(pickup 2008 vol 2 : 15 April 2008)
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ノルウェーでは、ここ10年余りでジャズや即興演奏を扱うインディーレーベルがたくさん設立されてきたが、その中でもJazzland は1996年の設立以来、最も安定して高いレベルの作品を排出してきたレーベルだ。ディストリビューターにユニヴァーサルがついており、他のレーベルよりも規模の大きい配給網を持っている。 ここ最近の Jazzland のリリースには発売範囲にいくつかの種類がある。例えば、Bugge Wesseltoft や Beady Belle のように、ノルウェー・ヨーロッパ・日本(国内盤)でほぼ同時にリリースされるもの。その次は最近リリースされた Ingebrigt Håker Flaten Quintet "The Year Of The Boar" (2008) のようにノルウェーとヨーロッパでリリース(同時、もしくはノルウェーで先行リリース)され、日本へはヨーロッパから輸入盤が入るもの、そしてもう1つがノルウェー国内のみでリリースされるもの。来日公演に合わせて国内盤とノルウェー盤がリリースされた Håvard Wiik Trio "The Arcades Project" (2007) は最後のパターンの例外だ。この「制限」はディストリビューターにメジャーレーベルがついていることが主な要因で、販売範囲がきっちり決まっているため、配給外へはなかなか流出しない。 今回紹介する2枚は、2007年秋と2008年春に Jazzland Acoustic からリリースされたもので、The Core は Jazzaway から、Motif は AIM からの突然の移籍の上での新作だ。両グループとも結成以来コンスタントに活動を続けてきた、少なくともノルウェー国内では人気のあるグループで、いずれもこれまで日本盤のリリースもある。Jazzland に比べて新興のレーベルである Jazzaway も AIM もレーベルとしての活動は続けているがひところの勢いはなく、バンドは Jazzland への移籍がより良いと判断したということだろう。しかし、この2枚は先のパターンのうち最後の1つの流通パターンを取っているため、現在のところ国外では一切リリースされていないという皮肉な結果を生んでいる。 |
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THE CORE - Office Essentials |
| 1. Boloro 2. Brooklyn Serenade 3. Song For Eive 4. Free-Bird 5. The Shadow 6. New Thing recorded at Peter Karl's Studio, Brookly, NY. 06.09.2007 (2006*) Mixing & Mastering by Jørgeb Træen, Bergen. 23.05.2007 Design by www.tundragroup.com Photos by kara Asuncion 2007; Jazzland; 175 067-6 >> The Core >> The Core @ MySpace.com >> "Office Essentials" @ Buggesroom.com |
THE CORE: Kjetil Møster (sax) Erlend Slettevoll (p) Steinar Raknes (b) Espen Aalberg (ds) The Core はファーストアルバム"Vision" (2004; Jazzaway) で注目を集め、それと同時に Kjetil Møster というテナー奏者の名前を知らしめた。彼らのやっているのはモーダルなジャズで、とりたてて新しい種類のジャズではないが、長尺の演奏を全く長く感じさせず一気に聴かせてしまう楽曲と演奏が魅力だ。 セカンドアルバム "Blue Sky" (2006; Jazzaway) では Farmers Market などで知られるギタリスト Nils-Olav Johansen を迎えたカルテット、2007年初めにはインド人ミュージシャンとのコラボレーション The Indian Core 名義での "The Indian Core" (2007; Grappa) と、彼ららしさはそのままに、意外性のあるミュージシャンとのコラボレーション作をリリースし、柔軟な面も見せてきた。また、2007年末には同年5月にノルウェー・ベルゲンで Bergen Big Band と共演した際のライブ録音 "Meditations on Coltrane" (Grappa) をリリースしている。こちらは John Coltrane の "Meditations" をビッグバンドアレンジで再現するもので、ライブでは彼らのオリジナルも交えて演奏されたが、アルバムにはオリジナルと同じ曲のみが同じ順で収録されている。Coltrane からの影響は大きいであろう彼らなので、企画としては面白いが、彼ららしさは他の作品より薄い。 そして "Office Essentials" は、2007年に彼らの名義でリリースされた3枚の作品の真ん中、ファーストアルバム以来のカルテット作となるスタジオ盤だ。編成の大きい2007年リリースの他の2枚は別として、ファーストアルバムからセカンドアルバムへの音楽性の変化、つまりほんの少しロックの雰囲気を漂わせたジャズを推し進めるのかと思いきや、意外にもオーソドックスなジャズとなっている。ちなみにこのアルバムは、The Core + Bengen Big Band や The Indian Core の音源より前の 2006年9月6日(スリーブに2007年とあるのは誤記だと思われる)、彼らがアメリカ東海岸を回った際のニューヨークでのスタジオ録音だ。 ジャケットはこれまで彼らのアルバムを手がけてきた英国人デザイナー Nick Alexander によるもので、ケース裏に書かれているリリース元を見なければ Jazzland の作品ということすら気がつかないだろう。しかし、音はどことなく Jazzland Acoustic らしさが感じられるから不思議だ。その印象の一因は、恐らくピアニスト Erlend Sletevoll の成長ぶりにあり、その音(音の響きそのものであり、演奏ではない)がこのレーベルに多くの名作をもたらしている Håvard Wiik のそれを思わせる部分があるからだろう。これまで The Core は Kjetil Møster と Steinar Raknes の印象ばかり強かったが、本作のピアノにはこれまでにないインパクトを感じる。 バンドが新しい表情を見せるのが #4 "Free-Bird" だ。楽曲はバンドのクレジットになっており、即興演奏による部分が他の曲よりやや多くを占める。The Core のこれまでのがっちり構成された楽曲を少し崩し、タイトルさながらに軽やかに自由に演奏するが、それでもどこか一気に突き進む彼らの勢いは損なわれない。 本作はノルウェーのグラミー賞に相当する Spellemann 賞の2007年度のジャズ部門にもノミネートされ、原点に返ったアルバムは順調にすべり出したが、2008年に入ってバンドに大きな変化がみられる。文字通りのフロントマンだった Kjetil Møster が様々な理由からバンドを離れ、The Core は若いテナー奏者 Jørgen Mathisen 迎えて活動を続けることになった。Kjetil Møster の穴はそうは簡単には埋まらないだろうが、それでもバンドは活動を続ける道を選んだ(リーダーはドラマーの Epsen Aalberg なので、当然といえば当然の選択だが)。これらの変化はどう彼らの音楽と今後の活動に影響するだろうか。 |
