lives 2003
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中之島ユーロジャズルネサンス 2003
Vladimir Shafranov Trio
Vladimir Shafranov (p)
Pekka Sarmanto (b)
Jukkis Uotila (ds)
Karin Krog / Jacob Young Duo
Karin Krog (vo)
Jacob Young (g)
w/ 日高典雄 (tp, vo)
前回の2002年度のプログラムは、大阪のレコードレーベル澤野商会のイベントといった色彩が強かったこのミニフェスティバル、今年はもう少し地元に根付いた企画になった。ノルウェー
Drøbak から毎年贈られるクリスマスツリーが立つ大阪市役所からほど近い中之島公会堂は、リニューアルされた中も外も優雅な雰囲気を漂わせるヨーロッパ風の建物だ。
「イベントノリ」といった感じの司会の後登場したのは澤野商会の顔、Vladimir
Shafranov Trio。Vladimir Shafranov は1948年ロシア・サンクトペテルスブルク(当時のレニングラード)出身のピアニスト。ちょっと余談になるけれど、1973年、25歳の時にイスラエルに移住、その後結婚によりフィンランドに移住したのが
1980年。この日のステージでも語っていたように、1983年にニューヨークに移住、現在は再びフィンランドをベースに活動しているそうだ。彼のトリオのメンバーはいずれもレギュラーメンバーで、ベースの
Pekka Sarmanto は1945年フィンランド出身、ドラマーの Jukkis Uotila は 1960
年フィンランド出身。
普段澤野商会のリリースは横目に見て素通りしているので Vladimir Shafranov の音楽を聴くのはこの日が初めて。どちらかというと叙情的なタイプのピアニストという印象だけれど、ロシア的ではなく、とてもヨーロッパ的というのがぴったりだ。ビデオクルーの1人が目障りなところをうろうろするのを終始気にかけていたけれど、それ以外はメリハリをつけたプログラムでしっかり観客をひきつけていた。ベースの Pekka Sarmanto はベテランといえばそうなのだけれど、3つしか違わない Vladmir Shafranov が年齢より若々しい感じだったのに対して、堅実というより地味で、ソロもあったのだけれど印象は薄かった。このトリオのキーはドラムの Jukkis Uotila が握っている。私のこの日前半のお目当ては彼だったのだけれど、この日はその存在感が際立っていた。ひょっとしたら叙情的なヨーロピアン・ピアノ・トリオを頭に描いている人には重過ぎるドラムかもしれない。けれど、ともすれば叙情的な方向へ流れて行きそうになる Vladimir Shafranof のピアノ、例えばこの日唯一ソロで演奏した Ennio Morricone の 「ニュー・シネマ・パラダイス」という選曲に見られるようなその方向性と微妙なバランスを取っている。終始にこやか、パワフルで、そのタメの利いたドラムは、彼が自分のユニットでもっとジャズロック寄りの音楽をやっているというのが納得できる演奏だった。
2ユニットの出演ということで比較的短く終わった演奏の後、休憩かと思いきや、先の司会の女性が登場して
Vladimir Shavranov を捕まえ、ステージ端でインタビューが始まる。その間に次のデュオの準備をしようというのだ。Vladimir
Shafranov は飄々とインタビューに答えている。その世界中を転々とする人生からだろうか、大らかでフレンドリーな人物だ。
そうこうしているうちにステージの準備が整い、Karin Krog と Jacob Young が登場する。ステージ中央左、先のトリオのセットの前にセットされた椅子に
Karin Krog が、その右に Jacob Young が…という瞬間にトラブル発生。Jacob
Young の2本のギターのうちの1本、エレクトリックギターの音がノイズが強くて使えない。Karin
Krog は焦らず慌てず「ヘ〜ルプ〜♪」とスタッフを呼び、その間に観客に向かって、暗いところでセットしたからこういうこともありますよ、と余裕の発言、さらにこの間にノルウェーのフォークソングを歌います、と、パニクる
Jacob Young とスタッフを尻目に1人静かに歌いだした。トラッドというよりとても
Karin Krog な歌唱で、でもそれもすぐに終わってしまった。ギターアンプのほうはまだ直らない。それでも悠々と前を見据えて静かに椅子に座っている
Karin Krog に司会の女性が近づき、恐らくステージ後に予定されていたと思われるインタビューが急遽始まった。しばらくしていつの間にかスタッフは引っ込み、Jacob
Young が Karin Krog に近づいて肩を叩いて調整が終わったことを告げ、ようやくステージが始まった。
最初の曲はアルバム "Where Flamingos Fly" (2002; Grappa) のタイトルトラック。1937年生まれというからただごとでなくベテランであり、彼女が積み重ねてきた年月をにじませるような貫禄のステージングだ。最近再発された昔の作品で見せていたようなアクの強さは影を潜め、普遍的なジャズボーカルを聞かせる。目に見えない何か、言葉にするのも難しい何かを歌に込められる彼女の実力が、その普通の歌を特別なものにしている。それから、一緒にこのステージを見た人が、彼女は意外とアメリカ的なジャズをやっているのでないか、とコメントした。あまり意識していなかったのではっとさせられ、確かに言えてるかもしれない、と思った。彼女自身がノルウェー人で、ノルウェーを中心に活動しているから、そのアメリカ的なところはベタにならなく、また隣にいるアメリカ人とノルウェー人のハーフのギタリストとの相性もいいのかもしれない。
