(pickup 2005 vol 5 : 7 June 2005)

A Year From Easter
Christian Wallumrød Ensemble
Christian Wallumrød
(p, harmonium, toy piano)
Nils Økland
(vln, Hardanger fiddle, viola d'amore)
Arve Henriksen
(tp)
Per Oddvar Johansen
(ds)


1. Arch Song
2. Eliasong
3. Stompin' At Gagarin
4. Wedding Postponed
5. Psalm
6. Unisono
7. Lichtblick
8. Horseshoe Waltz
9. A Year From Easter
10. Japanese Choral
11. Sketch
12. Eliasong II
13. Neunacht
14. Two Years From Easter

All compositions by Christian Wallumrød, except "Sketch" by Nils Økland, "Lichtblick" by Wallumrød / Økland / Henriksen / Johansen and "Psalm" (traditional).

Recorded September 2004
Rainbow Studio, Oslo
Engineer; Jan Erik Kongshaug
Cover Photo: Thomas Wunsch
Liner Photos: Arve Henriksen
Design: Sasch Kleis
Produced by Manfred Eicher






Sofienberg Variations
Christian Wallumrød Ensemble

Christian Wallumrød
(p, harmonium)
Nils Økland
(vln, Hardanger fiddle)
Arve Henriksen
(tp)
Per Oddvar Johansen
(ds)
with
Trygve Seim
(ts on #1, 6, 14)

Recorded October 2001
Sofienberg Kirke, Oslo


2003; ECM 1809





No Birch
Christian Wallumrød Trio

Christian Wallumrød (p)
Arve Henriksen (tp)
Hans-Kristian Kjos Sørensen (per)

Recorded November 1996
Rainbow Studio, Oslo


1998; ECM 1628
ECM をきっかけにノルウェーの音楽にハマったこともあり、私の「ノルウェー音楽ファン歴」と Christian Wallumrød を聴いてきた期間というのはほぼ一致する。ごく初期の Airamero の唯一の録音 "Airamero" (1994) や今でも活動しているトリオ Close Erase の3枚、そして彼自身のトリオによる ECM への初リーダー作 "No Birch" (1998) 等々、いずれも相当に聴き込んでいて、一応彼の音楽は分かっているつもりだった。

2003年2月末、ドイツで Christian Wallumrød のライブを初めて聴いた。彼自身のリーダー作としては2作目に当たる "Sofienberg Variations" (2003) はリリースされたばかりで、数日前に購入して慌てて耳と頭に詰め込んだ。その日の静かなライブは言葉を選ぶのももどかしいほど素晴らしいものだった。例えば同じノルウェーの同じ世代の音楽でも、Supersilent や Atomic、The Thing といったグループが優れたライブアクトであることは比較的容易に想像ができるだろう。それらとは全く対極に位置する Christian Wallumrød の静かで、深く、美しい音楽が、ライブというシチュエーションであれほどまで聴き手の心深くしみこんでくるという事実は衝撃的だった。

ライブパフォーマンスのインパクトがあまりに強いと、再びアルバムに耳を傾けた時にそのギャップが埋まらないことは往々にしてあるが、Christian Wallumrød の場合は違った。ライブを一度耳にしてから、アルバムに納められた "Sofienberg Variations" の音楽は、少なくとも私の中では立体的に響くようになった。

2004年8月に彼のライブを見る機会が再び訪れた。あまり頻繁にはやっていないというソロ公演。1時間ほどの短いセットを、とっつき易いとは言いがたい音楽で構成する。ときおり浮かび上がる "Sofienberg Variations" からのモチーフがひときわ鮮やか。2003年のカルテットでのライブと甲乙付けがたい内容だった。

そのソロ公演の後、Christian Wallumrød から来月レコーディングをするんだ、と聞いた。前のアルバムと同じカルテットで、ノルウェーツアーに合わせて来年(2005年)4月にはリリースできると思うよ、と。

予定通り届けられた新作 "A Year From Easter" を聴いて、あっと思った。新作の中にはっきりと聞き覚えのある曲が数曲あったからだ。8ヶ月前、オスロでのソロ公演の時にやっていた曲だ。前作の時とは逆に、一度ライブで聴いたきりで記憶の底に眠っていたものが、もう一度アルバムで聴くことによって呼び覚まされる不思議な感覚。前作も決してポップな作りではなかったが、新作の曲は、前作の曲よりさらに手強い。その奥に潜んでいる魅力は一体何なのだろうか。以下は新作を聴いた後、Christian Wallumrød にメールで質問した幾つかの事項と彼自身によるコメントだ。後から思えば、敢えて新作の音楽そのものの話は避けて、周辺だけを触れるような内容になっている。



