ノルウェー出身のStian Westerhus。最も好きなミュージシャンの1人。カメラのこちら側の私の入れ込みは、私の場合、コンサート写真の画面構成に如実に表れる。

彼の音楽をライブで聴く体験は、恐怖心に近い感覚がある。全く先の見えない暗闇で、次の瞬間の足元がどうなっているか分からないような感覚。彼の音楽はそれほどまでにスリリングで、凄まじい吸引力がある。

この日のコンサートは同国のベテランボイスパフォーマー(シンガーというよりこう言う方がしっくりくる)Sidsel Endresenとのデュオ。まさしく即興演奏といったデュオだが、阿吽でもなく、会話するでもなく、同じ空間に2人で自在に音を描く、そのパフォーマンスは聞き手に実に多くのイマジネーションを与えてくれる。

コンサートの写真については、被写体であるミュージシャンが欲しい絵面と、私が撮ってみたい絵面は必ずしも一致しない。この1枚は典型的なカメラマンサイドの写真。顔は見えないし、ギターは裏返っている。彼はこのコンサートの少し前頃から、ギターの他に声や歌を交えるようになり、この写真もシャウトをギターのピックアップで拾っている姿を捉えたもの。この時期の彼のパフォーマンスを記録する1枚としても、ジャズミュージシャンというよりロックかパンクのような彼のスタイルを留めたものとしても、私自身はとても気に入っている。

2014-07-17 / Teatret Vårt – Molde, Norway(ノルウェー、モルデ)/ Nikon D4 / 24-70mm F2.8 / 55mm / F6.3 / 1/60s / ISO3200