そのギタリスト Jacob Young は 1970年生まれ。予想外に大柄で、隣の Karin
Krog が予想外に小柄だったこともあり余計に大柄に見える。でも彼は、終始、特に最初のほうはちょっと緊張気味に
Karin Krog のほうを一生懸命見ながら、そしてハンサムな顔をくしゃくしゃにしてギターの一音ずつに魂を込めるように丁寧に弾く彼の姿はなかなかういういしく、まっすぐ前を見据えて歌う
Karin Krog とは絶妙のコンビだ。でも彼のギターは決して「歌伴」ではなく、Karin
Krog と対等な立場にあるデュオだ。Karin Krog も、前を見据えつつもちゃんとデュオパートナーを捕らえている。
アルバムに収録されている"K.C. Blues"、"Prelude To A Kiss"
を挟み、Jacob Young がアコースティックギターに持ち替えて "Caravan"
が始まる。アルバムの中でもハイライトになっている曲だ。ヴォーカリーゼというのだろうか、昔の
Karin Krog の歌を彷彿とさせる「ヴォイス」とアコースティックギターが絡む。アルバムバージョンよりイントロがたっぷりとられたこの曲はこの日のステージでもハイライトになった。最初のトラブルからか、それとも大きなステージだからか(普通ジャズはこういう会場ではやらないので)緊張気味だった
Jacob Young も余裕が出てきている。この日の短いステージを小さな世界旅行に見立てた
Karin Krog の演出で、この曲の最後には首に巻いていた紫色のゴージャスなスカーフで顔を覆ってスカーフ越しに歌い、最後にぱっと
Jacob Young を顔を見合わせてピタリと曲が終わった。
世界旅行はブラジルへ飛び、Jobim の "Once I Loved" を挟んだあと、「日本へ飛ぶ前に」とギターソロが挟まれる。"The Promise" という曲で、彼のセカンドアルバム "Pieces Of Time" (1997; Curling Legs) に収録されていた、優しいメロディーを持つ曲だ。オリジナルではミディアムテンポでソプラノサックスがメロディーを吹いていたこの曲を、静かなバラードにして演奏した。
ピアノの椅子に腰かけて見守っていた Karin Krog に紹介されて登場したのが大阪出身のトランペッター日高典雄。29歳で、クラシックから転向、今月ファーストアルバムをリリースするそうだけれど、全く知らないミュージシャンでどんなだろうと出てきた人を見れば、どちらかというと武骨な雰囲気の人(分かり易くいうとボクシングの選手かなにかのような感じ)。登場して1曲目は
Jacob Young とのデュオで、いきなりこのゲストがこの日のステージにとても相応しいということを実感した。少しハスキーでクラシック畑出らしい正確なトーンの持ち主で、何だかノルウェーにいそうなタイプ(もっと言えば
Jacob Young が自分のユニットに入れるトランペッターとよく似たタイプ)のプレイヤーだ。立ち上がった
Jacob Young とのデュオはジャズらしいスウィンギーな雰囲気でとてもよかった。
Karin Krog が戻り、次の曲の前になにやら説得するような調子で Karin Krog
が日高典雄に一緒に歌うように言い、キーはこれでいいかと丁寧に確認する。背中を押されるように
Karin Krog と "Body & Soul" を歌いだした彼の声があまりに見かけとは違う繊細な美声で私はずっこけるほどびっくりした。それでもどうも歌うのは気が進まないのか、彼が歌う部分はあまり多くはなかった。
それから「イベント」らしくまたもや司会の女性が登場、なんと Vladimir Shafranov
Trio とのセッションを行うという。そしてクリスマスだから、ということで演奏されたのは
Mel Torme の "The Christmas Song" (Karin Krog の歌によるこの曲は
Tore Johansen "Man, Woman and Child (2000; Gemini) に収録されている)。全く楽器が重ならない6人による、まるで1つのユニットのようなフォーマットによるこの曲は、一足早いクリスマスプレゼントのようだった。Vladimir
Shafranov がリラックスした雰囲気でピアノを弾き、Jukkis Uotila がドラムを叩き、Karin
Krog が歌うクリスマスソングなんてまずここ以外ではお目にかかれないだろう。
この日の最後の曲は "On Green Dolphin Street"。アップテンポで明るく、すっかりリラックスした雰囲気の演奏の中、Karin
Krog は6人のメンバーをみんな「さん付け」で紹介している。「ペッカさ〜ん、ユッキスさ〜ん、ヤコブさ〜ん、カーリンさ〜ん」という具合。Karin
Krog の貫禄はいつの間にかチャーミングさまで加わり、ステージは楽しく終了した。とてもよい「イベント」だった、というのがこの日の一番の印象だった。来日公演のほとんどが東京中心に組まれている中、大阪のレーベルが協力し、そのレーベルの看板アーティストである
Vladimir Shafranov と、初来日も1970年の万博だったという大阪とは縁がある
Karin Krog という出演アーティスト、大阪出身でステージ上でも全く遜色なく、しかも音もぴったりなプレイヤーをゲストに迎え、大阪にある素敵な会場で(しかもこの大きな会場がちゃんと埋まっていた)開かれるこんなフェスティバルがしっかり根付くことを期待したい。
(2003/12/28)
