Espen Eriksen (p)
Lars Tormed jenset (b)
Andreas Bye (ds)
all selection by Espen Eriksen
recorded by Vidar Lundin at Musikkloftet
mixed and mastered by Jan Erik Kongshaug at Rainbow Studio
sleeve by Kim Hiorthøy
RCD 2096
2010 Rune Grammofon
>> Espen Eriksen @ MySpace |
2009年7月、モルデ・ジャズフェスティバルを観るために訪れたノルウェーで、そのモルデに行く前にオスロで会ったRune Grammofonのオーナー、Rune Kristoffersenから、いつものように「今後の予定」を聞き出した。「Espen Erikenのアルバムを出す。彼の初めてのレコーディングだ」とのことだが、どこかでよく見る名前だった。姓も名もありがちな名前だが…と思ったが、答えはすぐに Rune Kristoffersen から出てきた。ノルウェー国営放送 NRK のプロデューサーをしていて、モルデにもその関係で行っているはずだ、と。名前を見たことがあるが顔が浮かばなかったのはそのためだ。その数日後、モルデで宿泊したホテルのレストランで、ばったり会った Thomas Strønen がちょうど立ち話をしていた相手を紹介してくれ、それが Espen Eriksen だった。
ピアノトリオだけれど、音楽はポップミュージックのようだ、というのが Rune Kristoffersen の説明だった。プレスリリースにはもう少し付け加えられ、「間違いなくジャズだが」と前置きされている。そこで思い出したグループが2組あった。
1組目は同じ Rune Grammofon からアルバムをリリースする In The Country。5年前、ピアノトリオという同じフォーマットのこのグループをリリースする前、Rune Kristoffersen は私に「Rune Grammofon はジャズ・レーベルだと思っている人もいるみたいだけれど、彼ら(In The Country)が初めてのジャズのリリースになるね」とニヤリとしながら説明してくれた。In The Country は今でもジャズをベースにしているには違いないが、活動を続けていく上で歌やエレクトロニクスなどを自由に盛り込み、今はもうジャズとくくるには無理があるだろう。
もう1組は Orange 。同じ5年前の夏、AIM Records (現在は AIM Sound City) のオーナー Kristian Skårbrevik が、ドラマーがリーダーのこのピアノトリオを説明する時に全く同じように「ピアノトリオというよりポップグループ」と表現した。
Espen Eriksen Trio のプレステキストには、これら2組とは違う名前が引き合いにだされている。Tord Gustavsen Trio と Esbjörn Svensson Trio だ。
プレステキストという性格上、幾分有名な名前が必要だったのだろうが、 e.s.t. とはかなりイメージが違う。メロディーセンスという点では Tord Gustavsen Trio はかなり重複する部分も見受けられる。
その Tord Gustavsen Trio と重複するイメージは「一度聴いただけで耳に残るメロディー」で、これが Espen Eriksen Trio の一番の特徴だろう。
時折「どこかで聴いたような」フレーズが挟まれたりはするが Tord Gustavsen 程はベタではなく、甘口になり過ぎないことで微妙なバランスを保っている。
音全体の印象としては、2つ目に挙げた Orange に最も近い。しかし、ドラマーがリーダーの Orange よりこちらのほうが具体的な音だ。ピアニストがリーダーであり、そのピアノが奏でるメロディーがほぼ全てという構造だからだ。ベースやドラムはもちろん、ピアノでさえ装飾性はまったくなし。各楽器がどんな演奏をしているかなどは全く気にならない。3人のメンバーのうち、Andreas Bye のみこれまでいくつものレコーディングがあるが、それを並べて検証してみることにあまり意味があるとは思えない。アルバムの作りも8曲37分半と潔いコンパクトさだ。
非常に親しみやすいメロディーながら、きりっとした後味の、ピアノしかないような印象のまさしく文字通り「ピアノトリオ」。Rune Grammofon らしくないと言えばらしくない。その点について、Rune Kristoffersen は、「本当に気に入ったからリリースするんだ」と一言。
良くも悪くもピアノトリオの需要が高い日本では、上手くいけば結構聴かれる音楽かもしれない。Rune Grammofon なんて聴くこともないリスナーに、レーベルの存在を知ってもらえるきっかけになるかもしれない。日本の配給の現状は、Supersilent や Susanna and the Magical Orchestra ですら国内盤がリリースされない有様だったが、このアルバムは Disk Union から国内仕様盤(ノルウェーの原盤に帯と解説をつけたもの)としてリリースされることになり、日本でも入手可能となったことが嬉しい。
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