lives 2008

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2008-10-04/05 楽屋 / 新宿PIT INN (東京)

Susanna

Susanna Karolina Wallumrød (p, vo)
Pål Hausken (ds, per, vo)
Helge Sten (g)

Susanna がちょうど4年ぶりに日本にやってきた。前回 2004年10月は Susanna and the Magical Orchestra としての来日、同年にリリースされたデビュー作 "List of Lights and Buoys" が ECM によって数ヶ月限定でのディストリビュートされる直前で、日本ではまだあまり知られていなかった。おまけに台風にまで直撃されコンサートの入りは散々だったが、それでも集まった熱心なリスナーが耳を傾けていた様子をよく覚えている。

その前回の来日時から、ビジュアル面での変化がある。4年前、Susanna は普通のブロンドだったが、数年前から髪をオレンジ色にしている。燃えるようなというほどではなく、静かに、けれど特に暗いステージでかなり強い光を放つその長い髪は、彼女の音楽とシンクロするようだと私は思う。

身近な人を多くゲストに向かえてファーストアルバムを製作した後、Susanna はバンドのメンバーを絞り込んだ。そのトリオでの新作を録音した後、リリース直前の来日とあり、前回同様タイミングが悪いことが気の毒だが、ともあれ、まだ誰も聴いていない新作のプレミアのような来日公演となった。

私自身は前回の来日公演の後、2007年に2回 Susanna and the Magical Orchestra でのステージを見る機会に恵まれた。その時に強いインパクトを受けたのが彼女の歌の力強さで、今回の来日公演ではさらにそれを上回る存在感を見せた。ソロとしてのステージだから、という理由と、彼女の歌の変化とどちらによるものが大きいだろう。

セットリストはファーストアルバム"Sonata Mix Dwarf Cosmos" と新作 "Flower of Evil" からバランスよく選曲されていた。つまり、かなりの部分は初めて聞くカバーソングで、その間に聞きなれた彼女のオリジナルが挟まれる、という格好となり、新作リリース前ならではの演出となった。カバーのオリジナルをいくらかでも知っていれば、彼女のバージョンの独創的なアレンジが楽しめるだろうが、そうでなくても十分に興味深い楽曲群だ。実は、私は、来日公演直前に発表された新作のトラックリストを見て、オリジナルの楽曲を集めて並べ替えて「予習」なるものをしたのだが、彼女の歌の本質を捉えるのにあまり意味があったとは思えなかった。

両日とも Susanna はステージ左、グランドピアノに向かい、ステージ中央にギターの Helge Sten、そして右にドラムの Pål Hausken。Helge Sten は、控えめなバッキングに徹した演奏と裏腹に、その音を出すのにそんなに必要なのかと思うほどにエフェクターを並べている。うつむいて丁寧にギターから音を引き出していて、その演奏は2日ともほとんど変わりなかったことからすると、インプロではなくあらかじめ決められたアレンジのようだ。途中、ガラスの小瓶をもってボトルネックにするのかと思いきや、左手でなく右手でそれを持って演奏を始めるあたり、元々鍵盤楽器から入った彼ならではの自由な発想による演奏が見られる(一時期の Supersilent ではギターを左右逆にして膝の上に置いて弾く場面も見られた)。彼は1人歌も歌わないし MC も取らないが、Susanna のソロパフォーマンスの後に小さく手を叩いたりしているのがちょっと微笑ましい。

ステージ右の Pål Hausken は、そのルックスもさることながら、そのボーカルの上手さも再認識させられた。In The Country のライブではメンバー中一際上手い歌を聴かせているが、Susanna のトリオではそれ以上に彼のボーカルが重要な位置を占めていて、さらにアルバムよりライブのほうがその役割は大きい。最初は大変だったが慣れた、と本人が言っていたことからすると、このトリオでの演奏によってドラムを叩きながら歌うという難しい作業をこなすようになったようだ。楽器の演奏については、ほとんど終始ドラムセットにタオルを掛け、音をミュートしている。また、彼が In The Country でどんな役割を果たしていたかがよくわかるような、見事な音の置き方だ。その他、ベルやシェイカーなどを非常に効果的に使っている。

そして、ピアノを弾きながら歌う Susanna 、彼女の予想外の声量と力強さにその場が静かに圧倒されるのを感じた。特にそれがよく表れたのが、彼女のピアノの弾き語りによって演奏されたファーストアルバム収録の "Lily" だ。一瞬、サウンドチェックの際の調整が悪ければ、音が割れるのではないかと思ったほどの声だった。ピアノはアルバムで聴かれるのと同様、非常にシンプルで、歌を支える最小限なものだが、それはこのユニットに関してはピアノに限らず、ボーカル以外の全てのものがそうだといえるだろう。Susanna and the Magical Orchestra の際はシンガーにも関わらず全く MC を取らず、もっぱら相方の Morten Qvenild がユーモアを交えて喋る、というのがお決まりだが、さすがにソロとなると話さざるを得ない。とはいえ、やはり MC を取るのは苦手だとかで、初日こそいくらか曲紹介に余裕があったが、2日目は最小限となってしまった。

Susanna の歌の進化と髪の色以外に、この4年でもう1つ大きな変化あり、それはお客さんの入りとなって目に見える形になった。両日ともに埋まった客席を見て、彼女の歌が届くべき人に届いていることを感じた。 (2009/01/16)


2008-04-26/27 新宿PIT INN (東京)

