2005-08-18 (torsdag)
だんだん朝起きるのが遅くなり、朝食の量が減ってくる。
昼の12時に Bare Jazz へ。カフェは混雑している。AIM Records のオーナー Kristian Skårbrevik と合う。写真を撮るのを忘れていたが、黒い髪に青い目の青年。自らもギタリスト(どちらかというとスタジオミュージシャンだそうだ)で、バークレーで学んだことがあると言う。カフェオレを飲みながら1時間少々いろんな話をする。
もらったレーベルサンプラー "Selected Works Vol. I" (AIMCD 111) に1曲だけまだリリースされていない音源が入っている。Orange という新しいトリオで、メンバーは Vigleik Storaas (p), Sondre Meisfjord (b), Stig Rennestraum (ds)。"Mold" とタイトルされたトラックがドラマー Stig Rennestraum のクレジットになっている。ドラマーが曲を書いているの? と訊いたら、そうだと言う。ピアノトリオなんだけれど、もうほとんどポップソングみたいにメロディアスだそうだ。
Bare Jazz の店内を少し見たあと、1つ南の大きな通り Karl Johan を横切ったところで、2日前に知り合っていらいあらゆるところで遭遇しているアメリカ人ジャーナリストに追いつき、一緒に Grappa / Rune Grammofon のオフィスへ。約束の1:30よりまだ大分早い。出迎えてくれたのは Grappa のオーナー Helge Westbye で、しばらく彼と話をする。ついさっき、5分前までここに Karin Krog がいたんだよ、と言われ、Bare Jazz で時間をつぶさずまっすぐ来ればよかったと後悔。
しばらくして Rune Kristoffersen に交代。オフィス奥の応接セットのところには小さいテレビがあり、何と Supersilent "7" を見せてくれると言う。私の記憶にあるちょうど1年前のそのコンサートは、もちろんカラーだ。画面には白黒、しかも写真でいうところのアンダー気味の画像、つまりかなり暗い画面で、3台のカメラの映像を繋ぎ合わせたもので手持ちのカメラがないため恐ろしくシンプルな画像だ。一応話をしにきたのに、話は他の2人に任せておいて私は終始画面に見入ってしまう。
いくらかこれからのリリース予定のことなどの話をした後、オフィスの中の写真を撮らせてもらう。何度となく来ているが、写真を撮るのは初めてだ。次に会うのはいつかまだ分からないが、じゃあまた、と挨拶をしてぐるぐると螺旋階段をおり、Karl Johan まで戻り Grand Hotel へ。なんだか便乗するような形で Jazzaway Records のオーナー Jon Klette と合う。合う、といっても月曜に一度 Blå で会っているが、先のアメリカ人ジャーナリストと3人で食事をする。たまには典型的なものでもいいかとサーモンとビールを頼んで約 200 NOK、3200円。
結構長い間話をして(というより私はノルウェー関係の話以外の時は横で話を聞いていただけだが)一度ホテルに戻る。Oslo
Jazzfestival のサイトをチェックしてみたら、Roger Kellaway が病気で出演をキャンセルした2公演の代役が発表されている。私にはむしろ絶対にそのほうがいいという代役だ。
昼に AIM の Christian Skårbrevik からもらったサンプル盤の問題の1曲が気になっていたので、CD-ROM
ドライブをノートパソコンに繋げ、その1曲のみリッピング、iPod へ移して聴いてみる。「!!!」…これは凄いかもしれない。思わず携帯電話をとって、凄いよこれは、と電話をしそうになったが思いとどまる。1曲だけでは判断できないが、アルバム全体を通してこんなメロディーがいっぱいなら、これは今年後半大変な話題になる可能性がある。
カメラの装備を追加し、珍しく時間に余裕を持ってライブ会場へ。
■ Cæcilie Norby / Carsten Dahl / Lars Danielsson @ Scene West Victoria / Oslo Jazzfestival, 18:30
w/ Cæcilie Norby (vo), Carsten Dahl (p), Lars Danielsson (b, cel)
この会場はメジャーなアーティストが登場、しかも時間帯が他とぶつからないため、いつもかなり入る。6時半の開演予定より15分ほど遅れてステージへデンマーク人が2人とスウェーデン人が1人登場する。ステージ左に
Carlsten Dahl、中央に Lars Danielsson、右に Cæcilie Norby、凄い顔ぶれだ。
ステージはとても静かな曲から始まった。美しい演奏だけれど、これが2時間続くのかとちょっと不安になる。ところがステージは曲を追うごとに目が離せなくなってくる。長身でスタイルもよく、ゴージャスなブロンドの
