(pickup 2004 vol 5 : 14 April 2004)





Stian Carstensen
[midi] accor, [prepared] banjo, el-g, ac-g, vln, kaval
Arve Henriksen: tp, vo, spinet
Ernst Reijseger: cel
Jarle Vespestad: ds
Håvard Wiik: p, spinet


1. Dimitri's Polynesian Vacation
2. Death Of A Neutered Chor Boy
3. See Fair Lis [Is Her Venner Real?]
4. Backwards Into The Backwoods
5. Zat Was Zen ... Zis Is Now
6. Solo Improvisation N°I
7. Solo Improvisation N°II
8. Solo Improvisation N°III
9. Solo Improvisation N°IV
10. Solo Improvisation N°V
11. Gyorgy's Appalachian Vacation
12. What's That Horsehead Doing On My Pillow?
13. [Look Grandpa!] Buckwheat On Bogweed
14. One Legged Cow's New Age Aquare Dance
15. Vlad Tepes' Two-Step [Swing That Bat...]
16. Funeral March For A Neutered Choir Boy


All Compositions written by Stian Carstensen except »Zat Was Zen...Zis is now« by Arve Henriksen, dubbed by Stian Carstensen.
Lyrics »See Fair Lis« by Simon Dancaster.
»Solo Improvisation N°III« is based on a traditional Bulgarian song.
»Vlad Tepes' Two-Step« is based on a Transylvanian traditional melody.



Digital Recording at Fagerborg Studio, Oslo, Norway
June 5th-7th, 2002
Recording Engineer: Adrian von Ripka
Additional digital recording and mixing at Bauer Studio, Ludwigsburg, Germany
February 12th-14th, 2003; November 10th, 11th and 25th, 2003; January 9th, 2004
Engineers: Adrian von Ripka, Johannes Wohlleben and Dirk Kloiber
Mastered at Bauer Studios, Ludwigsburg, Germany
January 9th 2004
Mastereing Engineer: Johannes Wohlleben
Producer: Stefan Winter


2004; Winter & Winter; 910087-2 (Music Edition)



BACKWARDS into the BACKWOODS
Stian Carstensen



「Stian は一度聴いたメロディーは忘れないし…(略)…頭の回転が速すぎて普通の人にはついていけないんだよね」 − 尊敬の念を込めてため息交じりにそう私に言ったのは、同じノルウェーで同じアコーディオンという楽器を弾く演奏家として、その Stian Carstensen (b. 1971) に最も近いところにいる「同業者」 Frode Haltli だ。

Stian Carstensen は ノルウェー産東欧風味ごった煮(超絶)バンド Farmers Market のメンバーとして、またノルウェーではハイスピードブルーグラスユニット Banjovi (メンバーは5人で、Stian Carstensen がリーダーでバンド名どおり(?)バンジョーを担当、他には Farmers Market のベーシスト Finn Guttormsen などもこのバンドのメンバー)の活動もよく知られる。Farmers Market は 1991年秋に結成され、ノルウェーの Kirkelig Kulturverksted レーベルから、レーベル異色作となる "Speed / Balkan / Boogie" (1995) と "Musikk Fra Hybridene" (1997) の2枚のアルバムをリリース。そのアルバムを Winter & Winter レーベルのオーナー Stefan Winter が気に入り、Stian Carstensen はこのレーベルと3枚のレコード契約を交わした。その1枚目が Stian Carstensen 名義ながら実質 Farmers Market の3作目となる "Farmers Market" (2000) で、2枚目が彼の本当の初ソロ作となるこの "Backwards Into The Backwoods" だ。

このアルバムの音楽は、そもそもオスロで毎年秋に行われる Ultima というフェスティバルのために書かれたものだ。このフェスティバルは現代音楽から他のジャンルへ、またさらに舞台芸術などへもまたがるいかにもノルウェーらしい多彩なフェスティバルで、2000年10月11日、オスロの有名なクラブ Blå のステージに、Stian Carstensen はこのアルバムとほぼ同じ顔ぶれ(Håvard Wiik を除く)で出演した。フェスティバルのずっと前からアルバムとしてリリースされることが決まっていたその作品は、スタジオでかなり丁寧に録音され、さりげなく "Farners Market" と同じ色のカバーで装丁されて登場した。

