2004-08-11 (onsdag)

朝の5時半に寝て10時に起きたらホテルの朝食の時間が終わっていた。Telenor の携帯ショップに行ったらプリペイド契約でもパスポートなどの身分証明書が必要と言われ、そりゃそうだとまたホテルに逆戻り。時間がないので携帯ショップは後回しにしてダウンタウンのカフェで NOR-CD レーベルのオーナーでありサックス奏者でもあるKarl Seglem に会う。ジーンズにリュックサックの彼は写真でみるより随分若く見える。3/4 SupersilentVeslefrekk と自身の新作の最終仕上げ、それに今週末に出演するホームタウン近くでのフェスと忙しいらしい。Veslefrekk の新作は 9月2日のトロンハイムのライブでリリースされる予定で、まだそれが出来上がっていないというのにはちょっとびっくり。とりあえず音源を聴かせてもらう約束を取り付ける。音楽とは全然関係ないが、携帯のバッテリーが切れるというのはよくあるけれど、それをカフェの壁のコンセントで平気で充電するのには驚いた。というよりACアダプター持って歩いてるって…。

午後からまた携帯ショップに出向く。お店の人が「プリペイド」を「ポストペイド」と言い間違えたため混乱したが、無事契約完了。ちなみにプリペイドの契約は主として携帯相手にかける人用と加入電話にかける人用の2つの料金プランがあるそうだ。SIMカードには自動的に50NOK分の無料通話がついてきて、さらにプリペイド契約には50NOK分のプリペイドカードがついてくる。その合計100NOK分も含めて支払った手数料は200NOK(3000円)。ノルウェーでも安いものがあるものだ。プリペイドは、指定された電話番号(携帯フリーダイヤル)に携帯から電話をかけ、プリペイドカードの裏のスクラッチ部分を削って出てきた12桁の数字を入力、音声が番号をリピートする(1〜9の数字の読み方を覚えていれば十分聞き取れる速さだった)ので、正しければ#を、間違っていれば1を入力。○○NOK分の通話が加算されました、というアナウンスが流れて電話は切れる。これは電話会社でちょっとシステムが違うらしいけれど、そんなに難しい作業ではない。残高はSMS(ショートメール)を送るか、あとはネットでも確認できる。E-Mailのセッティングはイマイチ良く分からず、あまり使わないだろうということでとりあえず放置。

昨日の深夜のジャムセッションにはフェスティバルの関係の方もおられ、あっという間にいろんな人と知り合いになり、撮影許可をもらうためにコンタクトを取っていた人とも話をすることができた。さすがに日本からというのは珍しいのか、皆さんよく覚えて下さっているようで話はとんとんと進み、同じオスロで11日から行われる Øyafestivalen のパスも手配して下さるということになった。

そういうわけで、Grand Hotel の7階にあるフェスティバルの事務局に出向いたら昨日お会いしたプレス担当の方がおられ、名前を名乗るまでもなく通してもらえた。Øyafestivalen のパス(写真も撮る?と訊かれ、撮りたいといったら撮影許可まで手配してもらえた)について Øya のプレス事務局に掛け合ってもらっている間、ダメもとで今日行われるラジオ局用セッションのことを訊いてみる。国営放送 NRK のラジオ P3 の "Petresession" というのに、The National Bank が出るけれど、一般に開放されている収録ではないし、時間も公開されていない。というのを伝え、可能であれば是非見たいんだけれど、と訊いてみたら、こちらも Øya フェスティバルとコンタクトを取ってもらえ、すんなり入れてもらえることになってしまった。言ってみるものだ、と思いつつ、フェスティバル事務局の人の親切な対応に感激。

オスロジャズフェスティバルのパス、プログラム、Tシャツ(例によって大きいので滞在中のパジャマになる予定)なども頂いて、スーパーに寄って果物などを買ってから一旦ホテルに戻る。戻った理由、というのがTシャツをホテルに置くためと、外はあまりに暑い(!)からというのが凄いといえば凄い。この30度にもなる気温はやはり異常に暑いらしいが、こちらの人は短い夏を楽しんでいるからこういうのはむしろ嬉しいらしい。

Øyafestivalen の関係は Royal Christiania という中央駅近くのホテルに集中されていて、ちょっと偵察に行ってみたらプログラムが積まれている。ちょっと大きくて分厚く、携帯にはいかがなものかと思うほど立派なものだ。それをパラパラみながらマークさんとしばしおしゃべりをしてから NRK へ。NRK にはタクシーで行けとアドバイスされていたので、その前にお金を下ろそうと思ったら国際ATMカードが使えない。カードはちゃんと認識されているのだけれど、機械が悪いのか何なのかお金は出てこない。しょうがないので VISA のキャッシングにする。14日締めなので利息も3日分だし問題ないだろう。そんなこんなでバタバタしていたら Petresession が始まる午後6時に少し遅れてしまった。

