<< 2010 Vol.1 (2010/02/19) >>



Bernhoft Live 1: Man 2: Band

1. Ever Since I Was A Little Kid
2. On Time
3. Sunday
4. Fly Away
5. Streetlights
6. He Ain't Heavy, He's My Brother
7. Trickly Foot (Improvised)
8. So Many Faces
9. A Bad Place To Reside

Jarle Bernhoft (g, effects, fl, key)


10. On Patience
11. Rats & Racoons
12. So Many Faces
13. SIng Hello And Some More
14. On Individuality
15. Prayer To A Landlord
16. Firm & Deep
17. In The Street Where The World Passes Me By
18. Them Changes

Jarle Bernhoft (vo, g, effects, fl, key)
Hedvig Mollestad Thomassen (g, vo)
Line Horntvedt (per, fl, vo)
David Wallumrød (wurlitzer, hammond org, clavinette)
Audun Erlien (b)
Martin Windstad (per)
Torstein Lofthus (ds)
Trygve Seim (sax)
Mathias Eick (tp)

2010; Hi-Fi Klubben

Jarle Bernhoft の地元ノルウェーでの人気を、どう書けば遠く離れた日本で実感を持って感じてもらえるだろう?

イギリスIslandレーベルからアルバムをリリースしたハードロックバンドSpan解散後の彼の動きを追っていて、彼が幅広いリスナー、そして幅広いミュージシャンたちから支持されていることは十分にわかっていた。メジャーのUniversalからのソロデビュー作 ”Ceramic City Chronicles" (2008年)は地元各紙のレビューでもそこそこの評にとどまり、私個人としても期待した割には「まあまあ」という印象だったが、実際のところ、非常によく聴いたアルバムとなった。

彼の人気ぶりを身を持って知ったのは2009年7月の、モルデ・ジャズフェスティバルでのことだ。屋外で6桁の観客を集めた Leonard Cohen のライブを別格とすると、通常の屋内ステージの国内アーティストのステージのうち、私が観た中で最も観客が熱狂していたのが彼のステージだった。”Artist in Residence" を務めた Arve Henriksen の各ステージや Atomic や Supersilent など即興演奏系はもちろん、久しぶりの国内公演となった Jaga Jazzist と比べても、Jarle Bernhoft の深夜のステージに詰めかけた観客の数と熱狂ぶりは抜きん出ていた。観客が彼の曲をとてもよく知っているのも強く印象に残った。

この2枚組ライブアルバムはUniversalから少し離れて限定盤としてリリースされたものだ。契約の関係だろうか、ジャケットの表記もクレジットも全て Jarle Bernhoft ではなく Bernhoft となっている。1枚目の9曲はオスロの小さなジャズクラブ Kampen Bistro でのソロパフォーマンスを収めたもの、2枚目の9曲は同じくオスロの、クラブとしては最大級のスペースである Rockefeller での、フルバンドを率いてのパフォーマンスの記録だ。企画の性質上、ファーストアルバム "Ceramic City Chronicles" とこのライブ盤の2枚で重複する楽曲が多く、楽曲の捉え方が少しずつ違うのが面白い。

1枚目、ソロパフォーマンスを少し聴いた時、ソロとは思えない音がするので、ああ、予め録音したものでも使っているのかと思ったが、すぐにそうではないことに気づいた。彼はシンガーであると同時にキーボード、ギターからフルートまでこなすマルチ奏者だ。このパフォーマンスではループを上手く使い、シンプルながらバンドの音に匹敵するような立体的なサウンドを組み立てていく。

1枚目に収録されている9曲のうち、ファーストアルバムに収録されていない曲は4曲。冒頭の #1、ビートも自らの声で作り出す(いわゆるヒューマンビートボックスをうんと簡単にしたようなもの)#7 のミディアムテンポのファンキーなトラックはいかにも彼らしくてよい。また、2作を通じて初めてのカバートラック#6 ”He Ain't Heavy, He's My Brother" は雰囲気をがらりと変えるバラードだ。ファーストアルバムで、アルバムトータルの出来の足をやや引っ張っていたのはバラードの数曲だったが、このカバーはなかなかの雰囲気だ。テンポを落とした彼の解釈は、The Hollies や Neil Diamond より、Donny Hathaway のバージョンに似ている。尚、余談ながら、ノルウェー人アーティストによるこの曲のカバーでは、Radka Toneff のバージョン(アルバム "Butterfly" に収録)の絶唱が聴き逃せない。

そして、#8で観客の間の手のコーラスを上手く使った彼は、そのまま #9 で観客の手拍子のみで1曲を歌い切る。彼の歌そのものの持つグルーヴが活きるクロージングトラックとなっている。


アルバム2枚目はレギュラーバンドによる演奏による演奏。バンドはジャズ〜ロック系の注目の若手女性ギタリスト Hedvig Mollestad Thomassen、Jaga Jazzist の Line Horntveth、ソウル系で引く手数多の David Wallumrød、Nils Petter Molvær のバンドなどで知られる Audun Erlien、多くのポップ系アーティストと共演する Martin Windstad、Shining などで知られる Torstein Lofthus という顔ぶれだ。

