(pickup 2004 vol 6 : 3 May 2004)
![]() Fredrik Ljungkvist (ts, as, bs, cl) Klas Nevrin (p, zither) Mattias Welin (double-b) Jon Fält (ds) Per-Åke Holmlander (tu) 1. KING KOLAX 2. JAG VET INTE 3. SUNBURST 4. EDDIE A. 5. VÄSTGÖTAKLIMAX 6. BIRGER 7. BALLAD FÖR EVA 8. ABRAXAS 9. RUMI 10. MAN ABOUT TOWN All compositions by Fredrik Ljungkvist All arrangement by Fredrik Ljungkvist except track 5 by Klas Nevrin and Fredrik Ljungkvist Recorded and mixed by Janne Hansso at Atlantis Studio December 2003 Mastered by Claes Persson Producer Per "Texas" Johansson Graphic design Karl-Magnus Boske Photo Evelyne Brooymans Executive producer Lars Silén 2004; Caprice; CAP 21690 |
FREDRIK LJUNGKVIST »YUN KAN 12345« この Fredrik Ljungkvist の久しぶりのリーダー作を聴いて、まず思ったのは、これはとても充実した力作だということだ。 YUN KAN
Fredrik Ljungkvist は 1969年スウェーデン出身。ストックホルムの音楽院を1993年に卒業した後、内外の様々なミュージシャンと活動、既に30枚を超えるアルバムへの参加があるという。1988年に自身のバンド Fredrik Ljungkvist Quartet を結成、そのカルテットで "Fallin' Papers" (1995; Dragon) 、"Sonic Space" (1997; Prophone) の2作をリリース。 その他の活動としては Mats Gustafsson の9人編成のユニット NU-Ensemble (アルバム "Hidros One" (1999; Caprice))、シカゴ=スウェーデン連合16人編成の Pipeline というユニット、さらに Ken Vandermark の Territory Band (アルバム "Atlas" (2002; Okka Disk), "Map Theory" (2004; Okka Disk よりリリース予定)) といった大編成即興集団への参加がある。一方でトリオ編成の LSB として2枚のアルバム("Walk, Stop, Look and Walk. [Live]" (2000; Crazy Wisdom) と "Fungus" (2003; Moserobie)) をリリース、Bobo Stenson (p) とノルウェーのリズムセクションと組んだ Parish (アルバム "Rica" (2004; Challenge))、女性シンガー Lina Nyberg のアルバムへの参加などと多岐に渡っているが、やはりなんと言っても彼の名前と演奏が知られるようになったのはノルウェー=スウェーデン連合クインテット Atomic (アルバム "Feet Music" (2001; Jazzland) と "Boom Boom" (2003; Jazzland)) での活動だろう。 YUN KAN
2003年末に Fredrik Ljungkvist は "Jazz In Sweden 2004" に選ばれた。これは1972年に設立された権威ある賞で、スウェーデン・ジャズの "artist of the year" に当たる。この賞の受賞者にはアルバム製作とスウェーデン国立コンサート協会による国内ツアーのサポートが与えられる。その「副賞」のアルバムがこの "Yun Kan 12345" という新作だ。 このアルバムがレコーディングされる前から、Fredrik Ljungkvist は新しい自身のトリオ "Yun Kan 3" で活動してきた。メンバーは Mattias Welin (b) と Jon Fält (ds) 。ユニット名は、Fredrik Ljungkvist の昔のニックネーム "Junkan" (彼のファミリーネームは「ユンクヴィスト」という発音でそれをもじったもの)から来ているそうだ。そのトリオに Klas Nevrin (p) と Per-Åke Holmlander (tu) を加えたクインテットは "Yun Kan 5" となる、というわけだ。 これまでの2枚のカルテット作は Fredrik Ljungkvist のオリジナル以外にもピアニストの Torbjörn Gulz のものも多く、演奏面でも Torbjörn Gulz の存在は大きかった。