(pickup 2004 vol 2 : 2 February 2004)
![]() 1. Who Am I (Leonard Bernstein / Dorothy Parker) 2. Jolene (Dolly Parton) 3. Turn The Pages (Morten Qvenild) 4. Friend (Susanna Karolina Wallumrød) 6. Believer (Susanna Karolina Wallumrød) 7. Sweet Devil (Susanna Karolina Wallumrød) 8. Baby (Morten Qvenild; lyrics with help from Sidsel Endresen) 9. Time (Morten Qvenild with Andreas Mjøs) 10. Distance Blues And Theory (Susanna Karolina Wallumrød) 11. Go (Susanna Karolina Wallumrød) recorded by Audun Borrmann at NO-57 Studio and Brønnøya Studio and Sjur Miljeteig at isit Art? additional recording by Andreas Mjøs, Morten Qvenild and Christian Snilsberg programming and additional electronics by Andreas Mjøs at Rotoscope Studio and Sushine Sound Productions Go is recorded by Helge Sten Produced by Andreas Mjøs and Deathprod MIxed and mastered by Helge Sten at Audio Virus LAB sleeve by Kim Hiorthøy 2004; Rune Grammofon; RCD2034 |
Susanna And The Magical Orchestra "List Of Lights And Buoys" she: Susanna Karolina Wallumrød (24; vo) he: Morten Qvenild (24; key, harmonium, autoharp) with: Andreas Mjøs (vib, g, timapani, prod) and Helge Sten (prod) 2001年の後半のいつだったか、ノルウェー国内のどこかのジャズフェスティバルのプログラムで Susanna Wallumrød & Morten Qvenild duo というプログラムを見つけた。ピアニストの Morten Qvenild は当時 Jaga Jazzist のメンバーで、Shining や Ra といった若いグループで既に目立った演奏をしていたからふと目にとまったのだけれど、そのもう1人のシンガーのファミリーネームはもっと気になった。添えられていた写真では Morten Qvenild は普通だったけれど、Susanna Wallumrød のほうはパーカーのフードをすっぽり被ってその上サングラスで何の手がかりにもならない。プログラムの解説を読むとやっぱり Susanna はピアニスト Christian の妹で、このデュオは古くは Radka Toneff × Steve Dobrogosz 、最近では Sidsel Endresen × Bugge Wesseltoft を彷彿とさせるような…と続いていて、それ以来、コンスタントに活動を続ける彼らは、音も声も聴いたことがないのにずっと気になっていた。 2004年になってやっとデビューアルバム "List Of Lights And Buoys" がリリースされた。手にとってびっくりしたのは音よりまずその Rune Grammofon らしからぬジャケットだったのだけれど、それはさておき…アルバムは2曲のカバー曲から始まる。1曲目は "Who Am I"。知られているのは Nina Simone のバージョンだろうか。ドリーミーなボーカルとサウンド。このデュオはごく最近になって "Susanna And The Magical Orchestra" という名前になり、ちょうどその名前にぴったりな曲。 2曲目の "Jolene" は、このアルバムのハイライトになる1曲で、元はカントリー歌手 Dolly Parton の曲。Olivia Newton-John のバージョンもある。6歳の時にこの曲を初めて聴いたという Susanna Wallumrød のバージョンは原曲からかけ離れていて驚かされる。別の曲かと思ったけれど歌詞は全く同じだから間違いないようだ。元はジャラジャラとギターが鳴るアップテンポなカントリーの曲、こちらのバージョンはポロンポロンと叩かれるピアノの音とともに、痛々しいまでに切々と Jolene という魅力的な女性に向かって大切な彼を取らないでと歌う。 このユニットの中心は Susanna Wallumrød のボーカル。とても上手いシンガーかといえば、そうではないかもしれない。時折とても「素」な声になり、少し高い声は繊細で、壊れてしまいそうな危うさもある。終始静かに、落ち着いた24歳の等身大の歌を歌う。それでも、彼女は歌に魂を込められるシンガーで、その声は聴き手を引き込む力を持っている。また、このアルバムでも何曲かの作曲を手がけていて、それらの曲はシンプルなメロディーを持つ静かなポップソングで、彼女自身もジャズシンガーではなくシンガーソングライターといった感じだ。 徹底して脇役にまわるパートナー Morten Qvenild は、Susanna Wallumrød と同じ Kongsberg の出身。音数を減らしたそのミニマルな演奏は、歌伴というより "magical orchestra" で、控えめながら彼のセンスを十分に感じさせる。 けれど、このユニットを "magical" にしているのはプロデュースを担当している Andreas Mjøs だ。