しかし、この2枚目の出来はごくごく普通のレベルだ。歌も、バンドの演奏も普通。バックコーラスも今ひとつ決まらないなど要因は多いが、やはり、私が同じ顔ぶれでのライブを観た時も思ったが、ドラムの Torstein Lofthus が、Jarle Bernhoft の持つグルーヴを完全に潰しているのが最大の要因だ。Shining のようなヘビーなバンドには彼のようなドラマーは良いのだろうが、このソウル系の音楽には合わない。録音になると実際ライブで聴いているよりもよく分かるもので、タメが効いていてかつ滑らかによく動くラインでグルーヴを作り出す名手 Audun Erlien と Jarle Bernhoft のボーカルに対し、聴くに耐えないほど走る場面が見受けられる。曲の締めのフレーズも完全にロックバンドのフレーズで、ミスマッチに思えて仕方ない。尚、ファーストアルバムに参加している Anders Engen は軽快なグルーヴの持ち主で、Torstein Lofthus とは正反対なタイプだ。

そんな2枚目のバンドでのパフォーマンスだが、聴き所があるとすれば、Trygve Seim と Mathias Eick のゲスト参加だろう。演奏は両者ともに普通の出来だが、特に Mathias Eick の登場時の盛り上がりで、彼の人気の程がよく分かる。


メジャーレーベルからスタジオ録音作をリリースする合間の作品として、ソロパフォーマンスとバンドでのパフォーマンスを1枚ずつ収録したライブ盤を、地元オスロでのライブで限定盤としてリリースする、というのはなかなか面白い企画だったと思う。しかし、ソロのほうが予想以上に素晴らしいものだったのに対し、バンドのほうがいまいちで、トータルでの完成度は(ファーストアルバムの出来同様)下がることになってしまった。しかし、1枚目だけでアルバムの値段の元が取れるし(余談ながら、ユーロ安円高のため、これを書いている時点でこのアルバムは2枚組にもかかわらず2500円ほどで購入できる)、アルバムとしてもよくまとまっているのも事実なので、1枚物のライブ盤とすれば素晴らしい作品だ。

>> Jarle Bernhoft @ MySpace
>> Bernhoft @ Gubemusic



Ceramic City Chronicles

1. On Time
2. So Many Faces
3. Streetlights
4. Sunday
5. Fly Away
6. In Individuality
7. In The Street Where The World Passes Me By
8. Prayer To A Landlord
9. Rats & Raccoons
10. Firm & Deep

Jarle Bernhoft (vo, g, rhodes, b, fl, per, clavinet)
David Wallumrød (clavinet, org, synth, key, vocoder, wurlitzer, tambourine)
Audun Erlien (b)
Anders Engen (ds, per, synth)
Martin Windstad (per)
Trygve Seim (sax on #10)
Christina Dimbodius (vln)
Frode Larsen (vln)
Øyvind Fossheim (vln)
Stig Ove Ose (vla)
Tanja Orning (cel)
Strockholm Session Strings

2008 Universal



a little about buying Norwegian music online


ノルウェーでCDショップが激減するのと相反し、日本の店頭でノルウェーのCDを入手する機会が随分増えた。マイナーレーベルはCDやLPの海外向け発送を行っており、ダウンロード販売(購入)ではさらに多くの音源が入手可能だ。

そのダウンロード販売は個別のレーベルによるもの (多くのマイナーレーベルが参加する Musiconline を介してのものも含む)、iTunesなどによる包括的な販売、そしてそれらとは異なる発想によるダウンロード販売を行うのが Bugge Wesseltoft が運営するGubemusic だ。彼は自身のサイトで自分のレーベルJazzlandの作品を中心にダウンロード販売を行っていたが、昨年、これを拡大したウェブショップ Gubemusic を立ち上げた。Jazzland や Smalltown Supersound、Rune Grammofon といったノルウェーのマイナーレーベルから、最近ではスイスの Ronin Rhythm Records などまでカバーする。

Gubemusic での販売の特徴は、MP3 と FLAC の2種類のダウンロードが可能なことだ。上記 Bernhoft のアルバムでは通常の16bit バージョンに加え、ノルウェーでのダウンロード販売としては初という24bit バージョンも発売された。CDと同レベルの音質の音源がダウンロード出来ることになり、音質面でのダウンロード購入のデメリットはなくなった。

もっとも、個人的にはこれまでCDソフト購入にこだわってきたのは、音質面より、スリーブやブックレットに書かれている情報が欲しいからである。これらの情報がダウンロード購入で得られるようになれば、利用価値はもっと上がるだろう。

Jarle Bernhoft のファーストアルバムはいつの間にか iTunes に入っており日本でもダウンロード購入可能だが、CDを入手するのは(メジャーレーベルに所属するローカルアーティストゆえ)容易ではない。Gubemusic はレーベルの垣根もジャンルも国も超えたセレクションがユニークだが、メジャーレーベルの作品は扱っていない(正確には「扱えない」のだろう)。

ノルウェーではCDの売上が減り、LPが急増、また包括的なダウンロード購入も複数の発売元からの選択が可能である。そしてメジャーレーベルとマイナーレーベルの間の極端な状況の違い、と複数の要因が今後の状況を左右する。

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