2005-08-13 (lørdag)

宿泊先のホテルの朝食はビュッフェスタイルで別に珍しいものはない簡単なもの。初日から気になっていたレッドビーツや酢漬けの魚、謎のマヨネーズ和え、たらこペーストなどを初めて試してみたが、やはり朝っぱらから食べるようなものではないと思われる。

Øyafestivalen の会場に入り、Rune Kristoffersen と話をして(昨日どうしてメモリに入れてあるのと異なる番号から電話がかかってきたのかの謎も解明)すぐに真ん中のステージ Sjøsiden へ。

Shining @ Sjøsiden / Øyafestivalen, 15:15
w/ Jørgen Munkeby (sax, g), Andreas Hessen Schei (key), Aslak Hartberg (el-b), Torstein Lofthus (ds)

スタートと同時に突然雨が落ちてくる。さっきまでは問題なく晴れていたのに、Shining はその名前に反して(?)2日前の JR Ewing 並に雨乞いの音楽なのだろうか。それはともかく、このグループは地元ではどういう風に捉えられているのだろう。少なくともステージ上のメンバーは、見かけもやっていることもジャズではない。3作目 "In The Kingdom Of Kitsch You Will Be A Monster" の路線だけれど、ライブのほうがよりはっきり方向性が見える。かなりパンク寄りとも言えるロックで、それが物凄く複雑なリズムに乗って登場する。最前列で頭を振っていたファンもいたこことにはいたが、個人的には、複雑でも感覚的に把握可能なリズムであれば音楽に乗れるのだけれど、どうも乗りづらい。

リーダー格である Jørgen Munkeby は、テナーサックスよりレスポールやエレクトリック・サックス(この楽器の正しい名前は知らない)を吹く場面が多く、長髪を後ろに束ねた超細身の彼の姿はジャズミュージシャンというより今 Shining でやっている音楽にぴったり。ただし、印象に残ったのはクールに吹きまわすテナーサックスだ。彼は曲の最中に細かい指示を出しているが、MC を取るのはベースの Aslak Hartberg。ヒップホップもやっている彼の MC はさすがに軽妙というか流暢。右端の Andreas Hessen Schei は凄い短髪になっており、一瞬また別の新しいキーボードプレイヤーに 替わったのかと思ったほどだ。もともとロック的な感覚を持ち合わせたドラマーの Torstein Lofthus は、その複雑なリズムとは異なり、わりとストレートに力いっぱいドラムを叩いているという印象。

見る前はアルバムとは別の印象を受けるかとも期待したけれど、結果としてほぼ同じ印象を受けた。


メインエントランス近くでフェスのライブ写真をじっくり鑑賞した後 Øyafestivalen の会場を後にし、オスロの中心部をつっきり北へ移動。緩やかな坂道を上がり Grünerløkka へ。小さなバー兼レストランのようなところでグヤーシュ(パプリカの入ったハンガリーのスープ)を食べる。ちょっと塩辛いが、まあまあおいしい。しかし高級レストランでもないのに 85NOK、約1300円のスープって一体!バーカウンターのところではサッカーの試合を中継するテレビを囲んで賑やかだ。と、そこへ携帯電話が鳴る。今回はメモリに入っている番号だったので相手が誰かわかる。電話の主は、これから行くコンサートのチケットを買っていないことを確かめ、ゲストリストに入れてあるから、と言う。

時間より少し早く Parkteatret (去年 Supersilent の DVD 収録コンサートを見たところなので場所は分かる)へ行き、開場を待っていると突然日本語で、「日本人の方ですか?」。日本人に話しかけられたかと思って顔を上げるとノルウェー人女性。こちらは突然の日本語にパニック、相手の女性はその後を何語で続けようか戸惑っている。ゲストリストの件で連絡を受け、私を見つけて声をかけて下さった関係者の方。クラシックの演奏家であるその女性は日本に5年住んでおられたそうで、それで日本語が上手だったというわけだ。


Oslo Sinfonietta dir. Christian Eggen @ Parkteatret / Oslo Kammermusikk Festival, 18:00

