winter 2003

John Surman & Jack DeJohnette
2003/02/16
@ Nefertiti, Göteborg, Sweden

Jack DeJohnette (ds, p, electronics...)
John Surman (ss, bs, bcl, synth...)


Nefertiti はスウェーデン第2の街イェテボリ随一のジャズクラブ。運河と川に囲まれた市街地の端のほうにある。e-mail でチケットの予約を頼んだときも、そして会場に入ってからもなかなかフレンドリーな感じのいいクラブだ。8時会場で、8時半くらいまでに着たらいいとのことでちょうど8時半に会場に着いたら、すでにもうかなりの人。サイトがスウェーデン語オンリーで今いちよくわからなかったのだけれど、どうやらテーブル席と、そうではない席があるらしい。かなり狭いクラブで、ステージも客席も横長、前のほうがテーブル席だから、後ろのほうのどこに立っていてもステージがよく見える。

入って観客を見て驚いたのは若い男性のファンばかりだということ。9割以上が男性、10代〜30代位の人がほとんど。今日登場するミュージシャン2人を考えると予想外の年代層。というわけで皆やたらに背が高く、決して小柄ではない私とはいえ目に入るのは人の肩ばかり。オールスタンディングでなかったことに本当にほっとした。それからいつもは禁煙でないらしいこのクラブ、今日は出演するミュージシャンの希望(どちらだろうか)で完全禁煙になっている。

9時を過ぎたところで会場の人のミュージシャンの紹介。「ヤック・デヨネッテ・オッ・ヨン・スールマン!」というアナウンスにずっこけたのはきっと私だけだろうけれど、とにかく客席の間を通って Jack DeJohnette と John Surman がふらりと登場。ステージ右側の John Surman はまずおもむろにステージ右端にセットされたシンセサイザーに向かう。一方の Jack DeJohnette は本を1冊小脇に抱えてステージ中央で挨拶。通常のごあいさつの後、イラクに対する戦争の事に言及。戦争に反対することについて、言葉だけでなく何か働きかけるということについて述べ、今日のステージを平和のために捧げる・・・と Jack DeJohnette が語っている間に John Surman のシンセサイザーが静かに流れ出す。Jack DeJohnette が、先のコメントに関連する本の一説の朗読を始める。決して朗読向きではない彼の声と話し方だけれど、それがかえって流暢な口調で語られるよりも重みを感じる。John Suman はゆっくりバスクラリネットを取り上げ、Jack DeJohnette の言葉に合わせて呼吸を始める。

音楽は途切れないまま、Jack DeJohnette が所定の位置−ドラムセットの後ろに移動。アルバム "Invisible Nature" の曲も含めて、そのアルバムと同じように2人が様々な楽器を使う。アルバム以上にデュオというフォーマットの無限の可能性を次々に表現するような、そんな印象だ。Jack DeJohnette はドラムとシンセ・パーカッション(というのか)、それにピアノを、John Surman は シンセサイザー他、バスクラリネット、ソプラノサックス、バリトンサックス、ソプラニーノのリコーダーのようなもの、それからエレクトリックなサックス(ちゃんとした名前があったはずなのだけれど)を使用。

休むことなくメロディーを紡ぎ出す John Surman と、それに合わせるようで、煽るようでもある Jack DeJohnette 。それぞれ工夫を凝らしてエレクトロニクスを使ったりする場面も予想外の音が飛び出すということでとても面白いのだけれど、やはり1体1の表現者として相手をリスペクトしつつ、一瞬の勝負を挑むような瞬間がたまらなくスリリングだ。ECMレーベルからリリースされた "Invisible Nature" も確かライブ盤だったはずなのに、この迫力の差はなんだろう。とにかく狭い会場なので生音がそのまま届きそうな距離で聴く Jack DeJohnette のドラムの音がとんでもない。演奏がヒートアップしてくると椅子から飛び上がりそうな迫力で叩いている。John Surman は若干クールに思えるものの、時には Jack Dejohnette を煽って見たりする。丁々発止というのか、2人が重ねてきた30年以上に渡る共演を凝縮した瞬間を垣間見るようだ(クラブのプログラムによると、この2人の最初の共演は1968年、ロンドンの有名なクラブ Ronny Scot's でのことだそうだ)。

