molde 2009
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2009-07-16 (tors)
10時10分過ぎに朝食へ(やればできる)。この日は正午スタートなので慌しく準備をして最初の会場へ。
■ Arve Henriksen & Ytre Sulønes Jass-ensemble @ Molde Domkirke,
12:00
w/ Arve Henriksen (tp), Jan Inge Melsæter (tb), Kåre Nymark
(tp), Jens Arne Molvær (cl), Morten Gunnar Larsen (p), Einar Åre
(banjo), David Gald (tu), Otter Anderson (ds), Tricia Boutté (vo)
会場の教会へ続くちょっとした広場への階段を上がりきる前に、人の列が見え始める。開場待ちというにはあまりに長い列で一瞬ひるんだが、前方がどうなっているのか確認しようと人をかきわけ教会へ。教会の入り口前でアマチュアビッグバンドが演奏しており、それをぐるりと取り囲む人だかり、それに教会の中で行われるコンサートを待つ人の列がひっかかっている。教会は既に開いているのだが、人ごみがひっかかって誰も入らない。
そんなこんなで外の人を中に詰め込み、あぶれた人を押し込むためにさらに15分ほどかかり、ようやく開演。Rosa
Bil、ピンクの車という名前のガン患者への基金のためのチャリティーコンサート。Arve
Henriksen は同様のコンサートを今年5月にベルゲンで行われた Nattjazz でも行っている。
Ytre Sulønes Jass-ensemble はニューオーリンズ風のジャズを演奏するグループで、このフェスティバルでディナーショーなども行っている。メンバーは結構年齢の幅があり、若い2人、Kåre
Nymark と David Gald は他のグループにも多く参加し、Kåre Nymark は自身のグループでも活動している。演奏面ではやはりこの2人(のみ)が突出しており、特に
Kåre Nymark は同じ楽器の Arve Henriksen とやり取りしてもひけを取らない。
Arve については、何でもできるんだなあと思ったが、さすがに演奏はさしてニューオーリンズ風にはならず彼流、歌ってもちょっと油断したらヨイク風になる。会場は大いに盛り上がり、最後はぎゅうぎゅう満員の観客がみんな立ち上がってのスタンディングオベイション。
■ Han Bennink & Frode Gjerstad @ Reknes, 14:00
w/ Han Bennink (ds), Frode Gjerstad (as, cl, bcl)
2日連続で同会場で行われる Han Bennink の2公演の初日はノルウェーのベテランリード奏者 Frode Gjerstad とのデュオ。Han Bennink は話には聞いていたが、足をドラムの上に乗せる、物を投げる、倒す、つくり物の観葉植物に水をやる、スネアを抱えてバックステージ代わりのテラスに行ってしまう等々やりたい放題。対する Frode Gjerstad は、Han Bennink に視線をやることもなく、クールに、彼らしいアグレッシブになってもあくまでもメロディアスなフレーズをつなぐ演奏。両者の佇まいはあまりに極端なのだけれど、音楽は(たとえ Han Bennink が何をやらかしても)、ピタリと合っている。
ドラムセットの諸々をなぎ倒してしまった Han Bennink だが、その1つ、一番大きいシンバルを倒したら、それがちょうど Frode Gjerstad の右足首(甲)に直角に命中、演奏は突如中断。そのあまりの痛がりように、最初は冗談かと思ったが、本気で痛めたらしい。それでも、さほど間を空けることなく演奏を再開され、50分ほどの短いセット(時計を見て、それだけしか時間が経っていなかったことに驚いた)は終了。
■ Trondheim Voices @ Kulturhuset, 16:00
w/ Heidi Skjerve, Ingrid Lode, Siri Gjære, Sissel Vera Pettersen,
Anita Kaasbøll, Torunn Sævik, Silje Restad Karlsen, Tone Åse
(vo); Jon Balke (comp, p, key), Mats Gustafsson (comp, cond, bs), Marilyn
Mazur (comp, per)
北欧を代表するインプロバイザーでコンポーザーをデンマーク、スウェーデン、ノルウェーからそれぞれ1人ずつ選び、その3人に委嘱したオリジナル作品のプレミア公演。
第1部は Jon Balke の"Confabulation"。Jon Balke がピアノに向かい、導入役の
Tone Åse のみ立ち、他の7人のシンガーはずらりと円弧状に事務用の回る椅子に座り、マイクを持つ。女性がわいわいとおしゃべりに興じるようなパフォーマンスで、歌も短い歌詞のないフレーズをみんなばらばらのタイミングで語る。対話をするメンバーは常に代わり、パートナーは向かい合い、また別のパートナーと話をし、そこに
Jon Balke も短いパーカッシブなフレーズを刻み込む。Jon Balke のパーカッションアンサンブル
