molde 2009


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2009-07-15 (ons)

今日も朝10時半ちょうどに朝食へ。ホテルのレストランの人には迷惑をかけてます、すいません…と心の中で。

The Thing■ The Thing @ Reknes, 14:00
w/ Mats Gustafsson (ts, bs), Ingebrigt Håker Flaten (b), Paal Nilssen-Love (ds)

昨日より2時間遅いスタートのはずが、頭がぼんやりしている(実はこの2日とも朝5時前に寝ている)ため、もたもたしていたら比較的遠めの会場についたのは開演の30分前。サウンドチェックがまだ終わっておらず、若干時間が押す。

昨日の昼のデュオ公演があの人出だったので、今日も寿司づめになるかと思いきやそうでもない。狭い会場の、なぜかステージの下に楽器がセットされ、ステージ上はメンバーの荷物置き場になっており、PNL の衣類が開いたスーツケースの上にぐしゃぐしゃに載っているという凄い状態。マイクは全くなく、アコースティックのライブ。ベースのみピックアップをアンプに通しているが、ステージ奥のベースアンプはステージの上で観客に背を向けており、向こうが板で押さえられていため、ベースもアンプに頼る音量はわずかだろう。

バックステージ代わりのテラスからメンバーが入ってきて位置に着き、第一声を上げるなり飛び上がりそうになってしまった。最前列に陣取ったためメンバーまでは同じ高さの至近距離、Mats Gustafsson までは推定1m20cm、かなりのものだろうと覚悟していたのに、凄い音だ。大きい音というだけなら耳栓をしなければいけないようなライブはいくらでもあるが、彼らの音の持つ威力は強さといえばいいのか、その尖り具合というのか、とにかく尋常でない。毎度度肝を抜かれるが、この日はただただ唖然とするばかり、リズムを取るでもなく、写真もそこそこに、なんだかぽかんと眺めてしまった。Paal が以前、The Thing における「楽曲」はインプロへのジャンプ台、というような説明をしてくれたことがあるのだけれど、この日の「ジャンプ台」にも見覚えのあるものがいくつかあり、大半を占めるインプロの中でひょいとテーマやグルーヴが浮かび上がってくるところが面白い。

前日の Paal Nilssen-Love も聴いていて痛みを感じそうなほどの音だったが、この日も圧巻。その絶え間ない音の繰り出され方においては Atomic の時をはるかに上回る。手数の多さ、速さ、というのはCDを聴いてもよく分かるし、今更改めて言うことでもないが、その音の間にやっていることが見えるのがライブならでは。例えば床に置かれたシンバルや小物を拾い上げてタムやスネアの上に載せる、それを重ねる、裏返す、スティックを逆に持ち替える、ずれたハイハットを手で引き寄せ、スネアのペグを緩める、タムの上に置かれた小さなベルを数小節後に叩く時のために中央から少し横へずらす…そういったことがあの音の洪水の合間になされており、目で追っているととても人間業とは思えない。それに合わせる Ingebrigt Håker Flaten も、ダブルベースからそんなに早いフレーズが出るのかというほどだし、Mats Gustafsson は1曲ごとにリードを交換するほどの吹きよう。

パワフルな演奏に一番の特徴がある彼らだが、この日は静かな演奏もとても面白かった。特に、ライブ中ほどの Mats Gustafsson がテナーを吹いた曲など、あの部分だけ聴いたら誰が吹いているのか分からないのではないかと思うほどの柔らかな音だった。

観客はその演奏にふさわしい反応で、彼らも2回アンコールに答えてくれたが、それでも引き下がらない観客にもう一度出てきてカーテンコールに答え、最後に Mats Gustafsson がもうへとへとだよ~という身振りでよろよろと退場し、ようやく観客の拍手が止んだ。


Christian Wallumrød Ensemble■ Christian Wallumrød Ensemble @ Forum, 16:00
w/ Christian Wallumrød (p), Arve Henriksen (tp), Nils Økland (hardanger fiddle, viola damore), Per Oddvar Johansen (ds, per)

先の会場から坂を下りたところにある Forum に直行。サウンドチェックが遅れ、開場が遅れる。

このカルテットを見るのは実に5年半ぶり。何度も書いているように、このグループのライブ演奏は特筆すべきものがあり、それはこの長い間褪せることなく強烈な印象として残っていた。そしてこの日の演奏、曲目は5年前とかなり重複しているが、演奏は5年半前のものとはかなり異なり、その違いにこのカルテットの熟成を見て取れた。演奏はかなり前衛的な場面も多いが、演奏は極端にアンサンブル志向が強く、ソロパート以外は個人の即興演奏が前面に出ることが少ないのが特徴だ。楽器をこする音、ポツリポツリと素朴でノルウェーのトラッド色が強いメロディーを爪弾く静かな演奏がほとんどで、その繊細で緻密なやり取りは長い間共に音楽を熟成してきた固定メンバーならでは。

