Daniel Herskedal (tu)
Per Jørgensen (tp, voice, per)
Sissel Vera Pettersen (sax, voice)
Christian Bluhme Hansen (g, ukulele)
Terje Isungset (per, mouth harp)
1. Molde
2. Damaskus
3. Copenhagen
4. Kautokeino
5. Avignon
6. Rio de Janeiro
7. Ramallah
8. Longyearbyen
All compositions by Daniel Herskedal.
Recoreded in Grieghallen Studio Bergen, Norway, Jan 2010.
Sound engineer Pytten.
"Rio de Janeiro" recorded at We Know Music Studios, Copenhagen, Denmarkm in March 2010.
Sound engineer August Wanngren.
Mixed by August Wanngren in the same studio in March 2010.
Mastering by Audun Strype, Strype Audio, May 2010.
Produced by Daniel Herskedal.
Executive producer Karl Seglem.
Compositions mad in Dirk Balthaus Studio in Amsterdam, Netherlands, May 2009.
Cover design by Bendik Kaltenborn.
Supported by Sparebank 1 SMN and MFL.
2010; NORCD 1094
>> Daniel Herskedal
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2009年のモルデ・ジャズフェスティバルを前にして、発表されたプログラムを見ていた時に目に止まったのがこの Daniel Herskedal だった。目に止まったと言っても、その昼間の時間帯には他にこれといったものがなく、それで目に止まっただけだ。その名前を検索にかけてみて、このサイトがヒットして自分で驚いたくらいで、これまでいくらかのアルバムを聞いてきてメモを書いてきていたのに、彼個人の活動に注目することがなかったのは、後から思うと不思議なくらいだ。
Daniel Herskedal はそのフェスティバルが行われる町、ノルウェー・モルデの出身。1982年生まれ。"City Stories" はそのフェスティバルの委嘱作品で、私が目に止めたのがプレミア公演だった。公演は早々にソールドアウトとなり、また演奏も全くそれに相応しいもので、個人的には 2009年の同フェスティバルでの最大の収穫となった。その公演の後、スタジオで録音されたのが本作だ。
"City Stories" のコンセプトは、旅先からの絵葉書のように、1曲で1つの場所を描くこと。旅は Daniel Herskedal の故郷、ノルウェーのモルデから始まる。シリアのダマスカス、デンマークのコペンハーゲン、ノルウェーの北の果て、ラップランドのカウトケイノ(これのみ町や市ではなく郡)、南フランスのアヴィニョン、南米に飛びブラジルのリオ・デ・ジャネイロ、パレスチナ自治区のラマッラー、そしてノルウェー領スヴァールバル諸島・スピッツベルゲン島のロングイェールビーンまで到達する。
その描き方について、CDジャケットの内側に短い説明がある。これまで見たこと、体験したもの、学んだこと、出会った人々、その地の歴史、雰囲気、その地で感じたヴァイブレーション、そしてその地の伝統的な音楽にインスパイアされた音楽とのことだ。曲によって、それらのブレンドの具合が異なる。
例えば、先述のモルデでのプレミアの際、拍手喝采を浴びた "Damaskus"。アラブ風のコードとビートを漂わせた軽快な曲だ。同じく中近東の "Ramallah" の一部も似た構成になっている。一般的に音や風景が知られているだろう "Avinigon" や "Rio de Janeiro" では、もっとさりげなくそれらが引用されている。冒頭の "Molde"、そしてコペンハーゲンーDaniel Herskedal が学び、現在は教鞭も取っている地であり、デンマーク人ギタリスト Christian Bluhme Hansen と
ノルウェー人シンガー Sissel Vera Pettersen が本拠地としている街ーでは、いずれもゆったりとリラックスした雰囲気が漂う。そして、北欧のミュージシャンならではのセンスを見せるのが極北の2曲、"Kautokeino" と"Longyerbyen" だ。アルバムを通して聴いていると、ふと澄んだ空気が流れこむような気がするので、タイトルを追わなくともすぐ分かるほどだ。
