱり冒頭のギターの音だ。
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京都公演は京都名物(?)「ふちがみとふなと」との対バン。ボーカルの渕上純子とは前回も対バンを組んで西日本ツアーを回っている。
最初に出てきたのは Theo Bleckmann & Ben
Monder 。やっぱり "Late Green"
を1曲目に持ってきて全部で5曲。1時間弱の持ち時間、1曲ずつはややコンパクトにおさめた、といった印象だ。それにしても2日前も聴いたはずの
"Ellenvillle" (Ben Monder の曲で、彼のアルバム
"Excavation" [2000; Alabesque]
に収録されている)、私の大好きなこの曲がこの日に限ってとても違う風に聞えたのはなぜだろう。Ben
Monder のギターの少しねじれたような音使いの速いアルペジオがとても美しい曲、なぜかこの日は、特に
Theo Bleckmann のボーカルが少し悲しげに響いたような気がしてならない。この日の5曲で印象に残ったのがもう1曲、最後に演奏された曲。2日前の神戸での最後の曲と同じように
Theo Bleckmann のパフォーマンスが会場全ての人の視線を集めたが、その後の展開が違った。Theo
Bleckmann が普通に歌詞歌うこの後半(この曲はどこかに収録されていたように記憶しているのだけれど…)、Ben
Monder のギターも Theo Bleckmann の歌も一緒にピタリとテンションが上がり、私が「!」、と思った瞬間、いつも表情も変えずにうつむき加減でギターを「黙」として弾いている
Ben Monder が顔を上げて Theo Bleckmann と目を合わせて笑顔を見せた。
続いて「ふちがみとふなと」が登場。私は京都に住んでいるのにこのデュオを聴くのは初めてだ。ダブルベースと歌のデュオ。演奏される曲、歌詞、それから渕上純子による関西的な(だけれど大阪的じゃない)MCがユニークで楽しめる。
ふちがみとふなとのライブの最後には Theo Bleckmann
&Ben Monder のデュオとの共演という凄いオマケがついてきた。楽器を弾く2人は慎重にチューニングを合わせているが、それにしても渕上純子と
Theo Bleckmann が並んで一緒に歌うとはなんというものを見てしまったのだろう!2曲演奏する予定の曲のうち最初の曲は前回の来日で共演した際、
Theo Bleckmann が気に入って譜面を持って帰ったという渕上純子のレパートリーだ。楽器の2人はやや控えめだけれど、本当に面白い顔合わせだ。その後アンコールによって戻ってきた4人は、全く予定していなかったというふちがみとふなとのレパートリーを一緒にやった。コードは
C 、とそれだけの指示でどうなるのかと思ったけれど、このアフリカンテイストの曲(確かタイトルもそういうタイトルだった)、あまりに見事で本当に驚かされ、音楽、特にライブでの演奏や、またそれを聴く楽しさを見せてくれた。
(2002/06/09)
Meeting at OFF SITE 番外編
中村としまる (no-imput mixing board)
秋山徹次 (amplified acoustic guitar)
with:
Håkon Kornstad (saxophone, flute)
"Improvised Music from Japan" とタイトルしたタイトルどおりの内容の
10 枚組ボックスセットが出ていて、その中の一枚に中村としまるが
2001年5月、オスロの国立アカデミーで録音した
"oosslloo" (!) というトラックがある。これに
Håkon Kornstad (sax) と No Spaghetti
Edition の首謀者 Tony Kluften (b) が参加している。多分そんな関係で今回のこのライブとなったのだと思う。
場所は代々木の普通の民家が立ち並ぶ一角で、夜間にサックスを吹けるところだとは思えない。中へ入るとシンプルな真っ白な壁の小さな空間。そこへ
Wibutee の Per Zanussi や Rune Brøndbo
といった大柄な人達も含めて20人くらい(ちょうど適度にいっぱいだった)のリスナー。ステージのほうは左に中村としまる、右に秋山徹次、真中に「ゲスト」の
Håkon Kornstad 。
演奏は2部構成、つまり長い演奏が2曲で、恐らく完全即興。ただ、「静かに演奏する」ことだけはさすがにお約束だったようだ(リハーサルの時に