この "Yun Kan 12345" では1曲のみピアニスト Klas Nevrin との共作がある以外は Fredrik Ljungkvist のオリジナルがずらりと並ぶ。彼は Atomic のオリジナルの大半を手がけているから Atomic との共通点はいくらも見出せるが、ここには幅広い活動をする彼の本質とでもいうものがいっぱいに表現されている。 このアルバムは、それぞれの曲もアルバムも実によく練られた作品だ。一言でいうと「とんがったジャズ」。1曲ずつ全く異なる個性的なアイディア、いい意味でひっかかりのあるひねりの効いたアレンジを実に軽快なフットワークで演奏しきる。1曲目は彼の新しいユニットを堂々とお披露目するような明るいタッチの曲で、そういうアルバムなのかと思いきや、1曲目ですらそのまま終わらずに間に奇抜なチューバソロを挟み、曲が終わってもテンポも発想も全く異なる曲が続く。それぞれの曲はまた実に上手く配置されていて、このあたりは初めて使った外部のプロデューサー( Per "Texas" Johansson、Fredrik Ljungkvist は以前彼のグループのメンバーだった) の手腕もあるのだろうか。 Atomic はアルバムを聴く限りでは CD という媒体に明らかに収まりきらないかのようなパワーと緊張感を感じさせるが、この Fredrik Ljungkvist のユニットは、もう少し肩の力が抜けているように思われる。凝った楽曲をやっていても、かなりの余裕を感じる。この余裕が実に魅力的だ。 YUN KAN
北欧のシーンでは演奏が上手いことが当たり前のようになってしまっているが、このユニットのメンバーも当然のように非常にシャープな演奏をしている。 ベースの Mattias Welin はスウェーデンの現在のアヴァンギャルドシーンの1つのポイントとなっているレーベル Moserobie 周辺ではよく見かけるプレイヤーだ。Atomic のトランペッター Magnus Broo のカルテットのレギュラーメンバーである他、Moksha や Dog Out などのユニットで立て続けにアルバムをリリースしている。 ドラムの Jon Fält は、個人的にはこのアルバムでポイントとなる演奏をしている、言い換えればこのアルバムを魅力的にしている1つのポイントだと思う。ベーシストの Mattias Welin 同様 Moserobie 界隈で活躍するドラマーで、同じく Dog Out のメンバーである他、以前 Fredrik Ljungkvist Quartet のレギュラーメンバーだったベーシスト Filip Augustson のリーダー作に参加している。 ピアノの Klas Nevrin は1999年に Dragon レーベルから "Fancy Machine" というリーダー作をリリースしており、そのアルバムには Fredrik Ljungkvist が参加していた。 ドラムの Jon Fält と並んでこのアルバムのキープレイヤーになっているのはチューバ奏者の Per-Åke Holmlander だ。Fredrik Ljungkvist とともに Mats Gustafsson の NU Ensemble や Ken Vandermark の Territory Band のメンバーでもあり、Barry Guy New Orchestra に参加する (アルバム "Inscape - Tableaux" (2001; Intakt)) など、メンバーの中では Fredrik Ljungkvist に最も近い活動をしている。 YUN KAN
実にバラエティーに富んだこのジャズは、フリーなのかどうなのか問われれば、「ストレートアヘッドではない」というしかない。Fredrik Ljungkvist は自身のこの音楽を「自由 (free) と束縛 (fettered) の間でバランスが取れている」と表現している。即興演奏と作曲・アレンジされた楽曲、パワフルでスウィンギーな曲とアンビエントな雰囲気すら漂う曲、滑らかさと力強さを併せ持ったテナーと優しげな表情を見せるクラリネット…といろいろな要素が微妙なバランスで同居している。何度聴いてもその度に新しい発見があるような、そんな懐の深い魅力を持ったアルバムで、Fredrik Ljungkvist というミュージシャン自身もそうなのだと思う。 |
![]() FALLIN' PAPERS 1. FLYKT (F. Ljngkvist) 2. DEN GRÅ ZONEN (T. Gulz) 3. PIANO (F. Ljngkvist) 4. VILSE I FÖRORTEN (T. Gulz) 5. FALLIN' PAPERS (F. Ljungkvist) 6. YOU ALWAYS REMENBER HOW (F. Augustson) 7. I SNICKARBOA (F. Ljungkvist) 8. NEXT DOOR (T. Gulz) 9. NÄNÅ (T. Gulz) Recorded August 9, 10, 11 1994 Produced by FLQ & Leif Collin 