(pickup 2009 vol 5 : 20 october 2009)

9 supersilent 9

helge sten
(hammond org)
arve henriksen
(hammond org)
ståle storløkken
(hammond org)


produced by deathprod at audio virus lab
recorded and mixed by helge sten
all selections by supersilent
sleeve by kim hiorthøy

recorded at henie onstad art center 20.-22.03.09 24/96
mixed at audio virus lab 06.08.09 - 13.08.09 24/96
mastered by bob katz 30.09.09

2009 rune grammofon RCD 2092

supersilent albums:

8 "8" (2007)
7 "7" (2005)
6 "6" (2003)
5 "5" (2001)
4 "4" (1998)
1-3 "1-3" (1997)

9.1 / 9.2 / 9.3 / 9.4

私の『Supersilent の2009年」はニュース2つで始まった。年明け早々、「Jarle が脱退し、3人でレコーディングを行った」という連絡が飛び込んできたのだ。一瞬、周りの空気が薄くなったかのような衝撃を受けた。Jarle Vespestad はこれまで他のグループの活動で忙しく、Supersilent は度々 Jarle 抜きのトリオでもライブを行ってきた。しかし最近はそのようなことも減ってきていた矢先のことで、意外なタイミングだった、というのもある。それより、グループの性質上、メンバーはきっぱり Supersilent として活動をするのを止めてしまう日は、割と唐突にくるかもしれない、ということを、自称大ファンの私は覚悟しつつ音楽を追ってきていたが、誰かが抜けるとか、メンバーが変わる、というのは、全くの想定外だったからだ。

そしてもう1つのニュースも、それだけ取れば結構衝撃的だった。レコーディングは ECM で有名なレインボー・スタジオで行ったというのだ。これまではアナログ録音で有名なノルウェー・ハルデンにあるアスレチック・サウンドを利用することが多く、デジタル機器が揃うレインボー(ノルウェーのミュージシャンはこのスタジオを単にこう呼ぶ)は対照的だ。

Supersilent の2009年の次のニュースは、3月、トリオとなってからの初めてのライブの告知だった。オスロ市郊外にある美術館、Henie Onstad Kunstsenter (art center) でのライブは、Helge、Ståle、Arve の3人が3人ともハモンドオルガンを弾くというもの。

そのライブの直後、Ståle が Humcrush のコンサートのため日本にやってきた。彼は、 Henie Onstad でのライブ/録音から直接日本に来て、帰国後はノルウェー・ハルデンのアスレチック・サウンドに直行し、再び Supersilent での録音を行うのだという。

結局、3つのかなり違うセッティングでの録音を行い、アルバムのリリース予定だけが先に設定された。レーベルからは、8月の期限までに音源を上げてくれ、という要求だけだったようで、そのあたりがレーベルとこの何をやってくるかわからないバンドの信頼関係を表している。その締め切り1ヶ月前の7月に会った Helge は、3つの録音のうち、「ハモンドオルガントリオ」をひとまず「9」としてリリースする構想だと教えてくれた。残りの2つ、アスレチック・サウンドとレインボーの音は随分違うでしょう?と訊いてみたが、彼自身としてはそんなに違わないという。確かに、アコースティックピアノなども含まれるというレインボーの音は独特だが、両スタジオの音の差はアコースティックな面がほとんどで、エレクトリックな部分は変わらないとのことだった。「10」や「11」としてこれらの音がリリースされる可能性も大きいが、あまり先のことは読めない彼らのことなので、現時点であれこれ言ってみたところであまり意味はない。

そして、予定どおりに発表されたのがこの「9」。4曲、50分強、楽器はハモンドオルガンが3台(しかも3人のうち「キーボード奏者」と呼べるのは1人しかいないだろう)というとんでもない作品だ。前作のピンクのジャケットは多くの人にショックを与えたが、今回の青とも緑ともつかないターコイズは彼ららしい。また、この録音が行われた Henie Onstad でのコンサートでのライティングは、この色と似た青1色のライティングで行われており、その場ともシンクロするものだ。

Supersilent の新しい音と向き合う時、いつも最初は戸惑う。彼らの音に最初に出会った「4」の時も、その後のアルバムもそうだった。それでも、何度か聴き重ねるうちに徐々に耳に馴染んでくるといった感じだった。しかし、この「9」は違った。聴き始めてすぐに、他の人はどう言おうと、私はこのアルバムがとても好きだと思った。そして、とても美しい作品だとも確信した。

音源は本当にハモンドオルガン3台のみで、他の楽器も声も入っていない。ハモンドオルガンの導入は過去のライブで試したことがあるが、その時はもちろん Ståle の1台のみ。全く新しいアイディアであるこのハモンドオルガンのみでの演奏は、意外にも余分なものを削ぎ、Supersilent らしさーとリスナーである私が勝手に思うものーを引き立たせている。と同時に、ハモンドオルガンのみ、という情報から想像される以上に様々なシーンを描き出す。

私は、最初に聴いた時の印象を "very Supersilent" だと書き留めた。その言葉はそのまま、Supersilent らしい、それだけのメモ書きだったのだが、数日経ち、地元ノルウェーの新聞に "too Supersilent" といったような言葉を見かけた。確かに、9.2 がややアグレッシブになる以外は、かなり静かな演奏が多い。ライブもそうだが、彼らの演奏に、アグレッシブさの極限のようなものを求めるリスナーは多いだろう。そこへ持ってくるとこの音楽は、あまりに静かという評になる。しかし、「静かすぎる」とネガティブに評しきってしまうには、その静けさはあまりに微妙な色合いを含んでいる。例えば、この音源は外出先でイヤホンを通して聴く、などというお手軽な聴き方には向かない。真剣に向き合わなければ、何も聴こえてこないに近い。


私は、このセッションの後、2009年7月に、トリオとしての初めての「普通のライブ演奏」をこの目と耳で確かめることができた。Jarle がいない分、以前からドラムも叩く Arve の仕事が忙しくなり、トランペットやヴォイスといった彼本来のパートが減ったことが私としては残念だったが、じきに調整されるだろうとも思った。そもそも、彼らのようなバンドの1回のライブで多くを評することはできない。その私が抱いた思いへのフォローは予想外にすぐにやってきた。2009年10月にオスロで行われたアルバム「9 」のリリースコンサートの音源を聴くことができたからだ。私が見たライブ以降一度のセッションもコンサートも行っていないが、ぴたりとトリオとしての Supersilent に調整してきたその演奏はこれまで聴いたことがないような場面もあり、3人のカラーが見事に出たものだった。


そんなライブ音源を繰り返し聴いた後、再びこの「9」に耳を傾けてみた。「らしさ」をどこかで期待しつつ「目新しさ」を求めたりする私の勝手な耳に、静かな波紋を投げかけるような作品である。そして、私はその波紋の源をまだまだ知らないのだと思う。

special thanks to supersilent and rune @ rg.

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