Håkon Kornstad は思いっきりいつものように吹いてしまい、あわてて止められたらしい)。no-imput
mixing board から出る聴き取れるか聴き取れないかの音からセッションは静かに始まる。ずらりと並べられた小物類を使って演奏されるアコースティックギターは、ギターの中から音を引き出すようで、後半のスライドギターのような音はそれまでの断続的な音と対照的。Håkon
Kornstad は、座っていつものようにうつむき加減でほとんど目を伏せたまま、慎重に楽器と音を選んでいく。3人による音は連続性がなく、繰り返しもない一瞬の音の重なりなのだけれど、どこかに見えない一本の筋が通っているかのように、緊張感のある流れが続く。その前衛的なのに不思議なくらい心地よく響く音に、一体演奏がどれくらいの長さのものだったのかさえ思い出せない(チェックするのをすっかり忘れていた)。見えない糸を伝うように静かに静かに進むインプロヴィゼーションは、あるべきところで終わる。少しの空白の時間を挟んで、ふっとここちよく緩んだ空気の中、Håkon
Kornstad が演奏していたときとは全く違う25歳の表情を見せたのがとても印象に残った。
(2002/05/19)
2002-05-10 Motion Blue Yokohama
JAZZLAND NIGHTS
Wibutee:
Håkon Kornstad (ts, ss, fl)
Per Zanussi (el-b, ac-b)
Wetle Holte (ds, electronics)
Rune Brøndbo (electronics)
Bugge Wesseltoft (key, p, voice) with:
Ingebrigt Flaten (ac-b, el-b)
Anders Engen (ds)
Rikard Gensollen (per)
Jonas Lønna (electronics)
横浜のみなとみらい21の先っぽの赤レンガ倉庫2号館の中に4月にできたばかりの
Motion Blue Yokohama には、もちろん初めて行った。東京ブルーノートがプロデュースするというここはなかなかいい空間。ステージから客席、バーカウンターまで一続きになっていて、ステージと客席がとても近いし、後でよくわかったけれど、ミュージシャンとお客さんの距離が、まるで外国のクラブのように近く感じられた。それになんと言ってもチケットが
3,500 円!
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[1-1] 今回の "Jazzland Nights"
の4日連続の公演の最終日。ファーストステージ前の客席は意外なほど空いている。ファーストステージのファーストセットの
Wibutee 、時間ぴったりに始まった。Håkon
Kornstad は(去年見たときもそうだったのだけれど)テナーをソフトケースから覗かせて、ソプラノとフルートを抱えて登場。その
Håkon Kornstad がメンバーを紹介して、1曲目が始まる。Rune
Brøndbo と Wetle Holte のエレクトロニクスによる音が流れ、エレクトリックベースが入り、テナーサックスが入る。アルバムの曲だったかどうか、と訊かれれば、アルバムの曲ではなかった、ということになるのだけれど、そもそも曲が事前にどのくらい形づくられているのかとても興味深い。つまりエレクトロニクスのパートでどのネタを使うか、どのビートなのかというのはあらかじめ決まっているだろうけれど、それ以上の部分は即興演奏で構成されている。しかもジャズ的なアプローチとは異なり、誰かがソロを取ったりすることもなく、それぞれの演奏に途中で拍手をする場面もタイミングもほとんどない。
ドラムセットはスネア、ハイハット、バスドラにシンバルを2枚くらいぶら下げた(フロアタムはなかったような気がするのだけれど・・・)ものすごくシンプルなセット。エレクトロニクスと絡めて叩く
Wetle Holte 、Wibutee のあのビート感は案外アナログな彼のビートによるものだ。ジャズ的でもロック的でもなく、実際見てみると結構忙しい動きだ。その彼は右側からバンド全体をよく把握していて、特にステージ前方の
Håkon Kornstad の動きをよく見ていて、絶妙のタイミングでアクセントを入れてくる。ベースの
