2005-08-12 (fredag)

昨日より遅くに起きて、朝食をとり、サイトを更新して、メールを受信し、昨日の受信分の返信を送信し、Øyafestivalen へ。天気は曇りながら日も射している。雨が降らないのはとにかくありがたい。

The Thing @ Enga / Øyafestivalen, 14:35
w/ Mats Gustafsson (ts, bs), Ingebrigt Håker Flaten (b), Paal Nilssen-Love (ds) with Thurston Moore (g)

フェスティバルの公式パンフレットには 14:50 、簡易バージョンのプログラムには 14:35 と書かれているのに当日朝になって気づく。2時半頃に到着したら、メンバーはまだステージでセッティング中。一番大きいステージ Enga のこの日2組目の出演とあって、観客はまだ随分少ない。Paal Nilssen-Love や Ingebrigt Håker Flaten が時折楽器を鳴らし、観客は遠巻きに見物している。サウンドチェックの一番最後に「ギタリスト」が出てきて自分の楽器をギャーン!と鳴らした瞬間、周辺が静かになり、ピーンと空気が張り詰める。ギタリストが誰なのかわかったからというより、その圧倒的な音のせいだ。

結局35分と50分の間にステージが始まる。昨年の今日、オスロの有名なクラブ Blå で同じ The Thing を見ているが、さすがに日中の屋外のコンサートとあって雰囲気はやや拡散する。しかし、ロックフェスを見に来るファンに彼らはどう捉えられたのだろう。最前列にはさっきから口がぽかんと開いたままの青年がいる。ステージには顔を真っ赤にし、鬼の形相で楽器に食らいつく「ジャズミュージシャン」が3人。体育会系のトリオは、何かを極めようとするかのような演奏を繰り広げている。テンションが上がったところで、Mats Gustafsson が(多分スウェーデン語で)MCを取り、ゲストミュージシャンを紹介する。「Thurston Moore!」というコールに観客が沸く。

Thurston Moore が右端に入り、狂ったかのようなミュージシャンが3人から4人に増殖して爆音セッションに突入。セッションは Paal Nilssen-Love が少しずつビートを具体的にしていき、やがて Ingebrigt Håker Flaten が加わり、曲へと移行する。カルテットでの演奏は長めの1曲のみだったが、素晴らしい演奏だった。観客は多くはなかったが、アンコールを求める拍手が止まらず、進行が遅れていたにもかかわらず3人でアンコールとして短い即興演奏(ただしある種定番の「極短セッション」で、昨年もアンコールで同様のことをやっていた)で応え、その3人のやり取りにまた盛り上がった。

終了後、真ん中のステージ Sjøsiden へ。

Ane Brun @ Sjøsiden / Øyafestivalen, 15:20

ノルウェーのメディアではよく見かける名前で、Øyafestivalen が製作したコンピレーションCDに入っていた曲がよかったのでステージを観てみたいと思っていたアーティスト。ブルージーな女性シンガーソングライターで、ギターを抱えて少し気だるい、けれど雰囲気のある声で歌う。派手さはないが、ステージでも歌はとても安定している。結果的にはこのアーティストがこの日の「清涼剤」となる。

ステージを遠くから観ていると携帯が鳴る。メモリに入っていない設置電話(※ノルウェーでは電話番号は全て市外局番なしの8桁、「9」から始まるのが携帯で、それ以外は設置電話)からの発信。賑やかな音楽ではないとはいえ、やはり大音響の中なので、急いでステージから少し遠ざかって電話に出る。音楽のせいで最初の名前が聞き取れなかったが、「今からフェスに行くからそっちで会おう」と言われる。だ、誰?と思ったら Rune GrammofonRune Kristoffersen。じゃあ後で、と安易に言うけれどこの人混みで大丈夫だろうか。


Ane Brun の続きを見てから大きいステージ Enga に移動。Sissy Wish という国内ではとてもよく知られた女性シンガー。ステージを観る限りではポップというよりロックシンガーなのだけれど、それ以上はどう説明してよいか分からない。ジーンズ姿でギターを抱えるシンガーソングライター的なスタイルだけれど、姿も声も派手というほとではないが素朴さもあまり感じられない。


Diskaholiks Anonymous Trio @ Sjøsiden / Øyafestivalen, 16:45
Jim O'Rourke (g, electronics), Mats Gustafsson (ts, bs, electronics), Thurston Moore (g, electronics)

時間帯のせいか、観客は多くはない。3人が出てきてそのインプロセッションは始まったが、カメラマンもどこにカメラを向けていいかわからない雰囲気だ。スタッフも演奏が全く途切れないので「最初の3曲のみ撮影可」というルールを適用できずに困っている。

床に並べた機材をいじりながら、時折それぞれの楽器を持って立ち上がりかき鳴らす(吹きまわす)1本勝負のセッション。最初は普通に(というかどうかはわからないが)ギターを弾いていた Thurston Moore はステージ半ばで突然バックステージに戻り、小道具をひっつかんで再登場。その後はギターを床に置き、ヘラみたいなものでがしがしと弦をこすっている。何が起こるかわからないその演奏を、観客は固唾を呑んで見ている。その観客の様子を見物しているスタッフも苦笑いとも何ともいえない表情を浮かべている。もちろん Blå のようなクラブで演奏するのが一番似合いそうなグループだけれど、こういうステージも案外悪くない(ステージが高すぎるため床に並べられている機材が誰にも全く見えないのは残念だが)。この種のステージはあとから思い出して言葉にするのは非常に難しい。ただ音が鳴っている瞬間にかなり集中していた(集中できた)ことだけは確かだ。


