(pickup 2006 vol 3 : 22 May 2006)

THE SOURCE

Trygve Seim (ts, ss)
Øyvind Brække (tb)
Mats Eilertsen (double-b)
Per Oddvar Johansen (ds)


1. Caballero
(Øyvind Brække)
2. Un Fingo Andalou
(Trygve Seim)
3. Libanera
(Edward Vesala)
4. Prelude To A Boy
(Øyvind Brække)
5. Tamboura Rasa
(Per Oddvar Johansen)
6. Mmball
(Per Oddvar Johansen)
7. Østerled
(Øyvind Brække)
8. Life So Far
(Øyvind Brække)
9. Tribute
(Øyvind Brække)
10. Mail Me Or Leave Me
(Øyvind Brække)
11. Alle Blå De Er
(Øyvind Brække)
12. Water Glass Rhapsody
(Øyvind Brække)
13. A Surrender Triptych
(Øyvind Brække)


Recorded July 2005
Rainbow Studio, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Cover Photo: Jean-Guy Lathuilière
Liner Photos: Colin Eick
Design: Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher


2006; ECM Records; ECM 1966

The Source が結成されたのは1993年の秋、今から13年近くも前のことだ。最初のベーシスト Ingebrigt Håker Flaten を含め全員がまだトロンハイムの音楽院(当時)の学生で、結成から半年でレコーディングにこぎつけ順調なスタートを切る。今でこそノルウェーで若いアーティストの作品を積極的にリリースするレーベルは随分増えたが、Curling LegsNOR-CD 、それに Odin くらいしかなかった頃の話だ。また、同じ頃活動を初め、今でも存続しているこの周辺のグループは彼らの他に Close Erase と Farmers Market のみ(尚、この3グループはベーシストを共有していた、つまり The Source の最初のベーシスト Ingebrigt Håker Flaten は Close Erase のメンバー、2代目のベーシスト Finn Guttormsen は Farmers Market のメンバーというつながりもある)。充実した教育を受けた優れたミュージシャンが多いこの世代だが、1つのユニットとして活動を続けることの難しさは確かにあるだろう。

The Source はこれまで様々なアーティストとのコラボレーションで様々な音楽に取り組んでおり、その引き出しの多さを見せている。レコーディングになっているものだけでもロックバンドの Motorpsycho や現代音楽の Cikada String Quartet 、それに2枚のクリスマスライブ盤ではソプラノ歌手やライの歌手や様々なゲストミュージシャンにビッグバンドまで加わっている。"The Source" とシンプルにセルフタイトルとなった本作は、思えばファーストアルバム以来のカルテット作で、「企画物」ではないのもファースト以来、つまり12年ぶりのセカンドアルバムのような作品だ。

この作品が録音される直前、Mats Eilertsen がグループに加わった。知る限りかなり急な話で、録音の3ヶ月前に来日していた前任の Finn Guttormsen はまだその時点ではメンバーで、グループの先の話をしていたからだ。2005年の5月か6月、単発のライブの告知で Mats Eilertsen の名前があるのを見たときは、これほどまでにぴったりなベーシストがどうして今までメンバーでなかったのだろうとすら思った(Mats Eilertsen は他の3人より少し若いため、同じ音楽院卒ながら在学時期がずれることくらいしか要因はないだろう)。果たして、加入2ヶ月ほどでレコーディングに臨んだ彼のはまり具合は見事なものだ。Mats Eilertsen 自身が The Source に入ったことをとても喜んでおり、これから活動を共にしていくのが楽しみだと語っている。

Trygve Seim が "Different Rivers" (2000) と "Sangam" (2003) のリーダー作を ECM からリリースし、国外でも知られるようになったことから The Source はともすれば Trygve Seim のバンドのように思われがちだが、珍しいくらいに4人が対等なバンドであり、Trygve Seim の言葉を借りるなら4人共にリーダーである。このアルバムでも直前に加入した Mats Eilertsen 以外の3人がコンポーザーとしてクレジットされている。ただし圧倒的に楽曲数が多いのは Øyvind Brække だ。このトロンハイムの才人の説明をするのは難しい。トロンボニストとしては既にノルウェーのトッププレイヤーであり、作曲やアレンジも高く評価されている。参加作も少なくないが、なぜか単独のリーダー作がないため、ノルウェー国内はともかく国外では知られているとは言い難い。後半の軽快な楽曲などには特に Øyvind Brække の特色が出ていると思うが、Trygve Seim が彼らしい滑らかなフレージングでそのメロディーを吹くと、メンバーそれぞれの個性をブレンドした The Source の音楽になってしまうから面白い。