2003-12-04 大阪府吹田市・西尾邸
FRIFOT
Lena Willemark
Per Gudmundson
Ale Möller
スウェーデントラッドのスーパーユニット(と言っていいと思う)FRIFOT (フリフート、と発音されていた)の今回の来日公演、大阪公演は半年前にソールドアウト。この日のコンサートはいわば追加公演のような形で行われたものだ。大阪府吹田市にある、文化遺産として保護・利用されている西尾邸でのコンサートは、靴を脱いで座敷に上がり、ステージには屏風が並ぶという珍しいセッティングで行われた。
機密性が非常に低く、暖房のない部屋は底冷えし、床はきしみ、演奏が始まる前に天井の電灯の紐をお客さんが引っ張って消す。隣の部屋でスタンバイしている
Lena Willemark が、さっきまで後ろにまとめていた髪をいつものように下ろすのが見え、彼らの出番が近いことを知る。お客さんは吹田市の文化事業のルートから来られたかたが多いのだろうか、言ってみればおじちゃんおばちゃんばかりでびっくり。私が着いたころには、前からびっしりいっぱいで、一番うしろに滑り込む。和室をちょうど3部屋ぶち抜いたようなその縦長のスペース、天井は日本建築にしては高いけれど、障子のあった部分の上の部分(違う建築様式だと欄間だったりする部分)がかなり低いのが気になる。
日本人でスウェーデンのトラッドの楽器を取り入れた音楽をされている方たちの演奏が終わり、FRIFOT
の3人が屏風の前に登場。真ん中にLena Willemark 、右に大柄な Per Gudmundson、左に
Ale Möller。和室で残響はゼロ。それを計算してかしないでか、Lena Willemark
のマイクに不自然なほどエコーがかかっていて、ちょっとカラオケっぽいのが気になる。
私は日ごろスウェーデンのトラッドはあまり聴いていないけれど、FRIFOT の表現するトラッドは、結構開放的で、明るい響きに溢れ、うねるような躍動感があるパワフルな音楽。2本のフィドルとボーカルのフレーズは共通する「こぶし」を持っている。ノンビブラートで伸ばし、音を切る少し前にくいっとこぶしが入る、それが独特で、ワンステージ聴き終える頃にはすっかり聴き手の耳に馴染んでくるから不思議だ。
FRIFOT の音楽は、3人の名手の生まれや個性、これまでやってきた音楽を反映しているようだ。Lena
Willemark はごく自然体で、それから「ボーカル」という、他の楽器がどんなに頑張っても絶対に表現し得ないものを持っている。3人の中で最もトラッド色が強いという
Per Gudmundson は、終始フィドルのみを(時折ボーカルもとるが)、比較的淡々と職人芸で弾く。この中でひとり南スウェーデン・マルメの出身の
Ale Möller はマルチプレイヤーで、陽気なキャラクター。彼の弾くマンドラは、ロックバンドのギターのように、このバンドの音楽を煽り、時には裏方に回る。
それぞれの曲の丁寧な説明付というのも面白く、曲に込められた人々の思いまで伝わってくるようだ。この日のハイライトは終盤にやってきた。「柳笛」と紹介された、細い、押さえる穴のない笛を
Ale Möller が吹く。ストローの長い物のようなこの上なくシンプルなその楽器から驚くような音が出てきてこの日の熱心なお客さんがどっと沸く。サービス精神旺盛な
Ale Möller はさらにマンドラを弾きながら笛を吹くというアクロバティックな演出で会場中の視線を独占する。
一番最後に、この日の会場のお屋敷の女主人に感謝の意を込めて、アーティスト側から花束が贈られるという異例のハプニングがあった。ステージ横の女主人のほうに向かって3人横に並び、歌を贈る。おめでたい時などに歌われるという曲で、スウェーデン語の歌詞にちゃんとこのお屋敷の主人の名前が挟まれていた。マイクなしのアカペラだったこの短い歌が、この日、彼らの、というよりスウェーデンのトラッドの本質を一番ついていたような気がする。先の気になる妙なエコーもなく、マイクなしでも一番後ろまで全く問題なくまっすぐに聞こえる。
多分ちゃんと予定されていたアンコールでは先のオープニングのミュージシャンとポップな曲(何か日本の曲だったようなのだけれど私はわからず)を楽しそうに演奏し、結構あっけなくこの日のステージは終了した。市長さんや保存会の人やらが出入りし、演奏しているミュージシャンに敬意を払えないスタッフ(演奏中に意味なくウロウロするのがとても気になるし、おまけに携帯電話を鳴らしたり、1歳にもならないような赤ん坊を連れてきたり)にはがっかりさせられた部分もあったのだけれど、それを補ってあまりある素晴らしいお客さんとミュージシャン、そしてその間に共有された時間がとても素敵だった。
(2003/12/11)
2003-11-26 Cafe Archives (大阪)
2003-11-27 Cave Independants (京都)
Tape
Andreas Berthling
Johan Berthling
Thomas Hallonsten
details see >> scrapbook > discs 2003 Vol. 7 (2003/12/08)
Urban Connection
Steinar Raknes (b)
Håkon Mjåset Johansen (ds)
Frode Nymo (as)
with special guest Toku (flh, vo)
ノルウェーからアジアを経由してカナダまで回るまさしくワールドツアーの終盤、Urban
Connection が2日間のライブのために日本に来た。もちろん初来日で、この日が日本での最初のステージ。会場は小さななかなかよい雰囲気のところで、ほとんど時間どおりにファーストセットが始まった。