また、そのメンバーがお互いを信頼し、尊敬して音楽を作り出していて、また同じステージに立っているミュージシャンの演奏を心から称えていることが分かるシーンが時折あった。そうそう見られるシーンではないように思う。

このグループの演奏から受けた、静かなインパクトを表現するのは難しい。言葉にせず、静かに演奏の場面場面を思い返してみたい。今日の演奏も5年半前のと同じように、ずっと色褪せずに記憶に残るだろう。


■ Kristin Asbjørnsen @ Molde Domkirke, 18:00
w/ Kristin Asbjørnsen (vo), Tord Gustavsen (p), Olav Torget (g), Svante Henryson (cel), Jostein Ansnes (vo, g, lapsteel), Knut Aalefjær (ds, per)


先のコンサートが結構押し、しかもそれなりの長さ、さらに終演後立ち話をし、さらにさらに雨が降ってきたためホテルに戻って傘少し着込んで傘を持って再び外出…などしているうちにこのコンサートには少し遅れて入ることになった。

Kristin Asbjørnsen の最新作 "The Night Shines Like A Day" と同じメンバー構成で、その新作を中心とした楽曲を大体アルバムの通りに演奏している。その前のアルバムは非常によかったが、この新作ではプロデュースと彼女の声の荒れ方にかなり疑問を持ち、こうしてライブで聴いても同じことが引っかかる。また、以前2回見たライブでは、彼女の歌は圧倒的な魅力と説得力を持ち、観客を魅了したのに、それもない。一体どうしてしまったのだろう。加えて、ライブの最初のほうでは高音は全く伸びず、サビの部分のメロディーが繋がらない。ライブの中盤以降、少しずつ調子を上げ、声は普通に曲をカバーできるようになり、また前作からの数曲はそこそこよい出来ではあったが、途中で退出する観客も目だった。長年の音楽パートナーである Jostein Ansnes がバックボーカルでとても上手にカバーしていたのが印象に残ってしまっては本当はいけないはずだ。

新しいグループのメンバーはなかなかの顔ぶれで、この日も Tord Gustavsen のソロパートなどよかったと思う。しかし、音のバランスが非常に悪く、教会という音響を全く生かせておらず(Tord Gustavsen のみその音響をきちんと計算したソロを弾いていた)、ベースがやたらに響き、ボーカルはあさっての方向へ広がり、音のバランスが崩れて楽曲が掴みきれないほど酷い場面もあった。


この日の夜には Cecil Taylor や Melody Gardot といった公演があったが、飲まず食わずでそうそうライブを見続けられるものではない(と言い訳)。夕食をとってしばし休憩。


Kjetil Møster■ The Low Frequency In Stereo with Kjetil Møster @ Kulturhuset, 24:00

開演の30分前に設定された開場時間に会場に辿り着くと、まだまだサウンドチェックの真っ最中。ちらっと見えた会場の中は、椅子はなく(実際は端のほうにぐるりと椅子があったのだけれど)、かなり高いステージ前に柵があって、ロックバンドだなあ、とビール片手に集まってくる観客を横目に戦々恐々。

ステージはゲストの Kjetil Moster のテナーソロから始まる。結構長めのセットで、足元に置いたループをエコーのように使い、長いトーンを重ねる。

The Low Frequency In Stereo の Rune Grammofon からの新作 "Futuro" はなかなか気に入っているものの、どんなメンバー構成なのかなどあまりよく知らないでライブに臨んだが、予想外に楽しめた。バンドの演奏は押さえるところをきちっと押さえたタイトな演奏で、切れがよく、ビートとギターのリフがツボにはまる。バンドのメンバーが5人にゲストが1人の6人で、出ている音も多いのに、見事な音響のため、全てが非常にクリアでバランスがよく、音量は大きいのに全くうるさくない。Kjetil Møster は最初と最後、全体の半分くらいの部分で参加、ジャズではないのでソロにスポットライトが当たるわけではないが、やはりかなりの注目を集め、その上でバンドの音に上手く合っている。中でも、アルバムにも収録されている、ドスの効いたバリトンサックスが入る "Solar System" が格好いい。終演は2時近くになったが、観客は最後までかなりの人数が残り、音楽を楽しんでいた。

終演後、The Low Frequency In Stereo のメンバーと少し話をする機会があり、アルバムでの Nils Økland という意外なゲスト(しかもその音はどこで鳴っているのか全く分からない)はどうしてなのか聞くと、同じ Haugesund の街の出身だから、という返事。

2年(以上)振りにライブを観た Kjetil Møster は、このところのロック系の活動のためか、髪の毛の伸び具合のためか、すっかりロックミュージシャンな見かけになっていた。2年以上も空いたのに、次に見るのはなんと来月。


この3日、最後のライブが終わった時に思うのは、「疲れた」でも「眠い」でもなく、「なんだかお腹すいたなあ」だったりする。


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