(pickup 2007 vol 6 : 24 July 2007)

The Zoo Is Far
Christian Wallumrød Ensemble
Christian Wallumrød
(p, harmonium, toy piano)
Arve Henriksen
(tp)
Gjermund Larsen
(vln, Hardanger fiddle, vla)
Tanja Orning
(cel)
Giovanna Pessi
(baroque harp)
Per Oddvar Johansen
(ds, per, glockenspiel)


1. Nash Lontano (4:38)
2. Backwards Henry II (1:43)
3. Parkins Cembalo (3:46)
4. Fragment no. 6 (2:05)
5. Psalm Kvæn, solo (1:18)
6. Fragment no. 2 (2:05)
7. Music For One Cat (5:36)
8. Arch Dance (7:54)
9. Psalm Kvæn, tutti (1:45)
10. Th Zoo Is Far (3:29)
11. Fragment no. 7 (1:34)
12. Backwards Henry I (0:46)
13. Fragment no. 3 (2:40)
14. Detach A (1:32)
15. Need Elp (5:39)
16. Psalm Kvæn, trio (1:32)
17. Detach B (1:48)
18. Backwards Henry With Drums (4:31)
19. Arpa (3:51)
20. Detach C (1:05)
21. Arch Dance With Trumpet (3:59)
22. Fragment no. 1 (1:03)
23. Psalm Kvæn, quartet (1:34)
24. Allemands Es (5:44)


All compositions by Christian Wallumrød except
Detach A by Wallumrød / Orning / Henriksen,
Detach B by Wallumrød / Larsen / Henriksen,
Detach C by Wallumrød / Orning / Larsen / Henriksen
and Backwards Henry With Drums by Wallumrød / Johansen

All Backwards Henrys are based on extracts from Henry Purcell's "Fantazias".

Psalm Kvæn was originally written for choir and commissioned by Musikk i Finnmark.

Recorded october 2006
Radio Studio DRS. Zurich
Engineer: Markus Heiland
Cover Photo: Jean-Guy Lathuilière
Liner Photos: Urban Willi
Design: Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher



2007; ECM 2005
Christian Wallumrød のリーダー作としては4作目、Christian Wallumrød Ensemble 名義では3作目となる "The Zoo Is Far"、リリース前に目にしたクレジットを見て、前作とはずいぶん異なる音が出てくるだろうことはいくらか想像がついた。収録曲はずらりと24曲も並び、それぞれはかなり短い。そして実際に耳にした音は、確かに前作とは異なる音だったが、最初に強く印象に残ったのは構成云々より、耳馴染みがいいといっていいほどのメロディーを持った楽曲とアンサンブルの何とも心地よい手触りの音だった。

楽器編成上は先の2作 "Sofienberg Variations" (2003) と "A Year From Easter" (2005) でのカルテットに弦楽器を2人加えた格好だが、アンサンブルのコンセプトはかなり異なるようで、実際、新作のブックレット内の長いインタビューで、完全に作曲された楽曲を演奏したいと考えたと発言している。また、このセクステットでの活動やアルバムリリース後も、これまでのカルテットはコンスタントに活動を続けている。

セクステットのアイディアは、2003年にスイスのハーピスト Giovanna Pessi と彼女の弾くバロック・ハープの音と出会ったことだという。Giovanna Pessi はその楽器からも想像がつくように、古楽〜クラシックのプレイヤーだ。新しく加わったもう1つの楽器は Tanja Orning のチェロ。Christian Wallumrød のアンサンブルには初参加だが、Tanja Orning のソロ作 "Chellotoronics" (2005; Albedo) やライブで共演してきている。Tanja Orning は元々クラシック畑のプレイヤーだが、ロックや即興演奏、先のソロ作ではエレクトロニクスを取り入れたりと実に幅広い。

