(pickup 2004 vol 7 : 19 May 2004)


Motif

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Atle Nymo
(sax)
Mathias Eick
(tp)
David Thor Jonsson
(p)
Ole Morten Vågan
(ac-b)
Håkon Mjåset Johansen
(ds)

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1. Ni
4. Her Piece
3. John Dough
2. Untitled For The Masses
5. Git On Up
6. Ny Ballade
7. Soft Song
8. Vups
9. Blindfolded

MOTIF

All songs are written by Ole Morten Vågan
except "Vups" by David Thor Jonsson and "Blindfolded" by Motorpsycho

Recorded in Rainbow Studio by Peer Espen Ursfjord
Mixed by Jan Erik Kongshaug
Mastered by Audun Strype at Strype Audio
Cover Photo by Åsa Maria Mikkelsen
Cover Design by Bjørn Thevik

MOTIF

2004; AIM Records; AIMCD 104
MOTIF

トランペット・テナーサックス・ピアノ・ベース・ドラムによるごくオーソドックスなクインテット編成のジャズユニット。この編成のユニットでノルウェー・ジャズに大きな足跡を残したグループとしてはまず Masqualero が挙げられる。 1982年に Nils Petter Molvær (tp), Tore Brunborg (ts, ss), Jon Balke (p, el-p), Arild Andersen (b), Jon Christensen (ds) というメンバーで結成され、翌 1983年に "Masqualero" (Odin; NJ 4008-2) をリリースする。このファーストアルバムは、ECM からリリースされた後の3枚 "Band A Part" (1986; ECM 1319), "Aero" (1988; ECM 1367), "Re-Enter" (1991; ECM 1437) とは全く雰囲気が異なる、グルーブ感と勢い溢れる生き生きした演奏との名録音で、ジャケット写真の屈託のない笑顔の23歳の Nils Petter Molvær が若くて驚く。

同様の編成のクインテット編成のデビュー作で記憶に新しいのが Atomic だ。1999年に結成された時はカルテット編成だったが、ノルウェー=スウェーデン連合クインテット編成に変わってからデビュー作 "Feet Music" (2001; Jazzland) をリリースした。どちらかというと古典的なほどオーソドックスなフリージャズを現代的にパワフルに演奏する彼らは、その後 "Boom Boom" (2003; Jazzland) と共に、シーンを代表するグループになった。

Atomic がオスロで結成された頃、トロンハイムの音楽院の学生によりやはり同じ編成のクインテットが結成された。そのグループ、Motif が一躍注目されるようになったのは 2001年7月、コペンハーゲンジャズフェスティバルで行われた Young Nordic Jazz Comets というコンペでのグランプリ受賞がきっかけだ。2年に1度、北欧各国から1組ずつ代表を出し、北欧一の若いジャズユニットを選出するというこの賞の「お墨付き」をもらった彼らは北欧各国をツアーし、大きなフェスティバルに出演する注目グループとなる。

この3組は全く異なる音楽性を持つが、共通するのはいずれもベーシストがリーダーであること、そしてそのベーシストと共にバンドを特徴付けているのがドラマーだということだ。

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結成から実に4年半もたって満を持してリリースされたデビューアルバムは、デビューアルバムといえどもさすがにユニットとして固まった演奏が圧巻だ。それぞれが高い演奏能力を持ち、きちんと書かれたパートと自由度の高い即興演奏のパートの両方を境目なく伸びやかに表現する。肩に力は入らずリラックスしているのにエネルギッシュ。1970年代後半生まればかりの若いメンバーは多分、ロックを始めとした色々な現代の音楽を聞いてきているだろうことを感じさせる「格好よさ」がある。彼らの演奏で特徴的なのは、比較的ゆるやかに各楽器が絡むパートがあり、一転ビシっと決める、その自然でかつスリリングな展開だ。

Motif の曲の大半を手がけるのはベーシストの Ole Morten Vågan。彼ら自身の言葉によると、彼らの音楽はアメリカとヨーロッパ、双方のスタイルに根ざしたもので、彼らの曲は Dave Douglas 、Django Bates、Jon Balke 、それに Radiohead のようなポップバンドからもインスピレーションを得ているという。確かに、とりたてて変わったジャズや聴いたことのない新しいジャズを演っているわけではない。彼らの言うように、アレンジなどは現在のアメリカのジャズとなんら変わらない部分もあり、しかしその響きは確かにヨーロッパ的な部分も持ち合わせている。

アルバムのクレジットでは、冗談なのか真面目なのか曲番がよくわからない順になってる部分もあるが、それはさておき、冒頭の#1を始めとして #3、#5、それにピアニスト David Thor Jonnson によるグルーヴィーな #8 など、まずはアップテンポな曲がとにかく格好いい。疾走感さえ感じる他の3曲に比べ、ヘビーなベースとドラムでぐいぐい押すパワフルな #5 がアルバム中でアクセントになっている。スロー〜ミディアムな曲は、トランペットとテナーサックスの2管の響きをぴたりと合わせ、時にはトランペットを内向的に鳴らしておき、大らかなテナーサックスの音色とのコントラストを最大限にしたりとプレイヤーの持ち味生かした演奏になっている。