Rune Kristoffersen とはこのステージの後に遭遇。というより、携帯電話がなければ人ごみの中から小柄なノルウェー人を1人見つけるのはほとんど不可能だ。私は幾分目立つはずなので、見つけてもらうのを待つしかない。このフェスティバル、去年は1ステージしか見れなかったが、どうもあの時より人が多い気がする。

少し時間が空いたので、奥のステージ Vika を偵察に行く。Øyafestivalen の会場、手前の Enga のあたりは遺跡のような石積みの建物跡があり、それ以外の芝生(というような上等なものではないが)のところで寝そべって見る人も多いが、奥のVika のあたりはビーチのようになっていて、さらにのんびりしている人が多い。手前のステージ2つが谷間に当たることもあり、会場中の人が奥へ詰めかけ身動きもできず、ステージに近づくことすらできない。


Death From Above 1979 @ Sjøsiden / Øyafestivalen, 18:15

数分遅れて会場に着いたら既に演奏が始まっている。分かっていたのはカナダのグループということだけで、ステージからはヘビーメタル調のアグレッシブな音楽が聞こえてくる。観客エリアの右端から見ると、ステージにはドラマーとベーシストの2人しか見えない。まさか、と思いつつステージが全て見渡せる中央部まで人をかき分け移動。やっぱり2人しかいない。ステージ中央にはギターみたいな音を出すベーシストと、ステージ右には高速ヘッドバンギング系ビートを叩きながら歌うドラマー(しかもガナリ声ではなくまともな歌唱だ)。2人しかいないのに相当な音圧。デュオで音楽をやっているというより「芸」に近い雰囲気だ。実際は "Øya"(エーヤ)なのだけれど、彼らにとっては "Oya" (オーヤ)なのだろう、それに引っ掛けてやたらに "Oh Yeah!" を連発するのがおかしかったが、ステージは面白く、後ろの方のファンにもかなり受けていた。


しばらくうろうろしたりしばし休んだりしてから、真ん中のステージ Sjøsiden で Annie を見物。ダンスミュージック系の人気シンガー。グリーンのドレスを着たシンガーは歌っているが、声が全く聞こえない。場所が悪いのかとも思ったけれど、ラップぽくなる部分や MC はよく聞こえるので、歌っている時の声量に問題があるのだろうか。面白かったらもう少し見ていようと思ったけれど、人の流れに乗って Enga へ移動。


Satyricon @ Enga / Øyafestivalen, 18:55

隣のステージの Annie から10分後に始まったステージ。ドラムが奥で、フロントにはギター×2、ベース、ボーカル、時折スクリーンに映し出されるキーボード奏者はレギュラーメンバーかどうかはステージを見た限りでは分からず。全員上下黒、長髪、白塗りにメイク、ガンベルトにイガイガのついたリストバンド、足元のモニタに左足を載せて4人並んでヘッドバンギング、歌詞は地獄がどうとか言っている、つまり絵に描いたようなデス/ブラックメタル系のグループ。ボーカルがデス声なのはいいとして、観客から上がる歓声まで心なしかデス声で、いやはや。ステージは火柱まで上がる派手なもので、演奏も上手くて見せるステージングだった。しかしどうして今日はこんなにヘビーなものばかりなのだろう?


Sonic Youth @ Enga / Øyafestivalen, 21:35

フェスティバル一有名なアーティストということで、カメラマンピットの混雑が半端でない。とはいえ、望遠鏡みたいなズームレンズをくっつけたカメラをいくつも抱えた人もいるが、ポケットに入りそうなコンパクトデジカメを向ける人、またフラッシュは禁止されているのに(されていなくても使わないのは当然)外付けフラッシュをつけていて案の定光らせて注意される人など様々。もっとも、単焦点しか使わないため、がしゃがしゃレンズを付け替える私はどこのステージでも相当に異色だが…。

ピットから出てきて、ステージが見えるところまで移動したところで Smalltown Supersound の Joakim Haugland に発見される。屋外の会場は10時を過ぎかなり暗くなってきているし、知っている顔を発見するような数の観客ではない。横には Paal Nilssen-Love がいる。昼間の The Thing のステージ上から私を確認したというが、あの演奏中に観客を見ているとしたら凄すぎる。

Sonic Youth は写真を撮っていた最初の3曲は比較的普通に曲を演奏。その後、ある曲の終わりの部分でメンバーが楽器を振り回し始め音楽、というよりステージは混沌とした様相を見せ始める。と、それがひと段落着いたらまた曲の演奏に戻る。アンコールで Mats Gustafsson が登場、この日はどうやら順列組み合わせのように「その周辺」のミュージシャンが登場する。そのアンコールのセッションは終始カオスで、楽器こそ壊さないもののその寸前のところのパフォーマンスの中では、あくまで「吹いている」Mats Gustafsson が普通に見えるほどだ。ショーとしては面白いが、個人的にはインプロヴィゼーションとはまた異なるそのカオスは少し長すぎた。もちろん、ステージ全体としては彼らの曲をほとんど知らない私でも楽しめたが。


Paal とはまた月曜日に、Joakim とはじゃあまたその辺でといういい加減かつ適切な挨拶をして分かれ、ぞろぞろと会場を後にする人の波に乗って退散。夜の部はパス。

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