(pickup 2002 vol 10 : 29 July 2002)
![]() Karl Seglem "NYE NORD" 1. TRØ DIN FOT 2. NYE NORD 3. ALCALAR 4. MÅNEFAR 5. DERFOR 6. GJETLESKOG 7. GRØN ELD 8. NYE RITAR 9. EIT BARN SOM FINST 10. DAGANE VÅRE 11. SONG FOR TO Karl Seglem : ts, ram's horn Odd Nordstoga : vo Unni Løvlid : vo Berit Opheim : vo Christian Wallumrød : ac-p, el-p, syn Morten Sæle : g Ivar Grydeland : ac-g, lapsteel-g Reidar Skår : prog Håkon Høgemo : hardanger fiddle Jarle Bernhoft : el-b Bjørn Kjellemyr : b Terje Isungset : ds, per, jew's harp Stein Inge Brækhus : ds, per Ingar Zach : ds, per Fredrik Wallumrød : ds Produced by Karl Seglem and Reidar Skår. Recorded at Hallibakken Lyd Svenkerud, March 2002, 7. Etage Oslo, autumn 2001. Engineers: Tor Magne Hallibakken, Reidar Skår Mixed at 7. Etage by Reidar Skår, Karl Seglem, autumn 2001, spring 2002. Mastered by Audun Strype. All music composed by Karl Seglem, except: "Gjetleskog" (trad.). Text of "Trø Din Fot", "Eit Barn Som Finst", "Dagane Våre" by Jon Fosse after the collection "Nye Dikt" (1997). "Derfor" by Sophia de Breyner Andersen (Portugal), after the poetical works "Sjøfarar" (2000), Norwegian translation by Tove Bakke. Cover design by AbOVO Kåre Thomsen. Photo by Ketil Jacobsen. Paintings inside sleeve by Dimiter Panev. 2002; NOR-CD; NORCD 0246 |
ノルウェーのサックス奏者で作曲家の Karl Seglem
(b. 1961)は、ジャズから民俗音楽まで幅広くカバーして、さらに若いミュージシャンの作品も積極的に紹介するレーベル
NOR-CD のオーナーでもある。1991年の設立以来既に11年もユニークな作品をリリースしてきている。その内容は
Close Erase の即興演奏系ピアノトリオ、Veslefrekk (3/4
Supersilent) のエレクトリックでアヴァンギャルドな音、Håkon
Høgemø の民俗音楽系フィドル、同じ民俗音楽系でも
Berit Opheim のボーカルもの、Jon Fosse の詩の朗読に楽器の演奏を合わせたもの…(キリがないのでこのあたりで…)、そして
Karl Seglem の関わる15枚のアルバムはそれらの丁度真中に位置する、これら全てをブレンドしたような音楽だ。さらに
NOR-CD には SOFA というサイドレーベル(といってもレーベルとしては単独で機能している)があり、こちらは
Ingar Zach と Ivar Grydeland という2人の若い即興演奏家が仕切っていて、ヨーロッパの即興演奏にぴたりと焦点を合わせたリリースがある。 2000年の Arve Henriksen (tp) / Karl Seglem (sax) / Terje Isungset (per) というトリオでのアルバム "Daa" 以来のアルバム、単独リーダー作では 1999年の "Spir" 以来の Karl Seglem の新作となるこのアルバム、リリースに先だって発表された参加メンバーはなんと15人にもおよび、それまで共演したミュージシャンや、同レーベルからリリースがあるミュージシャン、初共演になる若いミュージシャン、さらには SOFA の2人まで顔をそろえ、スタイルも民俗音楽系シンガーから即興系を含むジャズミュージシャンまで驚くばかりのメンバーだ。 "Nye Nord" ― New North とタイトルされたアルバムは #1〜#4 、#5 〜#8 、#9 〜 #11 の3つの大きなパートからなるように感じられる。 最初はノルウェーの民俗音楽色の強い4曲が並ぶ。アルバムを通して大半の曲に入るボーカルは民俗音楽畑の人が3人、女声も男声もあり、全てノルウェー語で曲によってシンガーを使い分けている。けれど普通想像するような民俗音楽の音の構成とは異なり、ピアノもギターもエレクトリック。エレクトリックピアノを弾くのは Christian Wallumrød で、控えめながらくぐもった音で彼らしい演奏、エレクトリックギターはこれまでも Karl Seglem と共演している Morten Sæle で、ジャズとか民俗音楽というよりちょっとロック的な音使いの人。1つずつの曲がそれぞれきっちり構成され、それに似合うシンガーとミュージシャンが選ばれていて、凝った音作りは Reidar Skår ならでは。 かなり新しい感覚の民俗音楽といった #4 までいい意味でとてもここちよく流れてきて、 #5 で変化を見せる。#5 は突然さわやかなミディアムテンポのギターロックで、 Odd Nordstoge の歌がノルウェー語なところだけが英語の歌を聴きなれた耳にはユニークな引っかかり方をする。続くアルバム中唯一のトラッドナンバー #6 、Berit Opheim の高い声の民俗音楽ボーカルに歌わせておいて、後ろでは Stein Inge Brækhus が確かにトラッドのリズムを叩いている(それにしてもノルウェーのトラッドはなんとも難しいリズムを持っている)のだけれど、それはとてもグルーヴ感にあふれ、エレクトリック・ピアノとエレクトリック・ギターが切り込み、そこへさらに Bjørn Kjellemyr がダブルベースのアルコ弾きで割り込む展開を見せる、異様な色彩の格好いい1曲。#7 は Seglem / Isungset / Kjellemyr のトリオで演奏されるアルバム中もっともシンプルな曲。Terje Isungset のびよんびよんという Jew's harp が無国籍な雰囲気を作る中、 Bjørn Kjellemyr のベースと Karl Seglem のテナーが温かい音色でノルウェーらしいメロディーを奏でる。#8 は Karl Seglem による ram's horn で始まる。 ram's horn、早い話が角笛(ブックレットの写真で見る限り 40センチくらいのもので、見た目が紛れもなく角笛)がほ〜と鳴った、と思ったらいきなり曲はドラムンベース!ドラムとアコースティックベースによるビートの上を Reidar Skår の音と Christian Wallumrød のエレクトリックキーボードが自在に動く、 Reidar Skår が最近関わった他のレコーディング(Nils Petter Molvær や Close Erase の3枚目)を彷彿とさせる音。但しクラブ系というよりむしろずっとジャズロックよりのアプローチ。それにしても角笛でドラムンベースとはいやはや、と驚いているうちに Ingar Zach がじゃらんとパーカッションを鳴らしてあっという間に終わってしまう。 最後の3曲はアルバム中ほどでの出来事をすこし遠くの記憶へ押しやるように、再びノルウェーの民俗音楽色が強い3曲。3 曲とも Odd Nordstoga のボーカルで、前半の4曲とは異なり穏やかなボーカルを中心に据えた静かな曲。 アルバムを通して聞かれる音はまさしく「新しい北」の音。とてもノルウェー的で、現代的な音使いがされている。これまでジャズ・ミュージシャンというにはあまりにも民俗音楽的だという印象の Karl Seglem だったのだけれど、そのスタンスを崩すことなく、とても柔軟に表現できる音楽家なのだと改めて感じさせられた。このアルバムでは昨年 10周年を迎えた NOR-CD の 11年分の音と古くから伝わるのノルウェーの伝統音楽を踏まえつつ、2002年の現代の音楽を描いている。 |