(pickup 2007 vol 8 : 23 October 2007)

8 supersilent 8
helge sten
(electronics, key, syn, g)
arve henriksen
(tp, voice, electronics, ds)
ståle storløkken
(key, syn)
jarle vespestad
(ds)


produced by deathprod at audio virus lab
recorded by kai andersen
mixed by helge sten
all selections by supersilent
sleeve by kim hiorthøy


recorded at athletic sound
22.-26.08.05 24/48
mixed at audio virus lab
14.05.07-20.06.07 24/48
mastered by bob katz
13.-19.07.07

2007 rune grammofon RCD 2067

>> supersilent "8" @ musiconline.no

supersilent albums:

7 "7" (2005)
6 "6" (2003)
5 "5" (2001)
4 "4" (1998)
1-3 "1-3" (1997)
8.1/ 8.2/ 8.3/ 8.4/ 8.5/ 8.6/ 8.7/ 8.8

4人が初めて一緒に演奏し、アルバムをレコーディングし、Rune Grammofon という新しいレーベルからの最初のアーティストとしてデビューしてちょうど10年、彼らの6作目がリリースされた。地元でのライブをまるごと収録したモノクロDVD "7" は2004年8月に収録され2005年9月にリリース、通常のアルバムとしては前作にあたるその前の "6" は2003年1月リリースながら録音は2001年12月。DVDに収録された2004年8月のライブ演奏1回分を除けば、これまでのアルバムで聴くことができる Supersilent の姿はかれこれ6年以上も前のものということになる。

このアルバムのレコーディングは 2005年8月、DVD "7" がリリースされる少し前に行われた。ノルウェー南東部の小さな町ハルデンにある Athletic Sound は、そのアナログレコーディングで国内ではよく知られている。Supersilent "1-3" の一部と "6"、同じ Rune Grammofon の MoHa! や Scorch Trio のアルバムなどもここで録音されている。スタジオは1つの大きなスペースになっており、これまでここで Supersilent はライブと同じようなセッティング、つまりモニターを置いて音を出して演奏しながら録音を行ってきた。しかし今回の録音では初めてヘッドフォンを使っている。Helge Sten によると、ヘッドフォンの使用により音が少しクリアになり、ミキシング等録音後の作業が楽になったとのことだ。またスタジオで彼らは、いつもどおり完全な即興で1曲演奏し、メンバー全員ですぐにその録音を聴き返し、それからまた次の演奏に入る。"6" あたりからは既にその方法が取られていたが、恐らくファーストアルバム "1-3" の頃は異なっていたのだろう、というのも、"1-3" に収録さている曲のいくつかが突然ぶちっと切れて終わってしまうのは、アナログ録音のテープが終わりにきてしまったから、というエピソードがあるからだ。

録音のほぼ1年後の2006年夏に会った時、彼らは録音の終わった5時間分のマテリアルへの手ごたえを口々に語ってくれた。新作は2枚組、もしかしたら3枚組になるかもしれないと言い、Rune Grammofon も2枚組でも3枚組でもOK、とゴーサインを出したという。その後、アルバムは2枚組になることでほぼ固まり、実際ノルウェー国内の流通関係には "8-9" というタイトルの情報が流されていた。しかしその後、アルバムを仕上げていた Helge Sten はさらにアルバムの中身を絞り込み、8曲で68分とやや長めの1枚物 "8" となり、これにレーベルも合意した。思えば、"6" の時も同じく5日間で7時間分録音したものから3時間まで絞り、2枚組と噂されつつ57分の1枚物となった。"6" のアナログ2枚組をリリースする際にも、最後に外された2曲(実際これらも素晴らしい出来だったと聞く)を追加することを断固拒絶したというこの徹底ぶりが、Supersilent の作品に駄作やいわゆる捨て曲がないことにつながっている。

Helge Sten がアルバムを仕上げる作業を行っていた真っ最中の 2007年6月1日、私はオスロ市内の彼のスタジオを訪れ、そのまだ誰も耳にしていない新作の原型を聴かせてもらった。ミキシングはまだだと言いつつも、既に彼の頭の中ではアルバムの構想がまとまりつつあったようで、聴かせてもらった多くはこのアルバムに収録されることになった。しかし、録音された大量のマテリアルの中から順不同に、しかし意図的にピックアップされた音楽を聴きながら、私は、一体このあまりにもバラエティーに富んだ音源をどうまとめるのだろうと首を捻った。まとめようによっては過去のアルバムのどれかの続編のようにもなってしまうだろうし、一歩間違えばとりとめのない内容になる。言い方を変えれば、"6" の時も同様だったが、アルバムにおけるバンドの方向性は、完全な即興演奏により表現される部分と、プロデューサーとして音源をまとめる Helge Sten の意図による部分があり、リスナーがアルバム全体から受ける強い印象はむしろ後者によるところが大きい。優れたプロデューサーがバンド内にいることが Supersilent の強みなのである。

DVD "7" により、彼らのライブ演奏に触れる機会のないリスナーに彼らがどんな風に演奏しているかのヒントを与えてくれた Supersilent だが、その後、直接音に関わる面でいくつかの大きな変化があった。まず2005年夏頃から Arve Henriksen がドラムセットを持ち込むようになり、ステージ前方中央にいた彼はステージ右前方に位置する Helge Sten の奥、つまり右手後方に位置するようになった。もう1つは、Helge Sten が最近は Supersilent 内外でギタリストとして演奏をするようになり、"6" の後一旦は Supersilent のステージではギターを使わなくなった彼が再び、ギターを持ち込むようになったことだ。