Per Zanussi は、基本的にはアコースティックベースを弾く人、という印象だけれどこのセットでは1曲だけアコースティックベースを弾いたほかはずっとフェンダーの5弦を弾いていた。どちらかというと後ろのほうで黙々と弾いていた。左手、2セット組まれたエレクトロニクスの機材一式の奥のセットを使っていた
Sternklang こと Rune Brøndbo は、あれやこれやとそれはもう忙しそうだ。そしてステージ中央の
Håkon Kornstad はうつむき加減で、曲の動きによって楽器を持ち替えながら自由に吹いている。どこでどの楽器を使ってどんな音で何をやっても自由な音楽で、その曲を慎重に捕らえている。その
Håkon Kornstad も横にサンプラーをセットしていて、自分の吹いたフレーズを重ねてみたりする。彼のテナーが素晴らしいのはもう今さらという感じで、個人的にはフルートもなかなかよかったと思う。Wibutee
の音響系の音使いにはとてもよく似合う。
全部で3曲か4曲やって30分、アルバムとはまた違う印象のステージはあっという間に終わってしまった。
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[1-2] Wibutee が終わってステージ上はメンバーが入れ替わるけれど、シンバルを取り替えてスネアのチューニングを変えるのと、ベーシスト2人がそれぞれ自分のエレクトリックベースを持っていったり持って来たりするくらいで、他はすべてあらかじめステージ上にある。グランドピアノにキーボード、エレクトロニクスを2セットでステージはいっぱいだ。
何はともあれメインの Bugge Wesseltoft 、セット替えからそのままステージが始まり、まずはメンバーを紹介、ステージ上にいるミュージシャンだけでなく、サウンド担当とビデオ担当の人も紹介される。1曲目は
"Change"。 Bugge Wesseltoft はキーボードを立って弾きながらマイクに向かって歌う(あれを歌、というなら)。サウンド的にはこの曲が入っている3作目
"Moving" の音の延長上にある。延長上、というのは、事前には予想もしなかったことだけれど、ライブで聴くほうがはるかによかったので。2曲目
は "Sharing" で、 "Once upon
a time..." というあのお経のような文句も入る。
ドラムの Anders Engen はセット替えの時にスネアをぎゅうぎゅう締めていたけれど、確かに
Wibutee より乾いた音を出していた。リムショット(というのだろうか、何しろドラムはぜんぜんわからないので・・・)のカカカーンという高い音、前から聞こえる生の音と左右のスピーカーの音とずらしてあったみたいで、なかなか面白い響きだった。パーカッションの
Rikard Gensollen はステージ左前にいて、ごくごくシンプルな打楽器(楽器の名前がわからない)を叩いていて、ときおりドラムパッドみたいなエレクトリックパーカッションも使っている。ステージ左側の
Jonas Lønna は、前のステージの Rune
Brøndbo と比べるとずっと動きは少ない。ステージ反対側の
Bugge Wesseltoft と向かい合う形になっていて、この2人で曲の流れが決まる。ステージ左奥にはベースの
Ingebrigt Flaten。大のお気に入りのベーシストの1人で、私はどう考えてもファーストステージもセカンドステージも彼しか見ていない。Bugge
Wesseltoft がバンドを連れてくるとはなぜか予想もしなかったので、彼がそこにいるというのがずっと信じられない思いがした。楽器はアコースティックベースをメインに、1曲だけフェンダー、彼は普通の4弦を使っていた。右端の
Bugge Wesseltoft はそういうわけで実際全然見ていなかったりする(ごめんなさい)のだけれど、ちょっと面白い芸風とでもいうのか、個性的な感じのする人だった。
最後のトラックは Bugge Wesseltoft が Ingebrigt
のベースから、と紹介してベースソロから始まる。いきなり弓の柄の部分でバキバキはじきだしたので本当に驚いた。その後も弦を左手で引っ張りながら弓で弾くなどなど相当な前衛パフォーマンスで、途中弓をアンプの上に戻してからはピッチカートで続ける。結構長めにとられたこの驚くようなソロのあとに続いてアップテンポな曲。この曲はその
Ingebrigt Flaten のベースが腹の底に響くような低音で効いている。ふと気がつくとさっきからいろいろな映像が映し出されていたステージ後ろのスクリーンにメンバーが映っている。ビデオカメラを持っているのは
