<< 2003 Vol. 6 (2003/12/01) >>
![]() 01. Outside Inside 02. Words 03. Glittercard 04. Fever Skin 05. Worth Waiting For 06. In Person 07. From Day To Day 08. Picking Up The Pieces 09. I Love A Man 10. Under The Rainbow 11. About Presence * Torun Eriksen (vo) Torstein Lofthus (ds) Kjetil Dalland (el-b) David Wallumrød (wurlitzer, p, rhodes, clavinet, hammond organ, glockenspiel) Frøydis Grorud (ts, ss) with: Ole Jørn Myklebust (tp) on #02 Kjetil Steensnæs (steel-g) on #03 Bugge Wesseltoft (per) on #04 Håvard Schulerud Bilsbak (cel) #11 * compositions and words by
Torun Eriksen except: #03 and #04music by Torun Eriksen, Kjetil Dalland and Kay Løland; #08 and #10 music by Torun Eriksen and Kjetil Dalland Arranged by Torun Eriksen, the band and Bugge Wesseltoft Produced by Bugge Wesseltoft Recorded by Bugge Wesseltoft and Andy Mytteis at Bugges Room Winter and Fall 2002 Mastered By Thomas Eberger at Cutting Room Mixed by Andy Mytteis Designed by Nicolai Schaanning Larsen at www.saintpaulus.com Photo by Arne B. Langleite * 2003 Jazzland Recordings 0602498198796 |
「ここ最近、ノルウェーで僕が聴いた限り、もっとも優れた才能を持つボーカリストだ」 - Bugge Wesseltoft Jazzland レーベルのオーナーである Bugge Wesseltoft は、自らのレーベルからデビューする26歳の女性シンガーをこう表現した。Bugge Wesseltoft と女性シンガーといえば、まず Sidsel Endresen とのコラボレーションが知られる。実験的な精神にあふれるパフォーマーで決して美声とは言えない、けれど深みのあるユニークな個性の持ち主。もう1人は Beate Lech。伸びやかで癖のない上手いシンガーで、Sidsel Endresen とは対照的なタイプ。Bugge Wesseltoft に認められ、後に Beady Belle として Jazzland からデビューすることになる。 さてそんな Bugge が発見した才能、どんな声の持ち主だろうとこのアルバムを聴き始めて15秒後、彼女の声が聴こえてきた途端、その声に魅了されてしまった。確かに予想外の声だった、というのはある。けれど、このシンガーが26歳になるまで(現在のノルウェーでは遅咲きの部類に入る)いったいどこで歌っていたのだろう、そんなことを思わせる深みのある声。 少し低めの、ハスキーな声で、おおよそ北欧的ではない。26歳にしては落ち着いた、大人びた声。そして人間的な温かみに満ちている。トゲトゲした心を包み込んでくれるような、けれど、安易な「癒し系」とは異なり、芯が強そうで、地にしっかり足のついた、懐の深さを感じさせる。 彼女はまた共作も含めて全ての楽曲を手がけ、歌詞(全編英語による)も自ら書く。彼女の声を活かすメロディーラインなのか、逆なのか、声とぴったり合った比較的シンプルでポップなメロディーもまた優しく、美しく、温かみに満ちている。ジャズかと問われれば、ジャズではないけれど、ジャジーではある。それよりもっと普遍的に良質な音楽、という印象のほうが強い。 サウンドの面で鍵を握るのはベーシストの Kjetil Dalland 。既に幾つかのアルバムに参加していて、ノルウェーでは有名なテクノポップデュオ Zuma (>>) の最新作 "Rainboy" に参加していたりする。彼はアルバムのクレジットでも特別に謝辞が述べられているし、楽曲の面でも貢献している。弾いているのはエレクトリックベースのみ。Jazzland といえば、「フューチャージャズ」などとも呼ばれるあのサウンド、テクノを吸収したビートをダブルベースで表現する、あの音が典型的だけれど、このアルバムに関してはそれは全く当てはまらない。このアルバムのエレクトリックベースは徹底してハネない。ファンキーなナンバーもあるけれど、そこでもあくまでも滑るように動く。 このアルバムで、恐らく一番ノルウェー的な音の持ち主はサックスの Frøydis Grorud 。この楽器には珍しい女性プレイヤー。参加していないトラックもあり、ソロといってもボーカルの後ろをそっとサポートする役割だけれど、その柔らかい音で奏でられるメロディーは短くとも印象に残る。彼女は Vintermåne (>>) というユニークなトラッドジャズトリオ(女性シンガー、サックス、キーボード)として1997年から活動していて、2002年には Lindberg Lyd (略称 2L >>) レーベルからデビューアルバム "Vintermåne" をリリースしている。その他、フェスティバルの委託作品などを手がけるなど、既に幅広い活動をしている。 シャープで、このアルバムを現代的な方へ持っていくタイトでシャープなビートを叩く Torstein Lofthus は、Jazzland Acoustic からセカンドアルバム "Shanghai Sweet Devil" をリリースした Shining (>>) のメンバーでもある。Shining のプロモーション写真では KISS のTシャツを着ていたりしたこともある。アバンギャルドなジャズをやりつつも、女性シンガー(例えばキュートというかキッチュな魅力で大人気のシンガー Bertine Zetlitz (>>)など)のサポートでの活動も多いプレイヤーだ。 このアルバムでは曲によって楽器の数が減らされてとてもシンプルに歌われるものもある。その最小パターンがピアノとのデュオで、静かに美しいソロを弾くのが David Wallumrød 。他の曲のエレピ類も、このアルバムのサウンドの中核を占める重要なパートだ。オスロのシーンでは最近よく見かけるプレイヤーで、ECM に所属する Christian、2004年に Rune Grammofon からデビューする Susanna の 兄妹とは従兄弟にあたるそうだ(という記述を一度読んだことがある)。その David Wallumrød と ドラムの Torstein Lofthus 、それにこのアルバムに1曲だけ参加しているギタリスト Kjetil Steensnæs は国内盤も発売される21歳の女性シンガー Maria Solheim (>>) のセカンドアルバム "Behind The Closed Doors" (2002; Kirkelig Kuturverdsted) に参加している。このあたりの若い、まだそんなに知られていない実力派、注目すべきかもしれない。 このアルバムは、ノルウェーでは2003年9月に発売され、2004年には国外でもリリースされる予定になっている。私にとっては今年(も)数多くの名作をリリースしてきた Jazzland レーベルで一番の「驚き」であり、特にこの季節、秋から冬にかけての寒い時期、ちょっと人恋しくなる時期、何度も聴き返すアルバムになった。 |