Cæcilie Norby は北欧を代表する「歌姫」という表現が似合うシンガー。比較的まともにジャズシンガーといった感じだが、時折パーカッションを叩く振り付きでパーカッションをヴォイスで表現する。ヒューマンビートボックスとまではいかないが、ドラムのないこのセッティングでは面白い。
ユーモア溢れるやりとりも随所で見られ、特に Cæcilie Norby と Carsten
Dahl のパフォーマンスには会場から笑いももれる。レベルの高い演奏はさすがに圧巻で、Lars
Danielsson の右手のめまぐるしい(本人はもちろん平然とやっている)のには見ているだけでも追いつかない。しかも息が合ったコンビネーション、それにとてもジャズらしい即興が加わり、予想外といっては失礼だけれど、見て聴いて楽しいパフォーマンスだった。音楽は欧州的というよりとても北欧的だが、デンマークとオスロのシーンの違いも見られて興味深かった。
アンコールには Leonard Cohen の "Hallelujah" が演奏された。最初と最後は比較的普通のアレンジで、Lars Danielsson はベースを抱えてギターのような音を爪弾く。しかしループを使用し、ピアノももしかしたら何かを入れてプリペアドにしたのかもしれないガラリと雰囲気の異なった中央部のインストパートのアレンジはとても印象に残った。
休憩を挟んで45分のステージは9時に終了。歩いて街の北にある Blå へ直行。
■ Peter Brötzmann Chicago Tentet @ Blå / Oslo Jazzfestival, 21:00
w/ Peter Brötzmann (sax, cl), Ken Vandermak (sax, cl), Mats Gustafsson (sax), Joe McPhee (tp, ss), Magnus Broo (tp), Per-Åke Homlander (tu), Fred Lonberg-Holm (cel), Kent Kessler (b), Michael Zerang (ds), Paal Nilssen-Love (ds)
9時開演とされているが、例によって決して時間通りには始まらない。15分も遅れて着いてもまだ川べりのテラスが人で賑わっている。しかし中も既に相当に埋まっており、やっとのことでステージに向かって右端の最前列へ。始まらないので横のおじさんと話しをする。君っていつも見かけるよね、と言われびっくり。いや、そんなことはないはずだけれど…と思ったら、去年の同じフェスティバル、同じ会場での
The Thing のライブの時、ちょうど同じ場所でやっぱり私のすぐ後ろで中判カメラで写真を撮っていた人だ。ストックホルムに住んでいて、一時期ノルウェーのスタヴァンゲルにもいたことがあり、そんなこんなで
Paal Nilssen-Love の傑作写真を撮ることを「委託」されているのだそうだ。この会場は暗くて写真撮るには最悪、というところで意見は一致。
9時半を過ぎたころ、メンバーがぞろぞろと登場。ベースとチェロ以外はアンプを通さないため、ステージ上に全くマイクがなくすっきりしている。この狭いステージに10人のミュージシャンがのっかっているのを見るのは2年前の
Jaga Jazzist 以来だが、今回はメンバーの面構えが怖すぎる。特にフロントに(左から)
Vandermark - Brötzmann - Gustafsson - McPhee とずらりと並んだ迫力は類を見ないものがある。
長いセッションが2セット、曲はフレームワークがかなりきちんとあるらしく、それぞれが持ち場になると楽器を構え、演奏に加わり、それ以外のときは目を閉じてじっと音楽を聴いている(ただし
Paal Nilssen-Love のみ目をキョロキョロさせて音楽に反応しているのが面白い)。リーダーはもちろん
Peter Brötzmann だが、実際他のメンバー、特にホーンセクションに合図を送り、合わせるところで楽器を指揮棒代わりに振っているのは
Mats Gustafsson だ。
ボルテージが上がるところではみな一斉に咆哮するが、ドシャメシャな印象はあまり受けない。それぞれにきちんと持ち場が配分されており、それぞれのカラーを生かした演奏の場が与えられている。音の面では一番最近加わった
Magnus Broo のトランペットが切り裂くような音でひときわ目立ち、他のミュージシャンでは、Kent
Kessler の存在感がインパクト大だった。
会場は大いに盛り上がり、まさかアンコールはないだろうと思ったら、もう1曲演奏された。ステージが終わったのは夜の12時。休憩が長かったとはいえ、結構なライブだった。
翌日ベルギー公演を控えている彼らはあわただしく機材をまとめ、Paal や Magnus
と最後の挨拶をする。Paal には新しいCDを2枚もらったが、それにしても、これ持ってる?と訊かれて、持ってない、と私が答えた時の
Paal の嬉しそうなことといったら…。
去年(というより2001年以来ずっと)話をしそびれた Eivind Opsvik は今年もオスロに戻ってきており、やっと話ができた。火曜日の
Supersilent のライブ時に最前列にかぶりついていたのを目撃されていたらしく、やはり(?)
