(pickup 2008 vol 1 : 11 February 2008)

Jon Balke "Book of Velocities"
Chapter I
1. Giada
2. Scintilla
3. Spread
4. Castello
5. Rersilience

Chapter II
6. Single Line
7. Nyl
8. Double Line

Chapter III
9. Obsidian
10. Sunday Shapes
11. Gum Bounce
12. Finger Bass
13. Contrivance

Chapter IV
14. Drape Hanger
15. Septima Llegada
16. Reel Set
17. scrim Stand

Chapter V
18. sonance
Nefriit


Jon Balke - piano


Recorded September 2006
Radio Studio DRS, Zürich
Tonmeister: Markus Heiland
Cover Photo: Jon Balke
Liner Photos; christophe Egger, Colin Eick, Jon Balke
Design; Sascha Kleis
Produced by Manfred Eicher



2007; ECM 2010
Jon Balke、1955年生まれの52歳。

1973年、18歳の時にプロとしての活動を始め、1975年、Arild Andersen の初リーダー作 "Clouds In My Head" (ECM 1059; 未CD化)でレコーディング・デビュー。その後いくつものグループで活動し、主なものにはガンビア出身のパーカッショニスト Miki N'doye のグループ E'Olen (活動期間は1976年〜1988年、アルバム "E'olen" (1979; MAI) のリリースがある)、Arild Andersen と Jon Christensen がリーダー格のスーパーグループ Masqualero (活動期間は1982年から、アルバム "Masquarero" (1983 Odin) と "Bande À Part" (1985; ECM) をリリース後、1987年に Jon Balke は脱退)、 Per Jørgensen (tp, vo), Audun Kleive (ds, vo) と組んだトリオ Jøkleba (活動期間は1990年から、"On and On" (1991; Odin), "Jøkleba" (1993; Norsk Plateproduksjon), "Jøkleba Live!" (1996; Curling Legs) の3枚のアルバムリリースがある)などが知られる。

そしてもう1つ Oslo 13 というグループがある。ノルウェーのジャズシーンにおいて、大編成アンサンブルのお手本の1つとなったアンサンブル、例えば Jaga Jazzist も影響を受けたと公言しているグループで、Oslo 13 名義では "Anti-therapy" (1983; Odin), "Off Balance" (1987; Odin), "Oslo 13 Live" (1994; Curling Legs) の3枚のアルバムリリースがあり、これが直接的に Jon Balke のリーダープロジェクトへと変化を遂げる。

Jon Balke w/ Oslo 13 名義で ECM から 1992年にリリースされたアルバム "Nonsentration" は、Jon Balke の初リーダー作であると共に第1期 Oslo 13 の最初のアルバムであり(その後 Oslo 13 は 1300 Oslo となり、活動を停止している)、そして彼自身のプロジェクト Magnetic North Orchestra への布石となる。

続く Magnetic North Orchestra 名義 (Jon Balke の名前が冠されている作品とそうでないものとがあるが、その違いに大きな意味はないだろう)の作品 "Further" (1994; ECM), "Solarized" (1999; Sonet / EmArcy), "Kyanos" (2002; ECM) は3部作となっており、管・弦・鍵盤・打楽器を配置した独特のアンサンブルによる作品で、ちょうど活動時期が重複する Jøkleba の2人も参加している。

Magnetic North Orchestra の活動と前後して単独でリリースされたのはアコースティックピアノとストリングカルテットによる "Rotor" (1997; Curling Legs) とボーカルをフィーチャーしたエレクトリックな変則カルテットによる "Satulation" (1998; Jazzland) の2枚。

その後の "Diverted Travels" (2004; ECM) は Magnetic North Orchestra 名義の4作目ながら、既に活動をスタートしていた別プロジェクト Batagraf のメンバーが入り、Batagraf の序章と位置づけられる。2005年にはその Batagraf 名義での最初のアルバム "Statements" (ECM) を発表している。尚、Magnetic North Orchestra は消滅したわけではないようで、また Grand Magnetic なるバージョンも存在する。

Jon Balke は最初のレコーディングから32年のキャリアがあるが、その長さと活動に比べてレコーディング作品は少ないと言えるだろう。彼の活動の特徴としては、様々なアンサンブルのための委嘱作品(その大半はフェスティバル等でのライブ演奏で公開される)が多く、これまで8枚あるリーダー作のうち、 "Rotor", "Solarized", "Kyanos", "Diverted Traveld" "Statements" の実に5枚もが委嘱作品をアルバム化したものだ。