現在のカルテットが公の場で演奏したのは2002年7月、Christian Wallumrød の故郷コンクスベルグのフェスティバルでだった。レコーディングとリリース時期のギャップはあるとして、先の "No Birch" から "Sofienberg Variations" の間隔に比べ、"Sofienberg" から "A Year From Easter" の間は短かかったように感じられる。しかもミュージシャンの顔ぶれは全く同じだ。それはこのアンサンブルで十分新しい表現が可能だと判断したからだろうか。
Christian Wallumrød: "No Birch" のトリオは 1995年から1999年の間、断続的に活動していた。グループの活動もアルバムもいいものだったと思うけれど、3人全員がこのユニットを終わりにする時期に来ていると感じたんだ。それから長い間、方向性や、自分のやりたい音楽をどうやって表現するか模索していた。今のアンサンブルで初めてリハーサルを行ったのは "Sofienberg" のレコーディング前の2001年の夏で、最初からとてもいいフィーリングがあった。このアンサンブルには、幅広い音楽的な可能性を秘めた、ミュージシャンと音楽それぞれにおいて素晴らしくてユニークなコンビネーションがあるとずっと感じてきたよ。僕にとってこのアンサンブルのために曲を書くのはとても楽しくて、難しいことでもある。それから、他のグループや昔のプロジェクトのために書いた曲を持ち込んで書き直すこともできた。例えば新作の "A Year From Easter" や "Horseshoe Waltz" は元々 Close Erase を念頭に書いたもので、実際、かなり違ったバージョンだけれど Close Erase で演奏したこともあるんだよ。つまり、このアンサンブルで試してみたいマテリアルは随分あったんだ。
カルテットを形成するメンバーのうち、トランペッターの Arve Henriksen はファーストアルバム "No Birch" からのメンバーであり、ドラマーの Per Oddvar Johansen は Airamero 、そして Close Erase でも長い間共演している。トロンハイム音楽院時代からのつきあい(年齢的には Christian Wallumrød が一番年下だ)となるこの2人に対し、Christian Wallumrød の10歳上のフィドル奏者 Nils Økland とはそれまでまったく接点はない。その Nils Økland の"Straum" (2000; Rune Grammofon) という作品がある。トラッドに根ざしつつ、一方でかなりアヴァンギャルドな感覚も見せるそのアルバムではピアノ/ハーモニウム、トランペット、そして自身のフィドルというアンサンブルがあり、彼の、現在の Christian Wallumrød のアンサンブルへの加入は、音楽的にはなるほどと思わせられた。ところが Nils Økland の加入は、そもそも ECM のオーナー Manfred Eicher の提案だったという。
C: Manfred Eicher のその提案は、僕がちょうど新しいアンサンブルのメンバーを考えてきた時にもらったものなんだ。その時、ちょうど Nils のコンサートを見たばかりの時で、彼の演奏にとても感動したから、その提案はいいいんじゃないと思って、試してみようと思ったんだ。で、その選択にはとても満足しているよ。

このアンサンブルのための音楽を書くにあたり、ドラムの Per Oddvar Johansen のパートは一切書かなかったそうだ。つまり、Christian Wallumrød は3人分のパートのみ楽譜にし、Per Oddvar Johansen のみ全く自由に自分のパートを付け加えるという形が取られたということだ。その結果が想像しなかった方向に行ったりすることもあるのだろうか。

C: このアンサンブルに限らず、一般的にドラマーやパーカッションのパートを書くのは難しいと思っている。 Per Oddvar と僕はもう15年もいろんなグループで一緒にやっているし、彼のことは結構知っていると思うんだ(でも彼はいつも変化し続けていて、よく驚かされるんだけれどね!)。他のパートには幾らかははっきりとしたものを書いて、リハーサルでドラムのパートをどうしようか考える。大抵の場合、Per Oddvar はとてもいい解決法を持ち込んでくれるし、時には違うことを試してみたりすることもあるし、僕が求めていることや、逆に絶対求めていないことを伝えようとする時もある。このアンサンブルで演奏することのいいことは、もしかすると Per Oddvar に関しては特にかもしれないけれど、予想もつかない結果が生じることなんだよ。
プレスリリースによると、アルバムタイトル "A Year From Easter" は John Cage の著作 "A Year From From Monday" から取られたものだとのこと。タイトルトラック以外に "Two Years From Easter"というアレンジもあるが、これには何かストーリーがあるのだろうか。
C: アルバムタイトルも曲のタイトルも、多かれ少なかれ幾つかのひらめきをあわせたもので、単に言葉遊びだけのものもある。そのひらめきはかけ離れたものだったり、複合的なものだったり、また凄く平凡なものだったりする。様々に、または個人的に解釈できるという意味で、僕はタイトルが「オープン」なのが好きなんだ。僕にとっては、例えばアルバムタイトルは時間に関するちょっと詩的なフレーズで、同時に John Cage への「挨拶」みたいなのもあるね。イースターに何か関連あるのかと考える人が多いのは分かるよ、でも僕にとってはその意味に囚われるものじゃないんだ…。だいたいにおいて、もっと音楽的なひらめきが多いよ。

ピアノという楽器は誰が弾いても音は鳴る。だからこそ、そこから先の表現は難しいのではと感じることがある。この新作でのピアノの音数は少ないけれど、表現は決して減っていなく、音そのものの持つバリエーションはむしろ増えているとも言える。時折トイピアノ(これはライブでも使っていた)やハーモニウムを加えることで少し色も加えている。音をシンプルにするというのは意図されたことで、もしかしたら音そのものにバリエーションをつけることでシンプルな音数にしているのだろうか。