真ん中に予想外に大柄な Steinar Raknes 。かなり大きめのベースを使っているように見えたのだけれど、なんだかそれも小さく見える。Urban
Connection の全てのオリジナルを手がけるベーシストは、音楽的にもバンドの真ん中で、彼のリードで始まる曲も多い。ステージ右側にはドラムの
Håkon Mjåset Johansen 、ごく普通のセットで、いたずらっぽい目をきょろきょろさせて、その楽しそうに叩いている様子を見ているだけでこちらものせられてくるようだ。ステージ左側にはアルトサックスの
Frode Nymo 。かなり小柄で本当に細いのに、一旦楽器をかまえたらまっすぐに力強い音でどこまでもフレーズを吹ききってしまう。
セカンドアルバム "French Only" (2001) からの "Hepburn Dance" が最初の曲で、いきなりアップテンポな曲をハイテンションで披露し、この日の観客をしっかり捕らえた。Håkon
Mjåset Johansen のドラムは結構複雑なリズムを刻んでいたりするけれど、基本的に「剛速球一本勝負」がこのバンドの最大の持ち味。
アルバム同様、Steinar Raknes がバンドの中心で、彼のよく歌うベースがずっと音楽を支配している。だからベースソロになっても何の違和感もなく音楽が流れ、またソングライターらしいフレーズがあちこちに出てきて飽きさせない。音楽同様非常にオーソドックスなタイプのベーシストで派手ではないけれど、恐ろしく速いウォーキングベースを恐ろしく正確にキメるその上手さを再確認。Håkon
Mjåset Johansen は、力いっぱい叩きまくっているその力技(視覚的にもぱっと見栄えがする)のところと、細かいところで非常に上手い技を見せる、その両方を持ち合わせたドラマーだ。パワフルに叩きまくっても全くうるさくないのは本当に不思議な位だ。難しい顔をして長いフレーズを見事に吹ききる
Frode Nymo は、アルバムよりライブでのほうがその上手さがよくわかる。控えめな感じすらする彼なのだけれど、その演奏の求心力はかなりのもので、全く途中でダレてこない。本当にさりげなく吹いてしまっているけれど、実は物凄く上手くて、それから音も、アルト特有の明るさを持ち合わせていながらテナーに迫るような迫力も持ち合わせている。
1曲終わる毎に Steinar Raknes がマイクをとってなんとも素朴な感じの曲紹介をするのだけれど、これが全力疾走の後のように、息も途切れがちなのがほほえましいというかちょっとおかしい。それだけ全力を傾けた凄い演奏、ということでもある。曲はこれまでの2枚のアルバムからの曲がほとんどだったけれど、それ以外にイギリスのロックバンドの曲のカバーも披露。確かに元はロックだったのだろうな、と思わせるハイテンションかつパワフルなキメのフレーズがあり、それがまたこれ以上ないというほど見事にピタリと決まる。この決まり方が実に爽快で、そんなに彼らのことを知らないのではないかと思われる観客をどんどん彼らのペースに引き込んでいく。彼らの個人の演奏能力も非常に高いのだけれど、ユニットとしてのこのまとまりの強さは、どちらかというとロックバンド的ともいえそうで、それは彼らがもう5年も一緒に活動していて、相当なツアーをこなしているということにしっかり裏打ちされている。
彼らの別のサイドを見せる美しいバラードを1曲挟み、最後は駄目押しをするかのようにファーストアルバムから
"Drivers Escape" をパワフルに演奏し、ファーストセットが終わった。
かなり長い休憩を挟み、セカンドセットもこの3人で始まる。1曲終わったところで、「スペシャルゲスト」として
TOKU が登場。TOKU が北欧へ演奏に行った時、Håkon Mjåset Johansen
とセッションで顔を合わせ、それで今回のこの登場となったとのこと。TOKU は(もちろん日本語で)メンバーを丁寧に紹介し、ファーストアルバムにも入っている
McCoy Tyner の "Passion Dance" の演奏を4人で始めた。この曲にフリューゲルホルンとアルト?とちらっと疑問がよぎった瞬間、それよりも
TOKU と Frode Nymo の相性が悪い、というのを目の当たりにしてしまった。TOKU
のフリューゲルホルンも、歌も、 Frode Nymo のアルトと合わない、少なくとも私にはそう感じられた。長いフレーズを豪快さをあまり感じさせずにスマートなまでに吹いてしまう
Frode Nymo と、短いフレーズを絞り出す TOKU は呼吸もあわないし、楽器の音もミスマッチだ。と思ったら、TOKU
にソロを預けた Frode Nymo は脇に引っ込んでしまった。最後になるとちゃんと出てくるし、もちろんそれなりには合わせてくる。
その後はスタンダード曲がいくつか披露され、MC を全部とった TOKU が以降完全に主導権を握ってしまった。完全に自分のペースでライブを進め、適当に他の演奏を止めてベースとスキャットでやり取りをしたり、それはそれでなかなか面白いセッションだ。けれど
Frode Nymo はさっきからずっと観客席の一番端にアルトを抱えて座っていることが多くなっている。そしてセカンドセットの最後に、TOKU
は会場の隅っこに数人いたミュージシャン仲間をみんなステージに引っ張り上げ、セッションを始めた。アルトが2人、テナー、フリューゲルホルン、ギター、ベース、そしてドラムが2人…。TOKU
はぱぱっと手馴れた感じでステージを仕切り、なんと曲の途中でドラムを交代するということで
Håkon Mjåset Johansen は観客の中へ。ずらっと並んだホーンセクションはさすがに壮観だったけれど、1人ずつ長いソロが回り始めてじきにそれは
TOKU のお友達セッションになった。ファーストセットであれほど魅せた Frode