実際1曲がとんでもなくとんでもなく長い−20分以上にも及ぶ演奏だけれど、緩急がついたその演奏と、盛り上がってきた時の物凄い迫力が会場中を飲み込み、全く長く感じられない。2曲ほど終わったところで Jack DeJohnette がなにやら言い残して控え室に引っ込んでしまう。いきなり、場をつないでおくように頼まれてしまった John Surman は汗を拭き拭き(そういえば Jack DeJohnette はあれだけドラムを叩きのめしても汗ひとつかいていない)ステージ中央へ。丸顔で体形も丸くにこやかな彼は、ひょろりとした体形で眼光鋭い相方とは好対照。で、マイクの前に立った John Surman がやおら英語でない言葉で流暢にしゃべりだしたのにはびっくりした。ここはスウェーデンだけれど、(どうして彼が北欧語ができるか考えたら)多分ノルウェー語ではないかと思うのだけれど、とにかく後半は英語も交えながら「いや、別に話すことはなくって、時間つぶしてるだけなんだけど 」とか言いつつ場内大ウケ(英語でない部分がわからないため、何がウケたのか残念ながらわからず)。

John Surman が静かに1人でバスクラリネットを吹き、会場がその一つ一つの音に吸い込まれている時に、Jack DeJohentte がこっそりステージに戻り、ピアノの前に座る。突然小さいながら前衛的な音で乱入した Jack DeJohentte に、驚いたフリをしてみせる John Surman のリアクションに場が和む。普通のジャズ・ピアノよりは随分現代音楽的な音使いをする Jack DeJonette のピアノは、ドラムを叩きのめしている時とは全く違う彼の音楽性の一面が見れるようで興味深い。

気分的にはあっという間でも実際は随分時間が経っているぞ、と感じられる頃に、2人が立ち上がったので短かめに終わりかとおもいきや、15分休憩を挟んで戻る、とのこと。いやはや、すでにもう随分堪能したのにこれで半分とは驚き。

結局15分どころか30分以上も休憩をはさんで、11時過ぎにやっと第2部が始まる。アルバム "Invisible Nature" の1曲目に収録された、どちらかというと淡々としたリズムの曲が演奏されたのだけれど(※これを書いている今、手元にブックレットがないので曲目が確認できない)、これがシンプルなだけに、まるでロックでも聴いているようなグルーヴ感で大変な迫力。後半はこれ以外にも John Coltrane のバラードを、Jack DeJohnette がピアノに手を突っ込んで弦をじゃらじゃら鳴らして始めたりする場面もあったりと、クリエイティブな2人のパフォーマンスを堪能させられる。 アンコールにはなじみやすいメロディーの "Invisible Nature" 4曲目の曲を短く演奏。終盤、ふと Jack DeJonette が仕掛け 、それに John Surman がのり、そのユーモアに富んだやり取りに思わず観客も和んでしまう。それをくるっと展開させて粋に締め(このあたりの展開の息の合い方が半端ではない)、全ての演奏が終わった。

緊張感が溢れながらも、2人の間にはなんともいえない充実した空気がが流れ、時折お互いに「やるねぇ」というようにニヤリとしてみたり、2人の共演を、彼ら自身が最も楽しんでいるようだった。そしてそれに巻き込まれる形になった観客−スウェーデンでライブを見るのは初めてなので比較の対象になるものがないのだけれど−とにかく信じられないくらい素晴らしい観客で、皆聴く気満々でやってきていて、おしゃべりする人も、食事ができるのに演奏中は食事をする人もほとんどなし、静かに熱心に聴いていて盛り上がってきたら歓声が飛び、終われば演奏にふさわしい拍手を送る。そして、ステージを去る2人、正確には Jack DeJohnette だったと思うけれど、最後の一言は "thank you" でも "good night" でもなく、"piece" だったことにはっとさせられた。

(2003/02/19)


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