The National Bank @ Studio 2 / NRK:
Thomas Dybdahl (vo), Lars Horntveth (g, bcl), Morten Qvenild (key), Nikolai Eilertsen (b), Martin Horntveth (ds)

>> Petresession / NRK (セッションの映像と画像が見れる)

私の知る限り、これがThe National Bank としての彼らの生の演奏が一般のファンに公開される始めてのステージ。NRK の Studio 2 に入ると、Thomas Dybdahl の声が聞こえてきた。スタジオというより相当に大きなライブハウスといった感じで、もちろん音響もとてもよく、ラジオ局用にセッションだというのに会場の明かりは落とされ、スポットライトが当てられている。階段状になった客席にはこの P3 (petre) という若者向けのチャンネルらしく若いファンばかり。デジカメでフラッシュをたいて写真を撮ってしまう人とか、どこからかドリンクを調達してくる人とかもいて、気楽な雰囲気だ。気楽といっても皆とても熱心に聴いていて、曲が終わると大歓声と拍手が起こる。

演奏は素晴らしく、誰もが初めて聴く曲は、かなりバラエティーに富んでいてそれぞれのミュージシャンのカラーが反映されているようで興味深い。ステージ右端の Martin Horntveth のドラムは、Jaga Jazzist の時ほど前のめりではなく、どすんと腹に響くグルーヴ感を叩き出す。すぐ左にいる Nikolai Eilertsen は、私はそんなによく知らないが、彼がメンバーの Big Bang というバンドはノルウェーではよく知られたグループ。安定感のあるロックベーシストでバックボーカルもこなし、Martin Horntveth とのコンビネーションもばっちりだ。Lars Horntveth は、ほとんどの曲で頭を振りながら(!)ギターを弾き、1曲だけバスクラリネットも演奏。作曲面では多分かなり貢献しているであろう彼はステージではどちらかというと前面には出てこない。一番左端の Morten Qvenild はその面構えに加えちょっと猫背で楽器にむかう独特のスタイルで、キーボードというよりこの日はエレクトロニクスとか音響面でとても目立っていた。ジャズピアニストではなく、Susanna & The Magical Orchestra での彼のやっていることに最も近い。音楽に対するセンスが素晴らしいミュージシャンだ。ステージ中央の Thomas Dybdahl は手ぶらで(というのは彼はギターを抱えて歌うのが通常なので)、思っていたよりずっと華奢、でもその歌声は本当に素晴らしい。エモーショナルに自在に歌を操る。

1曲だけ、"Tolerate" という曲は既にラジオでオンエアされているのだろうか、ライブ用らしいイントロから曲が始まった途端客席からどっと歓声が上がる。アルバムもリリースされていないのに大変な浸透ぶりだ。Jaga Jazzist ほどではないけれど、彼らもまたスタジオアルバムバージョンに「ライブパフォーマンスならではの何か」をプラスしてくる。45分ほどのステージはあっという間に終わってしまい、あとは16日のアルバムリリースが本当に楽しみだ。

演奏後、Martin Horntveth をつかまえてちょっとだけ話をすることができた。オスロに行くことは言ってあったのだけれど、さすがにラジオ局のセッションということでとても驚かれてしまった。素晴らしいグループで、アルバムが本当に楽しみだと言うと、丁寧にお礼を言ってくれた。それから、ジャズフェスティバルを見に来てるんだよね?Aphex Twin は見たことある?見に行きたいんだけど僕達 Øya のほうでステージがあるんだよねぇ…ととても残念そうだった。そうか、彼はそういうバックグラウンドを持っているんだった、と改めて認識させられる発言だった。

Petresession はその後スウェーデンの The Soundtrack Of Our Lives の演奏があり、それも見たかったのだけれど、どうしても外せない用のため会場を抜け出し…と思ったけれど、建物の中を迷いまくってなんだかとんでもないところへ入り込み、なかなか脱出できず。しかしどこをどう迷っても誰にも会わないテレビ局の建物って一体…。ネズミかなにかのように小さな扉からやっとのことで外へ出て、タクシーを捕まえて再び市内中心部へ。結局 NRK がどこにあったのか分からずじまいだけれど、ダウンタウンからは相当に遠く、往復ともにタクシー代は100NOK を少し越えた。1500円相当だけれど、それなりの距離だった。