1995; Dragon; DRCD 267 ![]() SONICSPACE 1. OKTOBERHAV (F. Ljungkvist) 2. OUGADOGO (T. Gulz) 3. STILLA (T. Gulz) 4. HON MÅLAR (F. Ljungkvist) 5. SYMBIOS 1&2 (F. Ljugkvist Quartet) 6. BOLLE (T. Gulz) 7. BOP ABOUT (F. Ljungkvist) 8. VERA (F. Ljungkvist) 9. OPUS 8 (F. Ljungkvist) 10. POLKADOTS AND MOONBEAMS (J. Van Heusen) Recorded 1996 Sept 4, 5 Produced by FLQ 1997; Prophone; PCD 036 |
FREDRIK LJUNGKVIST QUARTET »FALLIN' PAPERS« (1995) »SONICSPACES« (1997) Fredrik Ljungkvist (sax, per) Torbjörn Gulz (p) Filip Augustson (double-b) Bo Söderberg (ds) 1969年生まれの Fredrik Ljungkvist が自身のカルテット Fredrik Ljungkvist Quartet を結成したのは 1988年(1987年という記述もある)、つまり18か19歳の頃ということでまずはとても驚いた。 結成当時に既に、4歳年上のピアニスト Torbjörn Gulz がメンバーとして参加しており、その後1998年にこのカルテットが解消されるまで活動を共にしている。その Torbjörn Gulz はこのカルテット以外に、Magnus Broo (tp) のカルテットや、Moserobie レーベルのオーナー Jonas Kullhammar (ts) のカルテットのレギュラーメンバーであるなど多くのグループに参加しているが、今まで私の知る限りリーダー作のレコーディングはない。彼の作曲と演奏の力量を考えるとかなり不思議だ。 ベーシストの Filip Augustson は 1973年生まれとこのカルテットでは最も若いメンバーで、今年2004年1月には Moserobie からリーダー作 "Ich Bin Filip Augustson" をリリースしている。もう1人のメンバー Bo Söderberg は 1952年生まれと他の3人と世代が異なる。彼はジャズ以外にもクラシック畑でも活動するプレイヤーだそうだ。 Fredrik Ljungkvist と Torbjörn Gulz は、本質的にかなり異なるカラーを持っているのかもしれない。1994年にレコーディングされたファーストアルバム "Fallin' Papers" (1995; Dragon) を聴いていると、どちらの作曲した曲かかなりはっきりと分かる。1曲の中でも、Fredrik Ljungkvist がリードする部分と Torbjörn Gulz がリードする部分(多くはピアノトリオの演奏となるパート)では随分カラーが違う。Torbjörn Gulz はかなりはっきりと「北欧的」な音の持ち主。クリアーなトーンで、彼の書く曲はリリカルですこしメランコリックなメロディーを持っている。それに対して Fredrik Ljungkvist は、もっと複雑な表情を見せる。 その「違い」は、Fredrik Ljungkvist Quartet というユニットにおいて、決してマイナスには働いていない。むしろ、Fredrik Ljungkvist が持つ多様性を、Torbjörn Gulz の持つリリカルさで包んでいるともとれ、それは好ましいコントラストになっている。 結果的に Fredrik Ljungkvist Quartet の2枚目にして、グループ解消前の最後のレコーディングになってしまった "Sonicspace" は、1996年に録音、翌年リリースされている。長い間固定メンバーで活動してきた総決算のようにも取れる完成度の高い作品だ。前作で見られた2人のカラーの違いはかなり溶け込んで馴染んでいる。 Fredrik Ljungkvist は時にはかなりエモーショナルな演奏もしていて、曲もよりダイナミックになっていだ。前作には全く見られなかった一面を覗かせるのがグループ名義になっている #5 。かなりきちんとした楽曲とアレンジを用意しているこのグループにしては異色のインプロヴィゼーション。Fredrik Ljungkvistはクラリネットを吹いている。ドラムの Bo Söderberg が鋭く反応しているが、一方の Törbjorn Gulz は鋭いタッチながら、いつものリリカルなトーンで、全体としてメロディアスなインプロに仕上がっているのがとても面白い。 このカルテット最後の曲は2枚のアルバムで唯一のカバー、Frank Sinatra の歌などで有名なスタンダード "Polkadots and Moonbeams"。4人の演奏が緩やかにかつダイナミックに絡んで、ふとかすれて消えるように何気なく終わる。 |