Stian Carstensen 以外では、Arve Henriksen (b. 1968) がトランペッター/ボーカリストとして本領を存分に発揮している。義理の弟にあたる Stian Carstensen とは近所に住み公私に渡り親しく、一緒に子供のためのジャズプログラムの公演を行ったりしている。

完全に Farmers Market のアルバムとは異なる作品として作られているこのアルバムに唯一参加している Farmers Market のメンバーはドラマーの Jarle Vespestad

オランダ出身のチェリスト Ernst Reijseger (b. 1954) は、こんなところで説明しだすとキリがないけれど、とりあえず Stian Carstensen との接点は Winter & Winter というレーベルだろう。

Jazzland に所属する Atomic のメンバーとして、また同レーベルから自己のトリオ作もリリースするピアニスト Håvard Wiik (b. 1975) )のみ後から参加しており、この顔ぶれの中では意外な感じもするが、音はぴったりハマっている。

真ん中にアコーディオンによるインプロソロが5曲入り、アルバムはこれを挟むように全体で3部に分かれている。ずらり並んだ奇妙なタイトル群をみるだけで、このアルバムの個性は推測できるかもしれない。

第1部の1曲目はまず、チェロとピアノがピタリと重なってダイナミックなラインを描き、ぱかぽことドラムが軽快で無国籍なビートを叩き、尺八トランペットがメロディーを奏で・・・と思ったらアコーディオンソロになり、再び元のテーマに戻る。バラエティーに富んだ展開の「ポリネシアの休暇」はこのアルバムを集約するかのようなオープニングトラックだ。

その後、Arve Henriksen が異様なテンションで歌う激しいビートの #2 であっけとられ、そういえば、Stian Carstensen は昔、ギターを弾くようになった時にヘビーメタルバンドをやっていた、というエピソードもあったっけ、と思い出す。続く #3 では一転穏やかな Stian Carstensen のアコースティックギターをバックに、Arve Henriksen が今度はハイトーンで奇妙なほど優しく歌う。

Stian Carstensen と Jarle Vespestad によるバンジョーとヴァイオリンとドラム(など)の軽快な短いタイトルトラック #4 を挟んで #5 は Arve Henriksen の尺八トランペットの柔らかい音とスピネット(多分)のキラキラした音が美しいトラック。

第2部はアコーディオンソロ。Stian Carstensen のひいおじいさんは村の結婚式などで演奏するアコーディオンの名手で、その演奏家としての伝統は代々、おじいさんからお父さん、そして Stian Carstensen と伝わっているのだそうだ。また、彼の家系は東欧にルーツを持つそうで、そんな様々な要素を穏やかに感じさせる即興演奏が並ぶ。それは決して「東欧の音楽が面白いから取り入れている」のではなく、彼自身のものとして表現されている無国籍で多国籍な音楽だ。

第3部は彼が魅了されたというハンガリーの作曲家 György Ligeti の名前を冠したトラックで始まる。この「アパラチアの休暇」はバンジョーに合わせてチェロとボーカルがメランコリックなメロディーをなぞる。#12 はアコーディオンが重厚な雰囲気をつくり、トランペットがシリアスなメロディーを吹く。

2曲シリアスな曲が続いたその雰囲気を一蹴するように #13 はコミカルな曲、タイトルもコミカルだ。Jarle Vespestad が複雑なビートを実にさりげなく軽快に刻んでいる。最も Håvard Wiik らしいピアノの音が聴こえるのもこの曲だ。

またも雰囲気はガラリと変わり、滑らかな#14で Ernst Reijseger のチェロの上に漂う管楽器は一瞬 Arve Henriksen の尺八トランペットかと思うが、実際は Stian Carstensen のカヴァル(東欧の縦笛)だ。トランシルバニア(ルーマニア)のトラッドをベースにした #15 は終盤どんどんテンポが上がり、ちょっと Farmers Market を思わせる展開を見せる。

