<< 2004 Vol. 6 (2004/05/31) >>

NOXAGT

NOXAGT:
Kjetil D. Brandsdal (el-b)
Nils Erga (vla, vln, p)
Jan Christian L. Kyvik (ds)



Noxagt

NOXAGT
#1-22 from Noxagt 7"EP
#23 from Sandnes / Stavanger 7"EP
#24-36 from Noxagt 7"EP
#37-42 from untitled 7"EP
#43-50 previously unreleased
#39 & 43 recorded live 2000

2001 Synesthetic Recordings
SYRE 004



Turning It Down Since 2001

TURNING IT DOWN SINCE 2001

1. Mek It Burn
2. Cupid Shot Me
3. Graby & Blood
4. Manhood Lessons
5. Church
6. Pantyland
7. Cockburn
8. Swarm
9. Web Of Sin

2003 Safe As Milk SAMCD 009
2003 Load Records LOAD 044 CD



The Iron Point

THE IRON POINT

1. Naked In France
2. Blood Thing
3. Acasta Gneiss
4. The Hebbex
5. A Blast From The Past
6. Thurmaston
7. Kling No Klokka
8. Svartevatn
9. Regions Of May

2004 Load Records LOAD 057
Noxagt というグループの音を初めて聴いたのは、イギリス The Wire 誌 2002年10月号(224号)に付いていた CD、"Fjord Focus - A Norwegian Sampler" だった。The Wire 誌のからみではもっと以前、2001年1月号(第215号)に付録の The Wire Tapper 08 というコンピ盤にも1曲収録されていたが、私はこの頃この雑誌を定期購読していなかったためにこのバンドに気づくのが随分遅れることになった。

メンバーの1人に Kjetil D. Brandsdal の名前がある。初期の Smalltown Supersound の作品にも顔を出す、どちらかというとミニマルな音響実験音楽で知られるアーティストだ。その彼がエレクトリックベースを担当するこのトリオの音は、その先行したイメージの丁度反対、パワフルな暗黒ロックとでもいうべきもので、度肝を抜かれた。


バンド名と同じタイトルの CD "Noxagt" は、ノルウェーのユニークなインディーレーベル Synesthetic Recordings からリリースされている。内容はそれまでにリリースされた 22曲入り7"EP "Noxagt" (1999; Nor Wave; #1)、13曲入り7"EP "Noxagt" (2000; Nor Wave; #3)、ノルウェーのサンドネスとスタヴァンゲル周辺のバンドのコンピ盤 7"EP "Sandnes / Stavanger" (2000; Nor Wave; #2)、4グループによるスプリット 7"EP (2000; Synesthetic Recordings; SYRE 004; タイトルなし)から5曲、それに未発表曲8曲のトータル50曲(!)をまとめたもの。50曲でたったの45分半!音のほうは、トリオ編成のバンドの色々なアイディアの断片とも言えるが、それよりガラクタ入れを蹴飛ばしてひっくり返したといったほうがぴったりだ。60年代風サイケロックあり、ギターロックあり、人を食ったような奇妙なものなどなどが現れてはあっという間に消えていく。この後 Noxagt というユニットが方向性を固めるにあたって排除した要素の1つ、キッチュなエレクトロニクス使いはなかなか面白く、そういう点では Kjetil D. Brandsdal のそれまでの要素がまだ見られる。


Noxagt のフルアルバムとしては最初のリリース "Turning It Down Since 2001" は、ノルウェーの Safe As Milk とアメリカの Load Records の2つのレーベルからリリースされている(私が持っているのはノルウェー盤のみだけれど、アメリカ盤も収録曲が同じなので全く同内容と思われる)。内ジャケに前作 "Noxagt" のCD盤と同じ絵が描かれているというのがかなり謎(同じ絵が Kjetil D. Brandsdal のソロアルバムのレコードラベルにもあったのでそういうものなのかもしれないが)なら、ジャケットの泡だらけになって入浴する人影もかなり謎だ。アルバムはノルウェー・ハルデンにある Athletic Sound でレコーディングされている。Supersilent の "1-3" と "6"、それに Scorch Trio のファーストアルバムと今年リリースされる予定のセカンドアルバムなどのレコーディングが記憶に新しい、アナログレコーディングではノルウェーでも有数のスタジオだ。

