和歌山県の南端にある橋杭岩(はしぐいいわ)。冬至を挟んだ2度の満月の日、西から射す残り陽にうっすら照らされた岩と、その後ろから昇る月を見ることができる。
昇る月を一通り撮った後、東の空には雲がかかり、満月は細長い厚い雲のあちら側に隠れてしまった。橋杭岩の一部が仏様に見える、というのはよく言われており、真ん中の岩は確かに仏様が手を合わせているようだ。満月のバックライトが当たってふちだけが輝く雲がちょうど仏様の後光のように見えたので、急いで月が岩の真後ろに来るようカメラを移動させて数枚。思いの外動きの早い月はあっという間に雲の上の端から顔を出し、この光景はすぐに終わってしまった。
時間にして2分ほどしかなかった間のこの1枚は、人物の後ろに光源を隠すステージ写真から得たアイディアだった。人物写真ばかり10年ほど撮ってきて、他の物も撮りたいと視野を広げようとした私に、写真の師が言ってくれた一言が浮かんだ 。「人物も風景も同じですよ」ー その言葉は、恐る恐る新しい方向に踏み出した一歩を支えてくれる力となった。
2014-12-06 / 橋杭岩 (和歌山県東牟婁郡串本町) / Nikon D4 / 70-200mm F2.8 / 98mm / F5.6 / 1.6s