Bugge Wesseltoft 。手馴れた感じで、メンバーの演奏している表情や、手元を次々に映し出し、最後にキーボードを捉えた、と思ったら片手で弾きだした。後は映像は切り替わったが、なかなか面白い演出。
どの曲もかなり長めで、ある意味 Wibutee 同様曲が流れていくところへ色をつけていくといった感じの演奏。1時間強程のステージだっただろうか、終わって、来年のリリースが予定されているライブアルバムが楽しみになってきた、と思った。
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[2-1] お客さんも少なめであまり盛り上がらずアンコールもなしに終わってしまったファーストステージ、時間だけはちょっと押している。セカンドステージは、開場を待っていたお客さんがどっと入ってきてあっという間にいっぱいになった。なにやら始まる前からさっきのステージとは大分様子が違う。
さて Wibutee が再び登場。 最初に Håkon
Kornstad がメンバー紹介(ファーストステージと順番が違った)、Per
Zanussi がアコースティックベースを持ち上げ、Håkon
Kornstad がさっさとテナーを構えてその2人で演奏を始める。ごく軽く合わせたといった感じだったのだけれど、さすがにシャープで鮮やかなオープニングになった。4日間、ずっとファーストセットとセカンドセットをこの日のように構成してきたのか、事前にぽっと打ち合わせをしたのかはわからない。ファーストセットは音響系の音使いが目立ったけれど、セカンドセットはそのオープニングから続くようにややアコースティックな色合いが強めに出ていた。個人的にはファーストセットよりも良かったのだけれど、いかんせん30分は短い。でも聴いている間はそんなことを忘れてしまっていた。ところでライブで改めて思ったのは、Wibutee
というユニットを呼吸させているのは Håkon
Kornstad なのだということ。アルバムでは Per
Zanussi が動かしているようにも聞こえるのだけれど、ライブでの
Håkon Kornstad の瞬間的な反応は素晴らしい。
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[2-2] ぎっしり満員に入ったお客さんは Wibutee
の時も反応が良かったけれど、今回の来日公演の最終ステージとなった
Bugge Wesseltoft のセカンドステージでは凄い盛り上がりを見せた。Bugge
Wesseltoft のステージのほうはファーストセットと全く同じ構成。けれどお客さんの熱気が後押しするかのように、少しずつさっきよりテンションが高いように感じられる。その熱気を見事に演奏に引き込んでしまったのが
Ingebrigt Flaten のベースソロだった。ファーストセットと同じように弓の柄でバキバキ弾いて始まった後、どんどんテンションが上がり、アルコ弾きのままでエネルギッシュに弾きまくる。パワフルでフリーに弾いているのに乱れない驚嘆のパフォーマンス。で、その演奏がピークに来た瞬間、会場がどっと沸き、歓声が沸き起こった・・・ベースソロ、大抵終わったときに半ば義理っぽく拍手が送られたりすることが多いのだけれど、この日のは演奏も観客の反応も凄いものだった。やがて他の楽器が入り、Ingebrigt
Flaten も持っていた弓を床に落として最終曲に入っていった。ファーストステージと同じようにビデオが流れ、大きな歓声に応えるようにアンコールの演奏があり、そこで
Bugge Wesseltoft があのソロアルバムで見せたような静かなピアノソロを弾いたような記憶はあるのだけれど、間違いなくこの日のハイライトはベースソロだったと思う。(まあ、最初からベースばかり見ている私ではあるのだけれど。)
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[あれこれ]
■ Wibutte のファーストステージ、音が鳴り始めているのに、Håkon
Kornstad はしゃがんでカバンをごそごそしている。と突然立ちあがって楽屋に戻ってしまった。ステージに帰ってきた時に手にしていたのはテナーを引っ掛けるストラップ。しかし平然と演奏を続ける他のメンバーと焦る風もなくステージから消える
Håkon Kornstad だった。 ■ その Håkon
Kornstad 、セカンドステージでは開口一番 "Good
Night" とやってしまい、すぐに "...
