(pickup 2002 vol 14 : 18 November 2002)
![]() 1. Flashpoint 2. Anno 1240 3. Closed Doors, Open Windows 4. Storefront Materials 5. Jean S. 6. Dual Fiction all compositions by Nilssen-Love, Vandermark. recorded July 8th & 9th 2002, mixed and mastered August 19th 2002 at Både og Lydbyrå, Oslo, by Thomas Hukkelberg. produced by Paal Nilssen-Love and Ken Vandermark. co-produced by Joakim Haugland. photo by Trygve Indrelid. sleeve design by Rune Mortensen. 2002; Smaltown Supersound; STS068CD |
DUAL PLEASURE Paal Nilssen-Love & Ken Vandermark Paal Nilssen-Love (ds) Ken Vandermark (bs, ts, Bb cl) オスロの Smalltown Supersound はなんでもありとは言え、エレクトロニカやノイズといった系統のリリースで日本でも知られるようになってきたレーベル。そこから今年2002年の夏にリリースされたノルウェーのドラマー/パーカッショニスト Paal Nilssen-Love とスウェーデンのリード奏者Mats Gustafsson のデュオ作 "I Love It When You Snore" は、突然のバリバリ(死語)の即興演奏もので、そのリリース自体にとても驚かされた。そもそも、このインプロシリーズの最初のリリースは Paal Nilssen-Love と ノルウェーのサックス奏者 Håkon Kornstad のデュオ作(ライブ)が、同レーベルの12インチシリーズと呼ばれる限定アナログリリースのカタログとして発表される予定だったため、突然の順序の変更にも驚いた。 そしてさらに2002年10月、事前に何の予告もなしに Paal Nilssen-Love とアメリカ・シカゴのリード奏者 Ken Vandermark のデュオ作がリリースされた。そのアルバムをCDプレイヤーに入れて、不用意にスタートボタンを押した途端に放たれたのは予想をはるかにしのぐ「あまりに凄すぎる演奏」で、1回目に聴いた時はただただぽかんとあっけに取られて1時間強スピーカーの前に座っている他はなかった。 Paal Nilssen-Love のレコーディングは、彼の27歳という年齢を考えると異常に多く、どれもがかなりのクォリティーという驚異的なディスコグラフィーだ。現段階で私が聴いたのは25枚。しかし、その驚くべき参加作の数々も、彼が2001年のモルデ・ジャズフェスティバルで Pat Metheny と Arild Andersen というベテラン相手に見せた今やノルウェーでは伝説的になりつつあるあのパフォーマンスの衝撃と比べれば取るに足らないとすら思っていた。そんなところで聴いたこのアルバムは、ひょっとするとあのパフォーマンスに匹敵するかと思わせる演奏で、極端に言えば、彼の過去のほぼ全ての参加作を過去形にしてしまうような、最新の彼の姿を収めたものだ。 このアルバムの録音は非常に新しく、2002年7月8日と9日。ノルウェーでも有数のジャズ・フェスティバルであるコングスベルクとモルデの両フェスティバルの間の時期だ。コングスベルクでは Håkon Kornstad Trio のメンバーとして Vitalprisen という大きな賞を受賞し、モルデではメイン・アーティストとして連日のライブに出る、その時の勢いをそのまま感じる。 Paal Nilssen-Love のスタイルには、ソロアルバム "Stick & Stones" や先の Mats Gustafsson とのデュオのような、空間に自由に繊細な音を並べていく内向的でパーカッショニスト的なスタイルと、様々なアンサンブルで聴かせるような手数の多い、独特のポリリズミックな、ドラマー的なスタイルの2つがあり、このアルバムでの演奏は後者だ。デュオで空間もたくさんあり、思う存分やりたい放題やっている。単なるリズム楽器としてではなく、1つの独立した楽器として音楽を奏でる、または音楽を動かす、展開させる、そのセンスが堪能できる。 私の場合、どうしても Paal Nilssen-Love のほうに耳が行ってしまうのだけれど、もちろんこの Paal Nilssen-Love の演奏は相手の Ken Vandermark なくしてはないと思う。Mats Gustafsson や Håkon Kornstad といった最近 Paal Nilssen-Love が多く共演している北欧のリード奏者と比べて、圧倒的にベクトルが外へ向かっていて、北欧の音ばかり聴きなれた私の耳には心地よいくらいアメリカ的なおおらかさを感じる。