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テナーサックスを吹く Atle Nymo (b. 1977) はアルトサックスを吹く2つ年上の兄 Frode Nymo [Urban Connection] と共に既に10代のころから突出したプレイヤーだったそうで、有名な録音はさほどないものの1990年代の終わりごろからシーンのあちこちで見かけるプレイヤーだったから、年齢を聞いてその若さに驚いたくらいだ。スタイルは比較的ストレートで、大らかな音色の持ち主だ。

Mathias Eick (b. 1979) は何と言っても Jaga Jazzist のメンバーとして名前を知られるようになったトランペッター。その Jaga Jazzist の "A Livingroom Hush" (2001) や "The Stix" (2002) とはまた別のリスナーにアピールしたのが ECM からリリースされたギタリスト Jacob Young の "Evening Falls" (2004) 。美しい音色の持ち主で、同時に実に幅広い音楽性のプレイヤー。

ピアニストの David Thor Jonsson (b. 1978) はアイスランド出身で、交換留学生としてトロンハイムの音楽院に留学していた折、このユニットに加わることになる。北欧のミュージシャンらしい硬質で澄んだタッチの持ち主で、この顔ぶれの中では一番北欧的な音を持つミュージシャン。母国の Ómi というレーベルからリリースしたリーダー作 "Rask" (2002) は、硬派で複雑な構成の北欧フリージャズの名作。

ベーシスト Ole Morten Vågan (b. 1979) は「これから」のミュージシャン。このユニットの大半の曲を手がけるコンポーザーとしての才能に加え、ハードな音でユニット全体の音を動かすベーシストとしても注目される。2001年、この Motif で北欧ジャズコンペ Young Nordic Jazz Comets を制した彼は、その次の 2003年の大会も Megatsunami というサックス/ベース/ドラムのトリオで制してしまった。こちらも要注目だ。

ドラマーの Håkon Mjåset Johansen (b. 1975) は Urban Connection で2枚、Come Shine で3枚のレコーディングがあり、いずれも高い評価と人気を誇るユニットで、彼は両バンドでノルウェーグラミーを獲得している。先の2つユニットは比較的ストレートアヘッドな音楽性だったのに対し、この Motif はより自由度の高い音楽のため、彼のドラマーとしてのセンスはこの Motif で最も発揮されていると言えるかもしれない。

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Motift のこのデビューアルバム、最初に聴いた時は一瞬ライブ録音かと思ったが、実際は Rainbow Studio でのスタジオ録音だ。勢いのある音楽は得てしてスタジオ録音とライブ録音のギャップが大きいことが多い。ライブの勢いをCDに納めることは結構難しいようだ。しかしこの Motif のデビューアルバムは、その難しい課題においてかなり成功しているように感じられる。いい意味でのライブの勢い(彼らのライブは見たことがないから想像にすぎないが)をスタジオに持ち込むことに成功しているのは、ドラマーの Håkon Mjåset Johansen による部分が大きい。かなり派手に叩いているのに、決して他のプレイヤーの演奏に被らず、瞬間的なひらめきに非常に優れたドラマーでバンド全体の原動力になっている。もう何枚ものレコーディングを繰り返し聞き、来日公演も見たはずなのに、こんなに凄いドラマーだったとはと改めて驚くばかりだ。

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Radiohead が好きだという発言もあった彼らだが、先輩格の Atomic が Radiohead のカバーをやっていることもあってかなかってか、アルバムの最後を締めるカバーとして選んだのが、Motif 結成の地トロンハイムのロックバンド Motorpsycho の "Blindfolded"。国内盤も発売された Motorpsycho のアルバム "Phanerothyme" (2001) に収録されている曲だ。カバーするにはいささか新しい曲で、しかも原曲は割とせわしないテンポのストレートなポップソングだったのを、ぐっとテンポを落としてノスタルジックなバラードに仕上げている。カバーといわれなければ全く気づかない大胆な解釈だ。

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この Motif のデビューアルバムは、オスロのジャズ専門店のチャートなどを見ると、かなり売れているようだ。マイナーなレーベルからリリースされた若いバンドのデビュー作、しかもストレートアヘッド系ではないことを考えると異例のことだ。バンドがデビューアルバムのリリース前に既に、ライブ活動のみで地元で確固たる人気を得ているということであり、アルバムがリスナーに支持されているということでもある。

このファーストアルバムは、もしかすると、20代ばかり(しかもまだ20代前半のメンバーも多い)の現在の彼らならではの若々しい瞬間を切り取ったものかもしれない。冒頭に挙げた2つのバンド、Atomic の場合はまだまだ若いバンドだけれど、その先輩達がその後シーンのキープレイヤーになり、バンドはノルウェーのジャズに大きな一歩を記したように、このファーストアルバムは Motif というバンドとそのメンバーのこれからのスタートラインとなる重要な作品だ。

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