収録されているのは9曲で27分。音楽のほうは劇的な変化を見せている。ボーカルのないヘビーメタル風で、短い楽曲はリズムパターンやアレンジがきっちり練られており、単調ではないため、実際ほど短く感じられない。サウンド面では Kjetil D. Brandsdal の弾くエレクトリックベース(写真を見る限り普通の4弦だ)が尋常ではない音を出している。異様な低音は歪みきり、なおかつ通常ヘビーメタルバンドがリズムギターでフォローするあたりまでカバーする大音量。その太いベースラインに比較的シンプルなビートを叩くドラムが食らい付く。そしてそこに被さるのがギターではなくヴィオラだというのがこのバンドの非常に面白いところだ。ヴィオラはギターに比べて1つの音が連続して鳴り続け、次の音へ滑らかに移動する。それを目いっぱい活かした「鳴り」がとてもユニークなサウンドを作っている。

この "Turning It Down Since 2001" は、彼らに早くから注目していたイギリス The Wire 誌によって年間ベスト50の1枚に選ばれるなどどちらかというと国外で評価が高く、彼らも国内はもとよりアメリカ・ヨーロッパのかなり広範囲にわたってツアーをこなしている。


2004年に入って間もなく、新作 "The Iron Point" がリリースされた。今回のリリース元はアメリカの Load Records (のみ、だと思われる)。収録は9曲で34分と(これでも)随分長くなった。プロデュースは前作から引き続き Billy Anderson。こちら方面では有名な人だそうだ。

冒頭の "Naked In France"、同じタイトルの曲が "Noxagt" にも収録されていたが、同じ曲かどうかはわからない。何しろ原曲は42秒の意味不明なトラックだ。それはともかく、この格好いいシャープでヘビーなリズムの上をわーんと鳴り響くヴィオラという曲でアルバムは始まる。アップテンポで疾走感があり、それに途中でリズムパターンやテンポがめまぐるしく変わる #2 を聴いていると、きっと彼らのライブではヘッドバンギングするファンがいっぱいいそうな気がする。#3 は相当にヘビーな曲調、#4 は印象的なヴィオラのリフと面白い和声、それに複雑なリズムパターンを持つグルーヴィーなナンバー。一転して高速でかつびょんびょんと弦が緩んだみたいな凄い音のベースラインからなだれ込む高速ビートの #5 はまるでスラッシュメタル。ヴィオラがぎいぃぃぃと弦を引っ掻いて始まる #6はスピードを落とした暗黒ヘビーロック。そのヴィオラが鳴り響くその音響はどこか美しくもあるから不思議だ。

6曲目がめずらしくフェイドアウトで消えて行き、その後に何とノルウェーのトラッドナンバーが登場する。トラッドといっても普通ではなく、朗々としつつも非常におどろおどろしい男性ボーカルのゲスト付きでゴシック調に仕上がっている。とその直後、忙しいシンバルのカウントで再び Noxagt のヘビーロックへ復帰。その #8 はプログレ寄りのハードロックといった感じの構成を持った曲で、やはりどこか美しさも感じる。

一番最後に印象的にアルバムを締めるのは意外にもカバー曲だ。Pearls Before Swine という 1960年代〜1970年代初めに活動したサイケデリック・フォークバンド(だそうだ)のファーストアルバム "One Nation Underground" (1967) に収録されていた "Regions Of May"。Noxagt のオリジナルとは明らかに異なる明るいメロディーラインを残し、ピアノを加え、Noxagt らしいノイジーなミディアムテンポなゆったりした曲に仕上げている。


オフィシャルサイトを覗いてみると、見るからに激しそうなライブ写真が掲載されており、そのライブの様子を少し感じ取ることができる。ちょっと危なそうでもあるけれど、是非間近でライブを見てみたいグループの1つだ。それと共に、その変化し続けている音楽が今後どんな風に展開されていくのかも楽しみだ。


尚、バンド名 Noxagt は「ノクサクト」と発音し、本来のノルウェー語の綴りは "noksagt"。"nok" は "enough" 、"sagt" は "said" の意味。そのまま "enough said" の意味の他、スラングで英語でいう "blankety-blank" に当たる意味もある。
>> www.noxagt.com
>> www.loadrecords.com/bands/noxagt.html

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