<< 2008 Vol.2 (2008/11/11) >>

Lars Horntveth "Kaleidoscopic"
Written and arranged by Lars Horntveth
Conducted by Terje Mikkelsen
Mixed and produced by Jørgen Træen
Mastered by Bob Katz

Lars Horntveth: Bb cl, bcl, ac-g, el-g, lapsteel-g, b, p, key, kokle

Latvian National Symphony Orchestra

Programming/editing by Jørgen Træen and Lars Horntveth
Drums and perucussion Gard Nilssen
Orchestra recorded in Riga, Latvia 08.06.2007 and 08.07.2007 by Normunds Slava
Recorded by Jørge Træen in Duper Studio, Bergen 08.26.2007 - 09.01.2007
Additional recordings in Pooka Studio by Jørgen Træen, Lars Horntveth and Martin Hagfors
Cover by Kim Hiorthøy

2008; Smalltown Supersound; STS097
2004年にリリースされたLars Horntveth の最初のソロアルバム "Pooka" は名作だった。ちょうど Jaga Jazzist が国外でも知られるようになった時期だった、というのが随分と昔の話に感じられる。その後 Jaga Jazzist としてはかなり大きく方向性を変えた "What We Must" (2005) のリリースがあり、さらに最初からメジャーなロックグループを標榜した新しいグループ The National Bank で、"The National Bank" (2004) と "Come On Over To The Other Side" (2008) の2作品を発表、特にファーストアルバムはノルウェーでは記録的なヒットとなった。

そして、しばらく活動を停止していた Jaga Jazzist の活動再開、そして The National Bank の活動休止という節目にあたる今年2008年、Lars Horntveth の2作目が届けられた。

"Kaleidoscopic" −万華鏡のような、とタイトルされたアルバムにはたった1曲、36分49秒のトラックが収録されている。後述するように、音が途切れるのは終盤の1度のみ。しかしこの曲を聴いても、長い1曲だったという印象は全く受けないだろう。

前作 "Pooka" は映画のサウンドトラックのような作品で、このアルバムも似ているが、サウンドトラックというよりは映画そのものと言えるかもしれない。30分以上も途切れない音、アルバムタイトルにふさわしく様々に展開する場面はストーリーを追うようだ。終盤、33分も過ぎたところで、穏やかにギターの音がフェイドアウトし、場面が暗転した後、さながらエンドロールのように、3分のエピローグがミステリアスに流れる。

アルバムのコンセプトが "Pooka" を一歩押し進めたものなら、実際の演奏も同様だ。前作はヴァイオリンが4人、ヴィオラとチェロがそれぞれ2人、それに Jaga Jazzist の盟友 Mathias Eick (彼は今や Jaga Jazzist の、というより ECM 所属のトランペッターとして知られるようになったが)の弾くダブルベースに、自身の弾くギターやバスクラリネットを始めとする楽器、それにサンプリングをミックスしたものだった。本作は、あまりにクレジットが膨大なので記載を省くが、ヴァイオリンだけで20人ほど、5つの弦楽器の他、フルート、クラリネット、トロンボーン、パーカッション、ハープから成る Latvian National Symphony Orchestra による演奏で、そのアレンジはもちろん Lars Horntveth によるものだ。それぞれの音はこの大編成にもかかわらず非常によく聞き分けることができ、それぞれの楽器の響きがよく活かされている。しかし、要所要所を締めるのはバスクラリネットやギターといった、Lars Horntveth 自身の演奏だ。

くるくると展開する楽曲、そしてそれぞれの場面は、いかにも Lars Horntveth らしい。ちょっとチープな電子音で鳴らされるフレーズ、ストリングスによる跳ねるようなスタッカートの音、ノスタルジックな雰囲気などは、Jaga Jazzist や "Pooka" をよく聞いていれば、どこを切っても彼の音楽だと思うだろう。また、アコースティックな音もエレクトロニクスによる音も、ストリングスもギターもキーボードも、全く違和感なく並べるその新しい感覚は健在だが、今回はアコースティックな楽器の編成が大きく、エレクトロニクスでも表現できそうな音を、いくぶんアコースティックな楽器に置き換えているのが面白い。

前作では Mathias Eick が参加していたが、今回は若いパーカッショニスト/ドラマーの Gard Nilssen が参加している。エレクトロ即興演奏トリオ Puma をはじめ、多くのグループを掛け持ちする現在のノルウェーのシーンで最も注目されるドラマーの1人だ。ここでの演奏はさほど目立つものではないが、がちっとしすぎないなかなか面白いリズムを叩いている。折りしも彼は、2009年早々の Puma での来日が決まったところでもある。Lars Horntveth が 実兄 Martin Horntveth でなく、Gard Nilssen を起用した、という点も少し記憶に留めておきたい。


1980年生まれで、まだ28歳の Lars Hontveth。シンフォニーオーケストラのスコアを書く彼は、正式な音楽教育は全く受けていないという。ノルウェー人ミュージシャンにしては珍しい事実だが、恐らく受ける必要は全くなかったのだろう。その才能は、これから私たちにどんな音楽を聴かせてくれるのだろう − 流れるように場面が変わるこの作品を聞き返しながらふとそんなことを考えた。
>> Lars Horntveth @ MySpace.com


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