Good Evening" と言い直した。妙に会場が和んでしまった。
■ 今回 Wibutee の Per Zanussi は自分のアコースティックベースを持ってきていなかった。で、
Ingebrigt Flaten のベースを借りていたのだけれど、2人はかなりの身長差がある。Per
Zanussi がそのベースを弾くときは、床に小さいトランクを置いて、その上に滑らないようにクッションを置いて、その上にベースを立てていた。■
その2人のベーシストは公演が全て終わった後、仲良く一緒に弦を張り替えていた(そりゃ、あんなソロを弾いたら…)。
■ Wibutee の Rune Brøndbo はずっと
LOMO (ロシア製カメラ)を持ち歩いていた。エレクトロニクス担当の彼が、デジカメではなく
LOMO を持って歩いている、その取り合わせがちょっと気になった。「東京で写真をとりまくる!」とのこと。
■ Bugge Wesseltoft のセカンドステージ、始めの
MC をしている間にステージ後ろのスクリーンには「袈裟を着て数珠をかけて手を合わせる後光のさす
Bugge Wesseltoft」のイラストが映し出され、ちょっとウケていた。この絵は
Music Magazine 誌 5月号の P. 200 にあるもの。
■ その Bugge Wesseltoft のビデオ担当の人、公演終了後、消火栓(壁に埋め込んである大きな物)をなめまわすようにデジタルビデオカメラに収めていた。ヨーロッパツアーではあの曲に乗せて日本の消火栓が映し出されるのだろうか。
(2002/05/17; 2002/05/18)
2002-04-27 心斎橋CLUB QUATTRO
Holger Czukay
チケットに6時開場6時開演とあって、さらにゲストがぞろぞろ書いてあったのでそんな予感はしたけれど、やっぱり6時からまずDJ(日本人)、バンド(日本人)、DJ(ドイツ人)と続き、肝心のものが始まる前に結構疲れ果て、2人目のDJがまわしている間みんな床にへたりこむという事態。
結局開場から2時間半たってから、突然 Holger
Czukay が現れた。白いベースボールキャップ(みたいな帽子)を被り、歓声に手を挙げて応えながら登場。意外なくらい気さくな雰囲気。すっかり白髪になり、あのトレードマークの髭も白い。風貌の怪しさはちょっと薄れた感じだ。ステージにセットされているのは何やら機材が結構たくさん。しかし
Holger Czukay はまずいきなりフレンチホルンを取ってファンファーレ代わりに一吹きしてスタート。
最近彼がどんなことをやっているのか、どんなメンバーと来るのか、何をやるのか全く考えないでここまで来てしまったのだけれど、とりあえず出てきた音はあまりにも彼らしい音だった。録音されたサンプリングマシーン(というのだろうか)の音源を元にそれを変化させながら、ギターを爪弾いて重ねる、というのが今回の基本的なスタイル。(事後にチェックした)彼のホームページ
http://www.czukay.de/ によると、この音源の準備に今年の3月まるまる費やしたそうだ。アンビエントで、けれど繰り返されるビートが結構ここちよい。でもよく聴いたらそのビートが
7 拍子だったりするのがいかにもらしい。強力だったのが彼の声。ボーカルとは言わない。客席を見据えてマイクの前で怪しさ万点のしゃがれ気味の声で、しかもドイツ語でナレーションを入れる、それがもう最高にはまっている。(但しベースボールキャップをかぶってたりするので怖くはない。)
ところでソロパフォーマンスかと思いきや、途中でゲストが現れる。ここしばらくいろいろな活動を共にしている
U-She という女性アーティスト。シンガーであり、確か絵も描く人だったように記憶している。細身でブロンド、結構美人で
