(pickup 2006 vol 9 : 5 December 2006)



in the country
losing stones, collecting bones



1. my best friend is a dancer
2. hello walt
3. ashes to ashes
4. everyone live their life
5. medicine waltz
6. take me over
7. torch - fishing
8. the bear
9. can i come home now
10. kung fu boys
11. don't walk another mile

morten qvenild (grand p, celesta, harmonium, hammond organ, vo)
roger arntzen (double-b, vo)
pål hausken (ds, per, vib, glockenspiel, vo)
with
marc ribot (g on #7 and #9)
stefan sundström (vo on #4)


all tracks written by morten qvenild
and arranged by in the country
produced by in the country
executive producer: rune kristoffersen
recorded by janne hansson at atlantis studio
guitar recorded by francois landeau at noise-industries, new york
celesta recorded and edited by helge sten at audio visus lab
mixed by janne hansson with morten qvenild and rune kristoffersen at atlantis studio
mastered by bob katz at digital domain
sleeve design by kim hiorthøy



2006; rune grammofon; RCD 2059
ピアノトリオという言葉がある。日本のジャズ市場で最も売れるフォーマットではないかと思う。それぞれの役割分担がはっきりしていて、大抵の場合音楽を把握しやすい。この in the country も編成からすればピアノトリオだ。しかしこのアルバムを先入観なしに聴いた時、ピアノトリオを聴いた、という印象は残らないに違いない。前作 "This was the pace of my heartbeat" でも既に見られた「歌心」が本作では全面に出てきており、ほとんど歌ものトリオとでも呼べばいいような、独自の世界をさらに確かなものにしている。

このアルバムの録音後の2006年7月、リーダーで全ての楽曲を手がける Morten Qvenild の故郷ノルウェー・コンクスベルクで、彼の両親が見守る中行われたライブを観ることが出来た。彼らをライブで聴くのは2年ぶり。前回はファーストアルバムのレコーディング前だったから、実際の時間の経過より彼らのキャリアの経過のほうが長い。その前回ライブの最終曲、そして前作の最終トラックである "laschia ch'io pianga" を、まるで「第2章」へのイントロのように最初に持ってきて、新しいライブは始まった。

前作から演奏されたのは冒頭の曲の他 "viggo" などほんの数曲のみで、大半はリリース前のこのアルバムからの曲だった。"viggo" はファーストアルバムのレコーディング前と後で一番変わった楽曲だが、歌と躍動感を伝えるこの曲の精神は新作に引き継がれ、さらに一歩推し進められている。

ステージ左、長身の背中を丸め、ピアノにのめり込むようにして鍵盤に触れる Morten Qvenild の姿を見ながら奏でられる音楽に耳を傾けていた時、ふと in the country のそれぞれの楽曲は短い御伽噺のようだと感じられた。Morten Qvenild は、ピアノを弾いているというより、ことばを綴るように音符を連ねているといったほうが近い。ストイックなのに同時に穏やかさも湛え、チェレステやヴィブラフォン、グロッケンシュピールのキラキラした音やパーカッションの使い方もドリーミーで効果的だ。

前作の "viggo" で上手くコーラスを使った彼らだが、このアルバムではもっと具体的なボーカルが入る曲が2曲ある。1つはその "viggo" の延長線上にあると言える #4で、スウェーデン人シンガーソングライター Stefan Sundström がリードボーカルを取る。in the country の繊細な演奏と、それをひっぱるかのようなラフめのボーカルの対比が面白い。

アルバムにはもう1人ゲストミュージシャンが参加している。in the country がニューヨークで公演を行った時に共演したギタリストの Marc Ribot だ。この顔合わせには意表を突かれたが、in the country とは異なる強い個性がアルバムのアクセントになっている。

その Marc Ribot の参加する #9 (の後半)をライブで初めて聴いた時、理由もなく涙が出そうになる感覚を覚えた。どこか懐かしくてセンチメンタルなそのメロディーは、素朴ながら心を捉えて離さない。この曲に限らず、全ての曲のどこかに、派手さこそ全くないものの、静かに心に残る何かが潜んでいる。

コンクスベルグでのコンサートの最後、暖かな拍手に迎えられアンコールのためステージに戻ってきた彼らはそれぞれの位置に戻り、Morten Qvenild はマイクを引き寄せ、ピアノを弾きながら歌いだした。それがもう1曲のボーカルトラック #11 だ。予想もしなかった展開に驚き、しかしその自然な佇まいにもしかしたら彼のお気に入りの曲のカバーかとも思ったが、それは in the country の物語の第2章の最終節を印象的に締めくくる彼のオリジナルだった。歌は、ふと途切れて終わる。この愛想のなさも「らしい」が、この後ろに続く物語を少し予感させる何とも素敵なプレゼントのようなトラックとなった。
links: >> In The Country
>> In The Country @ MySpace.com
>> "Losing Stones, Collecting Bones" @ musiconline.no
>> Rune Grammofon

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