Jaga Jazzist の10人の中で異彩を放つヴィブラフォン奏者。オスロの芸大の学生でもあり、通常美術系であるこの芸大で音楽をやっていた数少ない先輩がトロンハイムの芸大にいた Helge Sten で、大きなインスピレーションを受けたそうだ。彼のセンスは Jaga のようで Jaga とは異なる彼のユニット Rotoscope のアルバムで聴くことができる。 このアルバムではその Helge Sten のサポートで見事な手腕を発揮している。エレクトロニカ的チリチリいう音、遠くで鳴っているかのように丸みを帯びてにじむピアノの音、そのピアノの音も曲によって微妙に色合いに変化が付けられている。時折キラキラと光って消える不思議な音たちも効果的だ。元がシンプルなポップソングばかりなので、プロデュースによっていくらでも変わってしまうだろうこのユニットの音を、現代的な、それでいて人間の温かみのある、現実的でドリーミーな不思議な魅力に満ちた音にしている。 "List Of Lights And Buoys" - 海上での目印と思われる単語を並べたアルバムタイトル。若い2人のデュオユニットによるこのデビューアルバムでは、先に引用された2組の先輩達の流れを引き継ぎながら、既に個性を確立させている。静かに航海に出た彼らが、時間が経ったときにどこへたどり着くのか、それもまた楽しみになるようなデビューアルバムだ。 |
![]() 1. Truth (m: Eivin One Pedersen / w: Sidsel Endresen / arr: Sidsel & Bugge) 2. Out Here. In There. (m: Sidsel & Bugge / w: Sidsel Endresen) 3. Survival Techniques 1+2 (m: Jon Balke / arr: Sidsel & Bugge / w: Sidsel Endresn) 4. Survival Techniques 3 (m: Jon Balke / arr: Sidsel & Bugge / w: Sidsel Endresn) 5. Names, Numbers (m: Sidsel & Bugge / w: Sidsel Endresen) 6. Hav (Bugge Wesseltoft) 7. Birds (Neil Young) 8. Voices (Sidsel Endresen) 9. Heartbeat (m: Sidsel & Bugge / w: Sidsel Endresen) 10. Ido (m: Sidsel & Bugge / almost comprehensible words by Sidsel) 11. Try (m: Bugge Wesseltoft / w: Sidsel Endresen) recorded by Ulf Holland at Lydlab, Oslo, Autumn 2001. mixed by Ulf Holland at Lydlab, Oslo, January 2002. mastered by Björn Engelman at Cutting Room, Stockholm, February 2002. produced by Ulf Holand. cover photos and design by Håkon Kornstad. photo of Sidsel & Bugge by Sebastian Ludvigsen. 2002; Jazzland; 017 368-2 |
Sidsel Endresen & Bugge Wesseltoft "Out Here. In There." she: Sidsel Endresen (b. 1952; vo) he: Bugge Wesseltoft (b. 1964; key, per, prog) Sidsel Endresen の ECM への2作目 "Exile" (ECM 1524) で出会って意気投合したという Sidsel Endresen と Bugge Wesseltoft は間もなくデュオを結成、Curling Legs に "Nightsong" (1994; CD 14) と "Duplex Ride" (1998; CD 41) の2枚のアルバムをレコーディング。Bugge が自身のレーベル Jazzland を設立した後の3作目はもちろんその Jazzland レーベルからのリリース。 決して美声ではない声。さらりと流れてしまわない歌。ときおり垣間見せる実験精神。そんな Sidsel Endresen に対し、 Bugge Wesseltoft の音はいつも美しい、端正な音だ。ピアノの中に手をつっこんでジャラジャラ鳴らしてもその印象はほとんど変わらない。 音はこれまでの3作で最もエレクトリックで、無駄なものをそぎ落としたようにシンプルな作り。音と歌の後ろからふと気がつくと浮かび上がってくるのは Sidsel Endresen による歌詞。彼女による歌詞は「詩」だ。 カバー曲が2曲。"Servival Technique" とタイトルされた3曲(CDのトラック上は2曲だが)は Jon Balke による曲。それに Neil Youngの "Bird" 。前者はいろいろに様変わりする曲で後者はシンプルな歌を聞かせるものでタイプは全く違うが、この2曲はアコースティックピアノが使われている。 アルバム全体では Bugge Wesseltoft の作る浮遊するような音を背景に、Sidsel Endresen は「強さ」を控えめに、どちらかというと淡々と歌っている。エレクトリックな音と、とても人間的な声はお互いをひきたてていて、特に Sidsel Endresen の歌は独特の説得力とでもいうような個性で聴く側に浸透してくる。 音以外で特筆すべきなのはその美しいアートワーク。サックス奏者の Håkon Kornstad は多くのアルバムジャケットを手がけているが、その中でもこれは最も美しいものだろう。買ってちょっと得した気分になるくらいだ。 この2人が10年間じっくりと積み上げてきた物、Jazzland という自身のレーベル、20世紀から21世紀への世の中の流れと彼ら自身の時間…といったものがこの3作目に集約されている。これはある到達点に達した2人の、深い作品だ。 |
