(pickup 2003 vol 2 : 20 January 2003)
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6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6
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2001年5月にリリースされた Supersilent の前作 "5" はライブ盤だった。プロデュースとミックスを担当する Helge Sten お得意の「ライブ盤らしからぬライブ盤」で、彼らの音楽がそれまでの "1-3" (1997年/1998年)、"4" (2000年)と辿って1つの完成度に達したことを証明する名作だった。 ライブでこれだけの音楽を表現できる彼らが、再びスタジオに戻って、しかもファーストアルバム "1-3" をレコーディングしたのと同じスタジオに戻って新作を録音した。レコーディングがトータル5日、ミキシングに10日で、出来上がってきたアルバムはたったの57分とコンパクトだ。"5" をリリースした当初は "6" は2枚組になるかもしれないとメンバーは言っていたけれど、予定通り1枚となった。スタジオでの時間の意味するのは、5日間でレコーディングされた7時間におよぶ音源をまず3時間分まで削り、それを全てミックスしてから最終的にここにある57分に絞られている、という事実だ。並んでいる6曲は、まるで最初からそこに収録されることが決まっていたかのようだけれど、それは厳選された一瞬なのだ。 最初にこの新しい音を聴いたとき、これまでの音からの変化に驚くとともに、そのスケールの大きさにひたすら圧倒された。そして冷静にこの音楽について考えたときにふと頭をよぎったのは、彼らもついに作曲するようになったのか?という疑問だった。今まで作曲・アレンジはおろか、リハーサルすらしない、というポリシーでここまでの域にきた彼らがそれを変えるわけがないことは十分わかっている。もちろん、このアルバムのマテリアルも全て即興演奏によるものだ。しかし1曲ずつ見事に構成された、曲によってはとても美しいメロディーとアレンジを備えたこの演奏がまったく予め構成されていないとは信じがたい。彼ら4人の音楽はもはや「ありえない」レベルにまできている。 Ståle Storløkken のオルガンソロで始まる «6.1» は途中で登場する印象的なフレーズが最後までモチーフとして使われ、11分間の間静かにテンションが上がり続ける。Ståle Storløkken の力技で空間を歪ませるような音が曲を支配する。 Jarle Vespestad の軽やかでシャープな、けれど一聴するとバラバラで不安定なドラムで始まる «6.2» は Arve Henriksen のトランペットのための曲。尺八の音色に魅了されたという彼の、金管楽器を吹いているとは思えない美しい音色によるメロディーが流れる。 アルバム中最も長く 13分半を越える «6.3» は、幾分即興演奏らしさがあるとはいえ、映画に合わせて演奏しているかのように場面が展開していく。書かれていない台本の起承転結を4人で共有しているような演奏。「静」の前半からは予想もつかない結末が現れる。 あまりにもドラマチックに終結する全曲の背後からするりと入りこむ «6.4» は、音の面ではこれまでの Supersilent になかった音だ。ゆったりとしたビートと温かみのあるオルガンの音をバックに、ノイズを含んだ心地よいギター(!)の音が空間いっぱいに広がる。ギターを弾いているのは Helge Sten。 ビートがなく、エフェクターをかけたトランペットや歪んだシンセサイザーなどが交錯する、5分とアルバム中もっとも短い «6.5» は、パワフルなアンビエントといった感じの曲。 アルバムの最後を締めるのは、間違いなくこれまでの Supersilent のリリースされた音源の中で最も美しい曲といえる «6.6» 。Arve Henriksen がトランペットを置き、自らピアノを弾きながらどこまでも澄んだ声(と口笛!)を響かせる。 アルバムの最後の音が消えた後には、温かな静寂が訪れる。«6.4» や «6.6» といった曲そのものが温かい印象を残すものもある。それ以外にも、古典的なアナログレコーディングにこだわる Athletic Sound というスタジオ(オスロから120キロも離れた、スウェーデン国境に近いハルデンという街にある)で録音をするのも、Ståle Storløkken が70年代の古いアナログシンセを愛用するのも、Helge Sten が弾くギターが半世紀も前に作られた年代物であることも、すべて温かみのある音を求めて、というポイントによるものだ。無愛想なほどにシンプルな佇まいのアートワーク、北欧ということから連想されるとても冷たいというイメージ、エレクトリックな音使いといったこととは裏腹に、全て即興演奏というのは極端としても、オーバーダブは一切なしの一発録りなども含めて、彼らはある意味とても人間的な、原点に立ち返るようなポリシーで「新しい音楽」を追求している。 演奏に関しては全く先の予測はつかない彼らだけれど、もっと長い期間を考えての活動については確固たるビジョンと計画を持っている。前作 "5" を出した次点で既に、"6" はスタジオアルバム、その次はライブアルバムとなることが決まっていた。"5" もライブアルバムだったけれど、2004年春のリリースが見込まれている次のライブアルバムは10枚組程度のボリュームのボックスセットになる。1997年の結成時から現在までの全てのライブレコーディングから音源が選ばれ、その内のいくらかは1つのコンサート全体をそのまま収録するという形になる予定。また彼らは去年から映像作品を手がけていて、このボックスセットに DVD を加えるかもしれないが、これについてはまだ未定とのこと。 そのボックスセットよりまず先に、北欧3カ国で久しぶりのライブを行ったあと、春先からヨーロッパ、ついでイギリスツアーが予定されている。 その他にも、Helge Sten 以外のジャズ系出身の3人によるユニット Veslefrekk の9年ぶりのアルバム "Vals" が5月にノルウェーのレーベル NOR-CD からリリースされる。Supersilent 結成前のファーストアルバム "Veslefrekk" (1994; NOR-CD) は、限りなく Supersilent とは別物のアルバムで、新作はどういう音なのか非常に楽しみな1枚。それ以外にも今年中には Ståle Storløkken の初めてのソロアルバムが予定されていて、こちらはノルウェー・モルデの教会のオルガンで、Helge Sten をエンジニアに据えて録音されるという。その Helge Sten も今年後半には彼が 1994年と1996年にリリースした、現在は非常に入手が難しいソロアルバムのリイシューコレクションを Rune Grammofon からリリースする予定。 アルバム "6" で聞かれる音楽はあらゆる可能性を含んでいる。それは ジャズ/エレクトロニカ/ロックといった不要なジャンル分けを軽々と超越するのに十分で、また、この音楽は彼ら自身へ新たな何かをもたらすに十分だという意味で。 |
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