Batagraf をそのままボーカルに置き換えたような構成だ。
第2部は Mats Gustafsson。ここでは Mats Gustafsson は指揮に徹する。Sissel
Vera Pettersen をソロイストに、極短い音を吐き出すような前衛パフォーマンスから始まる。機械から打ち出されたようななにやらタイプ打ちされた長いロール紙を読んでいくように、それぞれがなにやら音読し始め、Anita
Kaasbøll のアグレッシブなヴォイスパフォーマンスソロへ続く。そしてなにやらカード状のものを皆で取り出し、エレクトロニクスの音を加えるなど、Mats
Gustafsson のエレクトロニクスをいじりながらのソロ演奏のような展開。Mats
Gustafsson の指揮は、それもまた彼のソロ演奏を無音で見ているかのような、何か搾り出すような体の動きで、これもまたパフォーマンスの1つになっている。
第3部は Marilyn Mazur のマテリアルで、最初は8人のシンガーが8の字に練り歩き踊りながら歌う。いかにも
Marilyn Mazur らしい伸びやかなグルーヴの曲で、緊張感が高かった第2部の後に効果的だ。この8人のシンガーは結構キャラクターの違うシンガーも多いが、この曲は多くのソロイストが登場、それぞれに少しずつ見せ場がやってくる。途中から
Marilyn Mazur のパーカッション、さらには Jon Balke のキーボードと Mats
Gustafsson のバリトンサックスが入り…と書くとどんな取り合わせだ!?と思うが、もう
Marilyn Mazur にかかってしまうとなんだかもうみんなそれに乗っかってしまう。
こういうのが見れるのが、フェスティバルをわざわざ観に行く醍醐味の1つだ。
Trondheim Voices の会場からホテルに戻った途端、業務連絡。1時間で同じ会場にとって返し、Supersilent
のサウンドチェックを見物。このフェスティバル期間中、どの会場へ行っても大掛かりな撮影隊が陣取っている。フェスティバル側が用意したにしては機材が大掛かり、国営放送が来ているにしても人数が多すぎるので一体何なのだろうと思っていたが、Supersilent
のサウンドチェックの後に Arve Henriksen がその撮影隊のディレクターを紹介してくれ、ノルウェージャズの記録映画を撮っているのだと判明。もうここ1年ほど取り溜めたとのことで、このフェスティバルでは
"Artist in Resicence" の Arve Henriksen を中心にカメラを回しているのだそう。カメラマンも数が多いので素人目に見ていて明らかに差があり、観客の邪魔にならないようにポイントを抑えて撮っているベテランカメラマンもいれば、そんなもん(プレス席にいるブロンドのお姉さんとか…)撮ってどうする?というようなほうにカメラを向けていたり、激しく邪魔になるカメラマンもいたりする。
■ Supersilent @ Kulturhuset, 21:00
w/ Arve Henriksen (tp, voice, ds, electronics), Ståle Storløkken
(key, electronics), Helge Sten (electronics, g)
ドラマーの Jarle Vespestad が抜け、トリオになってから初めての「通常公演」(今年3月に行われたライブは特殊なセッティングだったため)。ビジュアル的には数年前のセットに近くなり、コタツに入るように左右と奥に3人分の機材が置かれている。
サウンドチェックの際、Arve Henriksen は大半の時間をドラムのセットアップに費やしており、またスネアドラムの音がかなり大きく設定されていたが、それがこのトリオの現在の状態をよく表している。Supersilent
の音楽で、ズダズダのリズムはかなり重要な位置を占めるが、Jarle Vespestad
脱退後、その多くを Arve Henriksen が弾きつぐことになったからだ。Arve Henriksen
がドラムを演奏し始めてかなり経つが、やはりプロのドラマーからは程遠い。天才的なひらめきを持つインプロヴァイザーではあるが、ドラムだとその本領が発揮できない。それでもドラムに向かう時間が長いため、トランペットとヴォーカルが激減、Jarle
Vespestad の不在は予想外なことに「Arve Henriksen の不在」を生み出すことになった。
彼らはいつも専属のサウンドエンジニアを連れているが、今回のライブを手がけたのはこのフェスティバルのメインエンジニアである
Geir Østensjø。よく知られたエンジニアであり、このフェスティバルでも完璧な仕事をしている(教会を除けばどこの会場でも本当に音がいい)。Supersilent
と組むのは初めてのはずだが、聴いたところ問題はあまりなかったようだ。2度ほどメンバーがボリュームを上げるよう指示したが、全体的な音量、音圧がサウンドチェックの時に比べて抑え目だったのは、メンバーのチョイスだろう。
ミディアムテンポの曲で入るという難しい入り方をしてしまった彼らだが、一度テンションが上がり、アグレッシブなパートを通過してから演奏がこなれ、全体としては最高のパフォーマンスとまではいかないがよい演奏だったと思う。というより、私が毎年毎年前年をはるかに上回るパフォーマンスを期待してしまっているのが間違っているし、彼らが即興演奏であれだけの「楽曲」を演奏すること自体が本当は信じられないレベルのことだ、。アグレッシブなパートの後、トーンを落として終わるかに見えたが、Ståle