![]() 1. The Moon Is A Harsh Mistress (J. Webb) 2. Come Down In Time (E. John / B. Taupin) 3. Lost In The Stars (K. Weill / M. Anderson) 4. Mystery Man (S. Dobrogosz / F. Landesman) 5. My Funny Valentine (Rogers / Hart) 6. Nature Boy (E. Abhez) 7. Long Daddy Green (B. Dearie / D. Frishberg) 8. Wasted (R. Toneff / F. Landesman) 9. Before Love Went Out Of Style (D. Moore / F. Landesman) 10. I Read My Sentence (S. Dobrogosz / E. Dickinson) recorded at Bergen Digital Studio, Grieghallen / Bergen, February 15.-17. 1982. producer: Arild Andersen recording engineer: Tom Sætre "My Funny Valentine" - analogue recording, Norwegian Broadcasting Company, November 26, 1979. producer: Erling Wicklund. recording engineer: Jan Erik Tørmoen / Egil Johan Damm. digital mastering: Tore Skille and Norwegian Music Productions Ltd. cover drawing: Anne Toneff portrait phootgraphy: Gunnar Åsell cover design: Anne Toneff / Madla Hruza (CD) 1982; Odin; NJ4003-2 |
Radka Toneff & Steve Dobrogosz "Fairytales" she: Radka Toneff (1952-1982; vo) he: Steve Dobrogosz (b. 1956; p) with: Arild Andersen (prod) Radka Toneff はブルガリア人トラッドシンガーの父とノルウェー人の母の間にオスロで生まれた。Sidsel Endresen が生まれた6日後である。音楽を学ぶ傍ら、Erik と Jon の Balke 兄弟や Arild Andersen らとの出会いでジャズへと傾いていく。1977年に "Winter Poem"、1979年に "It Don't Come Easy" を録音。 同年(1979年)、ストックホルムでアメリカ系スウェーデン人ピアニスト Steve Dobrogosz に出会い、それ以降はその Steve Dobrogosz との活動をメインにするようになる。ちなみに Steve Dobrogosz は 1980年録音の Arild Andersen "Lifelines" (1981; ECM 1188) に参加している(他のメンバーは Kenny Wheeler と Paul Motian)。 その Steve Dobrogosz とのデュオ作 "Fairytales" は 1982年2月15日〜17日に録音された。プロデューサーは彼女のよき理解者であった Arild Andersen。そのレコーディングから8ヵ月後の10月21日、Radka Toneff は突然この世を去ってしまった。30歳だった。自殺だったとするむきもあるが、結果的に彼女自身によるものだったとはいえ事故であったとも言われ、未だに謎に包まれている。 この「おとぎばなし」は、そんな前知識で頭を埋めてから聴くと胸がいっぱいになってしまうようなアルバムだ。そこにあるのはあまりにもピュアな歌だからだ。私は2度途中でCDを止め、ずっと後になって3度目に聴いた時にようやく最後まで楽しめた。 端正な、ジャズというよりクラシックのような響きのピアノ(もちろんアコースティックのみ)。音数は少ない。空間に音が広がり、静かに残響が残るのが聴き取れるほどに静かな音楽。2月の録音だからか、窓の外に雪が積もってシンと静まり返る冬の北欧がうっすら感じ取れる。女性らしい優しさを秘めた声がスタンダードを歌い、ピアノがぴたりと合わせる。歌声がどこかはかなく、寂しげに聞こえるような気がするのは、きっと気のせいだろう。 アートワークを手がけている Anne Toneff という人物が何者なのか未だに分からないのだけれど、とにかく印象的な絵に包まれた果てしなく美しい作品だ。結局このデュオはこのアルバムしか残さなかったのだけれど、この1枚はノルウェージャズ、特に女性ボーカルとピアノというフォーマットにおいては、その後重要な意味を持つ1枚になる。 尚、Radka Toneff に関しては1993年に、1981年3月10日ドイツ・ハンブルクでのライブ録音 "Live In Hamburg" (1993; Odin) がリリースされ、同年のノルウェー・グラミー賞を受賞している。このライブは彼女の生き生きとしたライブを伝える名盤だ。それから2003年には未発表曲を加えたベストアルバム"Some Time Ago - A Collection Of Her Finest Moments" (Universal) もリリースされている。 活動期間はほんの10年足らず、オリジナルアルバムは4枚しかないけれど、ノルウェーでは今尚彼女の存在は大きい。1993年には Radka Toneff 記念基金が設立されている。最初の受賞者は Sidsel Endresen だった。 |