こんな小さい街ではどこで誰が見ているか分からない。もう長い間ニューヨークに住んでいる彼だけれど、夏にいつも戻って来る理由は季節がいいからだけかと思いきや、ここのシーンもチェックしなきゃいけないしね、と言う。
Eivind Opsvik と話をしていると、突然ギタリストの Ketil Gutvik が現れる。昨日この Blå で行われたステージを見れなかっただけに肩身が狭い。フェスティバルの別のコンサートを見に行っていたの? と追求されたので、いやそういうわけじゃなく…となんとか切り抜ける。ちょうど "After Hours" 誌の最新号を持っていてそれの話を Eivind Opsvik にしていたところで、後ろに Paal Nilssen-Love のレコードコレクションの記事もあってね、と見せたら、Ketil Gutvik がこの写真、僕が撮ったんだよ、光がむずかしくてね…と言い出してびっくり。Paal Nilssen-Love はアナログな人でデジカメを持っておらず、友達が来て撮ってくれるから…とは言っていたがまさか Ketil Gutvik だったとは。
その後 Ingebrigt Håker Flaten にも会う。バタバタとあわただしいフェスティバルウィークだったため、まともに話をするのは始めてかもしれない。昨日私がここにいなかったのはもはやバレバレ(こういうときに完全に顔が割れているのはとても辛い)なので、これなくてごめんね、というより凄い残念だったんだけど、と言ったら、どうも新しいバンドで新しいマテリアルに取り組んだのが2日しかなく、ドタバタしたとのこと、何人かライブを見た人の話を裏付ける言葉だった。その新しいユニット Power House Music (Ken Vandermark, Lasse Marhaug, Ingebrigt Håker Flaten, Nate McBride, Paal Nilssen-Love)はファンキーな書かれたマテリアルを演奏するグループらしいが、またいつかもっと後で見たほうがいいよ、レコーディングもするしね、と言ってくれたのが昨日から残念やら申し訳ないやらで一杯だったところに救いだった。
彼にはもう1つ、どうしても訊いておかなければならないことがあったのに、この日まですっかり忘れていた。Ingebrigt は最近自分のクィンテットを始動させており、2005年7月のコンクスベルグでも演奏している。ただ、フェスのプログラムではカルテットとなっており、4人分の名前 (Ingebrigt Håker Flaten (b), Klaus Ellerhusen Holm (sax), Anders Hana (g), Fredrik Rundqvist (ds)) しかなかったのに彼がはっきりクィンテットと言っていたのが気になっていた。で、最後のもう1人は誰?と聴いたらヴァイオリンの Ola Kvernberg だという。??? Ola Kvernberg はものすごくトラディショナルなスタイルのヴァイオリニストで、Ingebrigt と共演すること自体が想像を絶する。クィンテットには音響即興ノイズ系ギタリスト Anders Hana もいるし、全く訳のわからない取り合わせと言える。コンクスベルグを主催している Blå のオーナー Martin Levheim も Kvernberg と訊いて仰天したそうだ。それでも Ingebrigt は Ola は本当にいいプレイヤーで、彼にも全く新しい経験だったみたいだよ、と続ける。
明日は何を見に行くかの話をして、Blå を後にし、今年初めてジャムセッションを見に行く。数日前に行った時はホテルのレセプションの人に「ジャムセッションは1時までです」と言われたのがウソだった(…)らしいので、1時を過ぎていたが会場へ。去年は
Grand Hotel の地下だったが、今年は最上階のバーで雰囲気はぐっとおしゃれな感じだが、今年はホスト役が若いミュージシャンではないので、去年のようにミュージシャンは集結していない。
入った時は音楽は鳴っていなかったが、またもや例のアメリカ人ジャーナリスト氏にばったり、いつものように情報交換および業務報告(?)。入り口にフェスの主催者
Marit Lauten 女史がおられ(この日会うのは2回目)、そこに居合わせた Lars
Danielsson と Cæcilie Norby に紹介してもらい話をするという予想もしなかった展開に。ところで今日の夕方のコンサート、Cæcilie
Norby は一体何語で喋っていたの? とその主催者の方にこっそり訊いたところ、比較的はっきりしたデンマーク語ということだった。デンマーク語とノルウェー語は書かれているととても似ているが、発音はかなり異なる。私でも一瞬ではっきり聞き分けられるほど違うので、彼女がデンマーク語を話しているだろうことは想像ができたのだけれど、観客がちゃんと理解していることが不思議だったが、それなりの配慮をすれば通じる、ということらしい。
そこへ Carsten Dahl が登場し、深夜に Dahl / Danielsson / Norby のトリオに
Sofisticated Ladies という女性ばかりのセクステットのグループからドラマーを加えたジャムセッションがスタートした。途中その
Sofisticated Ladies のトロンボーン奏者や名前の分からないサックス奏者、それにギタリストの
Bjørn Vidar Solli などがソロを取り、再び Cæcilie Norby がステージに戻ってこの日のセッションは終了した。
その後結局3時くらいまで話しこむ。