最近の彼のリリース、例えば School Days や Vandermark 5 で見られるように、60年代あたりのフリージャズ(アヴァンギャルドというべきか)をふまえた、非常にパワフルで、ジャズの何か大きな魅力とでもいうようなものを表現している。それから意外なほどメロディアスで、こんな即興演奏ものなのに、 Ken Vandermark の音とともにふとメロディーが耳に残る。 このアルバムの2人の演奏は、まるで何かのアンサンブルのライブ演奏の中のソロとデュオのパートだけを抜き出し、しかもそれを63分に渡ってぶっ続けでやっているような凄まじいものだ。 それにしても最近は2〜3ヶ月に1度はオスロのクラブに出演する Ken Vandermark、それに逆にシカゴに行ってセッションに参加したりする Paal Nilssen-Love や他の若いノルウェーのミュージシャン達の動きは興味深く、今後も要注意だ。オスロとシカゴという、世界の音楽の中心ではない2つの街に何かあるのだろうか。 |
![]() 1. I Love It 2. Come Lie Closer 3. Face Make 4. Lightning Bug 5. Shake Off 6. Snarcus Brutalis 7. When You Snore all compositions by Nilssen-Love, Gustafsson recorded at Audra Böcker och Skivor in Stockholm Nov 21, 2001 by Olof Madsen on the Blue Tower Sound System. mixed and mastered at Atrype Audio Feb 15, 2002 by Audun Strype. produced by Mats Gustafsson and Paal Nilssen-Love. co-produced by Joakim Haugland. sleeve design by Rune Mortensen. 2002; Smaltown Supersound; STS063CD |
I LOVE IT WHEN YOU SNORE Paal Nilssen-Love & Mats Gustafsson Paal Nilssen-Love (per) Mats Gustafsson (bs) オスロのレーベル Smalltown Supersound の即興演奏物シリーズの第1弾となるのが本作。2001年11月21日ストックホルムでの録音。音が鳴っていない時間/空間が多い完全な即興演奏。音程がほとんど把握不可能なほど短い音を大量に吐き出し、時折その音が長くなったときには雄叫びになる Mats Gustafsson (スウェーデン)と、パーカッションとクレジットされているように様々な音を鳴らすけれどどれも長く伸びず、一瞬で鳴り止むこれも短い音を叩く Paal Nilssen-Love (ノルウェー)。別人格の人間が2人、それぞれ別の楽器を演奏しているとは思えないほどの合い方を見せる。7曲で33分弱、適切な長さ。 (2002/09/25) |
| supersound from a small town of Norway... ... about SMALLTOWN SUPERSOUND. 1999年に設立されたレーベル。新しいオスロの文化の発信源とされるオスロ中央駅北側の地区 Grünerløkka を、有名なクラブ Blå と共に代表する存在とも言える。オーナーはJoakim Haugland 、現在27歳(!)。「Joakim はいろんなプロジェクトのプランを頭の中に持っていて、ぽっと思いついたのを実行に移すんだよ。(だから自分のレコーディングもはっきりいつ出るかわからないんだ。)」(Håkon Kornstad 談) その「ぽっと思いつく」のが、デザイナーの Kim Hiorthøy の音楽をリリースすることだったり、超メジャーの Warner からノルウェー国内限定でアルバムをリリースしていた Jaga Jazzist とインターナショナルな契約を結ぶことだったりと、世界的に注目を集めている。しかしアルバムは依然としていつ何が出るか(誰にも)わからない。 |
![]() CROSSING DIVISION 1. Bookworm (Bishop) 2. Counteraction (Vandermark) 3. Broad Daylight (Vandermark) 4. Passenger (Vandermark) 5. Rosmosis (Roswell Rudd) 6. Get On The Plane (Vandermark) 7. Smoke Rings (Bishop) 8. Keep Your Heart Right (Roswell Rudd) 2000; Okkadisk; OD12037 |