ハルダンゲル・フィドル(ノルウェーの伝統的なヴァイオリン)とヴァイオリン、そしてヴィオラを演奏する Gjermund Larsen は、トラッド系の若いプレイヤーだ。他の2人、Arve Henriksen と Per Oddvar Johansen については、カルテットから引き続きの参加で、彼らと Christian Wallumrød は、学生時代からジャズを初めとして様々な音楽を演奏してきた最も互いをよく知る共演者といっていいだろう。

アンサンブルは打楽器と鍵盤楽器と管楽器がそれぞれ1人ずつ、弦楽器が3人という変則編成。しかし、出てくる音は「変則編成な音」ではなく、1つの音という印象だ。その要因はいくつかある。楽曲が極端にアンサンブル志向であること、そして複数の楽器が同じ旋律を奏でるシーンが多いことなどだ。それらは、このアンサンブルを特徴づけるものでもある。好対照をなす例が、Christian Wallumrød と同い年で、やはり同じく ECM から優れたリーダー作を発表するサックス奏者 Trygve Seim のアンサンブルだ。Trygve Seim のほうは10人程の編成で規模はより大きいが、それぞれの楽器が驚くほどに全く異なる動きをする(ライブで見るとその様子がとてもよく分かる)。Trygve Seim も Christian Wallumrød も変則編成のアンサンブル、いずれも楽器の取り合わせの妙を感じさせるが、Trygve Seim はジクソーパズルのように音を組み立て、一方の Christian Wallumrød は、あらかじめゆるやかにブレンドされた音を彼が描いたイメージに重ねていくといった風である。

ヴァイオリン、もしくはハルダンゲル・フィドル、さらにより低音のヴィオラがチェロに接近して区別がつかなかったり、さらに同じく弦楽器であるバロック・ハープが重なるのはもちろん、トランペットもピアノも同じ雰囲気で、意識しなければどの楽器がどの音を奏でているのかは気にならないほどだ。その結果、6人編成で、音色は豊かでありつつも、とてもミニマルな印象を与えることになっている。

このアルバムを聴いていると、少しノスタルジックでオリエンタルなメロディーが耳に残る。最も顕著なのは "Music For One Cat" で、私が最初に聴いた時は少し中国風なのではないかと思った。しかし、ブックレット内のインタビューによると、偶然耳にしたパキスタンの音楽がヒントになっているそうだ。私が受けた中国風、というイメージは、もしかするとメロディーというより、二胡や胡弓などを思わせるフレージングのほうに起因するのかもしれない。

Christian Wallumrød は、トリオ Close Erase、Sidsel Endresen とのデュオやトリオ、さらに Audun Kleive のグループなどではエレクトリック、しかもかなりアブストラクトな演奏をするが、この自己のアンサンブルでは完全にアコースティックである。しかしこの "The Zoo Is Far" には、どこかに、わずかながらオーガニックなエレクトロニカを想起させる要素が潜んでいるように感じられるのが面白い。"Arch Dance" のグロッケンシュピールの音の感覚、バロック・ハープの弾かれる音、繊細なパーカッション、さりげないトイ・ピアノの活かし方、弦楽器の途切れずに揺れる音、そしてミニマルなアンサンブルの音。逆に言えば、エレクトロニカサイドのアーティストがオーガニックな音として取り入れるような音要素が、このアンサンブルにはたくさん見られるのだ。

バロック、トラッド、クラシック、現代音楽、オリエンタル、エレクトロニカ、そしてもちろんメンバーの少なくとも3人がこれまでメインに取り組んできた即興演奏(敢えて「ジャズ」ではなく)と多くの要素が見られる音楽には、聴き手にいろいろなことを想像させるタイトルがつけられている。"The Zoo Is Far" という風変わりなアルバムタイトルと、優しくて、懐かしくて、どこか謎めいたメロディーが、実際の72分の演奏よりはるかに多くのイマジネーションを与えてくれる、そんな不思議な魅力に満ちた作品だ。

>> Christian Wallumrød Ensemble @ MySpace.com
>> "The Zoo Is Far" @ jazzecho.de

home