Nik Bärtsch (piano)
Imre Thormann (dance)

Nik Bärtsch と Imre Thormann の共演を見るのは2005年10月の来日公演以来、Nik Bärtsch の演奏はトリオ、カルテット、クインテットといろいろライブで観てきたが、ソロは初めて。

初日、ゴールデンウィーク初日の土曜日の公演の開演10分前に会場に入って驚いた。既に会場が一杯だったからだ。女性と外国人が多い。2日目はさすがに満員ではなかったが、それでもひととおり席は埋まっている。両日とも、隣に座っていた女性と一言二言話をしたが、どちらも Imre Thormann がお目当てのようで、現在はベルリンに住んでいるものの、東京に13年滞在したということで、知っている人は知っているのかもしれない。

ファーストセットは Nik Bärtsch のソロピアノ。初日は前半は静かなパートが3分の2ほどを占め、その中心となったのが新作 "Holon" の冒頭のトラック Modul 42。初日はいささか静か過ぎるのではと感じないでもなかったのだが、やはり2日目ではセットを調整してきて、最初の早いイントロダクション、前日同様に Modul 42、そしてその後にどのアルバムにも収録されていない Modul 34(番号からすると最近作曲されたものではないかもしれない)と緩急を複雑につけたセットとなった。

後半は両日ともに長尺の Modul 26。これまでのアルバムでは Mobile "Aer" にごく短いバージョンが収録されているが、Ronin の ECM 移籍前の最後のアルバム "Rea" に収録されているバージョンは、ECM 以前のトラックの中では個人的に最も好きなトラックの1つだ。ミニマルな反復という意味では現在の Ronin の音楽よりその特色が強く出ている、ある種忍耐力を感じさせる曲だ。カルテットだった時代の Ronin の、それぞれの楽器が演奏していたものをたった1人で再現するその演奏とアレンジに、彼自身がステージ後に自信を持って語った自身の「進化」を十分に感じ取れる。

2日目の Modul 26 は最初の入り方が異なったが、途中までは前日のアレンジとほぼ同じだった。しかし2日目の後半、繰り返し記号で囲まれた長い長い1小節の部分で最初に戻る時、ほんの少しの空白を入れてみせた。複雑なつくりでありながら、流れるように自然に展開する彼の楽曲を、一瞬止めて見せたその瞬間は驚きだった。最初にその空白が挟まれた時はもしかしてハプニングなのかと思ったが、どうやらそうではなく、その後も何度も流れが止められ、またすぐにリスタートされる。そのアレンジに大変驚いた、と Nik Bärtsch に言ってみたところ、にやりとしたので、ちょっとした新しい試みだったのだろう。また、このような試みが可能なのはソロならではだ。

休憩を挟んでの2セット目では、ピアノはステージ左奥に引っ込められ、空調が切られる(恐らく余分な音を排除するためだと思われる)。Nik Bärtsch は最低限のライトのもとピアノに向かい、Imre Thormann は会場後方の観客席の通路から登場する。上半身裸の白塗り、裸足というスタイルで、白い照明に見送られながらゆっくりステージへ歩を進める。

2度のステージを観てよく分かったことだが、このステージはあらかじめほぼ全ての音楽と動きが決められている。ソロの時より幾分パーカッシブなピアノと、1人のダンサー、そして場面により細かく変更されるライティングのコラボレーションだが、一見この3者は他者に合わせるでもなく、まちまちの動きを見せ、ピタリと合うことはない。それが、このステージを目に見えないところで立体的にしている。

Imre Thormann のパフォーマンスは、顔と体、腕、手、足などはもちろん、腹部、背中、舌、足の裏といったものまでも使い、自身の内面をさらけ出す。その様を見ることは、ある種の恐怖感にも似た感情に繋がる。Imre Thormann は現在42歳だが、ステージではまるで赤ん坊のようにも、また一転して老人のようにも見え、悲しみ、喜び、そしてもっと複雑な感情も見せる。彼自身の言葉によると、それらは全て人が内に備え持っている要素だとのことで、だから、普段直接目にすることのないそれらを目の当たりにすることは恐怖感に通じるのだろう。しかし誰もが内面に持っている要素とはいえ、それらを表現できる人は稀有である。途中、ステージ上にあらかじめ置かれていた黒いジャケットが使われたが、それはパフォーマンスを演出するものというより、Imre Thormann の体の動きをオーディエンスの視線から遮ったり、Imre Thormann の動きを少々制限したりするもので、その逆の効果をもたらしているようだった。

総じて、1日目よりも2日目のほうがスムーズに流れたのは、来日してわずかの準備期間を考えれば当然だが、両日のステージを観て、その変化を見ることで、彼らがどのようにステージを構成しているのかほんの少し伺えた。今回の公演で最初から最後まで疑問に思ったことが1つ、それはこのパフォーマンスに新宿ピットインという場がふさわしかっただろうか、という点だ。初日のファーストセットの直前、ステージにピアノが1台置かれているのを見た瞬間から、彼らにこの非常に閉鎖的な空間は狭すぎると感じた。それは物理的な空間の狭さではなく、精神的な面での圧迫感だ。例えばクインテット編成の Ronin のステージなら、新宿ピットインという会場にはあまり違和感がなかったかもしれないからだ。しかし、2人のステージを見ている間は会場のことなど全く気にならなかったこともまた事実である。(2008/05/12)


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