Nymo はずっと観客席に座ったまま。ステージにいるノルウェー人は Steinar Raknes
だけだ。長いソロの中では、ギターの小沼ようすけの演奏がシンプルなのにとてもよかったのが印象に残っている。演奏も中盤を過ぎた頃、ドラマーが交代し、1人ずつステージに戻ってきて最後にみんなで合わせていたけれど、この8人の中でソロがなかったのが
Håkon Mjåset Johansen と Frode Nymo だけだったという事実に他のミュージシャンは気づいていたのだろうか。
ただしセッションとしては結構面白いやりとりもあり、客観的には楽しめたその演奏は終わった。幸い、そのアンコールを求める温かい拍手があり、Urban
Connection の3人がステージに戻った。ファーストアルバムの最後の曲 "Oblivion"
。アルバムより若干速かったけれど、Frode Nymo がスイートなメロディーを優しい音色で淡々と吹き、ステージも観客も
Urban Connection のもとに引き戻してこの日の演奏は全て終わった。 (2003/11/20)
Ole Edvard Antonsen & Fassang Laszlo
Ole Edvard Antonsen (tp)
Fassang Laszlo (p)
Ole Edvard Antonsen は1962年ノルウェー出身のトランペッターで、一般的にはリレハンメルオリンピックでファンファーレを吹いたことなどで知られる。Fassang
Laszlo は1973年ハンガリー出身で現在はフランスを中心に活動している(らしい)。今回の
Ole Edvard Antonsen は各地のオーケストラとの共演とこの Fassang Laszlo とのデュオの2つがあり、かなりの数の公演を行った。
この日、その名前のとおりびわ湖畔にある会場の中の小さいホールで行われたコンサートは、選曲がなかなか面白かった。この2人がノルウェー人とハンガリー人であることで、曲目はリストやバルトークなど東欧の作曲家によるもの、それにグリークやプラッジといったノルウェーの作曲家のものなどで、そして全てが比較的分かりやすい小品だった。1曲ずつがはっきりしたカラーをもち、2人の演奏家がそれをかなり分かりやすい演奏で披露する。
Ole Edvald Antonsen は合計4本の楽器を持ってきていて、曲に合わせて使い分け、また曲の中で、同じ楽器でもあれほどの音の違いが出るのかと驚かされるほど多彩な音を奏でる。楽器のコントロールは完璧で、どちらかというと柔らかい音なのはこの国のジャズプレイヤーと共通するものがあるかとも思う。まだ40歳過ぎと若い部類に入るプレイヤーながら世界的な演奏家であるというオーラがあり、なおかつユーモアのセンスも見せるなど余裕たっぷり。一方の
Fassang Laszlo は Ole Edvard Antonsen よりほぼ一回りほど若いプレイヤーで、さすがに
Ole Edvard Antonsen と共演となるとスター性が違うと感じる。
印象に残った曲はノルウェーの作曲家プラッジのソナタ、それにトランペットソロで披露されたフリードマンのファンファーレだった。ちょっと風変わりな前者はこの2人ならではの解釈なのだろうと思う(他の人による演奏を聴いたことがないのでいい加減だけれど)。ファンファーレは、まるでトランペット1本で手品でもしてみせるような演奏で、観客を驚かせ楽しませた。
普段クラシックよりジャズ(ほとんど周辺部ばかりとはいえ)を聴いている私にとって面白かったのはコンサート終盤に用意された即興演奏の部分。最初の曲は
"Autumn Leaves" で、これはとても観客に受けていた。クラシック畑のプレイヤーなのに、こういう演奏もできるのだ、と思ったのだけれど、即興演奏というよりジャズといったほうが合うような感じでインプロという雰囲気ではない。問題は2曲目の「雪が降る町を」。Fassang
Laszlo は一時期札幌に住んで活動していたことがあり、その時に気に入った曲、とのことで彼による(ちょっとフランス的な)アレンジで披露された。3曲目は気を取り直すように
"Take The A Train" 。
プログラムの最後は「フニクリ・フニクラ」の変奏曲で、これが Ole Edvald Antonsen のバカテクぶりをユーモラスに発揮する曲でとても面白かった。ちょっとしたスキに右手を楽器から離し、くるくると指揮者のように動かして観客を釘付けにする、その適度なエンタテイナーぶりはなかなかだった。
アンコールに出てきた2人は、曲目の紹介なしに黙って演奏を始める。トランペットをピアノの蓋の中に吹き込み、アンビエントな音響を作り出し、何が始まるのかとみんな首を捻ったころにやっと出てきたメロディーは「あんたがたどこさ」のあのメロディー!2人のヨーロッパ人に演奏されるジャパニーズ・トラッドはなかなか新鮮だった。
大分前に Ole Edvald Antonsen のオフィシャルサイトのゲストブックを見たときに、アメリカ人の少年が「あなたの大ファンで、あなたのようなトランペッターになりたいんです」と書き込んでいたのを思い出した。今、私の横にいる、足元にトランペットのケースを置いた中学生の女の子は、時折「すご〜い…」と感嘆の声を漏らしながら、目を輝かせて
Ole Edvarld Antonsen の演奏に聞き入っている。私は以前、凄いプレイヤーというのは2種類あって、1つは凄いや、とその存在と演奏を遠く感じる人、もう1つがちょっとあの楽器をあんなに演奏してみたいな、と(絶対ムリながらも)思わせられるような人、などと考えたことがある。Ole
Edvard Antonsen は確実に後者なのだ、と今回の演奏を聴いて思った。 (2003/11/20)