Storløkken がそれを嫌い、音を出し続けた。それに対する他の2人の反応、Arve
Henriksen が間髪を入れずに歌いだし、同時に Helge Sten がギターを掴んだ、その速さに驚かされた。トリオの中でのそれぞれのポジショニングが確立すれば、カルテットとは違う面白さも出てきそうだ。
少々エンジンがかかるのが遅かったため、1時間10分ほどのちょうどテンションが上がってきたところで本編終了。フェスティバルのセットのため通常の単独コンサートよりは短くなるだろうとは思ったが、メンバーもさすがにまだ終わらない感があったのだろう、アンコールにしては起伏のある長い演奏をもう1曲演奏して終了した。
■ Huntsville @ Forum, 23:00
w/ Ivar Grydeland (g, banjo, electronics), Ingar Zach (per, electronics),
Tony Kluften (el-b, electronics)
Rune Grammofon 2連荘の2セット目は Huntsville、ライブを観るのはこれが初めて。真っ黒な会場に、薄暗い照明、ステージに横に3人並んで演奏。CDでも聴くことができる、あのどこかエスニックな匂いのするカラカラしたビートが流れる中、3人により様々な音が重ねられていく。軸になるのは中心にいる
Ingar Zach。巨大なフロアタム(と言っていいのかどうかは分からないが)をまな板のように使い、小さな音の出る様々な物が様々な位置に置かれ、場面によって置く位置を変える(マイクに近づけたり遠ざけたり、またドラムの振動の影響を受けたりする)。「Huntsville
ビート」を操作するのも彼で、いつの間にかビートが変わっていたり、ピッチを変えて加速させたりする。
1時間強の1セットは長い1曲で、それが全く違和感なく続き、ちょうど良い加減で終了。アンコールを求める拍手はなし。この後に短くアンコールをやってもバランスが悪いのは事実だろう。
■ Jarle Bernhoft @ Kulturhuset, 24:00
w/ Jarle Bernhoft (vo, g, fl, key), David Wallmrød (key), Audun Erlien (el-b), Hedvig Thomassen (g, backing vo), Line Horntveth (backing vo, per, fl), Martin Windstad (per), Torstein Lofthus (ds)
2つ前の Supersilent の会場を後にするとき(Huntsville が控えていたのでかなりさっさと退出した)、会場の外に行列ができ始めていたので、内心非常に驚いた。何しろ開演まで2時間近くあるのに、だ。
Huntville の後、メンバーと少し話をしてから丘の上の会場へ行ったので既に開演から30分以上経過していただろうか、なんと会場の駐車場の外まで行列。やはり…列は関係者パスを持つボランティアスタッフで、彼らは会場に空きがあることを前提に会場に無料で入ることができる。チケット、1日券やフェスティバル通し券、プレスやゲストパスを持つ人が優先されるため、中の人が退出するのをじっと待っているのだ。
中へ入ると、まさに立錐の余地もないとはこのこと(不快にならない程度に入場を制限しているので、人をかきわけて動くくらいはできるのが幸い)。しかもノルウェー人の若い観客ばかりなので、壁のように背が高い。しかし非常に高いステージなので、後ろのほうでもよく見えるし、抜群の音響のこの会場のため、どこにいても快適に音楽を楽しめる。
昨年初のソロ作をリリースした「ソウルシンガー」 Jarle Bernhoft (彼は以前は「ロックシンガー」だったので)の人気ぶりを目の当たりにする演奏と会場の反応だ。この会場に辿り着くまでに会った数人のインプロ系のミュージシャンが今から観に行く、と言っていたことからも分かるように本当に幅広い人気を誇る。観客は彼の曲をよく知っており、セットはさながらヒットパレードの様相。Jarle
Bernhoft が優れたシンガーであることはレコーディングからも分かるが、ライブでも本当に歌が上手い。加えて、バックバンドの演奏もよく、恐らくこの音楽を演奏するのに最適なメンバーだ。ただ、ドラムの
Torstein Lofthus (知られたところでは Shining のメンバー)は、名前を見た時からちょっと違うだろう?と思ったがやはりミスマッチ。ファンキーなソウル系の曲を、彼のドカドカした頭打ちのビートで叩かれては、いくら名手
Audun Erlien がグルーヴを作り出しても相殺してしまう。
観客は結局2時まで超満員(多分最後まで粘って入れなかった人多数)、望遠レンズで写真を撮るのもやめて、ビール(1杯0.5リットル、65NOK≒1100円)を飲みながら鑑賞。連日のようにこの時間になると空腹になり、この日は深夜2時過ぎだというのにスタンドでハンバーガー(75NOK≒1200円)を買う。
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