Holger Czukay よりはずっと若い。その彼女がウエディングドレスかというような真っ白なひらひらのドレスで登場。一瞬何のパフォーマンスが始まるのかと思ったほどだ。彼女が最初に歌ったのはフランス語の歌。そのパートが終わったらさっさと引っ込み、また出番がくれば出てくる、の繰り返し。その後は英語の歌が数回あって、最後は日本語(!)の歌。「にちようびのあさ〜ゆうやけ〜あさやけ〜」というこの曲、何かに収録されていたと思うのだけれど思い出せない。ちなみにこの曲はとてもウケた。上手いというより個性が強いタイプの歌。ボーカルも横からサンプリングして、重ねていく場面もあり、なかなか面白い。彼女が歌っているのを見守る(それまで勝手に機械をいじっていたのが、歌が入ると明らかに雰囲気が変わる
Holger Czukay・・・)、その様はまるで保護者のようでもあった。
ふと気が付くと、音は一度しか途切れていなくて、つまり拍手もそのとき1回していない。1時間半ほどほとんどノンストップで手を換え品を換え、その奇妙な音世界を堪能させてくれた。その後なんと合計3回もアンコールに応えてくれたその短い3曲は、まるで彼の最新の音のアイディアをこっそり見せてもらったみたいな、3曲とも全然タイプの違う興味深い音だった。
時代が誰それに追いつく、という表現がふと頭をよぎった。Holger
Czukay にとって、このエレクトロニカの時代がやってきた、というのはまさしく時代が追いついた、のかも知れない。けれど本当に追いついたのだろうか?この白髪のドイツ人はまだまだはるか彼方先を行っているかもしれない。
(2002/04/29)
2002-04-25 大阪ブルーノート
Bill Bruford's Earthworks
Bill Bruford (ds)
Steve Hamilton (p)
Tim Garland (ts, ss, bcl)
Mark Hodgson (ds)
会場に入って、とても気になったことが1つあった。それはステージ中央にバスクラリネットが置いてあったことだ。Bill
Bruford は別格として、Patrick Clahar のサックスをとても楽しみにしていた私は、確か彼は、少なくとも
Earthworks のアルバムではバスクラは一度も吹いていないはずなのに、これは何なのだろう、そればかり気になった。で、出てきたメンバーを見て、サックス奏者が替わったのだ、ということに初めて気づいた。それ以外のことといえば、ドラムセットはステージ向かって右側にセットされていて、まあジャズドラムにしてはフロアタムの類が異常に多く(さすがだ)、けれど彼にしてはシンプルなセットで、ほぉぉと思っていたらその右側のドラム側の席がびっしり埋まっているのだ。しかもそこ周辺だけやたらに男性率が高く、あそこの一帯はプログレファンだというのがすぐにわかるほど違った。
ピアノとサックスのデュオで始まったステージ、1曲(あるいは間なしの2曲)終わったところで
Bill Bruford はわざわざ前に出てきてご挨拶。とりあえず新しいメンバーの
Tim Garland を紹介します、ということで彼のバスクラをフューチャーした曲へ。「彼(Tim
Garland) はグループにたくさんのものをもたらしてくれた」というように、Earthworks
初のバスクラ入りの曲は、そのバスクラと透明感のある
Steve Hamilton のピアノのユニゾンが何とも言えず良い1曲だった。Tim
Garland は前任の Patrick Clahar と異なるタイプだという印象。Patrick
Clahar はソフトなブローでメロディーを見事に吹きまわす印象だった(残念ながらアルバムを聞く限り、の話)が、Tim
Garland はもう少し強めで、鋭い音の持ち主。ピアノの