そのタクシーで7時過ぎに Clarion Hotel Royal Christiania へ。Øyafestivalen のプレスパスがこの日の夜7時〜8時の間、ホテルのロビーで発行される。ジャズフェスティバルの事務局からの連絡はちゃんと届いており、全く問題なくパスを受け取れた。ジャズフェスティバルのパスは名前の入ったラミネートパスに発行者のサインが入っている(私のように撮影許可を取っている人はそれも記入されている)もので、Øya のほうは4日通しパスのアームバンドとプレス用のパス、撮影用のパスの3種類。4日通しパスのアームバンドはロゴと番号の入った赤いリボンを金具で挟み、ペンチで固定するというもので、ミサンガみたいなものだけれど、右腕に付けられてかなり気になる。しかも4日間外せないし、誰が見ても Øyafestivalen 見に行ってます、というのがよく分かってしまう。別にいいのだけれど。

パス発行は手際よくあっという間に終わったので、街の中心部、Grand Hotel 近くにある Scene West Victoria という会場へ。

Come Shine @ Scene West Victoria:
Live Maria Roggen (vo), Erlend Skomsvoll (p), Sondre Meisfjord (b), Håkon Mjåset Johansen (ds)

開演は6時半で、私が会場へ着いた時には既に7時半を過ぎていた。中からどっと人が出てきたのでどうしたのかと思ったら、どうやらファーストセットがちょうど終わったところらしく、ちょうどよかった、と混乱に乗じて人ごみにもぐりこみ、前から2列目、一番端の席を確保する。会場は小さな劇場のような仕様のところで、客席はかなり急な階段状になっていて、2階席もある。とにかく凄い人で、やや年齢層が高めのお客さんがぎっしりすし詰め状態。

長めの休憩の後、ステージ奥の階段の上からメンバーが降りてきてセカンドセットが始まった。一応ちゃんとジャケットを着込んだ Sondre Meisfjord と Håkon Mjåset Johansen 、シマシマのシャツをよれっと着た Erlend Skomsvoll、そして最後に登場したのは黒いシンプルなドレスを着た Live Maria Roggen。プラチナブロンドのショートヘアがドレスに映えて鮮やかだ。

Come Shine というグループは、結論から先に言ってしまうと、スタジオアルバムでも、ライブアルバムでも伝わりきらない魅力を持ったグループだ。彼らは誰よりも彼ら自身が心の底から音楽を楽しむように、演奏し、歌う。それぞれの楽器や声で、おしゃべりをし、冗談を言い、笑い、ふざけてみたりする。視覚的にも表情豊かで、その音楽もまた表情豊かだ。彼らの手にかかったスタンダードは、魔法をかけられたように鮮やかに目の前に再現される。3枚のアルバムに収録されている曲も多く演奏したけれど、同じアレンジのものは1つもない。その尽きることのないアイディアは一体どこから出てくるのだろうか。

いたずらっ子のようなメンバーたちは、突然腕とひじでピアノを弾いてみたり、雄叫びを上げてみたり、ヘビーメタルバンドも真っ青なドラムを叩いたり(最後にはドラムを叩いて壊しそうな勢いでひたすら唖然)、誰かが仕掛けた冗談にバカ受けしたりとやりたい放題で、次の瞬間何が起こるか全く予測がつかない。誰が何をやってもピタリと合わせられる素晴らしい演奏能力と息の合い方だ。

セカンドセットは1時間ほどと結構長めで、拍手に迎えられてアンコールにもう1曲。魅了されるというのがぴったりなそんなパフォーマンスだった。

ところで演奏中、ステージ前で写真を撮っていた人がもう1人近くにいて、途中で突然「ズームレンズ持ってる?」と訊かれた。その若い女性は Nikon D70 を使っていて、レンズは1本(多分あまり長くないズームレンズ)。いや、単焦点ばかりだけど、と言うと、ちょっと見せてね、と彼女が目をつけたのが私の持っていた105mm。貸してくれる?と言われ、いいよ、と貸したところ、結構気に入ったらしく、たくさん撮っていた。デジカメに105mm を付けたら大体フィルムカメラの 135mm かそれ以上になるだろうから、結構迫力のある写真が撮れるだろうなぁ…と思いつつ、返してくれないので、彼女の外したレンズを見たけれど、デジカメ専用のしかもGタイプ(絞りリングが付いてないタイプ)だったので私は使えない。でもなかなかあんなところで知らない人とレンズ交換(とは言わないか)することもないだろうし面白い出来事だった。Come Shine は被写体としてとても面白い素材だったので、写真をたくさん撮ってしまった。いい写真が撮れているといいのだけれど(私もレンズを借りた女性も…)。