Esbjörn Svensson Trio
Esbjörn Svensson (p)
Dan Berglund (b)
Magnus Öström (ds)
1. Dating [Fron Gagarin's Point Of View : 1999]
2. From Gagarin's Point Of View [From Gagarin's Point Of View : 1999]
3. When God Created The Coffeebreak [Strange Place For Snow : 2002]
4. Good Morning Susie Soho [Good Morning Susie Soho : 2000]
5. The Second Page [Winter In Venice : 1997]
6. Dodge The Dodo [From Gagarin's Point Of View : 1999]
※ [カッコ内] はオリジナル収録アルバムとその発売年
今年初めて開催されたイベント The Synergy Live シリーズで、唯一大阪で(も)行われたのがこの日の
Nathalie Loriers / Esbjörn Svensson Trio (EST) の公演だった。会場は、一体どういう筋からこのライブのことを知って来られたのだろう、と思ってしまうようなおば様方が結構多い。どうみてもどちらのアーティストのファンというわけではなく、ちょっと音楽会へ、といった感じの、それはそれでよい観客だ。
ステージ左手から登場したスウェーデン人3人は、いずれも濃い色の地味目のラフな格好。中央のベースの
Dan Berglund が非常に大柄で迫力ある風貌。右手のドラムの Magnus Öström
は、3人の中で唯一まともに髪があり(他の2人はスキンヘッド)、体形はごくごく普通(多分一般的に言うと大柄な部類)、そして左手の主役、ピアニストの
Esbjörn Svensson は、3人の中で一番小柄で、細いのだけれど、そこにいるだけでパワーを感じる人だ。くるっと観客に背を向けたその青いTシャツに大きくグリーンで「SWE」と書かれている。もう何年も着ていそうなTシャツ、シンプルなステージ上、一瞬にして観客の注目がその背中に集まり、彼らがどこの人たちなのかちゃんと認識させる。
ミディアムテンポの "Dating" で演奏は始まり、その途端、会場がちょっとざわっとなった。こちらを向いたTシャツの背中に視線を送っていた人は
Esbjörn Svensson のそのピアノの弾き方 -- ピアノと戯れるようにというのか、子供がピアノでふざけているかのような動きに皆びっくり(噂には聞いていたが…ただし
Keith Jarrett や Brad Mehldau に比べれば全然気にならないほうだと思う)。けれど、その音が会場に響き渡るやすぐに観客は静かになった。
Esbjörn Svensson は、アルバムで聴くのとは桁違いにクリアで、美しくて、適度に鋭角的なタッチの持ち主で、まずはこれに本当に驚いた。アップテンポな曲でもスローな曲でも変わらない。演奏中にひょいと片手をピアノに入れて弦をはじく。ピアノの上、右手のところに小さなサンプラーのようなものを置いていてピアノから出てくる音を少し変える。アコースティックな部分で十分な説得力のある演奏をしていて、そこに少し加えられる音響はとても効果的だ。
ベースの Dan Berglund は、北欧的でスウェーデンらしいテクニックの持ち主だ。ピッチカートより驚いたのはそのアルコ弾きで、その完璧な音と音程はまるでチェロ。もっとも彼も横にサンプラーを置いていて、結構アンプを通して音をコントロールしているようではあったけれど、それでもやっぱり驚くべき音だ。"When
God Created The Coffiebreak" では Esbjörn Svensson の左手とピッチカートで弾かれるベースがぴたりと1つの楽器のように高速かつダイナミックに動く長いラインを作る。まったく同じメンバーでずっと活動してきている彼らならではだ。
Magnus Öström のドラムセットは、ジャズとしては標準よりちょっと大きめかもしれない。EST
の音楽のもつ現代的なビート感は、作曲・アレンジするのが誰であれ、少なくとも演奏する段階においてはほとんどこの
Magnus Öström 1人によるものだ。そんなに音数は多くないけれど、ここちよいタイミングでピシリと決まる。ゆったりとしたグルーヴを持つ
"Good Morning Susie Soho" でのドラムソロ、特に前半は本当に最小限の音でゆったりと観客を揺らした。叩きまくるだけでなく、こんなに静かに観客に染み渡るドラムソロがあるのだ、というのがとても新鮮だった。
アルバムではジャズらしいシンプルな曲(その多くは静かな曲)と現代的なビート使いの曲の間の関連性が、少なくとも私にとってはちょっと謎だったのだけれど、ステージをみるとまったく違和感なく流れる。アルバムよりもライブで感じたのは彼らのベーシックな演奏の部分の説得力で、それに現在進行形の音楽を表現する手段として現代的なビートやサンプラーを加えているに過ぎない、というのがライブを見てとてもよくわかった。
曲の合間には Esbjörn Svensson がマイクをとって、フレンドリーな雰囲気で曲の紹介をする。セットの最後は意外なほど静かな
"The Second Page" で美しく静かに締められた。そろって笑顔でお辞儀をして去っていった彼らは、本当にもうちょっと聴きたい、という拍手で呼び戻され、ガラリと雰囲気を変え