それらの楽曲と並んで、ミュージシャンの顔ぶれも絶妙だ。言い換えれば、少々変わった楽器編成なのは、まずリーダーがチューバだから、というのもある。ベースなどにはないふくよかな、管楽器ならではの風の抜ける音が、目立たないが全体を通して楽曲を支えている。Per Jørgensen と Sissel Vera Pettersen は、ともに管楽器(トランペットとサックス)を演奏するとともに、その声も重要なパートである。Per Jørgensen の声は北方の民俗音楽に根ざしたものと思っていたが、以外にアラブ風にも上手く化け、Sissel Vera Pettersen の透明感のある声とのアンサンブルも面白い。唯一の和声楽器であるギターだが、一般的な「ギター」な演奏はあまりなく、どちらかというと演奏にスパイスを加えるような立場にあるのが面白い。そして、このアンサンブルで一番のポイントは、Terje Isungset だろう。彼の替わりに器用なドラマーを起用しても十分面白いアンサンブルになるだろうが、僅かな音で風景を変えてしまう Terje Isugset の表現はこのアンサンブルをより幅広いものにしている。彼の演奏が、というよりこれはここに Terje Isungset を配置した Daniel Herskedal のセンスが光るというべきだろう。もう1つ付け加えるなら、ブラックメタルで有名なプロデューサー Pytten が録音を手がけているのも面白い。
初めてのリーダー作で、ひとつのテーマを相当な完成度で表現した Daniel Herskedal が、今後、どんなテーマに取り組むのか、どんな音楽を表現するのか、とても楽しみだ。 |

"Listen!
(2007 Schmell SMLCD 206) |
Daniel Herskedal の参加作はいくつもあるが、ここでは、彼が co-leader として参加するグループを2つ紹介する。
Listen はノルウェーの若いミュージシャンによるトリオで、Bendik Giske (sax), Espen Berg (p), Daniel Herskedal (tu) という変則編成。デビュー前からいくつもの国際的な賞を取っているグループだ。私が彼らのファーストアルバム ”Listen!" に早々に目をつけたのは Arve Henriksen のゲスト参加だった。Arve Henriksen は彼にしかできないであろう役回りで上手くはまっているが、アルバムにはもう1人、Jovan Pavlovic (accor) が参加しており、むしろ彼のほうがこのグループの無国籍/多国籍な音楽に貢献している。
変則編成、と書いたが、ノルウェーには先に Tri O' Trang (Torben Snekkestad (sax), Helge Lien (p), Lars Andreas Haug (tu, tp) ) という同じ編成のグループがあり、そちらが非常に個性的なために、この Listen はどうも大人しく聴こえてしまう。しかし、メンバーが手がける楽曲はよくまとまっており、Daniel Herskedal の "City Stories" に繋がる要素もあちこちに見られる。
Bert Lochs (tp, flugelhorn, オランダ)、Dirk Balthaus (p, fender rhodes, オランダ)、Daniel Herskedal (tu) というもう1つのトリオも変則編成。このトリオ結成の経緯がふるっている。2004年にベルギーで行われた作曲のコンペにファイナリストとして出演した Bert Lochs は、トリの1つ前に登場。その後その年の勝者である Listen がトリに出てきて、その演奏を目の当たりにした Bert Lochs は驚愕し、いつか一緒に演りたいと思ったが、その時は名前も知らず、会話を交わすこともなかったという。共演が実現したのはずっと後、MySpace で Daniel Herskedal を見つけてからだそうだ。
楽曲は大半を Bert Lochs が手がけているが、ジャズ的な演奏の自由度は高い。非常にバラエティーに富んだ楽曲だが、広義でのジャズに軸足が残っている風なのは、オランダ人とノルウェー人の感覚の違いもあるだろうか。
Daniel Herskedal の参加するグループで今後注目されるは Magic Pocket 。Heyden Powerll (tp), Erik Johannessen (tb), Daniel Herskedal (tu), Erik Nylander (ds) というカルテットで、70年代後半から80年代前半生まれのそれぞれの楽器奏者ではノルウェー国内でトップクラスの若手実力派揃いの顔ぶれ(そしてこれまた変則編成でもある)。Moten Qvenild (key) をゲストに迎えたデビュー作 "The Katabatic Wind" が2011年1月に Bolage からリリースされたばかり。
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