そしてマーチのリズムが刻まれ、#2 で死亡したコーラスボーイの葬送行進曲が始まる。物悲しいメロディーにたっぷりこぶしを入れた歌が流れ、やがてその行進曲はどこへともなく消えていってしまう。

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Farmers Market のアイディアは、メンバーのアイディアが詰め込まれたもので、一方、この "Backwards Into The Backwoods" は Stian Carstsenten のアイディアが詰め込まれたものであり、そのせいだろうかこのアルバムは「ごった煮」という感じは不思議なほどない。元々が1つのフェスティバルのための作品だったこともあり、いろんなことをやっていても全体として、Stian Carstensen という人のワールドミュージックとしてまとまっている。

これまで Bamboo / JMT 、そしてこの Winter & Winter という個性的なレーベルで様々な作品を手がけてきた Stefan Winter が、「私がこれまで手がけてきた全ての作品のどれとも異なる」と、このアルバムのタイトルで見知らぬところという意味もある "Backwoods" の説明をしている。彼が手がけてきたアルバム以外でも、多分類似する音楽を見つけるのは難しいだろう。

Stian Carstensen の、Winter & Winter との契約は3枚、とするともう1枚残っていることになる。誰も聴いたことがない音楽を作り出してくる Stian Carstensen 、次は何をやってくれるのだろう?





1. Body And Soul
2. Je Te Veux
3. An Den Kleinen Radioapparat
4. Teddy Bears Picnic
5. Last Tango In Paradise
6. Saving All My Love For You
7. My Waltz For Newk
8. Improv
9. The Way You Look Tonight
10. Windmills Of Your Mind
11. Honeysuckle Rose
12. Danny Boy


Recorded at Gateway Studios, Kingston April 27/28 2003
Engineered by Steve Lowe
Mixed at Gateway by Steve Lowe and Iain ballamy
Mastered at Sony Music Studios by Ray Staff
Produced by Iain Ballamy
Executive producers kerstan Mackeness, Tony McLoughlin and Polly Eldridge
Design by iwant



2004; Sound Recordings; SOUNDCD1005
THE LITTLE RADIO
Iain Ballamy with Stian Carstensen


Iain Ballamy: ts
Stian Carstensen: button accor


ここ数年、カルテット編成の Food などをはじめとしてノルウェー人とのユニットが多いイギリス人サックス奏者 Iain Ballamy の新作は、2000年の "Pepper St. Interludes" に続く Stian Carstensen とのコラボレーション。"Petter St. Interludes" は Iain Ballamy 名義で Stian Carstensen の扱いはほぼデュオパートナー、ゲストにボーカルとドラム、チェロを加えていたけれど、この新作は完全なデュオ作になっている。

基本的にコンセプトは前作と似ている。耳に馴染んだナンバーをメインに、オリジナルも数曲挟む(#5, 7, 8) 。ただし本作のほうがはっきり既存の曲を聞かせることに重点が置かれている。

アルバムタイトルは Bertolt Brecht の詩に Hans Eisler が曲をつけた #3 から。スタンダードが数曲、Henry Pacory の詩に Erik Satie がワルツの曲をつけた有名なシャンソン #2、はたまた Whitney Houston が歌った #6…。Iain Ballamy の作曲のクレジットがある #7 も、途中で Chopin の 「小犬のワルツ」が登場したりする。

アレンジはいずれも極めて普通で、変わった解釈のものはほとんどない。Iain Ballamy は、整った素朴な手触りを感じる木管楽器らしい音のテナーで、余裕たっぷりにメロディーを吹く。Stian Carstensen のサポートも、奇抜さはまったく見られない。

綺麗な布地の模様をあしらったジャケットのこの作品は、まるで幼い子供にスタンダードを歌って聞かせるような、温かな優しさに満ちている。そして聴いているうちに、ひょっとするとその心地よさのあまり眠ってしまうこともあるかもしれない、そんな(いい意味で)子守唄のような感じもする。

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