winter 2003

CRIME TIME SESSIONS
2003/02/24
@ Smuget, Oslo, Norway

1) ELECTRO GRAVITY:
Jon Klette (as)
Nils Olav Johansen (g, vo)
Jørn Øien (key)
Per Zanussi (el-b)
Jarle Vespestad (ds)

2) HOO ZAA WHA:
Ståle Storløkken (key)
Thomas Strønen (ds, electronics)

3) jam session


Smuget はオスロのダウンタウン、港の近くにある比較的新しいスポットで、表通りに面したところにレストランが併設されている。洒落た雰囲気で対応もよく、そして料理もオスロにしては珍しいくらいおいしいのだけれど、とにかく高い。メニューの中で一番安い料理を一皿とビール1杯で3,000円を超える。もっともこのレストランが特別高いわけでなく、オスロの物価がバカ高いせいなのだけれど。

この日のセッションのことは前日の Supersilent のライブの後、Arve Henriksen から初めて聞いた。Ståle Sotrløkken が Thomas Strønen とデュオでライブをするんだ、と言われ、数日前に別の人からこのデュオがとてもいい、と聞いていたことを思い出した。そして Supersilent のメンバーからよく話を聞いてみると Jarle Vespestad も別のグループで出るという。しかも始まる時間はわからないけれど10時くらいに来ればまず大丈夫だとのことだけれど、その時間から2バンドやるとは(しかも月曜日)。結局10時に行って Jarle を捕まえて何時から?と聞いたら11時とのことで、先のレストランで腹ごしらえをして11時過ぎに会場に滑り込んだら、まさしく10秒後に演奏が始まる、というところだった。

Electro Gravity は、若干流動的なメンバーで(何しろ忙しいミュージシャンもいるので)セッションをしている。 Jon Klette と Nils Olav Johansen のユニットで、リーダーは Jon Klette 。Jon Klette は Jazzmob というこちらは 60年代風のアコースティックなジャズユニットをやっていた人で、彼自身の問題(不在)でこのユニットはメンバーが流動的になったりしばらく休止したりしている。一方で Nils Olav Johansen はサックス奏者 Sigurd Køhn (この日は観客として見に来ていた)との双頭ユニット "Køhn / Johansen" でエレクトリックなフュージョンをやっていて、この日のメンバーと音は、顔ぶれが大分重なるこの2つのユニットを足して2で割ったといったところだ。ただ、キーボードが Roy Powell ではなく Jørn Øien (この人は近々 Resonant Music レーベルからリーダー作をリリース予定、それから Beady Belle のレギュラーメンバーとして新作にも参加している)、ベースが Per Zanussi (Wibutee) だったことはちょっと意外だ。

アルトサックスの Jon Klette は、そのまったく聞き取れないアクセントのノルウェー語を除いては特にアクは強くはなく、わりとオーソドックスなプレイヤー。Nils Olav Johansen は彼のトレードマークのギターを弾きながらスキャット、といういつものスタイル。右端のキーボードの Jørn Øien はとても小さなキーボードの前にちょこんと座り、シンプルなラインを弾く。後方の Per Zanussi は 5 弦のエレクトリックベースを黙々と弾いている。そして Jarle Vespestad は「今日は(Supersilent 用の巨大なセットと違って)小さいセットを持ってきたんだ」と言ったとおり、彼らしいシンプルなセットながら、思ったよりヘビーなビートで驚かされる。

曲はユニット名どおりエレクトリックなジャズで少々フュージョン寄り。Jarle によると「典型的な70年代風」だそうだ。けれど曲によっては少しアバンギャルドな方向へ接近するものもあり、割とバラエティーに富んでいる。フロントの3人の個性がそのまま反映されたといったかんじで、この中ではやっぱり Nils Olav Johansen はインパクトがあるプレイヤーだ。

