(pickup 2005 vol 7 : 26 September 2005)

Atomic
the Bikini
Tapes
Fredrik Ljungkvist
(sax, cl)
Magnus Broo
(tp)
Håvard Wiik
(p)
Ingebrigt Håker Flaten
(b)
Paal Nilssen-Love
(ds, per)

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2004 Atomic tour in Norway:

2/26 Ørsta/Volda
2/27 Voss
2/28 Harstad
2/29 Tromsø
3/1 Vadsø
3/2 Trondheim *
3/3 Hamar
3/4 Bø i Telemark
3/5 Bergen *
3/6 Stavanger *
3/9 Asker *
3/10 Borre
3/11 Tønsberg *
3/12 Porsgrunn
3/13 Kongsberg
3/14 Oslo *
...
7/1 Kongsberg *

* tracks on this album were recorded

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Recorded by Thomas Hukkelberg
Mixed by Andy Mytteis at Bugge's Room
Produece by Atomic
Executive Producers Sten Nilsen and Bugge Wesseltoft
Mastered by Audun Strype at Strype Audio
Artwork by Stoffer Ganes


2005; Jazzland; 0602498715406
2004年2月、「明日からの Atomic のノルウェーツアーで次のアルバムのためにライブ録音するんだ」と聞かされ驚喜した。Atomic の2枚のアルバム "Feet Music" (2001) と "Boom Boom" (2003) は間違いなく名作だったし、それはもう擦り切れるくらい聴いた。それでもそこに何か物足りなさを感じていたのは否定できない。ノルウェー組3人はそれぞれ別々ながらライブを見たことがあったから、彼らの演奏がこんなに小さくまとまってしまうはずはないと思っていた。でもライブアルバムなら…。そのライブアルバムが届くまでに予想外のことが2つあり、1つは彼らのライブをこの目と耳で体験することができたこと(それも日本で、しかも大盛況)、それからもう1つ、これが3枚組というボリュームになったことだ。尚、Atomic のライブ録音ということではこの3枚組が録音されたツアーの狭間に当たるアメリカツアーでの録音が、一緒にツアーを回った Vandermark 5 のライブトラックと共に "Flammable Material" (2004; Atavistic) に収録されているが、20枚組のポスターセットの付録CD-R、限定盤で300ドルという、手が出せそうにないアイテムである。


1枚目を初めて耳にした時、確かにスタジオ録音盤を上回るものを感じたものの、ちょっと綺麗にまとまりすぎているという印象は否めなかった。完璧な録音、複雑な楽曲を寸分の隙もなくこなす5人のミュージシャンの技量といったことが一因だっただろう。しかし1枚目を聴き終えた後はすぐに2枚目、そして3枚目…と一気に3枚を聞き通させられた。最後の演奏の後の歓声と拍手が消えた後には、綺麗にまとまりすぎているなんていう最初の印象はまったく消えてしまっていた。それから後、こんなに繰り返し、しかもまんべんなく聞いた3枚組のアルバムはこれまでなかっただろうというほどのヘビーローテーションとなった。


Atomic と同じリズムセクション、いやリズムセクションなどという表現はもはや相応しくないだろうドラムとベース、つまり Ingebrigt Håker Flaten と Paal Nilssen-Love を擁するグループは多いが、ここでは私が幸運にも複数回ライブを見、Atomic 同様に最近ライブアルバムをリリースした The Thing を例に取る。Atomic と The Thing はともすると並べられて語られることも多いかと思う。しかし根本的なコンセプトは全く異なる。即興演奏という意味でジャズらしいジャズを演っているのは一見ロックっぽい面構えを持つ The Thing のほうだ。Atomic は完全に「書かれた音楽」を演るグループであり、メンバー間のジャズ的なやり取りはあまりないといっていいだろう。そういう意味では楽曲がジャズ的な顔をしている Atomic はむしろロックバンドのようですらある。先の「綺麗過ぎる」との印象の半分はここに起因する。ただこの2つのグループに大きな共通点がある。それは演奏から発散されるエネルギー、そしてそれに対する観客の反応がまさしくロックであり、「ウォー」とでもいうような歓声に象徴されるということだ。