もう1つ、Jon Balke のアンサンブルは比較的大きめので変則的なものが多い。トリオ編成のグループもあるが、Jøkleba はトランペット・ピアノ/キーボード・ドラム、また Lars Møller、Morten Lund と組んだトリオ(アルバム "Trialogue", 2003; Imogena) もサックス・ピアノ/キーボード・ドラムとこちらも変則的で、一般的なジャズフォーマットのグループはほぼ皆無だ。


Jon Balke が初のソロ作をリリースする、と聞いて初めて、これまでソロピアノ作がなかったことに気づかされた。"Rotor" はそういえばソロ作ではなかったな、と改めて思ったりもした。ストリング・カルテットとピアノのための作品を "Rotor" =「回転部」と名づけた彼は、ソロピアノ作に "Book of Velocities" =「速度の本」(直訳)というタイトルをつけた。ジャケットには、Jon Balke 自身が走行中の車の中から撮ったという写真。

アルバムは "Book" とのタイトル通り、I 〜 IV 、それにエピローグの5つの章から成り、さらにそれぞれの章はおおよそ1分〜5分弱までの短い「スケッチ」から成る。

アルバムのスリーブ内に何枚かの写真があり、最後の1枚はスタジオでの録音風景を捉えたものだ。クラシック系で有名だというスイス・チューリヒの広いスタジオで、こちらを背にピアノに向かう Jon Balke。足元にはバインダーに挟まれたり、外されたりした楽譜が広げられている。おおよそジャズ・ピアノらしくない音響と、マテリアルのいくらかはあらかじめ作曲されたものであることが視覚的に理解できる。

"Book of Velocities" とはちょっと変わったタイトル、とは聴く前の考えで、何度も繰り返して聞くうちに、それがとてもふさわしいタイトルであることに気づく。1つのフレーズの中でも、1つのスケッチの中でも、1つの章の中でも、そして「本」、つまりアルバム全体を通しても鮮やかな緩急がつけられている。

Jon Balke は比較的パーカッシブな弾き方が多いピアニストで、ここではその演奏方法も幅広い。全てアコースティックで全くオーバーダブがない録音であることはプレスリリースでも書かれているが、逆にその注釈は、音がそのように聞こえるかもしれない、ということでもある。メロディーを鍵盤で弾きながら、片方の手をピアノの中に入れ、弾いたり叩いたりする場面もあり、またペダルを使って音を効果的に伸ばしたりと、奇抜な要素は全くない程度ながらピアノから様々な音を引き出している。

アンサンブルのための音楽を書くときは、それぞれのプレイヤーの個性、音に合わせてそれぞれのパートを作曲するという Jon Balke。このソロ作では自身の演奏と表現に向かいあうことになったのだろうか。そんな中、パーカッシブな低音やピアノの内部を叩く演奏に、彼がこれまで最も多く共演しているであろうミュージシャン、Audun Kleive (ds) の演奏がオーバーラップするようで興味深い。またそれは、アンサンブルでもソロピアノでも Jon Balke の作り出す音楽はほとんど変わらない、という少し驚くような事実を暗に示しているようでもある。
Jon Balke, works: "Nonsentration" Jon Balke w/ Oslo 13 (1992; ECM 1445)
--- tp x 2 / tb / as / ts / ts / ds&per x 4 / key
"Further" Jon Balke w/ Magnetic North Orchestra (1994; ECM 1517)
--- tp x 2 / as / ts&ss / vln / vla / cel / p&key / b / per / ds
"Rotor" Jon Balke w/ Cikada String Quartet (1997; Curling Legs; CLCD42)
--- p / vln x 2 / vla / cel
"Satulation" Jon Balke (1998; Jazzland; 538160-2)
--- ss&fl / g&vo / vo / key&per
"Solarized" Magnetic North Orchestra (1999; Sonet / EmArcy; 547 123-2)
--- tp x 2 / sax&fl / vln x 2 / vla / cel / p&key / b / ds
"Kyanos" Jon Balke & Magnetic North Orchestra (2002; ECM 1822)
--- tp&vo / sax&fl / tp / cel / p&key / b / ds&pe
"Diverted Travels" Jon Balke & Magnetic North Orchestra (2004; ECM 1866)
--- tp&vo / bfl&sax / vln x 2 / bass vln / p&key / per x 2
"Statements" Batagraf (2005; ECM 1932)
--- as / key&per&vo / per x 3 / tp / vo etc.
"Book of Velocitis" Jon Balke (2010; ECM 2010)
--- p
link >> Jon Balke / Magnetic North Orchestra website

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