(pickup 2007 vol 3 : 3 April 2007)
arve henriksen strjon |
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evocation black mountain ascent leaf and rock ancient and accepted rite twin lake green water alpine pyramid wind and bow strjon glacier descent in the light arve henriksen: tp, voice, key, electronics ståle storløkken: key helge sten: g, bow produced by deathprod at audio virus lab 1, 4, 9 and 12 recorded and mixed by helge sten 2, 5, 8 and 11 recorded and mixed by arve henriksen 3 and 10 recorded and mixed by arve henriksen and helge sten 6 and 7 recorded by ståle storløkken and mixed by helge sten all selections by arve henriksen, except 4, 9, 10 and 12 by arve henriksena and helge sten and 6 and 7 by arve henriksen and ståle storløkken mastered by bob katz at digital domain cover by kim hiorthøy 2007; rune grammofon; RCD2061 >> Arve Henriksen >> Arve Henriksen @ MySpace.com >> "Strjon" @ musiconline.no |
"Sakuteiki" (2001) は、彼に大きな影響を与えた尺八と日本の文化を彼らしく表現したもので、"Chiaroscuro" (2004) は、自らのハイトーンヴォイスとカラフルなサウンドスケープをミックスした、よりポップな仕上がりのアルバムだった。どちらもすっかり頭の中にアルバムごとインプットされるほどよく聴いていたから、この "Strjon" を不用意に聴き始め、冒頭の "evocation" のあまりに「強い」音を耳にし驚くことになった。Arve Henriksen が、同じような音楽を繰り返すはずはないのだけれど。 "Strjon" 、国内盤のカタカナ表記は『ストリオーン』、より正確にはこれを少し「ストリユーン」に近づけたような発音で、Arve Henriksen の故郷 Stryn (こちらは「ストリューン」と「ストリーン」の間くらいの発音)の中世の名前だ。Stryn はノルウェーの西海岸、トロンハイムとベルゲンの間、少しベルゲン寄りで、フィヨルドの入り江をかなり入ったところにある町だ。彼はアルバムのリリースに際し、Stryn の名前でネットのイメージ検索をかけてみるといい、とアドバイスしている。出てきたのは、山と渓谷、そしてその名前の由来となった英語でいう stream さながらの急流が織り成すダイナミックな風景。アルバムのスリーヴには、その急流をイメージした渦巻くようなラインが描かれている。 また、このアルバムのマテリアルは彼がまだその町にいた10代後半にまで遡るという。"Sakuteiki" で一躍広く知られるようになった、彼独特の柔らかいトランペット音色のアイディアの元である尺八との出会いのはるか前のことだ。現在の Arve Henriksen により「リアレンジ」されているとはいえ、彼の原点、彼の心の原風景を知ることが出来るとても興味深い要素を含んでいる。 アルバムに参加しているのは Ståle Storløkken と Helge Sten。Arve Henriksen を含め3人ともが Supersilent のメンバーだが、Supersilent のメンバーを2人迎えることになったのは必然であり偶然でもあり、またドラマーがいない Supersilent 、とするのは相応しくない。音を聴く限り、Arve Henriksen が自身のアイディアを形にするのに求めた共演者がこの2人であり、その2人がたまたま Supersilent のメンバーだった、という印象だ。いや、たまたまというより、この2人が Arve Henriksen にとってそういう共演者だからこそ、Supersilent のようなグループが10年も活動し、音楽を発展させてこれたのだろう。 このアルバムで、3人の演奏者は3人ともが顔を揃えることはなく、Arve Henriksen のソロ、彼と Ståle Storløkken または Helge Sten とのデュオという形が取られている。Arve Henriksen と Ståle Storløkken のデュオ、それにギターを弾く Helge Sten というのは最近のこの周辺の注目すべきポイントだ。Arve Henriksen の音を求め、ライブやレコーディングに彼を迎えるアーティストは数多いが、Supersilent のメンバーというのはそれとは全く異なる。ライブの回数こそ多くはないが、Arve Henriksen と Ståle Storløkken はデュオとしても活動している。Ståle Storløkken は、いつも変わりない非常に強い彼自身の音を持っており、ここでも遠慮なくその音をぶつけてくるが、決して衝突はしない。Arve Henriksen は参加するアンサンブルを数段上へと引っ張り上げる能力を持つ演奏者だが、Ståle Storløkken はその Arve Henriksen を時にはリードできる存在だ。一方の Helge Sten は、他のアーティスト、この場合は Arve Henriksen のサウンドの中に自分の居場所を確保できるミュージシャンであり、サウンドメイカーだ。 "Strjon" は、話題を呼んだ日本風のアイディアやハイトーンヴォイスといった分かりやすい要素を敢えてほとんど排除し、ストイックな力強さを感じさせる仕上がりとなっている。決してポップではないが、とてもバラエティーに富んでいる。先の2枚のアルバムの延長でもあることを示すように瞑想的な雰囲気やループなどを使ったサウンドスケープなどをちりばめつつ、一方で彼自身が最近よくインタビューで言及している「ジャズ以外の音楽への接近」も顕著に見られる。具体的には、例えばアルバム中で最も美しいトラックの1つである #8 は、彼らしいノスタルジックなメロディーをバロック音楽のような構造に仕立て、トランペットの多重録音で表現したものだ。また、#11 での喉に引っかかるような低い声はノルウェーの伝統的な喉を独特に鳴らす唱法を思わせるし、彼のルーツでもあるサーメの歌唱の要素も随所に見られる。しかし Arve Henriksen はそれらを直接的に引用することはなく、全て自身の音楽に溶かし込ませてから再現しているため、私たちが耳にする音楽は、ユニークな「Arve Henriksenの音楽」としか言いようのないものだ。 この作品は2007年2月にリリースされたが、それよりも前に Arve Henriksen は既に4作目となる次のリーダー作の構想に着手している。今後のプロセスで大きく予定が変わらなければ、メンバーはこのアルバムとは全く異なり "Chiaroscuro" のラインナップと重複することになる。どのような音楽になるのか、もちろん想像もつかない。しかし後から振り返れば、特に音楽そのもの以外の面で、この "Strjon" はひとつの区切りとなる作品になるだろう。 |
Special thanks to Arve.