この3枚組のアルバムは実に上手く構成されている。"Geometrical Restlessness" で始まり、"Boom Boom" で終わる1枚目は彼らの最近のライブのスーパーダイジェストバージョンであり、このアルバムを聴くリスナーにベーシックなライブでの Atomic を紹介するものだ。2枚目はアンコールによく演奏される曲を多く含み、1枚目や3枚目とは違うサイドから Atomic の音楽を捉えたもの。尚、#2.3 の "Bop About" は作曲者 Fredreik Ljugkvist 自身のカルテットによるセカンドアルバム "Sonicspace" (1997; Prophone) に収録されていた曲で、ここでの Atomic のバージョンはその古いバージョンからあまり雰囲気が変わらないのが興味深い。逆に言えばこのアクロバティックでなおかつどこかユーモラスなこの曲が Atomic にそのままぴったりはまっているということでもある。そして3枚目の役割は最も分かりやすい。2004年2月〜3月のノルウェーツアーの後、アメリカツアーを挟み、帰国した彼らの変化を捉える1枚だ。


アルバムには別テイクが2バージョン収録されている曲が3曲ある。#2.4 と #3.2 の "Alla Dansar Samba Till Tyst Musik" はセカンドアルバム "Boom Boom" に収録されていたが、同じ 2003年にリリースされた、作曲者である Magnus Broo のカルテット作 "Sugarpromise" (2003; Moserobie) にも収録されている。録音はカルテットバージョンの方が後だ。印象的な美しいメロディーを持つ曲のこのスウェーデン語のタイトルは "everyone dances samba to the silent music" の意。3バージョンを比べながら、Magnus Broo が来日時に「Atomic は僕が(参加しているグループで)一番好きなグループだ」と静かに繰り返したことを思い出す。無口と言っていいほど物静かな彼があまりにはっきりそう言ったので、自分のカルテットは?と突っ込むことすら出来なかった。

#1.3 と #3.4 に収録されている "Kerosene" は Fredrik Ljungkvist のオリジナル。彼らの記念すべき初来日公演となった愛知万博での短いステージの最後に披露されたこの曲を聴きながら、どこかで聴いたことがあると感じた。2回の来日公演が終わってかなり経ってから、この曲が Atomic と School Days との合体ユニットによるアルバム "Nuclear Assembly Hall" (2004; Okka Disk、※"The Bikini Tapes" の国内盤ライナーノートにこの "Nuclear 〜" をライブアルバムとする記述があるが、これは完全なスタジオ録音盤だ)に収録されていたことに気づいた。楽器編成が異なるとはいえ、そのテンションの違いは衝撃的だ。Atomic / School Days バージョンは Atomic バージョンを聴いてしまった後となってはほとんど冗談みたいにゆるゆるに聞こえる。少々すっとぼけたテーマを最初と最後に配し、中央部の演奏があまりに格好いい Atomic バージョンには、改めてこのグループの演奏の迫力を知らされる。

この3枚組で、恐らく全てのリスナーに最も繰り返し聴かれる曲は "Boom Boom" で、それも間違いなく Disc 3 のバージョンだろう。"Boom Boom" のアルバムバージョンの印象を Disc 1 のライブバージョンで蹴散らされたリスナーは、アルバムの最後に再び、だめを押すかのようなバージョンで吹っ飛ばされる。Disc 3 のバージョンは Disc 1 のバージョンよりさらに少しテンポが速く(もしかすると速く聞こえるだけかもしれないが)、「もっと速く演奏できるよ」とあっけらかんと言い放った Paal Nilssen-Love はともかく、Ingebrigt Håker Flaten のベースにはただただあきれるばかりだ。しかしこの3バージョンを最も違ったものにしているのはピアノの Håvard Wiik だ。スタジオ録音盤では、雄弁なプレイヤーが揃いややもすると窮屈そうですらあるこのグループにあって唯一きちんと自分のスペースを確保しているスマートさを見せていたが、彼はここでもさほどアグレッシブに弾きまくるでもないのにインパクトのあるフレーズを聞かせている。Disc 1 と Disc 3 のバージョンの間にはアメリカツアーの存在があるが、彼はそのツアーではエレピを弾いていた。Disc 3 のバージョンでのフレーズの大きな変化の裏にはそのあたりの事情も影響しているのかもしれない。


