(pickup 2009 vol 3 : 31 march 2009)
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trinity - breaking the mold |
| Kjetil Møster (sax, cl) Morten Qvenild (key) Ingebrigt Håker Flaten (b) Thomas Strønen (ds) 1. Mold 2. MoLded 3. MolDer 4. Breaking Them Old All music by Kjetil Møster, Morten Qvenild, Ingebrigt Håker Flaten and Thomas Strønen Recorded live at Molde International Jazz Festival, Alexanderakjeller'n, July 20th 2006, by Thomas Hukkelberg Mixed by Thomas Hukkelberg and Ingebrigt Håker Flaten, May 15th, 2008, at Duper Produced by Trinity Exective production by Trem Azul Design by Travassos Photo by Lars Myrvoll 2009; Clean Feed Records; C139CD |
2004年に録音、リリースされた Trinity のファーストアルバム "Sparkling"、音より先にまずその顔ぶれが意外だった。その時点で意外だと思ったのは Ingebrigt Håker Flaten と Thomas Strønen というリズムセクション(と呼ぶのが正しいとは思えないが、取り敢えず)の取り合わせで、彼らより少し若い Kjetil Møster についてはその後2年程の間で活動をよく知るようになり、やはりこのトリオは異色だったと後から認識した。 セカンドアルバムとして2009年になってようやくリリースされたこの音源は、2006年7月、ノルウェー有数のジャズフェスティバルでのライブ録音で、アルバムと曲のタイトルは録音された場所 Molde にひっかけたものだ。グループは先のアルバムの3人に加え、Morten Qvenild が加わったカルテット編成となっている。音を聞くまではこの Morten Qvenild の参加はさらに首を捻る取り合わせに思えたが、実際はこの音、それにこのグループがこのライブの後はカルテットとして活動していくことからもわかるように、実に面白い取り合わせだ。 アルバムには12分半、4分弱、6分半、そして30分の4トラックが収録されているが、実際聴くとほとんど途切れのない1つのセッションに聴こえる。楽曲はタイトルやクレジットからしてもほとんどが即興演奏によるものと思われる。 音は、キーボード(とクレジットされているが、シンセといったほうがよい音だ)が入ったことにより、前作とは空間の埋まり方が違う。前作はかなり余白の多い空間に、3人のシンプルなフレーズを描いていたが、本作では様々な音が飛び交う。 Kjetil Møster がテナーやバリトンだけでなく、ソプラノサックスやクラリネットなども持ち込み、音に変化を付けている。中でも最終トラックの半ばで登場する Arve Henriksen のトランペットみたいな音には驚かされる。 新たに加わった Morten Qvenild は、In The Country や Susanna and the Magical Orchestra などでの演奏とは異なり、かなりフリーな演奏で、こんな演奏もするのか、というギャップが面白い。とはいえ、その音使いのセンスには Susanna and the Magical Orchestra で見せるもの同じだ。 Thomas Strønen は、最近ではソロ名義、Humcrush や Food など実質的にデュオ名義での活動やリリースが多い。パーカッションというにはあまりにも多彩な音を操る演奏は個性的だが、それらでの演奏は比較的似たものだ。しかしこの Trinity では音の散らし方に彼らしさを見せつつ、アコースティックドラムに専念していることもあり、先のグループとは異なる側面をみることができる。 Ingebrigt Håker Flaten の演奏は、あまり目立たないが、Atomic や The Thing といったグループとはまた違う、より自由度の高い音楽の中で、音楽を支える演奏をしている。 この Trinity のライブ録音を聴いて、とてもノルウェーらしい音楽だと感じた。即興演奏にエレクトリックな音を自然に織り込んだ構成、それにライブ盤ならではの演奏でありながら、全く暑苦しくならない、クールな手触り。また、それぞれのメンバーが他にメインとなるプロジェクトを抱えており、メンバーの共演の少なさからも分かるように、本質的に持っている音楽性はかなり異なる。だからこそのこのグループの面白さ、なのかもしれない。これはトリオからカルテットに拡大しても変わらないポイントだ。 最初のアルバムが2004年、この2006年のライブ録音がリリースされたのが2009年と活動にしばらくブランクがあった理由はいろいろあるだろうが、メンバーのうち2人が国外を拠点として活動していた、ということは大きいだろう。全員がノルウェーに戻った2009年、このアルバムのリリースに合わせて短い国内ツアーを行った彼らは、さらに2009年夏までに早くも次のアルバムをレコーディングする予定だという。 |