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比較的穏やかなコントラストに纏め上げられた "5", "6", "7" の後にあって、この "8" は単体でかなり強いコントラストを持つ。暖かな印象すら与えた "6" に続く音は、不穏で人工的で、歪んだ音響だ。11分にも及ぶオープニングトラック "8.1" は、その強い音でまず聴き手を圧倒する。実は、私がスタジオで未完成のアルバムをつまみ聴きさせてもらった時点で既に Helge Sten が、これが1曲目、と断言していた曲で、アルバムの方向性を明確に示す音を持っている。

続く "8.2" は非常に静かな 7分半。シンバルの意外にも丸い音が短く揺らぐような音響をつくり、キーボードが無愛想なフレーズを気まぐれに奏で、無機質でアナログな感覚の電子音が挟まれる。

8分近い "8.3" は近頃の Supersilent のステージでよく見られる、リズム楽器が3人になるパターンだ。Jarle Vespestad と Arve Henriksen がいずれもアコースティックドラムを叩き、さらに Helge Sten がドラムパッドを叩き、ズダズダのグルーヴを刻む。ピタリと合いそうで合わず、解けてしまいそうで解けてしまわないズレが緊張感とスリルを生む。

次も7分を超える "8.4" はアンビエントなトラックで、漂うようなキーボードやシンセの先の読めない展開の不穏なハーモニーにつぶやくようにトランペットが載せられ、淡々としたドラムが演奏を先へ進める。幾分アルバム "5" のような雰囲気でもある。

12分を超える "8.5" はこのアルバムのハイライトとなる1曲だ。この演奏が何の打ち合わせも作曲もなく行われていることを改めて注釈しておかなければならないだろう。Arve Henriksen が謎の言葉で何かを訴えかけ、"6.4" を思わせるギターが入り、ビートが変わる。Arve Henriksen が極上のソロを聴かせた後は Jarle Vespestad が不規則なテクノ系ビートを持ち込む。このビートに驚かされる人もいるかもしれないが、イギリス The Wire 誌の定期購読者向けのCD "The Wire Tapper 09" (2002年、2001年6月のドイツ・メァス(メールス)でのライブ録音)にこれの伏線のような演奏が収録されているので、特段新しいネタとも言い切れない。短編映画のような見事な構成で長いトラックは軽やかに終わる。

続く "8.6" は、比較的アコースティックな手触りの全曲と対象的なエレクトロニックな音で始まる。"8.3" ではリズムを刻んでいるのは3人だったが、ここでは Ståle Storløkken も加えた4人全員となる。Jarle Vespestad が手で押さえながら叩くシンバルなどはアコースティックな楽器ではあるけれど、ほとんどの音は非常に無機質。そこへ Arve Henriksen が、彼のソロ作 "Chiaroscuro" で披露したようなファルセットのハイトーンの歌を載せる。

8分半の比較的静かな音の後の"8.7" が驚くべき内容で、ぼんやりとそろそろアルバムが終焉に向かうことを意識し始めた耳にはあまりにも強烈だ。キーボードとギターが唸りを上げ、ドラムは叩きのめされ、どこのデスメタルバンドかと思うような演奏を繰り広げられる。ライブだとさほど驚かないだろうが、アルバム終盤でこの展開である。Arve Henriksen がここでも「声」でこの大音響にアグレッシブな美しさを持ち込む。演奏は9分あまり、最後にダメを押すかのような音を浴びせかけようやく本当に静寂が訪れる。

ノックダウンをくらったリスナーは、"8.8" の静かでミステリアスな演奏で、たった4分の我に返る時間を与えられる。

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ノルウェーに Puma というグループがいる。20代半ばの優れたミュージシャン3人(楽器はギター、キーボード、ドラムで、エレクトロニクスなども多用)による即興演奏ユニットで、デビュー前から大変な話題を呼び、またライブ演奏も評判が高い。そのバンドの演奏を初めて耳にした時、あまりに Supersilent (特に初期の頃のもの)を思わせる音だったので驚いた。思えば、Supersilent に似たグループというのは、少なくとも私が知る限りノルウェーからは全く出てきていなかった。その彼らはデビュー作 "Isolationism" (2007; Bolage; BLGCD001) で Arve Henriksen にライナーノートを依頼した。その短い文章で、Arve Henriksen はフォロワーたる若いミュージシャンたちに暖かなエールを送りつつ、自身の Supersilent での活動の裏にあるものを滲ませている。1つのバンドで、同じメンバーで10年間継続的に活動し、常に挑戦の姿勢を貫くことに費やされたものの大きさは計り知れない。そしてそれには大変な忍耐が必要だ、と静かに2回繰り返して文章を締めるその言葉はとても重い。

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そういえば、10枚組ライブボックスセットはどうなったの?と彼らに訊いた人がいた。私は、横にいてその質問を耳にするまで実はその話はすっかり忘れていた。デビュー以来の全てのライブ演奏からの選りすぐり、という企画で、一時期はパッケージの構想まで話が及んだり、中に何を収録するかという話まで具体化していた。私が最初に彼らに会った2001年に既にこの話が出ていたから、 "5" 以前からの計画である。その問いかけに答えたメンバーの答えは力強く、明快だった。「今は新しい音楽を出したいから」。その言葉をファンとしてとても嬉しく思った。まだまだ彼らは Supersilent としての音楽を追求し続け、新しい音楽を聴かせてくれるだろうから。

special thanks to supersilent and rune @ rg.

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