オスロ室内楽フェスティバルは8月12日〜21日までの間、オスロ市内の様々な会場で行われている。モーツァルトやシューベルトといった「クラシック」なプログラムもあるが、演奏者も作曲家もノルウェーのアーティストをサポートするプログラムが組まれており、特に今年はノルウェーのスウェーデンからの「平和的分離独立100年記念」ということでスウェーデンのアーティストもフィーチャーされている。

Oslo Sinfonietta は 1986年に結成されたアンサンブルで、メンバーは流動的。この日は最大22人、ゲスト扱いになったのは知人がこのアンサンブルのメンバーだからだけれど、プログラムを見るともう1人会ったことのあるミュージシャンがいた。つまり、結構クラシックオンリーではなく、様々なジャンルをこなすミュージシャンは多いのだろうと思う。

この日のプログラムは4つ、1つめはスウェーデンの Ole Lützow-Holm (b. 1954)、2曲めも同じくスウェーデンの Erik Peters (b. 1971)、3つめはノルウェーの Julian Skar (b. 1982)、休憩を挟んで後半は Ligeti。22人で演奏したのは最初の Lützow-Holm のみ(ステージはさほど広くないので、22人も演奏家がいると落ちそうだ)で、Peters は8人、Skar は13人、Ligeti ではもう少し人数が増え、というように、マテリアルによって編成が異なる。

指揮は Chrisitan Eggen。ノルウェー物 ECM などでも知られる、現代音楽指揮の名手。演奏された音楽はいずれもかなりミニマルなもの。普段即興演奏系のものをよく聴いていると、こういうフリーフォームな音楽が「書かれた」ものであることに逆に驚かされる。若干23歳の作曲家 Julian Skar のプロフィールにはポップ、ロック、クラシック、現代音楽、エレクトロニカ、ジャズ、アヴァンギャルドの音楽を手がけると書かれており、イマジネイティブな音楽とその幅広さが面白い。


Grünerløkka から Blå を通り過ぎ、一度部屋に戻って1枚多く着てからすぐにまた外出。

Jan Garbarek @ Karpedammen, Akershus Festning / Oslo Kammermusikk Festival, 21:00
w/ Jan Garabrek (ts, ss), Rainer Brüninghaus (p, synth), Eberhard Weber (b), Manu Katche (ds)

このプログラムがジャズフェスではなく室内音楽フェスに組まれているのには何となく納得できるものがある。ドラムがレギュラーメンバーである Marylin Mazur ではなく Manu Katche だというのは Oslo Sinfonietta のコンサートの際に購入したフェスのプログラム(30NOK=約480円、ちなみに他のフェスのプログラムは無料)で初めて知った。会場は13世紀頃から建設された古い城の庭で、ステージはちょっとした崖にあり、その前には池、その手前に観客のエリアがある。到着した頃には椅子席は満員、前方とサイドの草の上も埋まり始める。

Manu Katche は明らかに「代役」で、彼だけ譜面を見ている。時折少々先走るドラムはハラハラしなくもないが、彼のパワフルな音が Jan Garbarek の音楽を少し動きのあるものにする役割を果たしている。演奏された曲が去年の東京公演とかなり異なるのは最近のツアーの仕様なのか、それともドラマーのカラーの違いを考えてのものなのかは分からない。それ以外の構成は東京公演の際と同じで、2時間ほどのセットにそれぞれのソロも長めに取られる。

ビールやワインを片手に、だんだん暮れてくる屋外でコンサートを聴くのはなかなかしゃれた趣向だけれど、どんどん冷え込んでくるのはちょっと辛い。終盤、Rainer Brüninghaus のソロがあまりに心地よく(疲れもあるが)あやうく眠り込みそうになる。凍死するほどではないとはいえ、ちょっと危ない。

実に様々な観客は真面目に聴いていて、演奏が終わると大きな拍手と歓声が上がり、セットが終わった時にはスタンディングオベイション。それに応えてアンコールも1曲披露された。