収録されている楽曲は実はかなり古いマテリアルも含まれており、そのうちのいくつかは元々別のバンドのために書かれ、The Sourceのためにリアレンジされたものもある。例えば #1 はビッグバンドのため、#10 は Øyvind Brække の別のカルテットのために書かれたものだ。また #6 は最初は Close Erase の "No. 2" (1999; NOR-CD) に、そして "The Source and Different Cikadas" にもストリングカルテットを含むバージョンが収録されているが、プロデューサー(というよりレーベルオーナー) Manfred Eicher の提案で新しいカルテットバージョンが録音されることになった。3曲目、Edward Vesala の "Libanera" は Vesala 本人から教わったものだそうで(おそらく Vesala の最後のユニット(〜1999年)で共演していた Trygve Seim が、だと思われる)、Vesala 本人のバージョンは正式にはリリースされていないようだ。また、楽曲にはなかなか興味深いタイトルが付けられており、最後の "A Surrender Tryptych" も同じ ECM から1973年にリリースされた Jan Garbarek / Arild Andersen / Edward Vesala "Tryptykon" を想起させ、ここでも Vesala との関連性を示している。

このアルバムのレコーディングは新しい Rainbow Studio で行われおり、エンジニアの Jan Erik Kongshaug によると録音はかなり短い時間で手早く行われたという。The Source の実質的な前作にあたる "The Source and Different Cikadas" と Trygve Seim の2作品がかなり時間をかけて作られたのとは対照的で、仕上がりにも違いが出ている。 また、和声楽器を含まない編成ならではの音の明瞭さによりそれぞれのメンバーの演奏がよくわかり、過剰に音を詰め込まない演奏も、ECM らしいといえば ECM らしい上品な(過ぎると感じる向きもあるだろうが)仕上がりになっている。

カルテットとしての演奏にポイントが絞られているとはいえ、それでも The Source の音楽は幅広い。基本的にかなりきちんと作曲されアレンジされているものが多いようだが、その解釈、The Source 流の揺らぐようなタイム感覚は独特であり、もしかしたらライブではもっと即興演奏の度合いが多くなるのかもしれない。

スリーブ内にメンバーそれぞれのモノクロの写真がある。1994年にリリースされたファーストアルバムにも、20代前半の彼らの、ちょっとふてぶてしい顔をしたやはりモノクロの写真があった。2006年の彼らの自信に溢れた、30代半ばとまだ若いながらも貫禄を感じさせる面構えに強い印象を受けた。


The Source: Discography

1994 1995 2000 2002 2002

1994 The Source "Olemanns Kornett" (Curling Legs; C.L.P. CD10)
1995 The Source "Of Christmas" (Curling Legs; C.L.P. CD21)
2000 Motorpsycho / The Source / Deathprod "The MotorSourceMassacre" (Stickman; 3rd Ear 0200)
2002 Trygve Seim / Øyvind Brække / Per Oddvar Johansen "The Source and Different Cikadas" (ECM 1764)
2002 The Source "Of Christmas, Live at Blå" (Booting Legs; B.L.P CD 1)




MATS EILERTSEN "FLUX"

1. No Fuzz for Fuzz (Mats Eilertsen)
2. 4D (Ernst Reijseger)
3. Olivier (Mats Eilertsen)
4. Lunar (Thomas Strønen, Fredrik Ljungkvist, Ernst Reijseger, Mats Eilertsen)
5. Flux (Mats Eilertsen)
6. Gruff (Mats Eilertsen)
7. Duo (Mats Eilertsen, Fredrik Ljungkvist)
8. Revolver (Mats Eilertsen)
9. Dodeka (Mats Eilertsen)
10. Dias (Mats Eilertsen)
11. Passaggio Nach dem Regen (Ernst Reijseger)
12. In Orbit (Mats Eilertsen)


Recorded 6th and 7th September 2005 in Kampen kirke, Oslo
Recording engineer: Audun Strype
Mixed and mastered by Audun Strype at Strype Audio
Coverart and design: Maria Sundby


2006; AIM Records; AIMCD 113


Ernst Reijseger (cel)
Fredrik Ljungkvist (sax, cl)
Thomas Strønen (ds, bells)
Mats Eilertsen (b)


ベーシスト Mats Eilertsen が共通する以外は全く異なる編成による全く異なる音楽だが、The Source の新作とほぼ同時期にリリースされたこのアルバムを並べて聴くと面白いと思うので一緒に紹介する。

このグループは、Mats Eilertsen が構想した音楽とメンバーを "Turanga" のためのレコーディングセッションで集めたことで始まった。アルバムをリリース後、北欧を中心に多くのライブをこなしたあとのこのセカンドアルバムでは、よりアンサンブル志向の強いものとなっている。作曲・アレンジの占める割合は少し減ったように思われ、その分メロディーなどは少し抽象的なものが多くなっている。

このアンサンブルの面白い点は、それぞれのプレイヤーの役割が固定されていないということだ。そもそも、カルテット編成のグループにチェロとコントラバスがいることも変わっているが、メロディーを奏でていても、即興演奏の部分でも、どの楽器がどう呼応してくるか先が読めない。Thomas Strønen のドラムまでも時にとてもカラフルな音を発したりする。

アコースティックな楽器、しかも低音弦楽器が2つにクラリネット/サックスという木管楽器の織り成す柔らかで暖かみのある音の魅力は前作同様だ。加えて、オスロ市内のカンペン教会で録音された広がりのある音響が、クラシックのような凛とした雰囲気を加えている。
Mats Eilertsen "Turanga" (2004; AIM Records; AIMCD 108)

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