(pickup 2006 vol 6 : 27 August 2006)
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susanna and the magical orchestra melody mountain |
| 1. hallelujah 2. it's a long way to the top 3. these days 4. condition of the heart 5. love will tear us apart 6. crazy, crazy nights 7. don't think twice, it's all right 8. it's raining today 9. enjoy the silence 10. fotheringay |
susanna karolina wallumrød: vocals morten qvenild: piano, cembalo, autoharp, vibraphone, church organ and keyboards stian carstensen: pedal steel on it's a raining today recorded by helge sten at dagaliveien 14, østre nes, tomba emanuelle, lindemansalen and audio virus lab produced by deathprod mixed by helge sten at audio virus lab mastered by bob katz at digital domain sleeve by kim hiorthøy 2006; rune grammofon; RCD 2057 |
ファーストアルバム "List of Lights and Buoys" (2004) がリリースされた時、2001年に初めてこのデュオのことを知ったことを書いた。それはライブ告知だったが、後からそれは、彼らの最初のコンサートのものだったと知らされた。アルバムがリリースされるまでは Susanna Wallumrød という気になるファミリーネームの持ち主の顔すら知らなかったが、その後、2年間で4度も会うほどの特別な存在になった。しかし、本当に心待ちにしていたこのセカンドアルバムを耳にしたとき、オフステージの彼らのことは一瞬全く忘れ、ただひたすら音楽に引き込まれた。敢えて余計な記憶から少しだけピックアップするなら、2人が自分達自身の音楽の他に聴いている音楽の趣味は必ずしも一致しなさそうなこと、それはこのアルバムの選曲にも見て取れること。それから彼ら、特に Susanna Wallumrød のアルバムやステージの印象と素顔がかなり違うということ。つまり、もしかしたらアルバムジャケットのように冷ややかで月の光のような印象を持つかもしれないが、実際は2人とも周りを和ませる朗らかな人柄だということ。そして Susanna Wallumrød は歌も普段の話声もあまり変わらないことも付け加えてもいいだろう。 このセカンドアルバムにはオリジナルはなく、カバーばかり10曲が収録されている。そもそも、2000年に2人がデュオとして活動を始めた時、曲は他のアーティストのカバーで、ボーカルとアコースティック・ピアノによるデュオというシンプルなものだったという。そういう意味ではこのアルバムは彼らの原点に立ち戻る作品だ。ファーストアルバムに続くレコーディングを始めた時はカバーでシングルをリリースすることも考えられていたが、結局もっと多くのマテリアルを集めアルバムとしてのリリースになった。 冒頭の Leonard Cohen "Hallelujah"、ふと止まってしまいそうなほどのスローテンポで始まり、アルバムを通してそれは変わらない。しかしそのテンポよりも全体を支配しているのは静けさだ。試しにこのアルバムを何度か聴いた後に改めてファーストアルバムを聞き返してみればその差は歴然としている。 Susanna Wallumrød の歌は、感情を強く込めるでもなく、かといって淡々というのとは全く異なる間合いで、丁寧にひとつひとつの歌詞を紡ぎだしていく。その声が、このアルバムではまるで手に届きそうに聴こえる。録音を手がけているのは彼女の声を一番良く知っているであろう Helge Sten。ファーストアルバムからの変化は大きい。録音に加え、もちろん彼女自身のシンガーとしての充実によるものも大きいだろう。歌の中で少しずつ表情を変える場面が見られ、ある場面ではとても若さを感じるかと思えば、他の場面ではその表情がすうっと消えていくのがとても印象に残る。 Magical Orchestra こと Morten Qvenild は、最小限以下と言えるほどの少ない音数でボーカルを支える。前作でクレジットされていたのはキーボード、ハーモニウム、そしてオートハープのみで、今作ではアコースティックな楽器を多く使っているのが大きな違いだ。シンプルだが、うっすらと複数の楽器が重ねられていたり、曲によって全く違う音の楽器を選んでいたりと、アルバムを通してみるとかなりバラエティーに富んだ音使いだ。 選曲はもっとバラエティーに富んでいる。最も驚かされたのは AC/DC の "It's A Long Way To The Top (If You Wanna Rock 'N Roll)" だ。この美しい声で「ロックンロール…」とゆっくり歌うのが面白いが、それよりこの曲をチェンバロでバロック調に弾いてしまうそのセンスに脱帽。同様に KISS の曲もドリーミーにアレンジされている。また、前作に収録されていた "Jolene" がそうだったように、Joy Division の "Love Will Tear Us Apart" 、それに Depeche Mode "Enjohy The Silence" は、むしろ Susanna and the Magical Orchstra のバージョンのほうが歌詞の内容にに合っているのではと感じられるほどの解釈だ。 