街の南側にある会場を後にし、市内中心部へ。

Kill @ John Dee / Øyafestivalen, 23:30

我ながらどういうハシゴだとは思うが、正直なところやっぱりこちらのほうが好みには合っている。Øyafestivalen の夜の部の会場は大きいほうが Rockefeller、横にある小さなクラブが John Dee。

Kill は Jaga Jazzist のドラマー Martin Horntveth がメンバーのデスメタルエレクトロニカユニット。時間より少し遅れて会場が暗転し、メンバーがステージへ。右奥に Martin Horntveth のエレキドラム、奥左にエレクトロニクスとベースの Are Mokkelbost (Single Unit)。手間両端には2人のギタリスト(2人ともちょっと太っちょなのが音楽にあまり似合わないような気がしておかしい)、左のリーゼントが2日前に見た JR Ewing の Erlend Mokkelbost、右の口髭が Espen Hangård (No Place To Hide)。

大轟音とそれに合わせてビカビカと稲妻の如く光る照明に最初の一瞬から驚愕。Martin Horntveth の "Skull EP" (2003) でも No Place To Hide の曲をやっていたが、それ以上の衝撃度。とにかく尋常ならざるアグレッシブさだ。この日のステージのために新曲も用意した、と言っていたことからすると、曲はインプロではなくちゃんと書かれているということになる。猛烈にアグレッシブな轟音が放たれたかと思うと、ピタリと止まり、また次の瞬間轟音が襲ってくるという志向で、先が読めない。

先が読めない不規則さ、という意味ではこの日の昼に見た Shining も同様だったけれど、決定的な違いは、こちらの Kill は、少なくとも私にとっては、感覚的にその不規則さに乗れるということだ。その暴走があまりに正確に決まるのに驚いたが、どうやら Martin Horntveth がコントロールしているようだ。Jaga の時と同様、彼のスティックが指揮棒代わりなのだ。

メンバーは交互にマイクに向かい、デス声か何だか判別不能な絶叫を繰り広げる。2人のギタリスト、特に左のErlend Mokkelbost は JR Ewing の時同様のモッシュな徘徊を見せるが慣れており(?)ぶつからない。点滅する凄い明るさの照明はエレクトロニクスに直結しているのかぴったりと音楽にシンクロして効果絶大。もっとも写真を撮るという点では、露出は決まらないし、メンバーがウロウロしてピントは合わないし急に他のメンバーが視野に乱入してくるし、おまけにスモークまでたかれたりで難易度が高すぎる。

これまで見たことがないレベルで凶暴な(注:褒めている)ライブは、Martin Horntveth が椅子をひっくり返し、マイクをひっつかみ咆哮して終了。凄く面白いものを見てしまった、そんな気分になったライブだった。


終了後、Martin Horntveth と話したりしているところで突然 Are Mokkelbost に捕まり、写真を送ってくれと言われる。パスをぶら下げて写真を撮っていたからだろうけれど、面識はなかったし(彼がサイトを知っているというのは後で発覚)、ライブを見るのもこの日が始めてなので、一瞬目の前のごく普通のお兄さんとさっきステージで絶叫していた人が一致しなかった。写真を送る約束をして、隣の Rockefeller を覗く。Amulet というグループが演奏中。この後 Cato Salsa Experience が出る予定だったが、01:15(注:夜中)の開始時間まで立って見ているのが不可能なため退散。フェス初日のトリの Turboneger もこの日のトリの Madrugada も、きのうこの会場でのトリだった King Midas も、そして Cato Salsa も見(れ)なかったことにかなり罪悪感を覚えたが…。


ホテルに戻り、この日の朝、ツアー先の Håkon Kornstad から水曜日のデュオコンサートの写真の解像度が高いものが必要だとの連絡が回ってきていたのでこれに対応。どうやら真面目に雑誌に載るらしいのだけれど、本当にこんな写真で大丈夫なんだろうかと思いつつ、ホテルのロビーから 8.5 MB のデータを送信。ISDN よりは速いが、ブロードバンドというには随分遅い回線のせいでかなり時間がかかるため、ひんしゅくをかわないようにと昼間ではなく深夜を選んだのに、Øyafestivalen から戻ってきたのかロビーは若い人で出入りが激しい。

home