2005年4月、来日公演を前に二手に別れて来日し東京に集結した彼らは、その時点での「次の次のアルバム」の話をしていた。来日前の2005年2月に、Jazzland のレーベルオーナー Bugge Wesseltoft のスタジオ Bugges Room で、スタジオ盤としては "Boom Boom" に続くアルバムのレコーディングを既に終えている。彼らがもう次の段階に進んでいることを察知した私は、かなり焦って "Boom Boom" は演らないの?と訊いた。あの曲を1度でいいからライブで聴いておきたい、そう思ったからだ。彼らの返事は、「分からない…新しい曲を演るつもりだから」だった。結局、新宿 Pit Inn では "Re-Lee" と "Boom Boom" をまさにこのアルバムの終盤のように続けて演奏したが、その前日の万博内の公演では前の2作からのマテリアルは1曲もなかった。2006年2月にリリース予定の新しいアルバムの話を続けながら、「古いやつはもうおしまい!」 − 彼らははっきりそう言い切った。彼らが "Boom Boom" を演らなくなる日も遠くないかもしれない。けれど、まるでこのライブアルバムで清算するかのように、名作だった2枚のアルバムを過去のものにしてしまう「前進」が彼らにある限り、彼らの音楽に飽きることは決してないだろうと思う。
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Atomic "The Bikini Tapes" (2005; Jazzland; 0602498715406)

1.1 Geometrical Restlessness (Wiik)
1.2 Feets From Above (Ljungkvist) / "Boom Boom"
1.3 Kerosene (Ljungkvist) / *1
1.4 Leave Stacy (Wiik)
1.5 Boom Boom (Ljungkvist) / "Boom Boom"

2.1 Den Flyktiga Magneten (Broo) / "Feet Music"
2.2 El Coto (Ljungkvist) / "Feet Music"
2.3 Bop About (Ljungkvist) / *3
2.4 Alla Dansar Samba Till Tyst Musik (Broo) / "Boom Boom" / *2
2.5 Konrads Hopp Om Livet (Ljungkvist)
2.6 Pyramid Song (Radiohead) / "Boom Boom"

3.1 Toner Från Förr (Ljungkvist) / "Boom Boom"
3.2 Alla Dansar Samba Till Tyst Musik (Broo) / "Boom Boom" / *2
3.3 Hyper (Ljungkvist) / "Boom Boom"
3.4 Kerosene (Ljungkvist) / *1
3.5 Re-Lee (Wiik) / "Boom Boom"
3.6 Boom Boom (Ljungkvist) / "Boom Boom"

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*1 "Kerosene" (1.3 & 3.4):
also on Atomic / School Days "Nuclear Assembly Hall" (2004; Okka Disk), recorded on 13-14 August 2003
*2 "Alla Dansar Samba Till Tyst Musik" (2.4 & 3.4):
also on Magnus Broo Quartet "Sugarpromise" (2003; Moserobie), recorded on 9 April 2003
*3 "Bop About" (2.3):
also on Fredrik Ljungkvist Quartet "Sonicspace" (1997; Prophone), recorded on 4-5 September 1996

** tracks 1.1, 1.3 / 3.4, 1.5 / 3.6, 2.5 and 3.5 were played at Pit Inn on 12 April 2005.

Thanks a lot to Fredrik, Magnus, Håvard, Ingebrigt and Paal!!!

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