<< 2005 Vol. 5 (2005/11/14) >>

a thousand incidents arise
anthony burr & skúli sverrisson


1. we shall be sure of not going astray
2. change is far more radical than we are at first inclined to suppose
3. the divine principle as a sphere turning on itself
4. except in memory

music composed and recorded by anthony burr and skúli sverrisson
design by col_r

c + p anthony burr / skúli sverrisson 2005
2005; the worker's institute; TWI-3

>> workersinstitute.com
>> gardenvariety.org
>> boomkat.com


desist

1. unframed
2. dumb clarity
3. sun long sunk behind
4. plain armless white
5. abandoned a impracticable
6. will to change

1999; Fire Inc. / Staalplaat; F-16

>> staalplaat.com
Anthony Burr、オーストラリア出身、(バス)クラリネット奏者、現代音楽の作曲家でもある。Skuli Sverrisson、アイスランド出身、ベーシスト、Laurie Anderson ら有名なアーティストのバンドメンバーである他、ジャズ/即興系のユニットでも活動している。この2人は1995年にニューヨークで出会い、音楽活動を共にするようになる。

その2人による最初のアルバム "Desist" は1999年にリリースされている。電子音やフィードバックノイズのみによって構成されており、部分的にはこれ以上ミニマルにはならないと言えるほどミニマルな音響作品。

それから6年、突然セカンドアルバムが発表された。結論から先に言うと、静かでミニマルな音楽、という大きなポイント以外では、同じ2人のアーティストが作っている音楽だとは思えないほど異なる音楽で、そのことにまずは非常に驚いた。

その新作の透明CDトレイの下にこんな一節が引用されている:
"to movement
then everything will be restored,
and into movement
everything will be resolved"
Henri Bergson, Creative Evolution
フランスの哲学者 Henri-Louis Bergson (1859/10/18-1941/01/04) の "L'Evolution créatrice" (『創造的進化』、1907)。前作の最終トラック "will to change"、そして新しいアルバムの2曲目のタイトルへと繋がる以外にも示唆に富む引用だ。

"a thouthand incidents arise" の音は、バスクラリネット奏者とベーシストのデュオ、というにふさわしくなっている。全編に渡り、アコースティックかつオーガニックな音が支配する。バスクラリネットの柔らかでざらりとした手触りの音は幾重にも重ねられ、ベースはその弦が弾かれる音が聞き取れるほどはっきりと形が見える。クレジットはないが、他にも様々な音が重ねられている。それらの音はひとつずつ、現れてはそれぞれに与えられた音を奏で、やがて音の層の底へ沈んでいく。

11分、16分、14分、そして最後の1曲のみ少し短めで6分強。変化していないようでゆらりゆらりと動き続ける。暖かみのある穏やかな、そして瞑想的な音楽。上記の引用や、各トラックに付けられた長いタイトル。その奥は聴けば聴くほど深いような気がしてくる。


the worker's institute
www.workersinstitute.com


Amína "AnimaminA"
1. Skakka to balance
2. Hemipode
3. Fjarskanistan
4. Bláskjár

María Huld Markan (vln)
Hildur Ársælsdóttir (vln)
Edda Rún Ólafsdóttir (vla)
Sólrun Sumarliðadóttir (cel)

2004 (self released): amina1
2005; The Worker's Institute; TWI-1
(May 2005)
>> aminamusik.com
>> workersinstitute.com
>> boomkat.com




Jóhann Jóhannsson "Dís"
2004; 12 Tóner 12T004
2005; The Worker's Institute; TWI-2
(September 2005)
* details see discs / scrapbook 2005 Vol. 1
>> johannjohannsson.com
>> workersinstitute.com
>> boomkat.com




Anthony Burr & Skúli Sverrisson
"A Thousand Incidents Arise"

2005; The Worker's Institute; TWI-3
(October 2005)
* see above for links.
the worker's institute はレーベル最初の3枚となる作品を今年2005年にリリースした新しいレーベル。オーナーの Ann Mark はロサンゼルス在住。

レーベル最初のアーティストとなった Amina は同郷アイスランドの Sigur Ros とのコラボレーションで知られるようになった女性4人組。基本的にストリングカルテットだが、EP "AnimaminA" では様々な打楽器やフィールドレコーディングなども用いている。パチパチと焚き火が燃えるような音で始まるこの18分の短いストーリーは、必ずしもハッピーエンドになるとは限らない昔話や神話のような物悲しさを湛えている。地平線近く、雲の合間から薄日がさすジャケット写真のように、北欧の弱い陽の光を思わせる繊細な輝きを表現するようなグロッケンシュピールや爪弾かれる弦の音が、滑らかな弦楽器とコントラストをなす。音以外の要素では、グループ名もアルバム名も書かれていない表ジャケット、そしてそれぞれのメンバーによると思われるかなり個性ある筆跡で書き分けられたクレジットも目に留まる。デザイン的には同じ字で書いたほうが綺麗にまとまるのは当然なのだけれど、敢えてさりげなく4人の個性を表しているようで興味深い。

この EP "AnimaminA" は元々自主制作盤として製作され、2004年12月にアイスランド国内のみでリリースされている。

Jóhann Jóhannsson の "Dís" (詳しくは discs / scrapbook の 2005 Vol. 1 を)は同名の映画のサウンドトラックで、アイスランド・レイキャヴィーク市内の有名なレコードショップで自主レーベルも持つ 12 Tóner から2004年11月にリリースされているが、同レーベルの作品はほとんど国外では流通していない。

Amina と Jóhann Jóhannsson のこの2枚のりイシュー、つまり世界的なディストリビュートで the worker's institute というレーベルはスタートした。オーナーの Ann Mark は何度かアイスランドに足を運ぶうち、彼の地には世界の他の国々でももっと聴かれるべき面白い音楽があると気づき、この2作品をリリースしたという。

レーベル3作目で初めてオリジナル・リリースとなった Anthony Burr と Skúli Sverrisson のセカンドアルバムもまたアイスランド絡みのリリースとなったが、事情は異なる。Anthony Burr がメンバーの Therenedy Ensemble というユニットにレーベルオーナー Ann Mark のニューヨーク在住の友人がおり、ちょうどバスクラリネット奏者が新しいレコーディングを行ったというので聴いてみたらとても気に入ったのでリリースすることにしたのだそうだ。

どのリリースも音楽を愛する心から(リリースを)決めている、と Ann Mark は強調する。偶然にもアイスランド物が続いたが、アイスランド物に限定したレーベルではないそうだ。

現在は Amina のフル・アルバムが準備中で2006年にリリース予定、Anthony Burr と Skúli Sverrisson も多くのマテリアルに取り組んでいるという。いくつか他にも計画があるそうだが、さほど多くのリリースは予定していないとのこと。まだレーベルの方向性は見えてきていないが、アメリカのレーベルということで、北欧のレーベルよりディストリビューションなどの面で有利なのは大きな利点だ。これからどんな音楽を届けてくれるのか楽しみに待ちたい。
special thanks to Ann @ the worker's institute.

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