(pickup 2007 vol 5 : 9 July 2007)
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Palinode Håvard Wiik |
| 1. Ennui! 2. Canvas 3. Erwartung 4. Marionette Imensions 5. Malachi 6. Palinode 7. Wiesengrund 8. Mechanics 9. Convolute 10. Freed [then] from the emptiness of the universe Håvard Wiik - Steinway D Recorded at Audiopol Studio 08.12.06 and 23.01.07 Engineer Espen Gundersen Mixed & Mastered by Audun Strype Graphic Design Mattis Cederberg Produced by Håvard Wiik Executive Producer Jonas Kullhammar 2007; Moserobie; MMP CD052 >> Håvard Wiik @ MySpace.com >> "Palinode" @ Klicktrack.com |
2002年12月に Håvard Wiik Trio 名義での初リーダー作 "Postures" を録音した後、Håvard Wiik は Atomic で3枚、Free Fall で2枚、Kornstad / Wiik で2枚という、いずれも非常に充実した内容の作品を立て続けにリリースしてきた。気がつけば4年もリーダー作が出ていなかったことになるが、ここへ来て2枚のリーダー作を同時に録音することになった。2007年1月20日と21日に録音されたトリオ作 "The Arcades Project" 、そして 2006年12月8日と2007年1月23日に録音されたこのソロ作 "Palinode" だ。 2枚続くきっかけになったのは、2006年7月、ノルウェー・コンクスベルクでのジャズフェスティバルにおいて、ノルウェージャズで最も権威ある賞の1つ "Vitalprisen" を受賞したことによる。受賞した段階で恐らく既にトリオとしてのプランは決まっていたと思われるが、彼が受賞をきっかけに久しぶりに取り組んだのがソロ演奏だ。そもそも、Håvard Wiik のソロ演奏は 2004年7月、ノルウェー最大のジャズフェスティバルであるモルデ・ジャズフェスティバルで「Artist in Residence」を務めたのがきっかけだ。そのモルデに続いて2回目となる2004年8月のソロ公演をオスロで観たが、Atomic などでの彼の演奏に比べてまだまだ模索中といった感が強かった。様々なグループでの活動を経て3年後に辿り着いた「ソロ」は、3年前とは異次元のレベルのもので、非常に強いインパクトを受けた。 この作品での Håvard Wiik は、他のグループでの演奏より、やや非ジャズ的だと言える。現代音楽やクラシックを思わせる曲も多いが、完全にそちらに行ってしまわないところで留まっている。ここ数年の Håvard Wiik が、ピアニストとしてのみならずコンポーザーとしていかに躍進を遂げたか、というのは Atomic の "Happy New Ears!" や トリオ作 "The Arcades Project" を聴いても明らかだが(この点については両作品のライナーノートに繰り返し書いたが)、この作品でも全曲オリジナルの素晴らしい楽曲が並び、またそこから彼の自信の程も伺える。 全体の構成を見ても、個々の楽曲、そして彼のピアノのフレージングを取っても、緩急、間、コントラストが強くもなく弱くもなく、絶妙のバランス感覚で配置されている。このアルバムの緊張感は、ピリピリするような感覚をリスナーに強要するものではなく、見えない糸がずっと張られているかのようなものである。このスリリングさにあっては全く他の楽器の入る余地などない。 日本先行でリリースされたトリオ作 "The Arcades Project" と共通する曲が2曲ある。"Malachi" と "Wiesengrund" がそれだが、他に "Ennui" と "Freed [then] from the emptiness of the universe" も2007年6月の来日公演でトリオ・バージョンが披露されている。"Malachi" はトリオバージョンよりソロのほうが少しスピードを押さえ、また "Wiesengrund" の静かな音数を絞った演奏はソロのほうでよりその特色がはっきり出ている。一方、"Ennui" のトリオバージョンは、ソロ演奏のスリリングさとは別の、トリオならではのダイナミックさが曲を引き立て、"Freed..." は、トリオの別の顔を見るようで興味深かった、となかなか単純には一つの方程式に当てはまらない。 Håvard Wiik の演奏について、非常に鮮明な記憶が2つある。1つは2001年7月にオスロで彼の演奏をライブで初めて観た時、もう1つは 2005年12月に Motif のメンバーとして来日していた折、同日に行われた Arve Henriksen のコンサートに飛び入りした際のものだ。後者は Arve Henriksen のライブに Motif のメンバー全員が参加したものだったが、それぞれの楽器の特性や Håvard Wiik の傍のモニターの電源が入っておらず、そうせざるを得なかったという事情があるにせよ、Arve Henriksen に自分の音楽を提示しつつ Arve Henriksen の音楽と自身の音楽をその場で調和させたのは彼だけだったからだ。 "The Arcades Project" とこの "Palinode"、そして来日公演を聴いて、彼の音楽から目(耳)を離してはいけない、注目し続けなければならないということを強く感じた。それでも、彼はきっと私たちの予想を軽々と超えた音楽を聴かせてくれるに違いない。 |