SCHOOL DAYS Ken Vandermark (reeds) Jeb Bishop (tb) Ingebrigt Håker Flaten (b) Paal Nilssen-Love (ds) and Kjell Nordeson (vib) on "In Our Times" School Days はシカゴ=オスロ連合ユニット(結成からファーストアルバムまでは Kjell Nordeson は未加入でカルテット編成)としてスタートしたグループで、ここには不在の Mats Gustafsson (スウェーデン)によって結びつく顔ぶれ。グループ名は Steve Lacy / Roswell Rudd Quartet の 1963 年録音のアルバム(Thelonious Monk 集)から取られている。ファーストアルバムの"Crossing Division" は全8曲、 Roswell Rudd の曲2曲の他はシカゴ組2人のオリジナル。ドシャメシャのフリーな部分は少なく、メロディーがしっかり中央に据えられ比較的きちんと構成されている。曲はグループ名の由来どおり 60年代風というのか、開放的でストレートに感じる曲調。Ken Vandermark と Jeb Bishop のシカゴ勢ホーンの持つアメリカ的なおおらかさ、歯切れのよさと、Ingebrigt Flaten と Paal Nilssen-Love のオスロ勢リズム隊の手数の多いテクニシャンぶりの組み合わせはなかなかに相性がいい。Paal Nilssen-Love のポリリズミックな演奏には驚かされる。 (2002/07/26) 2001年、School Days はスウェーデン出身でドラマーとして知られる Kjell Nordeson の(ドラムではなく)ヴィブラフォンを加えて北欧=シカゴ連合クインテットにパワーアップ。同年2001年11月にスカンジナヴィアツアーを行い、その最終地オスロの有名なライブハウス Blå での異例の3日間連続公演の記録がセカンドアルバム "In Our Times"。新加入の Kjell Nordeson の力強さを感じさせるヴィブラフォンがこのグループのサウンドをドラマチックに変化させている。アヴァンギャルドなのにとてもメロディーが耳に残り、クールな雰囲気をたたえている。それぞれの演奏も、グループとしての演奏もただひたすら素晴らしく、ライブ録音なのに荒さは全くなく、ライブならではの説得力がある。特に Ken Vandermark のパワフルなソロからメインのメロディーに展開するブローと、ヴィブラフォンが入ったことを計算に入れてか、前作よりずっと重心を低めに据えた Paal Nilssen-Love のフロント勢を煽る怒涛のようなドラミングが圧倒的。とにかく名演! (2002/07/31) |
![]() IN OUR TIMES 1. Anothre Double (Vandermark) 2. Off The Top (Vandermark) 3. What About (Vandermark) 4. Shift (Vandermark) 5. Octopus (Bishop) 6. Loose Blues (Bill Evans) 7. Elephantasy (Don Cherry) 2002; Okkadisk; OD12041 |
| latest collaboration of Paal Nilssen-Love
and Ken Vandermark... "TERRITORY BAND 3" Kevin Drumm (electronics; US), Paal Nilssen-Love (ds; N), Ken Vandermark (reeds; US), Fredrik Ljungkvist (sax; S), Dave Remphis (as, ts; US), Jeb Bishop (tb; US), Axel Dörner (tp; GER), Kent Kessler (b; US), Fred Lonberg-Holm (cel; US), Paul Lytton (ds; UK), Per-Åke Holmlander (tu; S), Jim Baker (key; US) School Days の2枚のアルバムなどもリリースしているシカゴのレーベル Okkadisk から Territory Band 1 "Transatlantic Bridge" (2001)、Territory Band 2 "Atlas" (2002) という2作品を出しているプロジェクトの続編。どれも少しずつ顔ぶれが違い、Paal Nilssen-Love は「3」からの新加入。Ken Vandermark はもちろん全てに参加。一体どこで何をやっているかは遠い日本からは把握できないものの、少なくとも今年2002年9月にシカゴで、そして11月にオスロでこの「3」のメンバーでライブを行っている。 |