"Dodge The Dodo" を演奏し始めた。日本人の耳に馴染みそうなセンチメンタルなメロディーと、テクノよりのビートを持つこの曲は彼らならではだ。Dan
Berglund はアルバムと同様アルコ弾きを披露したのだけれど、そこからがアルバムにない展開になった。その彼のダブルベースは、この日
"Good Mofrning Susie Soho" で姿はそのままに音はエレクトリックベースになり、ファンク風にぶいぶい鳴っていたけれど、この曲ではエレクトリックギターに変身、しかもそれがヘビーメタル調。そういえばアルバムでも暗黒ロック風のギターサウンドが入るものがあり、一体このギターは誰が弾いているのだろう、と不思議だったのだけれど、まさかダブルベースだったとは。弓で弦を叩くとギュイーンというノイジーな音が鳴り、見かけと音のあまりのギャップに思わず笑えてくる(実際会場がちょっと緩んだ)。
最後に取っておきの切り札を鮮やかに出し、ステージは終了した。そして会場のおば様達は、このセットに大満足なふうで、そして最後の曲はどの曲だという話をしている人もいた。多分この日、EST
は随分ファンを増やしただろうと思う。そして私もそのうちの1人だった。 (2003/06/30)
POING
| Rolf Erik Nystrøm (as) Frode Haltli (accor) Håkon Thelin (b) set list: 小櫻秀樹: LAPPIS (2003) 鶴見幸代: 鮓屋009 (2003) 山本裕之: Fareflat (2002) 池田拓実: WYSINWYCSWCS (2003) Lars Petter Hagen: Maja S.K. Ratkje: Essential Extensions (1999) --- Brudemarsj og Halling (Norwegian trad., arr. POING) |
![]() POING 1st album "GIANTS OF JAZZ" タイトルトラックはギタリストとしても知られる Øyvind Torvund の作曲。 |
"poigne" (「プワン」)。フランス語で「握りこぶしの力」「握力」。多分これをもじってつけたのが彼らのユニット名。彼らのトレードマークのように使われているデザインは握りこぶしというより「ちょっと待った!」のようではあるけれど。
まだファーストアルバムもリリースしていない POING の来日公演は4人の日本人作曲家によって企画された。その4人の委嘱新作の初演は4回の公演プログラムの大きな部分を占める。プログラム構成の都合上、東京公演では1回の公演あたり2人の新作が組み込まれていたけれど、ここ春日井(メンバーが東京以外での公演を希望したため急遽企画されたそう)ではプログラムにその4人の新作がずらりと並ぶ。
いずれも1975年/1976年生まれという若いミュージシャン3人は、蒸し暑い中グレーのスーツ(ただしノータイ)で登場。着こなしているということばとは程遠い感じで何だか初々しい。中央にピアノの椅子に座ったアコーディオン奏者の
Frode Haltli、左には持参の丸椅子に腰掛けてダブルベースを弾く Håkon
Thelin、右には立ってアルトサックスを吹く Rolf-Erik Nystrøm 。市民会館的性格の強い会場のため、観客は地元のまったく普通の人が多い。今回のツアーで初演される4曲は、5月10日に来日してから作曲家本人とのリハーサルを重ね、修正に修正を加えたということで、3人とも終始楽譜とにらめっこ状態。
そのステージ上の緊張感に反して、出てくる音楽はきっちりとPOINGに消化された演奏だった。Håkon
Thelin は彼らのサイトのサンプル音源以外ではこの日のライブで初めて音を聴いたけれど、クラシック(現代音楽というのか)から出てきたプレイヤーらしく、整った美しい音と、恐ろしく正確な音程の持ち主。プログラムに「現代音楽におけるコントラバスの打楽器的奏法を独自の科学的視点より研究」とあるように、弓を弦にバウンドさせて出すその短い音の連続は印象に残った。
ステージ右側の Rolf-Erik Nystrøm は、曲が始まる時など左足を少し前に出して構え、それがまるで「戦闘体制」といった感じで面白い。他のユニットなどではいろいろな種類のサックスを吹くプレイヤーだけれどこの日はアルトサックス1本。その1本で実に多彩な音を出す。特にポンポンというこちらも打楽器的な音は、アジア的な音楽の中で面白い効果をもたらしている。
ステージ中央の Frode Haltli は、そのいかにも北欧の人といった感じの風貌がきっと観客の脳裏に残ったと思うけれど、それはさておき、余裕すら感じさせる雰囲気で
POING という変則アンサンブルの中核をなしている。彼の ECM 作 "Looking
On Darkness" でも感じられたように、アコーディオンという楽器の可能性を表現できる人で、音楽の解釈(表現)力に優れたミュージシャンであるように感じた。
1曲終わるごとに通訳(最初の曲の作曲者でもある)を交えて曲の説明をメンバーで順番に回す。演奏している時の雰囲気とは一転、3人が20代の普通の青年に戻る瞬間で、しゃべっていないメンバーがガサゴソウロウロするのがおかしい。
それぞれ異なるカラーの4人の日本人作曲家による現代音楽はなかなか面白かった。曲は難解なはずだけれどユーモアをかんじさせる曲もある。ステージの雰囲気に小さな変化が現れたのはプログラムになかったノルウェー人作曲家
Lars Petter Hagen の小品(というより1楽章のみとりだして演奏された)。Rolf-Erik
Nystrøm の子供時代の思い出に捧げられたというこの曲は、ノルウェーののどかさを音にしたような美しく静かな曲で、会場に浸透するように響いた。