1時間ほどでファーストセットは終わり、ミュージシャン達は会場の隅で談笑を始める。「彼らはいいミュージシャンだけれど、ここは音楽をやるにはちょっとがさがさしていてね」と隣の常連のおじさんは言っていたけれど、私としては思ったより真面目に聞いている人が多い、という印象。もっとも月曜日の夜中過ぎにローカルなユニットを見に来るのは真面目なファンに違いない。

しばらくして、ステージの左20パーセントくらいのところにあらかじめセットしてあったキーボードとパーカッションのセットのところへ Ståle Storløkken と Thomas Strønen が上がる。Ståle Storløkken はとても長身(でとても細い)、Thomas Strønen はノルウェー人にしては小柄、という差を除けば、2人とも飄々として雰囲気は似たところがある。キーボードは前日の Supersilent の時と全く同じ大きなセットで、Ståle はいつもの音で弾き始める。低めにセットされたパーカッション類の中には、エレクトリックな機材もかなりあり、自分の音をモニターするため Thomas Strønen はヘッドホンをしている。2人の雰囲気そのままに、飄々と絶妙なタイミングでやり取りされるその音楽には、メロディーとリズムというシンプルな要素が有機的に反応する面白さがある。アナログシンセの温かみのある音でちょっと風変わりなフレーズが奏でられ、それに様々なパーカッション--スネアドラムの上にタオルをひいてその上に置かれ、叩く度にがたがた動いてはらはらさせられるカウベルなどもあり--が重なり立体的な音になる。

思えばこのデュオのライブのことを最初に私に教えてくれたのは Arve Henriksen だ。2人はそれぞれいろいろなプロジェクトを抱えているけれど、Ståle は Supersilent で、Thomas Strønen は Food でそれぞれ Arve と一緒にやっている(そして両ユニットとも Rune Grammofon に所属している)。このデュオは、両ユニットからそれぞれ一つずつ要素をピックアップして合わせてみたら意外ととてもハマった、そんな言い方もできそうだ。

今まで聴いたことのない面白い音楽が目の前で展開され、一番後方の席にいた私はちょっと伸び上がり気味で夢中になってこのデュオの演奏を聴いた。最前列では Jarle が熱心に聴いている。1時間の演奏の中ほどと最後に Ståle がステージ上の自分も含めて2人のプレイヤーを紹介。そして最後になにやら述べた後、2人はやっぱり飄々とステージから降りていった。

そのなにやら述べた内容を Jarle から聞いてびっくり。これから今日の出演者みんなでジャムセッションをするという。時計は既に夜中の1時をゆうにまわっている。ミュージシャン達はまたもやおしゃべりをしてリラックスを始め、第3部はなかなか始まりそうもない。このゆっくりした月曜の夜(というより火曜なんだけれど)、ビールを飲みながらリラックスして音楽を聴くこのオスロのシーンというのも羨ましい限りだ。

ファーストセットが終わった後、速攻で自分の機材をピックアップしてあたふたと帰ってしまったベースの Per Zanussi 以外のミュージシャン合計6人がぞろぞろと客席からステージに上がり、ジャムセッションが始まる。ベースラインをカバーするのは Jørn Øien で、もう一方のキーボード Ståle Storløken はかなり好きなようにやっている。なんだか脈略のない顔ぶれによる深夜2時前後の不思議なジャムセッションは意外にも面白く、さほど打ち合わせがあるとも思えない長めの演奏をそれぞれが柔軟にばっちり決めるその実力に、ノルウェーのジャズミュージシャンの演奏能力の水準の高さを感じた。

観客席に何人もミュージシャンが来ていたりと和やかでリラックスした日常的な空間での日常的なライブは、フェスティバルや大きな会場でのライブとはまた違った楽しさがある。しかしそれにしてもみんな当たり前のように上手い。それから、今年リリースされるあるコンピ盤に収録される予定になっているセカンドセッションのデュオの音源を聞くのが今からとても楽しみだ。

(2003/04/07)


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