C: ある意味そうだと言えるね。一般的にピアノで少ない音を鳴らすのには惹かれる。もちろん、時々はたくさん音を連ねることもいいと思うよ、でもそれはどの音を使うかとか、それらの組み合わせとか、ダイナミックさとかによるね。このアンサンブルでは、僕は4人の音全てを含んだ1つの音にしようとしているんだ。例えば、僕の弾くハーモニウムと Nils の弦楽器と Arve のトランペットとか、トイピアノとパーカッションとか、プリペアドピアノとかいうはっきりした楽器の組み合わせでやっている時は、少なくとも部分的にはそうだね。僕にとってより馴染みのある音、例えばピアノの音から脱出するのもいいことだと思うしね。これが音をよりシンプルにしているのか複雑にしているのかは分からないけれど…。でも時によってはいい意味でそれとはほんの少し違う気もする。多分僕が音数が少ないのに惹かれるかということの説明にもなるかな。

先に書いたように、Christian Wallumrød は優れたライブアクトだ。ライブとレコーディングは彼にとってどれくらい違うものなのだろうか。

C: 多分これは2通りあるね。いろんな意味でレコーディングとライブは基本的に同じだ。何より僕達が一緒に可能な限りよい演奏をしようとする、ということと、音響などの聴く側の状況に大きく依存する、という点でね。一方で、1枚のアルバムはその音があって、その形があって、理論がある。そういう観点からするとレコーディングとコンサートは随分違っていると言える。例えば、アルバムよりコンサートのほうが異なった形で演奏することが多いのは当然だ。もちろんオーディエンスのために演奏するのは特別なエネルギーを使う。僕はレコーディングもとても好きだけれど、他の人のために演奏することが一番好きなんだよ!日本でもこのアンサンブルで演奏する機会が持てたらと本当に思うよ。

ノルウェー勢で言えば、Christian Wallumrød や Trygve Seim らのやっているような音楽が世界規模できちんとプロモートされるというのは非常に稀なケースだ。これこそまさしく ECM の素晴らしい点だと思うが、ミュージシャン本人としてはどうなのだろう。それから、彼は比較的早い段階で ECM によって見出されたと言えるけれど、そのきっかけは何だったのだろうか。

C: ECM にレコーディングするというは多くの意味がある。ポップだったりメインストリームだったりしない音楽に対するプロモートとシリアスな仕事ぶりとか、しっかりしたディストリビューションと信頼性もあるし、それ以外にもManfred Eicher とのコラボレーションもとても気に入っているよ。ECM とのきっかけについては、確か Jon Balke と Jan Erik Kongshaug だったと思う。1993年か1994年頃のことで、彼らが紹介してくれ、ECM とのコンタクトができたのもその時のことだよ。

Christian Wallumrød は自身のプロジェクトではずっとアコースティックなサウンドを追及しているが、他のミュージシャン(と)のプロジェクトは最近ではエレクトリックな音が多い。Sidsel Endresen とのデュオもしくは Helge Sten を加えてのトリオ、公私に渡るパートナーであるチェリスト Tanja Orning とのコラボレーションも、つい最近リリースされた新作 "Cellotronics" (2005; Albedo) ではアルバムタイトルどおりの音で、Christian Wallumrød は半数ほどのトラックでシンセを弾いている。他には今年の夏に4作目をレコーディングする Close Erase も3作目から引き続きエレクトリックな音になるとのことだ。他には現在少々休止中の Audun Kleive の Generator X もエレクトリックだ。Christian Wallumrød は彼自身の中でアコースティックな音とエレクトリックな音のバランスを取っているのだろうか、それともバランスを取ることは必要ないのだろうか。ちなみに彼のアンサンブルのメンバーでもある Arve Henriksen は、彼のファーストアルバム "Sakuteiki" をリリースした直後のインタビューで、自身のアコースティックな音は、Supersilent 等やはりエレクトリックな音が多い他のユニットに対する反発ではなく、補足だと言えると語っていたことがある。

C: 多分、バランスの問題なんだと思う。アコースティックもエレクトリックも両方必要だと感じるからね。ちょうど、僕のアンサンブルで書かれた音楽をやっていて、一方で Close Erase や Sidsel、Audun のユニットのように即興演奏をやるのが自然で必要なことだというのと同じだね。僕にとっては作品や様々なコラボレーションは、全て同じ音楽的なプロジェクトの部分部分のようなものなんだ。
Close Erase
"Dance This"
(2001; BP)
Sidsel Endresen / Christian Wallumrød / Helge Sten
"Merriwinkle"
(2003; Jazzland)

Audun Kleive
Generator X
"Ohmagoddabl"
(2004; Jazzland)

Tanja Orning
"Cellotronics"
(2005; Albedo)

Thanks a lot to Christian Wallumrød.

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