その短い曲が終わってから、ステージ上の3人は譜面台を押しやるようにあさっての方向によけた。まだ音が鳴っていないのに、3人の間に流れる空気はさっきまでとはまったく異なる。何もさえぎるものがなくなった3人は、POING
始まりの曲、つまり彼らのために書かれた初めての曲、Maja Ratkje の "Essential
Extensions" を演奏した。Maja Ratkje らしい、雅楽の要素が見え隠れする非西洋音楽的な和声と間が、POING
という媒体を通して表現される。音楽的には現代音楽から即興演奏、果てには
Metallica のカバーまでワイドレンジな彼らだけれど、この日の "Essential
Extension" の演奏に彼らの本質をやっと見つけたような気がした。
「現代音楽ばかりで疲れただろうから」とコメントしながらアンコールにノルウェーの民族音楽の
POING 的解釈を持ってきて、この日のステージは終了した。演奏後に会った3人は、3人ともが話していても一瞬言葉をとぎらせて、「今日のプログラムはヘビーだった」と小さい声でもらす程の疲労こんぱいぶりだった。"Essential
Extension" で私が感じた異様な雰囲気の変化はそのヘビーなプログラムからの開放だった。演奏し慣れない難解な曲を続ける大変さを、観客側には多少の緊張感以外にはあまり見せずに音楽を表現しきった彼らは本当に優れた表現者なのだと思う。
(2003/05/25)
2003-05-16 パタパタデラサルサ(大阪)
Ephemera
Inger Lise Størksen (vo)
Jannicke Larsen (vo)
Christine Sandtorv (vo)
ノルウェーのベルゲンから来た女の子3人組 Ephemera のコンサートには、私にしてはめずらしくアルバムを意図的に1枚も聴かずに行った。
大阪・帝国ホテルの地下にある「パタパタデラサルサ」は、ラテンなデコレーションがされた心地よい空間だった。メンバーと同じくらいの年頃の女の子を中心に結構埋まってくる。オープニングアクトは
Greentea という日本のグループ。おっとりした関西弁をしゃべる女性ボーカルを含む6人編成のこのグループのパフォーマンスは3曲ながら結構楽しめた。
さて Epheremera、てっきり3人でギターをかき鳴らして歌うのかと思いきや、この日出てきたミュージシャンは5人、ドラムとベースのサポート(いずれも男性)が付く。ステージ左、キーボードの前に立つ
Jannnicke と右端、ギターを持った Inger は黒っぽい地味な服、ブーツやスニーカーと、多分普段と変わらないであろう雰囲気。中央の
Christine だけが、白地に赤いポップな模様のスリップドレス、しかも金髪で会場中の女の子たちの「かわいい〜!」というざわめきを独占。でも本当にキュートだったのはこれに赤いスニーカーを合わせて、アコースティックギターを抱えていたことだけれど。
その Christine のちょっと舌ったらずなボーカルの曲で Ephemera の日本で最初の1曲が始まった。どの曲もポップなメロディーがきらきらするベルゲンポップスらしくて
Ephemera らしい雰囲気。けれど決してワンパターンではなく、予想以上にいろんなタイプの曲ががある。そしてスウィートで3人の中では一番高い声の
Christine 、実はこっちも負けないくらいかわいい声だけれどちょっと低い Inger
、そしてちょっと違う種類の声で高さは真ん中の Jannick の3人のボーカルが上手く使い分けられている。
Christine と Inger はアコースティックギターを抱えて歌っていて、Jannicke
はキーボードとヴィブラフォン(というには小さいけれど)を弾く。どれもシンプルな演奏で、特にキーボードは歌にそっと添わせるだけといった風。ふわふわと砂糖菓子みたいな
Ephemera のポップスだけれど、それは過剰包装はされていない。予想外に素朴な音楽で、この辺はライブで初めて聴いてよかったのかもしれない。
素朴といえばメンバーもそんな感じだ。和やかな雰囲気で進められ、気づいたら
"Tusen takk!" とかノルウェー語を発していたりする。その後に "'Tusen
takk' is the norwegian words for 'domo arigato'" なんて説明をしていたけれど。
この日のステージで一番印象に残ったのは、それまでステージ左にいてあまりメインのボーカルを取っていなかった
Jannicke がステージ中央にきて歌った1曲。彼女は他の2人よりストレートな歌い方をするのだけれど、リードボーカルを取った時の声量にちょっと驚いた。この人、ひょっとすると意外な音楽性を持っているかもしれない。
新作 "AIR" の国内盤ボーナストラックにもなっているスピッツ「ロビンソン」のカバー
"It Could Have Been Me" はアンコールで披露された。普段やっていない曲だから、リードボーカルをとる
Jannnicke はキーボードの上に広げられた歌詞を書いた紙とにらめっこ状態。1コーラス目まではどうなることかハラハラしたけれど、その後はうまくのり、アンコールらしいアンコールになった。
ノルウェーでも大評判の彼女達、意外にもメジャー契約ではなく自分達のレーベル Ephemera Records からアルバムをリリースしている。そのスタンスとライブで受けた印象は私の持っていたちょっと間違っていたかもしれない先入観を消してしまった。この日のライブは見に来た人の幸福度をちょっとだけ上げるような余韻を残した。 (2003/05/22)
2003-02-16 >>> 2003-02-28 lives in Norway, Sweden, Denmark and Germany