Steve Hamilton はこのグループで結構大きい部分を占めているようで、なんとなく
Bill Bruford と彼がこのグループのサウンドをコントロールしている感じとさえ言える。"Triplicity"
というアルバムにも収録されていた曲ではピアノソロの間にリズムパターンが異常な回数くるくる変わるのだけれど、これがライブになると、もう調子に乗ってやってるとしか思えない程凄まじく、ただただ目を回すばかり。その
Steve Hamilton の新しい曲、と紹介された曲がなかなか
Earthworks らしくいい曲だった。この複雑なリズムパターンの曲が
Bill Bruford の作曲でないのは面白い。新曲ということで
Bill Bruford と Steve Hamilton は譜面と首っ引きで演奏していたが、他の2人は涼しい(?)顔で全く譜面なし。Bill
Bruford のあの奇奇怪怪なリズムパターン(変拍子好きのくせにリズムがどうなっているかわからない私にはこういうしかないのだ)に全く視線を合わせるでもなく、ドラムの方を向くでもなく、ちょっとうつむき加減でぶいぶいベースを弾きまくる
Mark Hodgson は、目立たないけれど実は凄いのではないだろうか。(文字通り涼しい顔で1人だけ汗一つかかない。)あの
Earhworks のグルーブ感溢れる音はドラムからのみ出ているのではないはずだ。
そして Bill Bruford。彼のドラムセット、タムが多いのはさておき、ハイハットが奇妙な位置にある。ちょうど体の真正面、しかもタム類の向こう側。動かしているのは確かに左足なのに、そのペダルと上のハイハットが全然違うところにあって、基本的にハイハットは叩かない(届かない、ともいう)。両手が例によって勝手なリズムを叩いている間、全く関係のないところでプログラムされた物か、もしくは何か生き物のようにあらぬタイミングでハイハットが単独でパシャパシャ動くのがとても気になってじっと見てしまった。
この日のセットは全部でちょうど1時間20分くらいと比較的短かったが、実によく考えられたセットだったと思う。いろいろなリズムパターンの曲を入れ、みんなが期待するドラムソロもただ多いだけでなく、他の3人にフラメンコ調の手拍子を取らせたり、ソロパートの入れ方も曲によって違ったりととても工夫されていた。マレットの先のカバーが赤くて、それを両手に持って叩くと視覚的にも目を捉えるものがあったけれど、きっとあれは偶然赤かったのではないはずだ。音楽は今までで一番ジャズな音をやっている
Bill Bruford 、でもこの考えられたステージというのはロックをやっていた彼ならでは、かもしれない。それからある程度の緊張感を漂わせながらも
Bill Bruford が楽しそうに、スローな曲をブラシで演奏しているときなどとても気持ちよさそうに演奏していたのがとても印象に残った(前回
B.L.E.U. で来た時も似た印象だったけれどその時との違いは緊張感だ。)
最後、アンコールに応えて出てきた彼らが演奏を始めるなり歓声が起こり、特にドラムの周辺あたりは大いに盛り上がっていたのだけれど、あの最後の曲は何だろう?(わからなくて悲しかった。)隣の席の人に「最後の何ですか?」と聴いても、「いや〜何でしょうね?盛り上がってましたよねぇ???」とのことで解決せず。あの右側のエリアの人に訊いたらヒンシュクをかいそうだし。Earthworks
の曲ではないし、King Crimson の曲だったら多分判るだろうし、ピアノの
Steve Hamilton だけが気の毒なほど必死で譜面を追っていたので、YES
の曲か何か(そういう曲調だった)ではないかと思うのだけれど。
(2002/04/25)
※ 追記:そのアンコール曲は Bruford の "Beelzebub" という曲だったそうだ。