収録された曲は大半がかなり知られたものだが、Matt Burt の "These Days" のみ他とは異なる類のカバーだ。Matt Burt はアメリカ出身、トロンハイム在住の詩人で、Motorpsycho や Helge Sten と親交があり、Helge Sten のボックスセット "Deathprod" (2004; Rune Grammofon; RCD2035) のブックレットにも若干彼についての記述がある。原曲は彼のソロアルバム "Grumpy Groovy" (1997; Stickman Records; Psychobabble 010) に収録されている54秒のギター弾き語りバージョンで、こちらも Helge Sten がプロデュースしている。 このアルバムのスリーブに、機会があればオスロの Tomba Emannuelle へ行くようにと注釈されており、ウェブアドレスまで記載されている。正式には Emanuel Vigeland Museum といい、彫刻で有名な Gustav の弟 Emanuel Vigeland の墓所だ。壁面から天井までを埋めるフレスコ画が有名だが、非常に長い残響を伴う特殊な音響をもつこの空間は Helge Sten お気に入りの録音場所であり、これまで Arve Henriksen "Sakuteiki" (2001; Rune Grammofon; RCD2021)、Terje Isungset "Middle Of Mist" (2003; NORCD 0348)、Unni Løvlid "Vita" (2005; Grappa/HEILO HCD 7179) などがいずれも Helge Sten によって録音されている。このアルバムでは "It's A Raining Today" の前半が特徴的だ。Morten Qvenild が弾いているヴィブラフォンの、一瞬それとは気づかない程の荘厳な響き方でその特殊な残響がよくわかる。 Susanna and the Magical Orchestra 流に鮮やかにリアレンジされた楽曲の中、比較的原曲の精神をよく残していると感じられたのが Prince の "Condition of the Heart" と Faiport Convention の "Fotheringay" の2曲だ。特に後者は唯一の女性シンガーが歌った曲のカバーだ。8分の6拍子で刻まれるオリジナルの美しいアコースティックギターを大幅にスピードダウンし、ここではチャーチ・オルガンが3拍子のワルツを奏でる。ちなみに、オリジナルの作者でありシンガーである Sandy Denny が不慮の死を遂げたのは1978年。Susanna and the Magical Orchstra の2人はそのすぐ後、同年と翌年の生まれだ。 ファーストアルバム "List of Lights and Buoys" は海の道しるべをタイトルとしていた。そしてセカンドアルバムは "Melody Mountain"。彼らの選んだメロディーを集めたアルバムにふさわしいタイトルであると同時に、彼らがこれら多くの曲を聴いたであろう故郷、「王の山」という名前を持つ街コンクスベルグのことも少し思い起こさせた。 |
originals: 1. hallelujah by leonard cohen; leonard cohen "various positions", 1984 2. it's a long way to the top by angus young, malcolm young and bon scott; ac/dc "high voltage", 1974/1976 3. these days by matt burt; matt burt "grumpy groovy", 1997 4. condition of the heart by prince; prince "around the world in a day", 1985 5. love will tear us apart by peter hook, ian curtis, bernard summer and steven morris; joy division, released as a single in 1980, also on "substance", 1988 6. crazy, crazy nights by paul stanley and adam mitchell; kiss "crazy nights", 1987 7. don't think twice, it's all right by bob dylan; bob dylan "the freewheelin'", 1963 8. it's raining today by scott walker; scott walker "scott 3", 1969 9. enjoy the silence by martin l. gore; depeche mode "violator", 1990 10. fotheringay by sandy denny; fairport convention "what we did on our holidays", 1969 |
links: >> Susanna and the Magical Orchestra >> Susanna and the Magical Orchestra @ Myspace.com >> "Melody Mountain" @ musiconline.no >> Rune Grammofon |
special thanks to susanna and morten.