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MOTIF - Apo Calypso |
| 1. Jump Start 2. Apo Calypso 3. Miss Landmine 4. That Never Was 5. Battle Lost 6. Dia De Los Muertos 7. Noblajek 8. Spacewalk 9. What Not 10. Silence Is The New.....Oh Shut Up. Recorded in Atlantis Studios, Stockholm, 15-16 May 2007 and Buggesroom, Oslo, 10 December 2007. Mixed by Andy Myteis and motif at Buggesroom, January 2008. Mastered @ Cuttingrom, Stockholm, January 2008, by Mats "Limpan" Lindfors Design: www.tundragroup.com 2008; Jazzland; 176 386-0 >> Motif >> Motif @ MySpace.com >> "Apo Calypso" @ Buggesroom.com |
MOTIF: Atle Nymo (sax, cl) Mathias Eick (tp) Håvard Wiik (p) Ole Morten Vågan (b) Håkon Mjåset Johansen (ds) "Motif" (2004; AIM), "Expansion" (2005; AIM) に続く3作目。前作の録音直後に「代役」として加わった Håvard Wiik が、この Motif では初レコーディングながら、既に何年もライブをこなしているだけあってしっかり馴染んだ演奏をしている。 Jazzland への突然の移籍については、上記 The Core よりこちらのほうが驚くべきかもしれない。確かに、リーダーの Ole Morten Vågan は Bugge Wesseltoft のバンドのベーシストであり(その先輩が Atomic の Ingebrigt Flaten である)、さらに Jazzland からリーダー作をリリースする Håvard Wiik が参加するこの Motif が Jazzland のオーナー Bugge Weseltoft の目に留まらないはずなない。しかし、このオーソドックスなクインテット編成のバンドを語る時、同じ1999年結成の先輩格 Atomic の影がどうしてもちらつくのは事実だ。その Atomic とピアニストを共有しているというだけでも不思議な状況だが、さらに同じレーベルに移籍、ということでどうなるかと思ったが、出てきた音源は Atomic を思わせる部分は、一部の楽曲を除くとさほど多くはない。演奏の面で言えば、Håvard Wiik 絡みで Atomic というより、彼のトリオ Håvard Wiik Trio がこのグループのピアノ・ベース・ドラムで構成されていることから、透明感のある音の重ね方により共通点が多いのは当然だ。 Motif が、多くのリスナーをひきつけてきた理由の1つは彼らの優れた楽曲にあり、このアルバムでは先の2枚のアルバムの間の変化を、さらにもう一歩(以上)押し進めたものになっている。スリーブに楽曲の作曲者のクレジットは全くないが(意図的なものではなく、忘れていたのだそうだ)、本作の全ての楽曲はリーダーのベーシスト Ole Morten Vågan が手がけている。凝ったアレンジが見られるが、難解ではない。それぞれの楽器の音の重ね方に工夫が見られ、聴きこむほどにユニークだ。ファーストアルバムの頃のノリで押す勢いのある演奏とは異なるが、この変化は彼らの着実な進化と捉えられるだろう。 演奏面では、Håvard Wiik が参加する初めてのレコーディングということで、さすがに彼の目にも留まらぬタッチはこのグループの中では最も華やかな演奏だが、前作からの比較では Atle Nymo の変化も大きい。このグループの中でも、そして他のグループでの演奏からも非常にストレートアヘッドなプレイヤーだと思っていたが、このアルバムではかなりの変貌ぶりを見せている。これまでのアルバムでは全く使っていなかったクラリネットも加え、演奏も結構フリーなものを交えるなど、一瞬誰が吹いているのだったか考えてしまうほどだ。一方の、ECM からのリーダー作のリリースも控えている注目のトランペッター Mathias Eick は、ずば抜けて上手いプレイヤーだけにもうちょっと聴きたいと思ってしまうくらいこのアルバムでは地味な役回りだ。 Motif のこれまでの活動で、主にネックになってきたのはメンバーのスケジュール合わせで、前任のアイスランド人ピアニスト David Thor Jonsson はもとより、多くのバンドを抱える Håkon Mjåset Johansen や Ole Morten Vågan という売れっ子リズム隊、また今や ECM 系の活動で世界中をツアーする Mathias Eick、そしてやっと落ち着いたピアニストの Håvar Wiik が今度は国外在住となってしまい、まとまったツアー以外での活動は難しくなっている。 優れた楽曲を演奏するこの実力派揃いの若いバンドは、これまで AIM という小さなレーベルの限界に制限されてきた感があるが、Jazzland に移籍することで、現時点での国外でのリリースは未定にせよ、新たな可能性に望みをつないだ。その彼らの現状を考えた時、ふと、前のアルバムが出たときに Ole Morten Vågan が自身について、旅することと音楽をやることについては自分でも幸運だと思っている、と言ったことを思い出した。 |
Thanks to Kjetil and Ole Morten.