人ごみに飲み込まれて外に出たら8時40分を過ぎていた。どうしようかと一瞬迷ったけれど、タクシーを捕まえて次の会場へ。

Bruvoll / Halvorsen @ Det Åpne Teatret:
Tore Bruvoll (g, vo), & Jon Anders Halvorsen (vo)

会場の Det Åpne Teatret は Grand Hotel などオスロ中心部からは中央駅を挟んで反対側(東側)にある小さな会場。歩いて行ける距離だけれど、彼らの演奏は8時30分開始予定なのでタクシーにした。今年リリースされたデビューアルバム "Nattsang" がとても気に入っている彼ら、是非見てみたかったユニットだ。このステージは Øyafestivalen のプログラムの1つだけれど、ネオトラッドということもあってか年齢層は高め、といっても観客はたったの20人位で、私も会場隅の床に座り、そこから写真を撮りつつリラックスして彼らの音楽を聴くことになった。

この日この会場には4組登場するとあって、後ろにドラムセットやらなにやらがごちゃごちゃ置かれた前に、向かって左側に小柄なギタリスト Tore Bruvoll、右側にすらりとしたボーカリスト Jon Anders Halvorsen が並んで座っている。Jon Anders Halvorsen は客席奥のもっと遠くを見つめるようにまっすぐ視線を前に向けて、伸びやかな声で歌う。歌は非常にトラッドで、アルバムでもそうだったように、歌い手というより語り部だ。感情を込めることもなく、でも淡々とというのも少し違う、不思議な力強さに満ちた歌声だ。それは彼の涼しげなルックスとシンクロするようでもある。ネットで見た彼らのライブから事前に認識していたが、アルバムとライブで大きく違うのは黒い髪と瞳のギタリストTore Bruvoll のほうだ。トラッドというよりブルースロックとかの影響が強そうなプレイヤーで、相方とは対照的にとてもエモーショナルなギターを爪弾き、あるいはかき鳴らす。この日の1時間弱の短いステージでも3本のエレアコをとっかえひっかえ、曲によってはボトルネックを付け、スライドギターも弾く。フェスティバルで出会ったというこの2人、もし出会わなかったら Tore Bruvoll はどんな音楽をやっていたのだろう、とふと思った。とにかく、2人のバランスは絶妙で、阿吽の呼吸というのとはまた違った、異なるカラーを持つ2人ならではのアンサンブルになっている。

彼らは Telemark という地方の言葉で歌っていて、曲が始まる前に簡単に歌の説明する。ブックレットに載せられていた原語での歌詞は私にはもちろんまるでお手上げだけれど、普通のノルウェー人にも分からない、ということになる。MC は2人とも取り、どちらが喋るでもなく普通に観客に語りかけている、その様は彼らの音楽と全く同じだ。観客は少なかったけれど、非常に熱心に聴いている人が多く、とても心地よい空間だった。無理してでも見ておいてよかった、そんな素敵な静かな時間をもらったと思う。

終わったのは9時半近く。そこからゆっくり今度は歩いて市の中心部に戻る。ちょうど夕暮れ時なのはいいのだけれど、この中央駅のすぐ北側のエリアは外国からの移民の人(イスラム系の人など)が多い地区で、他の地区とは明らかに違う雰囲気だ。治安が悪いといういうほどではないけれど。

一旦ホテルに戻り、さすがに予定していた Blå のステージを覗くのはパスして、11時過ぎに前日同様 Grand Hotel の地下のジャムセッションへ。

Eivind Opsvik Overseas @ Kokkos / Grand Hotel

前日はファーストセットの Eivind Opsvik Overseas のステージはあまり見れなかったけれど、この日はまたもや遅刻(というかこちらに来て以来あらゆるステージに遅刻している私である)したとはいえ、かなりゆっくり楽しめた。他には小声でマークさんと本日の報告をしたり。

この日のジャムセッションは一般飛び入りも多く訳の分からない状態になっていたが、最初に登場した Frode Nymo (as) はさすがの演奏だった。上手い。音もフレーズもとにかく異常に上手い。Urban Connection の来日公演のときも彼の吹きっぷりに唸らされたが、この日もあっという間に空間を自分のフレーズに集中させるかのようだった。深夜1時半もまわり、ダレダレになってきたので帰ろうかと思ったところで突如 Ole Jørn Myklebust (tp) が何故かスーツを着込んで登場、1曲の半分くらいで結構派手にソロを決め、吹き終わると曲の途中でさっさと楽器を片付けて引っ込んでしまった。この日はかなり早い時間から Håvard Wiik が来て真面目にステージを見物していたので、出るのかと期待していたのだけれど、彼もまた友人と飲みに入ってしまい登場はなし。ジャムセッションは前日よりも少し早く、2時15分位に終了した。

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